目次
相続において相続人の確認とともに重要なのが、すべての相続財産の内容について調査することです。
相続財産はプラスの財産だけでなく、マイナスのものもありますので十分に注意が必要です。
相続財産の概要と調査方法についてご紹介していきます。
相続財産は2種類あることに注意
2種類の相続財産と非課税財産
冒頭でお伝えしたように相続財産には2種類あり、現預金や不動産などの「プラスの財産」の他にローンの残債や未払いの税金など「マイナスの財産」があります。
また、これらの他にも相続税の対象とならない「非課税財産」という分け方も可能です。
この中で特にマイナスの財産について注意が必要となります。
というのも相続手続きが全て完了し、相続税も納税したあとで故人が残したローンの残債を知らせる通知が故人の実家宛てに届いてトラブルになるケースがあるからです。
いったん相続を承認すると後からローンの残債などのマイナスの財産があることを知っても撤回することはできません。
したがって、くれぐれも相続財産の調査はしっかりと行う必要があります。
マイナスの財産がある場合の対策
マイナスの財産があった場合の対策としては、「限定承認」と「相続放棄」を選択することが考えられます。
限定承認とは、相続で得る財産の範囲内で弁済する責任を負うものとする相続の承認のことです。
つまり、保証債務などのマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、形の上では両方とも相続することになりますが、実質的には何も負担しないことになります。
また、相続放棄は被相続人のプラスの財産やマイナスの財産を含めた全財産の相続を放棄するというものです。
相続放棄については、自己のために相続開始があったことを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申述を行なえば相続人が単独で手続きすることができます。
一方の限定承認については、相続人全員の同意が必要になります。
相続財産の具体例
既にお伝えしたように相続財産の種類としてプラスの財産とマイナスの財産があることがわかりました。
ここでそれぞれの財産について具体例をご紹介していきます。
プラスの財産の例
- ・現金や預金など
タンスの中にある現金から被相続人名義となる普通預金・定期預金・外貨預金などについてはプラスの財産となります。
また、現金や預金と性格が似ているものに仮想通貨や電子マネーがあります。
ビットコインなどの仮想通貨やスマホにチャージされた未使用の電子マネーも現金や預金と同じようにプラスの財産として課税対象となります。
- ・株式や金融商品
株や小切手、手形などの有価証券もプラスの財産として課税対象です。
株式については上場株と未公開株では評価方法が異なりますので注意が必要です。
また、海外で運用していた金融商品なども一定の非居住者要件を満たしていなければ相続財産として課税の対象になります。
- ・不動産
被相続人が所有していた不動産は自宅に限らず、別荘、投資用のマンションや駐車場も対象になります。
家族に内緒で所有していることもありますので念入りに調査しましょう。
- ・貴金属や自動車、ゴルフ会員権など
資産価値の高い貴金属や自動車などの動産や市場換金性の高いゴルフ会員権もプラスの相続財産となります。
その他にも特許権や意匠権も対象になります。
- ・みなし相続財産や贈与財産
死亡保険金や死亡退職金など被相続人の死亡によって発生する金銭受給権がありますが、これらみなし相続財産と呼ばれるものもプラスの財産として課税対象になります。
ただし、死亡退職金については、被相続人の死亡から3年以内に支給されるものに限られます。
マイナスの財産の例
- ・ローンの残債や未払い税金
住宅ローンやカードローン、キャッシングの残債といった被相続人の借金はマイナスの財産となります。
また、所得税や住民税、固定資産税などの税金の未払い分についてもマイナスの財産です。
重加算税など税務上のペナルティはマイナスの財産の対象にはならず、納税義務が消えません。
- ・葬儀費用
火葬や埋葬、通夜、告別式など葬儀に関する費用はマイナスの財産になります。
なお、お墓については被相続人の死亡前に購入していた場合は非課税財産となりますが、被相続人の死亡時に購入した場合、非課税扱いにならない点に注意しましょう。
非課税財産の例
- ・祭祀関連
過度に高額なものなどを除いて、お墓や仏壇などの祭祀財産は非課税財産として扱われ、相続税の課税対象外となります。 - ・死亡保険金や死亡退職金のうちの非課税枠
被相続人に掛けられた死亡保険金や死亡退職金のうち、「500万円×法定相続人の人数」の範囲内の金額については非課税となります。
相続財産を調べる方法とは?
相続税を算定するためには正しい相続財産の内容を調べる必要があります。
相続財産を調べる方法ですが、財産にはプラスの財産もあればマイナスの財産もあり、その内容によってアプローチは異なります。
不動産
不動産については、まず権利証や固定資産税の課税通知書などの有無から調べます。
その他の方法としては、その不動産の所在地を管轄する市区町村あるいは法務局に訪問して調べることができます。
市区町村では固定資産税を徴収するために不動産の所有者名義ごとに名寄帳を管理しており、その情報から被相続人の不動産に関する情報が入手できます。
また、法務局でも登記事項の確認がとれますので窓口でたずねてみましょう。
預金
預金については、通帳やキャッシュカード、入出金明細書、さらに金融機関からのお知らせなどから情報を把握し、該当の金融機関へ調査します。
株式や投資信託などの金融商品については、証券会社から届く運用報告書や配当金の支払通知書といった郵便物がないかを確認します。
ローンの残債
マイナスの財産であるローンの残債については以下に挙げる3つの信用情報機関に照会して調べることができます。
借入先となる金融機関が3つのうちの一つだけにしか加盟・登録していない場合もありますので、照会する際には念のため3ヵ所とも情報請求したほうが確実です。
- ・株式会社日本信用情報機構(JICC)
- ・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- ・全国銀行個人信用情報センター(KSC、一般社団法人全国銀行協会(JBA)運営)
まとめ
今回の記事では、相続財産の概要と調べ方についてお伝えしてきました。
特にマイナスの財産についてはくれぐれもよく注意して調べるようにしましょう。
より確実に財産調査を行いたい場合、税理士などの専門家に相談することも検討してみてください。
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