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最終更新日:2022/12/15

揉めない相続VOL10 相続人や相続分に関するトラブル10選と対策

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続人という言葉そのものは知っているという方が大半と考えられます。

しかし、法律上はどのような人が相続人であるのかということについて正しく答えらえる人は少ないかもしれません。

今回は、相続トラブルを回避するために知っておきたい相続人や相続分についてご紹介します。

相続人とは何なのか、誰がどれくらいの遺産を引き継ぐことができるのかなど、確認していきましょう。

相続人の要件について

相続人というと、ただ漠然と亡くなった方の財産を引き継ぐ人というイメージをお持ちの方も多いでしょう。

親戚だったら遺産がもらえると思っていませんか。

現在は身近な親族がいないという人も、探せば遠い親戚は必ずいます。

民法では、親族の中でも相続人としての権利を持っている人について、一定の範囲を設け、制限をしています。

具体的には、民法の中でも相続法の中に記載があります。

「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条【子及びその代襲者等の相続権】又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。」(民法890条)とあるように、配偶者は必ず相続人になります。

次に、「被相続人の子は、相続人となる」(民法887条)とあるように、子も相続人となります。

それでは、配偶者も子もない場合はどうなるのでしょうか。

「次に掲げる者は、第887条【子及びその代襲者等の相続権】の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。二 被相続人の兄弟姉妹」(民法889条)という規定があるので、直系尊属と兄弟姉妹が財産を引き継ぐことになります。

まとめると、被相続人(亡くなった人)に配偶者がある場合、配偶者と子が相続人となります。

子がいる場合で、子のほうが先に亡くなっている場合は、子の子(孫)や、さらにその子(ひ孫)が相続人になります。

子がいない場合は、配偶者と第二順位の直系尊属(被相続人の父母)が相続人となります。

子も直系尊属もないという場合は、兄弟姉妹、兄弟姉妹も亡くなっている場合は甥や姪が相続人となります。

まとめると、被相続人から見て、尊属であれば父母、ひ孫、甥や姪までは相続人になり得ると考えておくといいでしょう。

さて、このように法律では相続人になる人の要件が決まっているのですが、現実にはそう簡単に物事は進みません。

というのも、妻と一言で言っても前妻と後妻がいたり、離婚や非嫡出子などが絡んでいたりするためです。

トラブルを引き起こしがちな複雑な相続の場合について、どうなるのか検討していきましょう。

離婚した元配偶者の子が相続をしたい

こちらも、複数回結婚をしている人にありがちなトラブルです。

離婚すると、相続権はどうなるのでしょうか。

まず、離婚すると配偶者は配偶者としての地位を失うので、配偶者としての相続権は無くなります。

ところが、離婚した先妻の子どもはどうなるのでしょうか。

親がたとえ離婚したとしても、子どもと親の血縁関係は変わりません。

あくまでも離婚は当事者間の問題です。

離婚して、先妻の子の名字が変わっている場合でも、離婚した元親(父母)の相続人になります。

先妻の子の相続権がない場合

まず、故人が結婚を複数回していた場合についてです。

先妻の子と後妻がいたとします。

後妻は、現在の配偶者であるので、その夫が亡くなったときは相続人になります。

夫が亡くなった場合、先妻の子も前の婚姻関係の中で誕生した子であるので、相続人になります。

ところで、後妻には子どもがいないとします。

後妻が亡くなったときは、先妻の子が後妻の財産の相続人になるのでしょうか。

後妻にとって、先妻の子はあくまでも先妻の子であり、養子縁組をしていない限り先妻の子とは法律上の関係がありません。

先妻の子は、後妻が亡くなったとき、後妻の財産を相続することは通常できません。

通常と述べましたが、通常とは養子縁組をしていない場合です。

もし、後妻と先妻の子どもが養子縁組をしている場合は、先妻の子であっても相続人になります。

先妻の子が、父の再婚で後妻と暮らすようになったとき、父が亡くなったら先妻の子と後妻が相続人になります。

ただし、父が亡くなって後妻がすべてを相続した場合で、養子縁組をしないまま後妻が亡くなったとすれば、先妻の子は後妻についての相続人ではないので、遺産をもらうことができません。

このようなケースに備えるためには、子どもを後妻の養子にしておくことです。

ちなみに、養子は実の親と養親の、両方について相続人になります。

内縁の妻あるいは夫が遺産分割を受けたい

内縁の妻や夫が遺産分割を受けたい場合はどうすればいいのでしょうか。

内縁の妻、内縁の夫という表現は、要するに法律上の婚姻関係にない男女ということです。

つまり、関係のない人から見たときに戸籍謄本にも載っていないので関係がわからないということになります。

法律上の婚姻関係にないのであれば、配偶者とは言えないので、通常は相続権がないことになります。

ただし、法律では特別の規定があり、特別縁故者という制度があります。

誰も相続人がいない場合に、特別に懇意にしていた人について遺産の分与を認めようという制度です。

注意したい点として、他に相続人がいなかった場合についてというところです。

他に相続人がいれば、その人たちが優先的に財産を受け取りますので、特別縁故者として財産をもらうことはできません。

愛人の子で認知されていない人が遺産分割に参加したい

愛人の子で、認知されていない人が、実の父親の遺産分割に参加したいというケースについて考えてみます。

愛人の子で認知されていない人の場合は、認知されていないのですから、そのままだと実父の財産を相続する権利はありません。

一方で、認知をされると愛人との子(非嫡出子)であっても、相続人になります。

認知は、子どもが生まれたばかりではなくてもできます。

民法787条では、「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りでない。」と定められています。

つまり、父の死後であっても、3年を経過しないうちであれば認知の請求ができるということです。

愛人の子で、認知をされていない人の場合は、まずは認知の請求をして、認知されてから遺産分割に参加することができます。

日本国籍がないが日本の父あるいは母の遺産を相続したい

日本国籍を持っていない子が、日本国籍を持つ親の遺産を相続したいというパターンです。

この場合は、日本の相続法にのっとって手続きをすることになります。

認知をされている場合は、日本国籍を持つ子と同じように相続が行われます。

認知をされていない場合は、親子関係が公式に証明されていないので、まずは認知の請求をするなどというところから始まりますので、時間がかかってしまいますし、相続ができるとも言い切れません。

老後の世話を頑張った息子の妻も遺産を受けたい

介護などの老後の世話を、息子ではなく息子の妻がほぼ担っていたとしましょう。

息子には相続権がありますが、息子の妻にはありません。

そこで、相続人が主張できる寄与分という制度を使って、親の介護をした分の寄与分を主張し、他の相続人より多くもらうことは可能です。

寄与分は相続人しか主張できないので、この場合は息子を通じて主張することになります。

法定相続分とは違う相続をしたい

法定相続分は、絶対に守らなければいけない分け方ではありません。

どのように遺産を分けても、それは相続人の自由です。

ただし、極端な分け方をしてしまうと、遺留分を主張されることがあります。

相続分の譲渡・差し押さえがある場合

相続が始まった時点では、相続財産は相続人の共有ということになっています。

共有分の中で、特に金額は決まっていないものの持ち分があるという状態です。

この状態で譲渡することは可能で、譲渡された人が遺産分割協議に参加します。

差し押さえの場合は、差し押さえをした人が裁判所から譲渡を認められれば、譲渡された相続分と同じく、遺産分割協議に参加できます。

寄与分を認めてもらいたい

長年、親と一緒に事業をするなどして、そもそもその相続財産を作りあげたのは子どものがんばりによるところが大きいという場合があります。

この場合、寄与分を主張すれば他の相続人よりも多く財産をもらえることがあります。

寄与分には金額の制限は特にありません。

特別縁故者として遺産を受けたい

特別縁故者として遺産を相続したい場合に重要なことは、他に相続人がいないということです。

特別縁故者として分割を受ける際の金額については特に決まりがありません。

他の相続人がいないのであれば、手続きをすることで特別縁故者として遺産を相続できる可能性はあります。

まとめ

今回は、相続人と相続分に関するトラブルになりがちなケースについてご紹介しました。

複雑な家族関係の場合は、特に注意して下さい。

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