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最終更新日:2022/12/13

揉めない相続VOL27 配偶者など特定の人に全部相続させたい!遺言を活用しよう

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

自分の死後に、配偶者など特定の人に遺産全部を相続させたい場合、遺言を活用する方法が有効です。

遺産分割協議でも、特定の人だけが財産を取得することも可能ですが、相続人全員の同意が必要です。

特定の人に相続させる遺産分割協議、遺言で特定の人に相続させるやり方や活用について解説します。

遺産分割により配偶者など特定の人に遺産を全部相続させる

法定相続人全員による遺産分割協議で合意があれば、亡くなった方の全財産を、配偶者など特定の人に相続させることもできます。

遺産分割により配偶者に遺産を全部相続させる

相続人の合意に基づく遺産分割であれば、配偶者2分の1、子ども2分の1のような法定相続分と異なる分割をすることもできます。

分割の協議では、法定相続分は、遺産を分割する際の目安として考えることができます。

相続人間の協議で、相続分と異なる分割とすることは違法でもありません。

ただし、全員が参加し、未成年者の場合は特別代理人を選定するなど、相続人それぞれの意思に基づいた協議の結果でなければなりません。

夫婦が婚姻期間中に互いの協力の下で財産を形成しているとの考え方や、同じ生計によって暮らしていた夫婦の一方が亡くなることによって、残された配偶者が生活に困窮することがないように、生活を保障するとの面から、残された配偶者に全財産を相続させるケースも見受けられます。

相続分と異なる遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書では、一般的に相続人それぞれの取得する遺産の内容や割合について記載します。

相続分と異なる分割をする場合も、協議で決めた遺産の分け方を具体的に遺産分割協議書に記載します。

必要事項に漏れがなければ、全員が署名、押印することによって、遺産分割が成立します。

特に、配偶者だけに分割するような場合は、配偶者が「被相続人の遺産をすべて取得する」や、ほかの相続人が「なんらの遺産を取得しない」といった表現とすることによって、遺産分割を成立させることができます。

配偶者が全部相続しても次は子が相続できる?

配偶者は、相続税で認められている1億6,000万円の控除などを利用することによって、ほかの相続人に比べ、有利に遺産を取得することができます。

やがて配偶者が亡くなった際には、子どもたちが相続することになるため、結果的に法定相続分で分割することと同じとの考え方もあります。

ただし、相続人である子が、必ず将来遺産を手に入れることができるかは確定したものではありません。

亡くなった方の配偶者である母親は、譲り受けた遺産全てを自由に処分することができ、再婚すれば、別の相続が発生ることもあり得ることになります。

遺言により配偶者など特定の人に遺産を全部相続させる

相続人全員の合意があれば、遺産分割でも配偶者に遺産を全部相続させることができます。

しかしながら、遺産分割協議では、亡くなった方の意思全てを反映させることは難しいと言えます。

配偶者など特定の人に財産を残したい場合は、遺言を書いておく方法が有効です。

遺言とは?

遺言では、主に自筆証書遺言、公正証書遺言が利用されています。

遺言書があれば、基本的に、遺言書の内容にしたがって遺産を分割します。

自筆証書遺言は、自筆で書き記すもので、手軽に作成できる反面、紛失や偽造、隠ぺい、遺族に気付かれないなどの不都合もあります。

公正証書遺言は、公証役場において、公証人と証人2名の立会いの下で作成します。

作成の手間や費用はかかるものの、遺言書は厳重に保管され、遺言の内容が実現される可能性が高くなります。

遺言書の書き方

遺言の表現については、相続についての遺言者の意思を明確にしておくことが大切です。

贈与と受け取られないような表現にしておくと安心です。

一般的な表現としては、「全遺産は妻〇〇に相続させる」や「遺産全てを妻◯◯の相続分とする」などとします。

「相続させる」ではなく、「与える」とした場合は、遺留分を持たない兄弟姉妹との遺産分割協議が必要になる場合もあるため、注意が必要です。

遺留分に注意

亡くなった方が自分の財産をどう処分するかは、本来なら自由に決めても良さそうに思えますが、民法では、一定の相続人に、最低限の遺産取得分を請求する「遺留分」と呼ばれる権利を与えています。

遺留分は、基本的に、法定相続人に当たる配偶者と子と親に認められ、兄弟姉妹には認められていません。

亡くなった方が、法定相続分を侵害するような遺言を残した場合、法定相続人のうち配偶者、子、親は、その侵害について請求を行うことができます。

遺言の活用

相続には、遺言相続と法定相続の2種類があります。

遺言相続は、亡くなった方が、自分の意思を遺言という形で表示し、遺産は意思表示に従って分割されます。

法定相続は、遺言がない場合に、民法のルールに従って行う相続です。

原則的に、遺言書の内容が法定相続よりも優先されます。

このため、遺言書を利用すれば、法定相続人以外に財産を残すことが可能です。

たとえば、法定相続人になることができない、内縁の妻や、長い間献身的に介護をしてくれた長男の嫁などに対しても、財産を分けることができます。

まとめ

遺言を活用することにより、配偶者など特定の人に財産を残すことができます。

亡くなった方の意思を死後に反映させることができる有効な方法で、年々利用者の数も増加しています。

ただし、法定相続分を侵害するような遺言をすれば、死後にトラブルを引き起こす原因になることもあるため、内容についての慎重な検討が望まれます。

なお、費用や時間はかかるものの、遺言は何度でも書き直すことができることを付け加えておきます。

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