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最終更新日:2022/12/14

揉めない相続VOL24 遺産分割の方法と遺産分割協議について徹底解説!

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続人と相続割合が確定したら、財産の分け方を話し合わなくてはいけません。

相続の対象となる財産は現金だけでなく、不動産や宝石など分けることのできないものもあります。

相続割合に合うように、分け方を財産ごとに決めなくてはいけないのです。

この話し合いは相続の最後のツメであり、公平に相続するための大切な作業です。

どのようにすればよいのか、遺産分割の方法と遺産分割協議について徹底解説します。

遺産分割協議とは

相続財産の分け方についての話し合いのことを、遺産分割協議といいます

相続では故人が持っていたすべての財産を相続割合に応じて相続人が承継しますが、世の中には分けることのできない財産もあります。

たとえばダイヤの指輪なら、たたき割って相続人みんなで分け合うということはできません。

だれか1人がダイヤの指輪ごと相続することになりますが、だれにするのか、相続割合を超えている場合はどうするか、問題になります。

またそもそも、ダイヤの指輪にどれほどの財産的価値があるのかも人によって評価が異なります。

都合よく割り切れる評価額かどうかもわかりません。

相続人と相続割合が確定しても、実際に相続財産を分けるのは結構難しいです。

話し合いによって妥協点を見出すしかないのが実情です。

遺産分割協議はどのように進める?

遺産分割協議は、原則すべての相続人が集まって行います

出席できない場合は弁護士など信頼できる代理人をたてることも可能です。

まずは相続人同士で、財産の分け方を話し合います。

ダイヤの指輪はAに、車はBに、有価証券は売却して分配、家は妻に……という具合に、相続割合と釣り合うように相続財産を話し合っていきます。

相続財産が現金のみであれば、相続割合に応じて分ければよいので簡単です。

しかし、分けることのできない物の場合、きっちりの相続割合通りに分けられるケースは少ないです。

金銭に換算するとちょっと少なかったり多かったりしますが、物の相続には形見分けの意味もあります。

また民法も、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めています。

相続割合に囚われすぎずに、実情に沿った分配になるよう話し合うことが大切です。

協議は不成立の場合は家庭裁判所で決まる

話し合いがまとまらず協議が不成立に終わった場合には、家庭裁判所の調停と審判を受けることになります

審判の場合でも先ほどの民法の規定が基準とされており、実情に合った分配が行われます。

遺産分割のやり方

遺産分割には「どの財産を分けるか」という分割の範囲の問題と、「どうやって分けるか」という分割の方法の問題があります。

それぞれいくつか方法があり、相続人の事情に合わせた方法を選ぶことができます。

分割の範囲:全部分割・一部分割

まずはどの財産を分割対象とするのか、分割の範囲を決める必要があります。

相続は故人のすべての財産が対象ですから、基本的には全部が範囲です。

遺産のすべてを一度に分割して分ける方法を全部分割といいます

もっとも一般的な方法であり、話し合いや手続きが一度で済みます。

しかし、そうはいかないケースも珍しくありません。

故人の借金の返済や相続税の支払い期日が迫っているのに遺産分割協議が上手くいっていない場合、とりあえず一部の財産を債務の支払いにあてることがあります

この方法を一部分割といい、残りの財産分配を話し合うための時間かせぎなどに用いられます。

法律上、一部分割が有効かどうかについては争いがありますが、実務上はよく行われています。

ただし相続人全員の同意が必要です。

分割の方法:現物分割・換価分割・代償分割

分ける財産の範囲が決まったら、具体的にどのように分けるかを決めなくてはいけません。

現物分割

もっとも基本的なのは故人の財産をそのままの形で分割する方法で、これを現物分割といいます

ダイヤの指輪はAに、車はBに、土地はCとDに……という風に、資産をそのままの形で承継するのです。

遺産分割の方法としては原始的ですが手続きが簡単で、それぞれの取り分も明瞭です。

しかし現物分割は、相続割合ぴったりになりにくいというデメリットもあります。

AとBの相続割合が同じ場合に、ダイヤの指輪と車の金銭価値が同等になるとは限りません。

現物分割では多少の不公平が生じるのはやむを得ず、当人の同意があれば適法と考えられています。

誤差が多額になる場合には、金銭による補填などが必要なこともあります。

換価分割

換価分割とは、故人の財産を売却して金銭に換え、相続割合に応じて現金で分割する方法です

現物分割が不可能な財産の場合や誤差が多額になる場合などに用いられます。

実例としては、田舎の土地や家屋など管理が困難な財産を換価するケースや、相続人同士が揉めに揉めた末に妥協案として換価されるケースが多いです。

換価分割では相続割合とほぼ等しい分割割合になります。

しかし、財産自体は第三者の手に渡ってしまうため、先祖代々伝わってきた物などの場合には慎重な検討が必要です。

代償分割

代償分割とは、相続人の1人または複数人が財産すべてを現物分割し、その取得者が自己の相続割合を超える部分についてほかの相続人に代償する方法です。

代償は金銭支払いが基本ですが、故人の債務の負担や分割支払いであてる場合もあります。

実例としては、農地や商店などあまり細分化しない方がいい財産について、代償分割を行う場合が多いです。

家庭裁判所の審判で代償分割を行う場合、債務負担による代償は特別な場合のみに限られます。

遺産分割協議で相続人が同意した場合は、代償の方法に制限はありません。

遺産分割はよく話し合うことが大切

遺産分割は一度こじれると身内同士の争いになることがあり、双方に負担です。

財産をめぐる争いですから正直醜いですし、精神的にかなり疲弊します。

遺産分割はとにかくよく話し合うことが大切です。

遺産分割に基準はない

そもそもなぜ遺産分割で揉めるケースが多いかというと、遺産分割には基準がないからです。

相続割合や相続人は法律にのっとって定めることができますが、具体的な財産の分け方は法律に定められていません

一応、さきほどご紹介した「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」という民法の規定はありますが、とても曖昧です。

たとえば「一番いい物は長男に」「宝石などの装飾品は女性に」などの具体的な基準があればだれがなにを相続するのかの目安にできますが、そのような規定はありません。

そのため価値の高い財産の取り合いや管理の面倒な財産の譲り合いになり、トラブルに発展することもあります。

どうすれば上手く話し合うことができる?

一番いい物が欲しいという気持ちは、人として当然のことです。

しかし遺産分割では、それぞれがお互いの事情を考慮することが大切です。

お互いの事情や財産の性質をよく理解して思いやると、上手く話し合うことができます。

たとえば農地を相続する場合、相続によって田畑を細分化するのは適切ではありません。

農地は広いほど生産力が上がるため、小さな田畑に分けてしまうと経営が成り立たなくなります。

また田植え機などの農機具も相続財産のひとつですが、生業に使う機材をほかの相続人が相続してしまうと、作業がやりにくくなります。

このような場合には跡継ぎが財産をすべて相続した上で代償分割を行うのが、もっとも事情にかなった方法となります。

この傾向は農家だけでなく林業や商業の場合も同じです。

小さな山は生産性が悪いですし、相続によって小型店が乱立すると競争が激化して共倒れの危険が増します。

また、たとえば夫の死後妻がひとりで済んでいる家を、遠くに住んでいる息子が強硬に相続したがったり換価分割を求めたりするのは少し酷です。

家なしでは相続割合に届かないとしても、遺族の生活の安定を損なうような遺産分割は適切ではありません。

遺産分割の確定

遺産分割協議の成立あるいは家庭裁判所での調停や審判が決すると、遺産の分割が確定します

遺産分割は相続の開始のとき、つまり故人が亡くなったときにさかのぼって効力が生じます。

相続自体は死亡時に自動的に生じますが、分割が確定するまではまだ分割がなされておらず、すべての相続人が共有しているという状態だったのです。

確定した分割を相続の開始のときにさかのぼらせることで、この共有の時代をなかったことにし所有権の安定を図っています。

後だしはできない

分割が確定した後は、相続分に影響するような事情をもちだすことはできません

車を相続して息子にあげると約束していたなどという個人的な事情はもちろん、進学費用などの特別受益分や介護の寄与分なども確定後は問題にできません。

ただし善意の第三者については例外です

たとえば相続人の1人がまだ分割確定前の共有の状態にもかかわらず、故人の指輪を自分の財産だとして事情を知らない第三者に売ったとします。

第三者はなにも知らずに普通に指輪を買っただけですから、その人に対してまで共有の時代をなかったことにするのは不当です。

善意で譲り受けた人の権利を害することはできず、指輪は第三者の物になります。

分割確定後の問題

相続は分割の確定によって終結するため、基本的にはその後の変更はありません。

しかし分割確定後に初めて生じる問題もあり、その場合は対応が必要です。

分割確定後に子どもの存在が発覚した場合

相続において子どもは原則必ず相続人になりますが、なかには故人の死後に遺言や裁判によって認知される子どももいます。

認知された子どもは非嫡出子として嫡出子と同じ相続権をもちますが、遺言の発見が遅れた場合など、遺産分割が確定した後に子どもの存在が明らかになるケースもあります。

このような場合は遺産分割をやり直すのではなく、認知された子どもが相続割合に応じた金銭の支払いを求めることになります

分割確定後に財産の瑕疵が見つかった場合

分割確定度に相続した車に致命的な故障が見つかった場合などには、相続人同士が責任を負います

たまたま運悪く瑕疵のある財産にあたってしまった人にすべての責任を押し付けるのは不公平なため、相続人全員がその責を負うことにしているのです。

債権を相続した人が取り立てできなかった場合も同様に、相続人同士がその責を負います。

まとめ

遺産分割協議は基本的には話し合いで、不成立の場合には家庭裁判所で決まります。

相続割合に応じて遺産を分配しますが、多少の不公平や誤差は仕方ありません。

相続人同士で上手に話し合って、仲良く遺産を譲り受けましょう。

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