目次
相続人がいないケースにおいて、遺産の帰属先がどこになるのか知りたい方は多いのではないでしょうか。
特に、被相続人と血縁関係や婚姻関係がない方にとって遺産の問題はとても気になりますよね。
「相続人ではないが被相続人が病気で寝たきりだったので介護や身の回りの世話をしてきた」「被相続人とは結婚していないが、長年生活を共にしてきた」といったケースがあります。
つまり、血縁関係や婚姻関係がなくても被相続人と非常に近い関係である場合です。
「自分は相続人ではないし、相続財産を受け取る方法もわからない」と悩んではいませんか?血縁関係や婚姻関係がない方でも、相続人が不存在の場合に遺産を受け取れる場合があるのです。
被相続人のためになることをしてきた人にとっては大変ありがたい制度ですよね。
しかし、相続人がいないといってもさまざまなケースがあり、財産の帰属先や法律上の手続きが異なります。
相続財産を受け取る権利があっても、手続きを知らなければ、結局何も受け取れません。
そのため、血縁関係や婚姻関係がない方が遺産を受け取るためには、どういうケースが相続人不存在に該当し、どういった手続きをとるべきか、理解しておく必要があります。
そこでこの記事では、
- ・相続人不存在に該当するケース
- ・相続人不存在の時に行う手続き
- ・相続人ではないが遺産を受け取れる特別縁故者
について書いていきます。
相続人不存在に該当するケース
相続人が不存在とは具体的にどういう要件なのか知りたい方は多いでしょう。
誰が相続人となるかは、まず法定相続人について理解しておかなければなりません。
この項では相続人不存在にあたる要件について解説していきます。
法定相続人がいないケース
相続人不存在は、亡くなった被相続人に法定相続人がいないケースが該当します。
法定相続人には血縁の範囲と優先順位が定められており、以下の順位で相続人が決まります。
- 必ず法定相続人になる:配偶者
- 第1順位:子および(子がいない場合は孫)
- 第2順位:両親(両親がいない場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は兄弟姉妹の子)
上記に当てはまる法定相続人がいない場合に、相続人不存在となります。
血縁関係があるからと親戚すべてが法定相続人となるわけではないことに注意しましょう。
例えば、叔父や叔母、従兄弟等がいても法定相続人となりません。
また、法定相続人が全員相続放棄した時でも相続人不存在に該当します。
相続放棄とは、被相続人の遺産すべてを受け取らないための手続きです。
「せっかく相続人から遺産を受け取れるのになぜ相続放棄をするのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
相続により被相続人の遺産だけでなく、同時に債務も承継してしまいます。
つまり、遺産状況によっては、財産を受け取ってもトータルだと債務の方が多く、マイナスとなってしまうケースがあるわけです。
そのため、財産は受け取れないものの、債務の支払いを免除するために相続放棄するメリットがあります。
以上から、相続人不存在に該当するかどうかは、法定相続人の存在だけでなく、相続放棄の有無も重要となることがわかります。
相続人の所在や生死が不明な場合は?
単純に法定相続人の所在や生死が不明な場合は、相続人不存在には該当しません。
所在が不明といってもいろんなパターンがありますが、主に以下の二つのケースに分かれて処理されます。
- 行方不明:不在者財産管理
- 生死不明:失踪宣告の申立て
不在者財産管理とは、相続人の存在は戸籍で確認できるが、相続人の住所がわからない、連絡がつかないといった場合に行う手続きです。
不在者財産管理人を選出した上で、遺産分割協議等を行うことになります。
失踪宣告とは、相続人が事故や災害で消息不明で生死がわからない場合に行う手続きです。
失踪宣告の申立て後、失踪宣告を受けた相続人以外で遺産分割協議を行います。
相続人の存在が不明な場合は?
相続人の存在がわからない場合、利害関係人または検察官によって、相続財産管理人選任の申立てを行います。
相続人の存在自体が不明な事例としては、戸籍の記載漏れ、認知請求前の子の存在、などです。
相続財産は法人とされ、相続財産管理人が管理や清算をすることになります。
「相続人の存在不明が継続する場合、いつまでも相続財産管理人が管理することになるのか?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
相続人がいないか捜索するため、6ヵ月以上の期間を定めて公告を行われますので、期間内に相続人が現れない場合に相続人不存在が確定します。
次項では、相続人不存在が確定した後の処置について見ていきましょう。
特別縁故者への財産分与
相続人の不存在が確定した後で、特別縁故者への財産分与が行われることになります。
この項では、どのような人が特別縁故者に該当し、特別縁故者は相続財産を受け取るためにどんな手続きが必要か解説していきます。
特別縁故者とは
特別縁故者は主に以下の場合に該当します。
- ・被相続人と生計を同じくしていた者
- ・被相続人を看護していた者
- ・その他被相続人と特別な縁故が認められる者
例としては、内縁者や事実上の養子、介護をしていた人などが特別縁故者に該当します。
ただし、実際特別縁故者に該当するかどうかはさまざまなケースや判例の蓄積があるため、一概には申し上げられません。
もし、ご自身が特別縁故者に該当するか正確に知りたい場合は法律の専門家に相談することをおすすめします。
特別縁故者へ財産分与されるための手続き
財産分与されるためには、特別縁故者から申立てをする必要があります。
相続人不存在の確定だけでは、相続財産が自動的に特別縁故者へ帰属するわけではありません。
また、特別縁故者の申立てには期限があり、相続人不存在の確定を起算として、その3ヵ月以内に行わなければなりません。
相続人が不存在で、特別縁故者に該当する者もいない場合、相続財産は国庫に帰属します。
相続人がいないからと相続財産をそのままにしておいてしまうと国庫に帰属してしまうので注意しましょう。
まとめ
ここまで相続人不存在の場合における相続財産の帰属について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは、
- ・相続人不存在は法定相続人がいない場合に該当する
- ・相続人不存在は被相続人が行方不明や生死不明の場合は該当しない
- ・相続人の存否が不明の場合は相続財産管理人を選任し相続人捜索公告を行う
- ・相続人不存在が確定後に特別縁故者の申立てをし、財産分与を行う
以上です。
もし自分の大切な人が亡くなった場合に、「自分は相続人ではないから」と相続財産の受け取りを諦めてはいけません。
人によっては、相続財産を受け取れるかどうかが、その後の生活に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。
相続財産の帰属に関して悩みや聞きたいことがあれば、ぜひ法律の専門家に相談されることをおすすめします。
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