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法人が不動産を譲渡した場合の税金面での取り扱いはどのようになるのでしょうか?不動産を譲渡した場合については、課税標準金額となる対象が場合によって変化し、また譲渡する不動産の状態によって課税方法が変わるなど法人特有の対応が求められることになりますので、気を付けなければいけません。そこで、今回はいくつかの図も用いながら不動産譲渡が行われた際の対処について分かりやすく解説をさせて頂いておりますので、是非最後までお読み頂ければと思います。
不動産を譲渡して利益が出たら?
法人が不動産を譲渡することにより、利益が生じた場合には譲渡益(譲渡価格―不動産帳簿価格―経費)に対して税金がかけられることになるはずです。ところが、法人事業全体でみて、利益が出ていない状態(赤字)であれば、結果的に不動産譲渡益に対して税金が発生することはありません。税金が発生するのは、あくまで事業として利益が出ている状態(黒字)に対する課税ということになりますので、不動産譲渡を行った年度において、法人事業全体が儲かっている場合にのみ税負担をするということになることをまずは押さえておきましょう。
不動産を譲渡した場合の利益を算出するために、不動産を購入していたのであればその購入代金、不動産仲介会社に仲介を依頼したのであればその仲介代金を差し引くことが出来ますし、租税公課等も譲渡のための支出金として控除することが認められています。
不動産譲渡日については、法律的に考えると少し複雑になります。すなわち、不動産を現実的に引渡した日が不動産譲渡日と考えてしまいがちですが、不動産譲渡の代金支払い後登記申請が完了した時点にすることもできますし、不動産譲渡契約により別途効力発生日を設定することも可能です。
土地重課制度とは?
法人が不動産を譲渡した場合には、土地重課制度という制度により、法人税以外にも別途不動産の譲渡利益に対する追加の課税が発生する場合があります。
例えば、法人が取得し保有期間が5年未満である土地(短期所有土地)であれば、10%の別途課税が発生しますし、法人が所有し、保有期間が5年を超える土地(長期所有土地)であれば5%の別途課税が発生することになっています。ただし、現状では平成32年3月21日までは本制度の適用は停止されています。
なお、土地重課制度は、不動産の譲渡以外にも高額な報酬を受け取る売買の仲介手数料が発生する場合や土地を資産の大部分を占めるような企業の株式譲渡の場合にも適用されることがありますので覚えておきましょう。
消費税はどのように扱われるのか?
不動産譲渡をした場合に消費税はどのように扱われるのでしょうか?不動産譲渡をした際には、消費税課税の対象とはならない場合があります。不動産譲渡をした場合の消費税の算出に関する考え方についてもこちらでご紹介していきます。
不動産譲渡はすべて消費税課税の対象となる?
不動産譲渡を行うと当然に消費税を支払わなければいけないと考えてしまうものです。ところが、意外なことに不動産譲渡を行っても消費税の課税対象とはならないことがあります。不動産というのは、大きく「土地」と「建物」に分けることが出来ます。ここで、建物である不動産を譲渡した場合には、消費税を支払わなければいけないことになっていますが、土地である不動産を譲渡した場合には消費税を支払わなくても良いという取り扱いになっています。
不動産譲渡の消費税の計算方法について
消費税の一般的な計算方法としては、売上高より仕入れ部分を差し引いた課税金額に対して税率をかけるという方針がとられます。なお、課税売上となる割合が95%未満である場合には、売上高より差し引かれる仕入れ部分の全額が対象とはならないことになります。
課税売上割合は、以下の計算式で算出することが出来ます。
法人の特別控除の取り扱い
不動産を譲渡するとは言っても、場合分けをすると様々な場合を考えることが出来ます。その中で不動産を譲渡する理由が「収用」のためということも挙げられるでしょう。不動産を譲渡する理由が収用である場合には、その他の譲渡のケースとは事情が異なることになりますので、特別に控除を受けることが出来るようになっています。
控除の適用を受けることのできる条件とは?
法人が所有している資産が仮に収用の対象となった場合には、補償金を取得することになった際に、下図の条件を満たすことにより、5,000万円若しくは譲渡益の金額のいずれかすくない金額を損金算入の対象とすることが出来ます。
条 件 |
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(1)最初に買取りの申し出のあった法人より直接的に譲渡されたこと (2)買取りの申し出があった日より6ケ月以内に譲渡されたこと (3)収用された目的物が固定資産であること (4)控除を受ける事業年度において、収用の対象となる資産がすでに特例等の適用を受けていないこと |
補償金の取り扱いについて
どのような補償金があり、特例が適用されうるかについては下図をご参照ください。
補償金の内容 | 特例の適用の有無 |
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収益補償金:収益の減少などに充てるものとして交付を受ける補償金 | 建物の対価補償金が収用などをされた建物の再取得価額に満たない為、建物の対価補償金として計算した部分に適用あり |
移転補償金:資産を移転させることに対する費用の補填に充てるものとして交付を受ける補償金 | ・土地又は建物などの収用などに伴い移設困難な機械装置を取り壊した移転補償金 ・建物の収用に伴う借家人の転居先建物の賃借に利用する権利金に充当するものとして交付される借家人補填金 ・土地などの収用に伴い、建物を取り壊した場合のひき家ないし移築の補償金 |
対価補償金:資産の収用などの対価として交付を受ける補償金 | 特例あり |
経費補償金:休廃業などにより生ずる事業場の費用ないし収用などの目的になった資産以外の資産の損失の補填するために交付を受ける補償金 | 収用による事業がすべて廃止になった場合、かつ、他に転用できない機械装置がある場合における譲渡損の補償金 |
その他実質的に対価補償金ではない性質の補償金 | 特例なし |
特定の土地を取得した場合には、別途特別控除が受けられます
ある一定条件による特定の土地を取得した場合にも特別の控除を受けられる制度があります。平成21年1月1日より平成22年12月31日までの間で、土地を取得して譲渡するまでの間に、5年を超える期間当該土地を保有していた場合には、1,000万円若しくは譲渡益の金額のいずれか少ない方の金額を損金算入の対象とすることが出来ます。具体的なイメージとしては、下図をご参照ください。
不動産を低額譲渡した場合には?
不動産を低額譲渡した場合には、当事者の関係により異なる扱いとなることになります。売主・買主がそれぞれ法人・個人のいずれかによってどのように変化するのか確認をしていきます。それぞれの対処について、下図にまとめましたのでご覧ください。
売主 | |||
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買 主 |
個人 | 法人 | |
個 人 |
収入金額をもとに譲渡所得を算出 | (1)法人の役員等に対して不動産譲渡をした場合には、時価及び譲渡価額との差額は「給与」として考えられます。 (2)法人の役員等以外の者に対して不動産譲渡をした場合には、時価及び譲渡価額との差額は「寄付金」として考えられます。 |
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時価・取得金額の差は、贈与税と扱われる | (1)譲渡をした法人の役員等が不動産を譲り受けた場合には、時価及び譲渡価額との差額は「給与所得」として考えられます。 (2)譲渡をした法人の役員等以外の者が不動産を譲り受けた場合には、時価及び譲渡価額との差額は「一時所得」と考えられます。 |
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法 人 |
(1)時価の2分の1以上の金額で不動産譲渡をした場合には、「収入金額」を基準として譲渡所得を算出 (2)時価の2分の1未満で不動産譲渡をした場合には、「時価」を基準として譲渡所得を算出 |
時価及び譲渡価額との差額は「寄付金」と考えられます。 | |
時価及び取得価額との差額は「受贈益」と考えられます。 | 時価及び取得価額との差額は「受贈益」と考えられます。 |
※上段には売主としての個人・法人を、下段には買主としての個人・法人を記載しています。
未経過固定資産税の考え方
固定資産税は基本的に不動産の名義人に対して課税されるものですが、不動産の譲渡が行われた場合には、この対応には何か変化があるものでしょうか?未経過固定資産税を清算する場合の取り扱いについてまとめていきます。
納税義務者
固定資産税は、毎年1月1日を基準として不動産の名義人として指定されている者に対して、課税されることになっています。ところが、年度の途中で不動産を譲渡した場合には、不動産を譲り受けた者は年度の取得日以降の固定資産税を一切支払わなくても良いことになり、当事者間の不均衡が生じることになります。したがって、譲渡日以降の固定資産税は譲受人が負担するなどの方法がとられることがあります。
清算金の取り扱い
譲渡日以降の固定資産税の負担は、譲渡対価に上乗せして処理されることになります。これを損金や経費に計上することは出来ませんので注意するようにしてください。
まとめ
法人が主体となって不動産譲渡が行われた場合には、どのような場合に課税対象となるのかについてご理解頂けましたでしょうか?これらの説明をもとに考えて頂けますと、不動産譲渡をする前にも考えなければいけないことがいくつもあることに気づかれるかもしれません。更に詳しく理解しておきたいという方は、税理士等の専門家に相談してみてください。