本来、相続が発生したとき、亡くなった方が遺言書など作成していない場合、相続人同士が遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどんな割合で引き継ぐのか決めることになります。
しかし、相続人であり相続する権利があるのに無視をされたり、遺産分割協議に参加させてもらえなかったとしたら、十分な遺産を受け取ることができなくなってしまうかもしれません。
このような場合、どのように対処すればよいのか、相続権を無視されたときに使える相続回復請求権についてご説明します。
相続回復請求権で相続人としての地位を回復させる
相続回復請求権とは、侵害された相続権について、財産の請求だけでなく相続人としての地位を回復させることを要求する権利のことです。
相続は包括的な承継ですが、その権利が侵されたときにも包括的に回復を求めることができます。
相続権を有している相続人以外の者が相続人であると詐称し、遺産を占有または支配している場合には、本来の相続人が侵害者に対し遺産の占有を排除し、相続権を主張して回復させるための権利です。
時効を迎える前に手続きを
相続回復請求権は、相続人、またはその法定代理人が相続権の侵害を知ったときから5年間行使しなかった場合、時効によって消滅してしまいます。
また、相続開始から20年を経過した場合も同じく消滅してしまいます。
遺産分割で無視された相続人も相続回復請求権があるので、早めに権利を行使するようにしましょう。
海外に住んでいる相続人がいる場合は?
もし相続人が海外に住んでいる場合、遺産分割協議が思うように進まなくなってしまいます。
それなら日本に住んでいる相続人だけで話し合いを行えばよいと考える方もいるようですが、海外に住んでいる相続人が遺産分割協議に参加しなくてよいわけではありません。
仮に海外にいる相続人を除いて遺産分割協議が行われても、無効の扱いとなります。
亡くなった方の遺産分割には日本の民法に従い、相続人全員が遺産分割協議に参加し、全員の印鑑証明書や住民票が必要となります。
ただ、海外に住んでいる方が相続人に含まれる場合、台湾や韓国を除き、印鑑証明書や住民票という制度がないことで困ることがあるようです。
印鑑証明書に代わる書類となるもの
海外に住んでいる相続人に他の相続人から遺産分割協議書を送り、そこに署名を行う方法で対処しましょう。
ただ署名をするだけでなく、日本領事館など在外公館で遺産分割協議書に相続人が証明したことを証明するサイン証明を発行してもらいます。
不動産登記の際には遺産分割協議書が必要となりますが、法務局もこの方法での登記申請を認めています。
住民票の代わりになるもの
在外邦人なら国内に本籍が残っていても居住する外国の住所までは記載されないので、住所を証明するため在留証明書を取得しましょう。
現在住んでいる海外の国に帰化している場合には、戸籍の代わりに相続証明書を取得することで相続人であることを証明することができます。
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