目次
家や土地といった不動産は相続の対象になることが多いですが、宝石などの動産にくらべてなにかとややこしく、問題が生じることがあります。
ローンをまだ返しきっていない不動産があることも珍しくなく、残りのローンをどうするのかにも注意が必要です。
評価の仕方やローン返済中の場合など、不動産の相続について気を付けるべき点を詳しく解説します。
不動産の相続
不動産とは土地と建物のことで、どれほど古くても狭くてもある程度の財産価値がみこめるため、高い故人が所有していた不動産は相続の対象になります。
不動産の所有者(名義人)や面積などは法務局の登記簿に記録されており、だれの持ち物なのかなどをだれもが明確に確認できる状態で管理されています。
相続は故人が亡くなった時に開始し、すべての相続財産は一度相続人全員の共有状態になります。
これを遺産分割前の共有といい、もちろん不動産も共有状態になります。
複数の不動産がある場合も同じで、すべての不動産を相続人全員が共有します。
兄弟で4つの不動産を相続する場合は、ひとまず4つすべての不動産が兄弟の共有状態になります。
とりあえず2つずつ所有するわけではなく、4つの不動産それぞれを半分ずつ所有する形になることに注意が必要です。
自分ひとりの物にできるのは、相続人とそれぞれの相続割合が決まって遺産分割協議が確定した後に必要な手続きをとってから、となります。
遺産分割前の共有
不動産の所有者に変更があった場合には、登記簿の記載も変更しなくてはいけません。
遺産分割前の共有状態のときにも、相続を原因とする所有権移転の共有登記を行うことができます。
共有登記をすることで相続人の共有状態にあることが対外的にも明らかになり、トラブルを防ぐことができます。
共有登記の申請は、相続人のうちのだれか1人でも単独で行うことができます。
ほかの相続人の同意などは必要ありません。
登記は共有状態にあることを明確にするだけの保存的な手続きであり、所有権そのものに影響はないためです。
また相続人にお金を貸している人など、相続人の債権者も共有登記を申請することができます。
これを債権者代位権といい、債権の回収を確実にするために認められています。
お金を貸している相手が不動産を所有していることを明確にしておくことで、借金の返済をうけやすくなるのです。
なお、共有登記はしなくてもかまいません。
共有状態は一時的なもののためトラブルが起こることも考えにくく、手間も費用もかかります。
またこの後ご説明しますが、法律上、この共有状態はあとからなかったことになります。
そのため共有登記はせず、遺産分割が確定した後にまとめて登記する場合が多いです。
遺産分割確定後
相続人とそれぞれの相続割合が決まって遺産分割協議が確定したら、それに従って不動産の登記をします。
遺産の土地がひとつしかない場合に共有のまま相続が確定することはありますが、複数の不動産をそのまま相続人全員の共有にすることはまずありません。
相続割合に応じて分配し、各不動産の所有権を相続人それぞれに移転しなおします。
遺産分割の効力は相続開始時点にさかのぼるため、共有状態の時代がなかったことになり、最初からそれぞれの相続人が所有していたことになります。
ただしこの効力は善意の第三者の権利を害することはできないため、分割確定前に第三者に不動産を譲り渡していた場合には、この点を考慮した分割をしなくてはいけません。
遺産分割確定後の所有権の移転については、必ず登記が必要です。
共有状態とは異なり、トラブルの可能性があるためです。
対外的にも確実に自分の財産とするためにも、遺産分割確定後の所有権移転登記手続きは必ず行いましょう。
不動産はどうやって評価する?
不動産は財産価値が高く、相続財産の中でも大きな割合を占めます。
そのため、土地や家の金銭的な評価は相続においてとても大切です。
評価額によって相続財産の全体額が大きく変わりますし、おのずと各々の取り分も変動します。
不動産の評価方法 原価法、比較法、収益法
不動産の評価方法には、原価法・比較法・収益法の3種類があります。
原価法
原価法とは、不動産を再調達する場合にどのくらいかかるかという原価をもとに不動産の価格を評価する方法です。
同じ家を建てるのに必要な金額を、その不動産の価値とします。
家などの建物は再調達費用の把握が可能ですが、既成市街地などの土地は再調達費用の把握が困難であり、原価法は適切ではありません。
比較法
比較法とは取引事例比較法ともよばれ、その不動産と似た条件の不動産の取引事例を参考に評価額を導き出す方法です。
現在の日本では、この比較法が中古住宅の評価方法として一般的に利用されています。
住宅地など似た取引事例のある不動産では有効な方法ですが、感覚的な部分もあり、人によって評価にブレが生じることもあります。
収益法
収益法とは収益還元法ともよばれ、その不動産が将来生み出すと予想される収益の合計を不動産の評価額とする方法です。
賃貸など事業に用いる不動産の評価方法として合理的ですが、正確な収益の予想が求められます。
主に比較法で評価する
家庭裁判所では、主に比較法を用いて不動産の評価を行っています。
「東京都地価図都市計画図」「大阪府地価格地点図」を参考に、さまざまな比較を加えて評価しているようです。
相続人の話し合いによって遺産分割を決める場合には、不動産鑑定士に鑑定を依頼するのがおすすめです。
不動産鑑定士は不動産評価のプロであり、素早く正確な評価額を算出してくれます。
プロが導き出した数字に文句をいう人は少ないため、相続人同士の争いを防ぐこともできます。
多少依頼料がかかりますが、遺産分割もスムーズにすすめるためには必要な経費です。
また、税務署の路線価格や固定資産税の評価額をそのまま不動産の評価額とすることも多いです。
これらの価格は比較的正確なため、実務でもよく利用されています。
評価額に厳密な正確さを求めないのであれば、これらを使うのが簡単です。
不動産の評価額は相続において重要なポイントです。
どの方法を用いるにしても、相続人全員が納得できるように努めましょう。
ローン返済中の不動産
不動産は大きな買い物ですから、ローンを組んで買う場合が多いです。
そしてそのローンが相続時に残っていることも多くあります。
ローンは借金と同様に負債であり、マイナスの遺産です。
相続ではプラスの遺産もマイナスの遺産も同じように対象になるため、相続人はローンも相続することになります。
通常、ローンを返済中の不動産には抵当権が設定され、登記簿に記載されます。
相続人は登記簿を確認することで、ローンの有無を知ることができます。
登記に記載がない場合も、取引している銀行などにローンの存否を確認しておきましょう。
ローンがあまりに多額の場合には、ローンを相続しない相続方法もあります。
これらの方法には時間制限があるため、相続が開始したらすぐにローンの存在を調べるのがおすすめです。
残ったローンはだれが負担するの?
ローンのような金銭債務は、相続によって当然にすべての相続人が法定相続分に応じて引き継ぐことになると考えられています。
たとえば兄弟2人で相続する場合に500万円のローンがあるケースでは、兄弟で250万円ずつローンを負担することになります。
ローンなどの金銭債務は遺言に記載していたとしても、任意での遺産分割の対象にはなりません。
遺言に「兄には家もローンも全部相続させる」を書いてあってとしても、兄がすべてのローンを背負うことにはなりません。
債権者との関係においては、法定相続分どおりに兄と弟が250万円ずつ債務を承継すると解されています。
また金銭債務は、相続人全員が同意したとしても法定相続分と異なる分割ができず、その分割は債権者に対抗することができません。
たとえばローンのうち300万円は兄が、200万円は弟が相続すると兄弟で同意していても、債権者には関係ありません。
債権者が兄と弟に半分ずつ支払いを求めた場合、弟は拒むことができないのです。
相続割合と異なる債務の分割を認めてしまうと、マイナスの債務だけを資力のない相続人にすべて相続させ、プラスの財産をほかの相続人で分割して債務の弁済からも逃れるというケースが考えられるためです。
債務は相続人全員の責任で弁済すべきものであり、相続人全員が負担を負わざるを得ないものです。
ただし、実際の相続では、不動産を取得した相続人がその不動産のローンも合わせて引き受けることがほとんどです。
自分には所有権のない家のローンを負担させられるのは少し違和感がありますし、債権者としても与信上好ましくありません。
そこでこのような場合は免責的債務引受手続きをとり、ほかの相続人の債務弁済義務を免責することができます。
さらに、実際にローンの返済が滞った場合には、ローンに伴って設定された抵当権によって弁済されるのが通常です。
故人の生命保険によって返済されることもあります。
ほかの相続人に及ぶ影響は少ないケースが多いです。
まとめ
不動産を相続する場合、一度相続人全員の共有状態になります。
相続人単独の財産になるのは、遺産分割が確定した後で各々に分割され、さらに登記手続きを終えてからです。
遺産分割協議が確定すると、共有時代はなかったことになります。
しかし善意の第三者には対抗できないため、共有時代の売買などを考慮して分割しなくてはいけません。
相続において、不動産の評価額は重要なポイントです。
比較法や固定資産全の評価額が用いられることが多いですが、不動産鑑定士に依頼するのが無難です。
ローンも相続の対象であり、相続人全員が法定相続分に応じて負担します。
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