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最終更新日:2022/12/16

揉めない相続VOL31 遺産分割協議後に出てきた遺言書や新たな遺産!どうなる?

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

ようやく相続手続きが終わったと思ったら、新たな遺産や遺言書が見つかった。

こんな場合、遺産分割協議や分割した遺産はどうなるのでしょうか。

協議をやり直すのか、そもそも協議は何に基づいて決めるのか、遺言書や別の相続人が出てきたらどうなるかについて解説します。

遺産分割協議が有効な場合、やり直すことができる?

相続人全員で決めた有効な遺産分割協議は、やり直すことができるのでしょうか?

無効や取消しの原因がなければ、やり直さない

遺産分割協議は、相続人全員の自由意思による合意によって成立します。

いったん成立すれば、有効なものとなります。

効力が生じている有効な協議については、無効や取消しの原因がない限り、やり直しを主張することはできません

協議は契約とは異なります。

協議の効力が生じていれば、譲り受けた不動産の登記手続きに協力しないなどの不履行がある場合でも、解除は認められません。

不履行の場合は、調停や訴訟で実行を求めることになります。

後から遺産が出てきたら、漏れた遺産について再協議

新たな遺産が出てきた場合は、協議漏れとして扱われます。

協議を全てやり直すのではなく、漏れていた遺産についてだけ、あらためて協議をすることになります。

ただし、漏れた遺産が重要なものであれば、「錯誤」による分割協議として、無効を主張できる場合があります。

協議が無効であると認められれば、やり直すことになります。

遺産の分割は、法定か指定の相続分が前提

遺産の分割は、配偶者が2分の1、子が2分の1などと民法で規定する「法定相続分」か、亡くなった方が遺言で指定する「指定相続分」が前提となります。

分割を決める前提

遺産分割は、共同相続人の分割協議、家庭裁判所の調停または審判による方法があります。

いずれの場合でも、分割は、法定相続分または指定相続分が前提となります。

民法では、遺産の分割について、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と規定しています。

しかしながら、「一切の事情を考慮して」分割すると言っても、法定や指定の相続分を無視するとの意味ではありません。

分割の割合は目安

遺産の分割は、相続人それぞれが自由な意思で合意すれば、成立します。

どの相続人がどの遺産を譲り受けるかや、平等でなければいけないといった制約もありません。

分割は、相続分と全く同じである必要はなく、相続人が同意すれば有効な分割協議として成立します。

調停や審判の場合も同様です。

また、遺言書は分割協議より優先されますが、相続人全員の協議による合意があれば、遺言内容と異なる遺産分割をすることもできます。

ただし分割の法定や指定の相続分を知っていることが前提

遺産分割は、相続人それぞれの自由意思による合意があれば成立はしますが、そのためには、相続人全員が法定相続分や指定相続分について知っていることが前提となります。

目安となる相続分について知識があるからこそ、 遣産分割についての合意が成立すると言えます。

家庭裁判所における審判についても同様です。

遺産分割後に遺言や別の相続人を発見したがどうなるか

自筆証書遺言の場合、自分で保管していることが一般的です。

遺産分割協議が終わり遺産を分けた後で、遺言が出てきたときや、別の相続人がいることが分かったときには、遺産分割はどうなるのでしょうか。

分割での相続分が遺言と異なれば、分割は無効

分割を決めたあとで有効な遺言書を発見した場合、遺言と異なる分割を決めた分割協議や審判による分割は、無効です。

この場合は、再協議、再調停、調停や審判の無効確認手続きとなります。

遺言により包括受遺者がいることが分かった場合も同様に、無効です。

包括受遺者とは、「内縁の妻に遺産の2分の1を与える」場合のように、遺言によって遺産を割合で与えられる者のことで、相続人とほぼ同じ権利や義務が生じます。

相続人全員が参加しない分割も無効

遺産分割協議は、相続人全員の合意によって有効になります。

このため、相続人の一部が欠けた協議や、戸籍を確認した結果、相続人には該当しない者が参加した分割も、無効です。

このため、あらためて協議を行うことになります。

また、戸籍を調べることで新たな相続人がいることが分かった場合や、行方不明のまま遺産分割協議に参加できない場合も、相続人全員の合意ではないことから、分割は無効です。

なお、遺言書の発見により認知された子が発見される場合もあります。

認知があれば、相続人の数が増えることになりますが、認知による相続人の増加の場合は、価額償還のみができるという民法の規定が適用されます。

まとめ

遺産分割に際しては、協議より遺言が優先されます。

協議を行う場合、法定相続人全員が参加することが原則です。

このため、協議を始める前に、法定相続人に漏れや勘違いなどがないかを調査して、相続人を確定することが重要です。

調査では、亡くなった方が生まれた時から亡くなるまでの戸籍謄本を取得して確認します。

なお、新たな遺産が見つかった場合の再協議を回避するため、遺産分割協議書にあらかじめ分割方法を定めておく方法もあります。

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