この記事でわかること
- よくある相続トラブルについて理解できる
- 相続トラブルの回避が自分でできる
- 相続トラブルの解決方法がわかる
相続に関係するトラブルが後を絶ちません。
訴訟にまで発展しなかったとしても、相続でトラブルになってしまうとその後の親戚づきあいに支障が出るなど、気持ちのいいものではありません。
そのため、できるだけ相続トラブルを避けたいと思っている方は多いのではないでしょうか。
そこで、今回はよくある相続トラブルについて、そのパターンと解決方法をまとめてご紹介します。
遺産相続トラブルに関する裁判とは
まずは遺産相続トラブルに関する裁判で、よくある例をご紹介します。
相続人の確定でミス
遺産分割をするときには、まず相続人を調査し、確定します。
ところが、この調査の段階で相続人を見落としてしまうことがしばしばあります。
せっかく遺産分割協議がまとまったとしても、相続人を見落としていたら協議のし直しになってしまいます。
後から見落としていることに気がつけばまだよいのですが、気がつかないままに協議が完了し、遺産を分割してしまい、見落とされた側から訴えられるという可能性もあります。
財産の調査で見落とし
被相続人が財産をわかりやすい形で持っていてくれるとは限りません。
様々な財産が小分けになっていることもあります。
その際恐ろしいのが見落としが発生してしまうことです。
遺産分割協議書には、後から遺産が出てきてしまったときにどのように対応するかということが記載されています。
自分たちで遺産分割協議書を作り、後から遺産が出てきたときにどうするかを記載しなかった場合については、訴訟となってしまう可能性もあります。
特に、後から出てきたものが財産的な価値がかなり高いものだとしたら、相続人としてはできるだけ自分が欲しいと思ってしまうでしょう。
遺産分割協議書にいくら書いてあるといっても、やっぱり自分が欲しいとなればトラブルになってしまいがちであるということは、現実としてあります。
遺言書の有無がわからない
被相続人が遺言書を書いていたのか、いないのかわからないケースもトラブルになりがちです。
遺言書がない場合は、遺産分割協議を行い、協議の結果まとまった内容を遺産分割協議書として残します。
遺言書がある場合は、遺言書の通りに分割するか、別途遺産分割協議を行って遺言書と違う遺産分割をすることもあります。
遺言書が残っている場合は、遺言書の通りに分割することが多いでしょう。
ただし、遺言書の形式や内容によってはトラブルになることがあります。
兄弟間によくあるトラブル
兄弟間によくあるトラブルは、親子の関係も影響しています。
誰かが一番多くもらうのに納得がいかない
家業がある場合にはよくあるパターンですが、家業を引き継いでもらう人に一番多くの遺産をあげるという遺言書がある場合があります。
被相続人としては、家業を引き継いでもらうのだから、その分多く渡すのは当たり前です。
ところが、相続人たちで、中でも多くもらえない人としては、どうして自分が平等にもらえないのかという不満を持ってしまうでしょう。
不満を持つくらいならまだしも、結局訴訟に発展し、家業を営むのに必要な財産が残らなくなってしまうケースがあります。
親の介護を引き受けたのにもらえる遺産が他の人と一緒
親の介護を引き受けたのに、もらえる遺産が他の人と一緒であることに不満を持つ兄弟姉妹もいます。
確かに、親の介護の負担は相当なものです。
遺産分割のときに評価されたいと思うのも、ごく自然なことです。
ところが、他の兄弟姉妹が特にそのことを考慮せずに平等に分けようとした結果、介護を担当した兄弟姉妹が怒り出すということがあります。
遺産を使い込んだのではと疑われる
遺産の使い込みは犯罪となる可能性があり、絶対に避けなければいけないことですが、遺産の使い込みではなく、被相続人が生前必要としていたお金であれば、使い込みではなく、必要な分を使っただけのことです。
ところが、口座の管理を相続人の一人に任せていた結果、使い込みが疑われてしまうことがあります。
使い込みであった場合には大きな問題ですし、使い込みでなかった場合、疑われた方としてはかなり気分を害するのではないでしょうか。
ところで、使い込みではないにしても、今度は金額面で揉めてしまうことがあります。
そもそも葬儀が高すぎて揉める
そもそも葬儀の値段が高すぎて揉めることもあります。
葬儀を盛大にしたいと考える人もいれば、できるだけ安く済ませたい人もいるでしょう。
相続人にとってみれば、葬儀を安くしておけば相続財産が減る分を抑えることができます。
そのような事情で、葬儀の値段について、後から揉めることがあります。
相続人・相続分のトラブル
相続人や相続分のトラブルもあります。
以下で詳しくみていきましょう。
知らない人が相続人だった
相続が始まって、相続人を調べてみたら知らない人が相続人として見つかった場合、トラブルの原因となります。
隠し子がいたとか、前の結婚を秘密にして次の結婚をしていたなど、被相続人には何かしらの見覚えがある出来事かもしれません。
しかし、相続人にしてみればいきなり知らない人が相続の話し合いに出てくるわけですから、心穏やかにしているのは難しいでしょう。
ただし、知らない人が相続人であったとしても、その人にも相続する権利はあります。
知らない人だから、知らないふりをして勝手に遺産を分けてしまおうとするのはいけません。
後から訴訟を起こされて、法定相続分を取り返される可能性があります。
知らない人が相続人として見つかったとしてもきちんと話し合いをしてください。
相続分に納得がいかない
相続分に納得がいかないケースもあります。
遺言書が残っていなければ、遺産分割協議を行うことになります。
法定相続分といって、法律で決まった相続の割合がありますが、目安みたいなものであって、この通りに分ける必要はありません。
当事者が協議をしたり、遺言書で別の相続割合を指定することもできます。
ところが、誰かが全く遺産をもらえないという内容の遺言書や協議の場合は、相続分に納得がいかない人が出てきて、トラブルになることがあります。
家族関係が複雑な場合の相続分に納得がいかない
離婚や結婚を繰り返している場合の、いわゆる連れ子についての相続分でトラブルになることがあります。
当事者は結婚をすれば、配偶者は常に相続人となりますが、その子どもについては養子縁組をしていない限り、相続人になりません。
簡単に言えば、義理の子どもは、養子縁組をしないかぎり相続人にはなり得ないということです。
夫と妻がいて、お互いに連れ子がいるとします。
夫が先に死亡し、妻と子どもが相続人になります。
ところが、夫が妻の子どもと養子縁組をしていない場合は、夫と血の繋がりのある子どもだけが相続人になり、他の子どもは相続人になりません。
遺産をもらえなかった子どもとしては、義理ではあるものの自分の父親の遺産を一円ももらえないとなると、複雑な気持ちを抱えてしまうでしょう。
家族関係が複雑な場合こそ、もし相続が起こった場合はどのように財産が動くのか、シュミレーションしておいたほうがよいでしょう。
外国に子どもがいた
実は外国に子どもがいたケースもあります。
外国に子どもがいて、しかも認知されていない場合は、その人が認知されるためには日本の裁判所で認知を求める訴えを起こす必要があります。
頭髪や血液などを使って、DNA鑑定をすることになります。
日本国籍の有無は関係ありません。
寄与分を認めて欲しい
名義的には被相続人の財産であるが、それを築くのにはかなりの協力をしたのだから、その分を遺産相続のときに認めて欲しいという主張(寄与分の主張)がなされるケースがあります。
実際のところ、寄与分はどの程度認められるのでしょうか。
ケースバイケースの事例ですので、弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄、限定承認などのトラブル
相続放棄、限定承認などでは、以下のようなトラブルになることがありますので、注意が必要です。
相続放棄を取り消したい
相続放棄をしたものの大切な財産を発見したので、相続放棄を取り消したい場合があります。
裁判所で相続放棄の手続きをした後に取り消すことは原則として不可能です。
限定承認したいが相続人と連絡が取れない
限定承認は、借金が多いかどうかよくわからない場合にすることが多いです。
遺産の範囲内でしか債務を負わないというものです。
限定承認をしたいが、相続人と連絡が取れない場合、限定承認の申し立てができないことになってしまいます。
遺産分割協議のトラブル
遺産分割協議のトラブルも発生しがちです。
口先の約束で遺産分割協議をしてしまった
遺産分割協議は、書面でないといけないというルールはありません。
口約束の場合でも、契約は契約になりますが、書面ではないので証拠が乏しく、後日トラブルになることがあります。
不動産登記をする場合には、印鑑証明書つきの書面が必要です。
つまり、書面に実印で押印しなければなりません。
海外在住の人がいて、遺産分割協議を行いにくい事情はあるかもしれませんが、遺産分割協議は、書面で残してください。
亡くなってからもらうはずの財産がもらえない
証拠の問題になりますが、例えば親から「自分が死んだらこの土地を贈与する」と言われていたとします。
もらう側としてはもらいたいところですが、口約束だけでは実際のところ難しく、贈与契約の証拠が必要です。
他にそれを知っている人がいるとか、書面として残っているなどの証拠があれば、認められることがあります。
遺産分割協議が進まないので一部だけでも分けたい
遺産分割協議が進まないので、一部だけでも分けたい場合があります。
一部だけの分割は問題が起こりますが、不可能というわけではありません。
預金は、相続分の取得が可能ですが、相続人全員の同意書(実印つき)が必要です。
話がまとまらないので遺産をこのままにしておきたい
遺産分割協議で揉めてしまい、例えば不動産など分けにくい遺産の協議について、もううんざりしたのでそのままにしておきたいという場合があるかもしれません。
遺産分割協議は、いつまでにしないといけないという期限はありません。
またトラブルになったので実質的に共有状態になっている場合もあります。
ただし、共有状態である限り、誰か一人が自由に使ったり、売ったりすることができないわけで、それが家だった場合については空き家問題に発展する事があります。
つまり、揉めたまま世代を重ねてしまい、相続人の数が増えてもはや誰が権利者なのかわからなくなってしまうケースです。
一族の共有にしておきたいので、わざと遺産分割しないこともありますが、結局のところ空き家問題と同じ現象が起こることがあります。
つまり、誰が管理の責任者なのかわからなくなってしまい、壊れた家や管理がされていない土地が、周囲の住民にまで迷惑をかけることになるかもしれないという事です。
共有状態であったとしても、きちんと管理はしておきましょう。
とりあえず共有状態にしておき、人に貸すということもできます。
遺言をめぐるトラブル
次に、遺言書をめぐるトラブルをご紹介します。
遺言書が本物か怪しい
遺言書が本物かどうか怪しいパターンがあります。
公正証書遺言を偽造することはかなり難しいので、まずないとしても、自筆証書遺言については偽造がされやすいという特徴があります。
自筆証書遺言が出てきたが、本人の字ではない気がするとか、本人が生前に言っていた内容と違うなど、自筆証書遺言がトラブルの原因となることがあります。
本物かどうかを確かめるためには、究極的には本人の生前の手紙など筆跡がわかるものを集めて、鑑定するしかありません。
遺言書はあるが無効だった
自筆証書遺言は、書き方が決まっています。
民法に定められた書き方にしたがって書かないと、自筆証書遺言が無効になってしまうことがあります。
法律で決まっている形式は以下の通りです。
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
引用元:e-Gov 民法
遺言書がワープロで作ってあるとか、日付がない、印が押されていないなど形式が不備になってしまい、遺言書としての効力がなくなることはあります。
ただ、故人の意図は遺言書を読めばわかるので、いくら形式が不備だとしても、遺言書の内容を考慮するかどうかは相続人したいということになってしまいます。
遺言書の内容にもよりますが、誰かに多く渡して、誰かには少なくといった内容だともめがちです。
遺言書でメンツを潰された相続人がいる
遺言書には、「付言事項」という、遺言書としての効力はない部分があります。
付言事項とは、平たく言えばお手紙のようなものです。
なぜこの遺言書を書いたのか、なぜこのような内容にしたのか、自分が亡くなった後、親族でもめずに暮らしてほしいといった内容を、付言事項として遺言書につけることができます。
ところが、この付言事項の部分で、暦年の恨みを晴らそうという人がいます。
付言事項をどう書くかは個人の自由ですが、付言事項の部分で恨みがましいことや、「遺産を一銭もやらないから、反省しろ」のようなことを書くと、相続人が逆上して訴訟に発展することがあります。
その結果、被相続人が本当に財産を残したかった相手には、結局財産が残らない結果になってしまうこともあり、遺言書をせっかく作ったのに、むしろトラブルの元になってしまいます。
相続後に起こる可能性があるトラブル
やっと相続が終わったとしても、トラブルになることがあります。
どのようなケースがあるのか、みていきましょう。
行方不明の相続人が出てきた
遺産分割後に行方不明の相続人が出てきた場合で、そもそも行方不明の人を除外して遺産分割協議を行っていた場合は、やり直しになります。
ただし、きちんと失踪の手続きをしていた場合については別です。
自称子どもが現れた
自称子どもが現れて遺産を要求することがあります。
認知されていない子どもの場合は、裁判で認知を請求するところから始まります。
他の相続人(利害関係者)として子どもであることを否認し、訴訟をする流れになります。
結果として、自称子どもの人が、裁判所から子どもであること(認知の請求)を認められれば、相続する権利が発生し、遺産分割協議はやり直しになります。
まとめ
今回は、相続で起こりうるトラブルをご紹介しました。
結局のところ、最初に相続人を見落とさないことや、財産をもれなく調査することが大事です。
ただし、そこまで頑張って気をつけたとしても、トラブルになることはあります。
万が一、トラブルになりそうだと思ったら、トラブルが深刻化しないうちに、法律の専門家へ相談することをおすすめします。