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最終更新日:2022/12/13

揉めない相続VOL8 寄与分は相続分にプラス!寄与分として認められるケースと認められないケース

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続人の中に、被相続人の財産の維持や増加に貢献した人がいる場合もあります。

このような相続人には、相続の際に他の相続人よりも多くの相続財産が分配されることがあります。

ただ、いくつか基準がありますので、この点を十分に注意する必要があります。

寄与分とは?

被相続人が存命中に、将来相続人となる子どもなどが、被相続人の仕事を手伝うなどして、被相続人の財産の形成を助ける場合があります。

これを「寄与分」と言います。

この「寄与分」には、被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をした人である、という要件が必要です。

この要件を満たす場合に、民法で規定されている相続分とは別に、その寄与した分を相続財産から、譲り受けることができます。

なお、「特別な寄与」ということが重要で、配偶者として被相続人を貢献するということは、夫婦としては当然のことですから、「寄与分」にはあたりません

寄与の具体例

寄与の方法には、次の三つの方法があります。

まず一つ目は、被相続人の事業に関する労務の提供、または財産の給付です。

例えば、被相続人が事業を行っている場合に、働くことで被相続人を手助けすることです。

ただし、被相続人の社員となって給料をもらい、働くことは該当しません。

無給、あるいは、無給に近い状態でないと、寄与とは言えません

また、被相続人に財産を贈与することも寄与に当たります。

二つ目は、被相続人の療養看護です。

被相続人が病気などで療養が必要な状態の場合、被相続人の看病、介護などの身の回りの世話を施すことが、これにあたります。

そして、三つ目は、その他の方法です。

前の二つに準じる方法で、被相続人を生前手助けた場合は、寄与と判断されます。

なお、この寄与分は相続人だけに認められている制度です。

相続人でない人、あるは親族ではあるけれども、後順位であるため相続人とはならない人は、寄与分を認めることはありません。

ただ、被相続人に法定相続人がいない場合には、「特別縁故者」として、家庭裁判所の審判によって、相続財産の一部または全部を取得することがあります。

相続の計算方法

具体的に寄与分がある場合、相続財産をどのように分配したらいいのでしょうか。

例えば、被相続人が父親、相続人が母親と、長男と次男の3人だとします。

長男は長い間、父親に事業を手伝い、父親が財産を形成する手伝いをしたとします。

父親が長男の助力によって形成した財産が、1,000万円、父親が実際に遺した財産が総額で5,000万円とします。

まず、被相続人の遺産から長男が寄与した財産を引きます。

つまり、「5,000-1,000=4,000万円」となります。

次に、この4,000万円を法定相続分で分配します。

この例の場合、母親が2分の1、長男と次男がそれぞれ4分の1となりますから、母親が2,000万円、長男と次男がそれぞれ1,000万円となります。

そして、長男の1,000万円に寄与分の1,000万円を足しますから、2,000万円となります。

もう一つ例を挙げます。

被相続人が母親、相続人が長女、次女、長男の3人だとします。

次女と長男は結婚をして実家を出ていますが、長女は実家に残って、病気の母親の看病を自宅で行っていたとします。

入院することなく、自宅療養を5年間続けたことで、入院費などの出費を500万円抑えることができたとします。

母親が3,500万円を残して亡くなったとして、3人の相続分はどうなるでしょうか。

まず、3,500万円から寄与分の500万円を引きます。

したがって、3500-500=3,000万円となります。

次にこの3,000万円を法定相続分で分配します。

子どもの相続分は全て等分ですから、長女、次女、長男ともに1,000万円ずつになります。

そして、長女は500万円の寄与分がありますから、1,000+500=1,500万円となります。

トラブルになったら?

寄与分の場合、ある相続人に被相続人に寄与していたとすることは、おそらく他の相続人が認めるところでしょう。

父親の事業を手伝っていた、母親の看病をしていたなどは、外見からわかるからです。

ただし、最もトラブルになりそうなことは、寄与分の算定額です。

これが被相続人に財産を贈与したのであれば、金額は比較的に容易に出すことができます

しかし、事業のサポートや看病などについて、具体的な金額で表すことは至難の業です。

ただ、寄与した相続人としては、寄与していない相続人と同じ基準で相続することは、納得がいかないはずです。

基本的には、相続人が全員集まって、話し合い(協議)を行い、相続財産の分配方法を決めることになります。

その際に、寄与をした相続人は、被相続人に寄与したこと、その寄与がいくらに換算されるかを主張することになります。

しかし、話し合いがつかなければ、寄与者が家庭裁判所に調停を申請して、場所を家庭裁判所に移し、話し合いを続けることになります。

まとめ

被相続人に対して、財産を形成した、逆に財産の減少を食い止めたなどの功績がある相続人には、寄与分が認められています。

それにより、相続人間の公平性、公正性を図っているのです。

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