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最終更新日:2022/12/13

揉めない相続VOL2 別居中は?再婚したら?あらゆるケースでの「配偶者」の相続

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

現在の民法では、配偶者は相続人になります。

しかし社会の発展にともなって、夫婦の形も多様化しています。

従来の法律婚の形をとらないカップルも多く、そのような場合には「配偶者とはなんなのか」が問題になります。

また、別居中の夫婦や再婚した場合に相続はどうなるのでしょうか?

相続における「配偶者」について、あらゆるケースを想定して解説します。

配偶者とは

配偶者とは、夫もしくは妻のことです。夫婦お互いが相互に「配偶者」にあたります

現在の民法では、婚姻届を提出し受理されたカップルが配偶者となります。

これを法律婚といい、さまざまな議論がありますが、現行法上は婚姻届を提出してない事実婚などは法律上の配偶者にはなれません。

また、これも議論がなされていますが、現在は男女のカップルのみが配偶者と認められています。

同性同士の結婚は日本ではまだ認められていないためです。

事実婚や同性婚を法的に認めるかどうかは今後も議論が続き、法律婚と異性婚以外の配偶者が法的に認められる日が来るかもしれません。

夫婦や家族の在り方は時代によってかわります。

相続は夫婦と家族の在り方に大きく左右されるため、相続時には最新の民法を確認しましょう。

相続における配偶者とは

相続において、配偶者は必ず相続人となります。

子どもがいてもいなくても、両親が健在でも他界していても、関係ありません。

配偶者は血縁のある子や両親よりも優先して相続人になれる立場であり、民法が法律によって結ばれた姻族を重視していることがわかります。

重視しているとはいえ、配偶者は法律による人工的な家族です。

血縁などの自然なつながりではなく、離婚届を出せば関係を解消させることができます。

そのため、相続人になるには相続開始時点で配偶者である必要があります

自然なつながりではない配偶者は、相続人となるかどうかについて独特の問題を持ちます。

  • ・籍を入れているかどうか(法律婚がどうか)
  • ・被相続人死亡後の手続きによる入籍
  • ・失踪宣告後に再婚したが、失踪者が生還した場合
  • ・重婚
  • ・内縁関係
  • ・離婚手続き中
  • ・婚姻や離婚の取り消しまたは無効

これらの場合、配偶者が相続人にあるたるかどうか、法律にのっとって個別に検討する必要があります。

配偶者の法定相続分

配偶者の法定相続分とは、法律上定められた相続割合のことです。

必ずこの通りにしなくてはいけないわけではなく、遺言や出費した介護費用などの諸事情によって割合を変更することができます。

配偶者の法定相続分は、他の相続人が誰かによって違います。

  • ・配偶者と子どもが相続人の場合…1/2
  • ・配偶者と直系尊属(親など)が相続人の場合…2/3
  • ・配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合…3/4

このように、配偶者は相続割合においても法律上重視されています

これは、配偶者は被相続人と一生をともにして苦楽を分け合ってきた存在であり、現実的には被相続人死後の配偶者の生活の安定を図るためです。

配偶者に法定相続分以上残したい場合は?

法定相続分以上の財産を配偶者に残したい場合は、遺言書を作成しておくのがおすすめです。

遺族が配偶者の今後の生活を考えて多めに相続させてくれる場合もありますが、遺言書がない場合には法定相続分どおりに相続が決まるケースが多いです。

なお、配偶者が被相続人より先に死亡していた場合には、被相続人の子どもや孫など残された血族で相続することになります。

相続制度の変革

かつての法律では、配偶者の相続権は定められていませんでした。

以前の日本は家制度や家長制度がとられており、相続は血族の問題であったためです。

戦後の新憲法制定に合わせて民法も改正され、配偶者の相続権が法律上発生しました

当初は1/3の相続割合でしたが、時代や家族観の変化とともに配偶者の役割も大きくなり、現在の1/2となりました。

相続人になれる配偶者となれない配偶者

配偶者は通常は当然に相続人になりますが、配偶者の立場なのに相続人にはならない場合があります。

ケースごとに詳しくみていきましょう。

婚姻届を出していないケース

婚約中や約束の入籍日を待っている状態のカップルはまだ配偶者とはいえず、相続人にはなりません

法律婚制度をとっている日本においては、婚姻届によって初めて配偶者となれるためです。

新婚旅行に行ったとしても結納を交わしていたとしても子どもがいたとしても、法律上は配偶者ではありません。

極端な話、婚姻届けを出しに行く途中の事故で不幸にもパートナーが死亡してしまったとしても、配偶者ではないため相続人にはなれません。

あまりに形式的な取り扱いですが、婚姻届が出ていない以上は結婚の効力は生じておらず、配偶者としての権利は発生しないのです。

相続開始時にすでに別居しているケース

相続開始時点つまり被相続人が死亡した時点ですでに別居していたとしても、配偶者の立場に影響はありません

別居の配偶者は相続人になります

法律上、夫婦として認められるかどうかは婚姻届が出されているかどうかです。

同居か別居かは相続に影響せず、一度婚姻届を出したカップルは離婚するまで配偶者です。

離婚がどの時点で認められるかは、離婚の仕方によって異なります。

協議離婚の場合は離婚届の提出時点で、裁判で離婚する場合には離婚判決の確定時点で離婚となり、配偶者ではなくなります。

そのとき以降に相続が発生した場合はただの元夫婦であり、お互いに相続人にはなりません。

このように、離婚していない限り夫婦は配偶者であり続けます。

しかし離婚の協議中や別居しているケースでは、遺言によって配偶者の相続分を減らす人もいます。

配偶者が被相続人の死亡前から不倫しているケース

不倫の場合も別居と同じで、配偶者の立場に影響はありません。

不倫していても配偶者は配偶者であり、相続人になります

たしかに、不倫は法律上の離婚原因です。

そのため、相続開始前に離婚が成立していた場合は、相続人にはなりません。

しかし、離婚届の提出もしくは離婚裁判の確定判決前に被相続人が死亡してしまった場合には、相続開始時点にはまだ夫婦であり、配偶者は相続人となります。

被相続人が不倫に気付いているかどうかや裁判中がどうかは関係なく、あくまでも離婚が成立しているかどうかが鍵となります。

偽装離婚のケース

世の中には離婚を偽装する人がいます。

サラ金の取り立てから逃げるためや母子家庭支援の補助金が欲しいからなど理由はさまざまですが、離婚届を提出して法的には離婚しながらも事実上は夫婦として暮らす人がいるのです。

理由はどうあれ、夫婦が納得して出した離婚届は有効と考えられており、離婚は成立します

相続においても離婚した元夫婦として扱われ、配偶者や相続人にはなりません。

ただし、詐欺や脅迫による離婚は取り消しが可能です。

たとえば、不倫している夫が勝手に離婚届に妻の名前を書いて提出した場合でも、法律上は離婚が成立してしまいます。

また、暴力などで脅されて無理やり離婚届に判を押さされたとしても、離婚は有効です。

このような場合には離婚の取り消しを求めて家庭裁判所に調停を申し立てることになり、認められれば相続開始時に配偶者であったことが証明され、相続人になることができます。

相続した後の事情は相続に影響する?

相続というのは、財産を分けて「ハイ、おしまい」ではなく、結構手間がかかります。

相続人を確認して相続分を話し合い、その後の遺産分割協議書の作成や登記手続きなど、すべての手続きが終わるのに半年以上かかるケースも珍しくありません。

そのため、相続手続きに手間取っている間に再婚することも考えられます。

相続後に再婚したケース

相続が開始した後に配偶者が再婚した場合でも、相続には影響ありません

相続開始時点で配偶者だった人は相続人であり、相続した財産は相続した時点で個人財産になります。

一度自分の財産になったものは、あとから再婚したとしても失うことはありません。

再婚した後に残りの相続手続きをするのはなんだか気まずいですが、代理人をたてるなどして必要な手続きを済ませましょう。

相続後に配偶者が恋愛をはじめたケース

「相続開始時点に配偶者であれば相続人であり、相続した財産は個人財産になる」という大原則は、この場合も同じです。

相続後に配偶者が誰とどのような形で付き合おうと、相続に影響はありません

恋人ができて遺産をすべて貢いだとしても、相続権や相続財産は変化しません。

そもそも、夫婦どちらかが死亡したあとであれば配偶者は自由に恋愛できます。不倫にはあたりません。

再婚も男性ならすぐ、女性なら100日後以降に可能です。

相続後の配偶者の恋愛事情によって、相続が影響を受けることはありません。

未成年の子どもがいる場合は注意が必要

配偶者に未成年の子どもがいた場合は注意が必要です。

未成年の子どもも配偶者と同じく法的な相続権を持つ相続人ですが、相続財産の管理や相続手続きを1人で行うことはできません。

そのため、子どもが未成年である場合には、親である配偶者が法定代理人として子どもの相続財産の管理権を持ちます。

配偶者は子どもの相続に関する手続きを行い、財産を適切に管理しなくてはいけません

たとえば配偶者が恋人の言いなりになって子どもの相続割合を著しく減らそうとしたり、子どもが相続すべき財産を横領したりした場合には、親権の濫用となります。

子どもの相続財産の管理が不当な場合や親権濫用と認められた場合には、家庭裁判所によって親権喪失宣言や管理権喪失宣言がなされます。

これらの宣言によって配偶者は子どもの相続財産の管理権を失いますが、配偶者自身の相続財産に影響はありません。

まとめ

夫もしくは妻は配偶者と呼ばれ、相続開始時点で夫婦であったなら必ず相続人になります。

離婚協議中であった場合や相続後に再婚した場合でも、相続時に夫婦であったなら、相続権が発生します。

しかし、たとえば借金取りから逃れるための偽装離婚であったとしても、離婚届が出されていれば配偶者は相続人になりません。

また、婚姻届を提出していない事実婚や内縁関係のカップルは、配偶者にはあたらず相続権はありません。

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