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亡くなった方が意思表示として自分の財産の分割方法などについての考え方を記載したものが遺言書です。
遺言書が見つかった場合、その対応や遺言書の内容をめぐってさまざまなトラブルとなってしまうケースがあります。
そんな遺言書に関するトラブルを10ケースほど挙げ、その対策についてお伝えしていきます。
相続人が遺言書を勝手に開けてしまった場合
亡くなった自分の父親の遺品を相続人が整理している最中に机の引き出しなどから遺言書を見つけ、すぐに開封してしまうといったケースが考えられます。
結論からいえば、この場合、遺言書自体の効力は無くなりません。
しかし、本来遺言書については公正証書遺言を除き、開封する前に家庭裁判所の検認手続きを済ませる必要があります。
検認とは家庭裁判所のほうで偽造や変造防止のために遺言書の形状や内容を確認する作業のことで、検認を経ずに開封してしまった場合、遺言書自体は無効とはならないものの、5万円以下の過料が科させる可能性があります。
開封してしまった遺言書の取扱いですが、そのまま家庭裁判所に提出して検認を受けるという流れになります。
なお、公正証書遺言なら費用はかかりますが、家庭裁判所の検認も不要で、偽造や変造の心配もなくておすすめです。
あるはずの遺言書が見つからない場合
被相続人である父親に自分の息子などの相続人に対して、遺言書を残しておくので自分が亡くなったら、机の引き出しを探すように言われたものの、いくら探しても見つからないといったケースがあります。
もし残されているはずの遺言書が自筆証書遺言の場合、どうしても見つからないという場合には相続人全員による遺産分割協議によって、遺産の分割方法を話し合いで決めていくことになります。
ただし、全ての遺産分割が終わった後で遺言書が見つかったりすると、その遺産分割は原則として無効となってしまいます。
心当たりの場所を徹底的に探し、それでも見つからない場合には遺品整理業者など遺品を探すことに慣れている業者にも依頼して探してもらうようにしてもいいでしょう。
なお、公正証書遺言の場合、原本は公証役場にあるため、見つからない場合や紛失している場合でも問題ありません。
また、遺言書の原本が無くてもコピーがあれば立証できる場合があります。
パソコンで書かれた遺言書が見つかった場合
被相続人である父親の死後、遺言書がみつかったものの、パソコンで書かれていた場合はどうなるでしょうか。
実は、遺言は基本的に遺言者が話した遺言内容を公証人がまとめて作成する公正証書遺言などを除いて、全文が自筆で書かれたもののみが有効となります。
このように遺言者が自分の遺言内容を全文について手書きで作成するものを「自筆証書遺言」と呼びます。
パソコンで書かれた遺言書は一切無効となり、家庭裁判所でも受け付けてくれません。
なお、自筆証書遺言については改正があり、2019年1月13日より、遺言書に添付する「財産目録」についてはパソコンで作成することが認められるようになりました。
父親が同棲していた愛人の子供が遺言書を持参してきた場合
被相続人の中には、遺言書で自分の近親者以外の者に財産を相続させたいという希望を残している場合があります。
例えば、その父親には同棲していた愛人との間に子供がおり、父親が亡くなって2週間後にその子供が父親の書いたという遺言書をもって現れたケースがあるとしましょう。
その遺言書には預金と株式合わせて4,000万円相当をその子供に財産分与せよという記載がありました。
父親が生前あるいは遺言でその子供を認知していた場合は婚姻外の子供にも相続権があるため、その子供には財産分与を受ける権利があります。
ただし、遺言書が本物かどうか、遺言書を持参した人が本当に父親の子供であるかについては慎重に確認しましょう。
また、法定相続人の遺留分を超える財産分与に対しては遺留分侵害額請求権(旧・遺留分減殺請求権)があります。
遺言書が3通出てきた場合
遺言書が一枚だけでなく、複数見つかるというケースがあります。
例えば、自分の母親が残した遺言書が全部で3通も見つかり、その3通は日付が異なるものが1通と同じものが2通あるような場合です。
日付が異なる遺言書の場合、日付の新しいものが効力を持つことになります。
ただし、古い日付や同日付けのものが複数あっても、それらの遺言書の内容が互いにダブっていない場合は日付に関わらず、全て有効となります。
例えば、古い日付の遺言書の中で銀行預金の分割方法、日付の新しいもので不動産の分割方法について書かれていれば、それぞれの内容はダブりませんので、どちらも有効です。
遺言書が乱筆で文字が解読できない場合
遺言書が見つかったものの、乱筆で書いてあることが全く解読できないといった場合も想定される事例です。
このようなケースでは、通常乱筆で読めない遺言書は鑑定人に解読を依頼することになります。
それでも全く読めない内容であれば、その遺言書は無効となります。
相続分の指定のことしか記載のない遺言書が見つかった場合
相続人が遺言書を見つけたものの、その遺言書には相続分を指定する旨の記載しか書かれていないといった場合、遺産分割協議で相続人が自由に遺産分割について決めていいのか迷ってしまう方がいるかもしれません。
この場合、たとえ遺言書に相続分の指定だけしか書かれていなくても、故人の意思表示が尊重されますので、その内容通りの遺産分割をおこなうようにします。
ただし、遺留分を侵害する部分については無効ですので、法定相続人の相続分の範囲で遺言書通りの遺産分与をおこないます。
財産目録で書かれた土地がすでに売却されていた場合
遺言書に記載のある相続対象となる資産が遺言書を残した被相続人によってすでに売却されていたような場合はどうなるでしょうか。
例えば、遺言書の中で相続人である長男に相続するように記載のあった不動産がすでにその父親によって売却されていたというケースがあります。
この場合、遺言書を書いた本人が既に該当の土地を売却していたのであれば、遺言の内容は取り消されたことになります。
土地以外の遺産について相続分に応じた遺産分割を進めていくことになります。
内容が非常に不公平な遺言書が見つかった場合
遺言書が見つかったものの、特定の相続人に遺産の大半が分与されるといった非常に不公平な内容の場合があります。
しかし、このような場合、相続人や分割の指定は本人が自由に決め、遺言書の中に記載することができますので、基本的に個人の意思が尊重されることになります。
ただし、相続人の兄弟姉妹などを除いて、法定相続人には最低限の取り分を取得できる権利となる「遺留分」があります。
この遺留分が侵害されるような相続がおこなわれた場合、その相続人には侵害する部分を取り戻すための遺留分侵害額請求権(旧・遺留分減殺請求権)という権利があります。
この遺留分侵害額請求権が行使されると、すでに財産分与を済ませた他の相続人はこれに応じる義務があります。
つまり、遺留分を侵害する遺言書の内容については、最終的には侵害された部分に限っては取り消されるという結果になります。
故人が飼っていた犬に全財産を相続させるという遺言書が見つかった場合
遺言書の中で遺産を人間ではなく、故人が生前に飼っていたペットなどに相続させるという内容の記載があるケースがあります。
この場合、ペットは財産を受け取る権利能力の無く、相続の当事者になりませんので、その遺言書は無効となります。
まとめ
今回は遺言書にまつわる具体的なトラブルの例とその対策についてご紹介しました。
ぜひ参考にしてみてください。
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