この記事でわかること
- 土地相続の手続きの基本がわかる
- 土地相続の際の費用がわかる
- 遺産の分け方(遺産分割協議)のポイントがわかる
土地に限らず不動産を相続すると、相続登記をすることになります。
また、相続税の申告も短期間に行わなければなりません。
忙しい中で慣れない手続きについて調べるのはとても大変です。
手続きに加えて、相続人同士で遺産を分けなければならないケースなら、どんな分け方がよいか悩んでしまうかもしれません。
この記事では土地相続に際して行わなければならない手続きの基本を解説します。
また、土地相続の登記を行う上で大切な遺産分割協議の知識についてもポイントを解説します。
土地相続の予定がある方や、土地相続をした方は、ぜひ参考にしてください。
目次
土地を相続する際の手続きの流れ
土地を相続した際に行う手続きは以下の流れになります。
- ステップ1…相続財産、相続人の確定
- ステップ2…土地相続の登記 相続税申告
相続財産と相続人の確定は、土地相続の登記や相続税申告のために必要な手続きです。
ここでは、相続財産と相続人の確定、相続登記、相続税申告について、どんな手続きを行うのかみていきましょう。
相続財産と相続人の確定
始めに相続財産と相続人の確定に必要な手続きを確認しましょう。
相続財産と相続人の確定は並行して進めていく必要があります。
相続財産の確定の必要性
被相続人の財産は土地だけだから、とくに財産調査は必要ないと思うかもしれません。
しかし、預貯金や株式などの金融資産、車や宝石や家財についても、どのくらい遺産があるか確定しなければなりません。
不動産だけに目がいってしまうと、相続税申告の際、不動産以外の財産につき申告し忘れてしまうので注意しましょう。
土地は1つとはかぎらない
遺産に含まれる土地は、一見1つしかないように見えても、複数の土地の場合もあります。
土地は「筆」と数えます。
例えば、自宅建物が建っている土地が、登記簿上は2筆やそれ以上の複数の土地に分かれて登記されていることもあります。
土地と建物は同一の場所にあるとしても、別々の不動産である点にも注意しなければなりません。
遺産に含まれる不動産は自宅のみであっても、被相続人が建物と土地の双方を有していれば、遺産に含まれる不動産は複数ということになります。
遺産に含まれる不動産を特定するには、次の書類を取り寄せましょう。
- ・登記事項証明書
- ・市町村の名寄帳
登記事項証明書は管轄法務局または最寄りの法務局で、市町村の名寄帳は被相続人の最後の住所地の市区町村で取り寄せます。
なお、分譲マンションは、物件の特定が難しいので、物件の管轄法務局で確認するとよいでしょう。
被相続人が登記済証や登記識別情報を保管していなかったか、被相続人の持ち物を確認することも忘れないようにしてください。
相続人確定の必要性
相続財産の確定と並行して、相続人を確定しなければなりません。
相続人の確定は、被相続人が生まれたときから亡くなるまでの戸籍をすべて取り寄せることにより行います。
これは、土地の相続登記や相続税申告の際にかぎりません。
預貯金や株式などの相続であっても、戸籍謄本などの取り寄せにより相続人を確定する必要があります。
相続人確定のための書類
相続人確定には、戸籍謄本、除籍謄本のほかに、改製原戸籍、住民票の除票も必要です。
相続人の確定に必要な戸籍や除籍謄本などをすべて収集するには、数週間から数ヶ月かかるケースもあります。
これは、被相続人の戸籍(除籍)謄本は、かつての本籍地所在の市区町村で取得するためです。
本籍地が遠方の場合は郵送でやりとりしなければなりません。
そのうえ、戸籍(除籍)を郵送で取り寄せるには、小為替を送らなければならないので、郵便局で小為替を購入したり、郵送したりする手間と時間がかかることも覚えておきましょう。
法定相続人関係の書類
被相続人関係の書類以外にも、相続登記などのため、相続人の戸籍謄本や住民票も取得しておきましょう。
後述する遺産分割協議を行う場合、相続人の印鑑証明書も必要です。
土地相続の登記
土地を相続した場合、できるだけ早く不動産登記を相続人名義にする手続きをしましょう。
なぜなら、数次相続が起きてしまうと、登記手続きが複雑になるためです。
不動産登記は、管轄法務局でおこないます。
法務局の登記相談を利用すれば、簡単なケースなら自分で相続登記できます。
相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。
- ・被相続人の出生から死亡までの除籍謄本、改製原戸籍
- ・被相続人の住民票の除票
- ・土地の名義人となる相続人の住民票
- ・遺産分割協議による場合は遺産分割協議書
- ・遺言による場合は遺言書
- ・固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書
書類の提出方法や申請書の書き方などは、土地管轄法務局で相談するとよいでしょう。
なお、土地の相続登記に期限の制限はありません。
しかし、相続税申告の期限はすぐ迫ってきます。
相続登記と相続税申告に必要な書類は共通するものが多いので、早急に、相続手続きに必要な書類を取り寄せておきましょう。
相続税申告
被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の亡くなった当時の住所地の税務署に申告しなければなりません。
この相続税申告期限を過ぎると、延滞税などが発生するので注意が必要です。
なお、相続した土地など遺産が、非課税枠の範囲内であれば、相続税を申告する必要はありません。
土地を相続する際にかかる費用
土地を相続する際にかかる主な費用は、相続登記にかかる費用と相続税です。
以下で詳しくみていきましょう。
土地の相続登記費用
不動産の相続登記には、登録免許税がかかります。
登録免許税は通常、登記申請書を法務局に提出するときに収入印紙で収めます。
土地や建物の固定資産評価額に1,000分の4を乗じた額が相続登記の登録免許税です。
例えば、固定資産評価額が1,000万円の土地が相続財産なら、4万円の登録免許税がかかります。
固定資産評価額が基準なので、時価よりは土地や建物の価格が低くなるでしょう。
ただし、土地相続が何度か発生していて、相続登記が重なるケースでは、登録免許税が高額になるケースもあります。
期限がないからといって放置せず、早めに相続登記を終わらせましょう。
土地の相続税の基礎控除額
土地や建物、車や株式などの財産を相続した場合、相続税がかかります。
相続税は、遺産総額を基準に課税されるので、ここでは相続税の基礎控除額や税率を確認します。
相続税の基礎控除額と税率
まず、基礎控除額の計算方法を押さえておきましょう。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
次に相続税の税率を押さえましょう。
相続税の税率は以下の通りです。
相続税の税率
法定相続分に応ずる取得金額 税率 税額控除 1,000万円以下 10% - 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円
相続した土地(遺産)の分け方
土地を相続した場合、土地は遺産分割しないかぎり、法定相続人全員の共有になるのはご存知でしょうか。
法定相続人と法定相続分につき、基礎的なルールを確認し、遺産の分け方を考えていきましょう。
相続した土地(遺産)は共有
例えば、次の例で考えてみましょう。
- ・遺産はXが所有していた土地
- ・法定相続人は妻Yと長男A
このケースでは、YとAの法定相続分は各2分の1です。
言い換えれば、YとAが遺産分割しないかぎり、土地はYが2分の1、Aが2分の1の割合で共有することになります。
つまり、共有者Y・A・の1人が勝手に土地を売却することはできません。
また、YとAはそれぞれ持分に応じて土地を使用・収益する権利を有します。
Yだけ、またはAだけが土地全てを利用していたら、お互いに自分の持分に応じた使用料を請求することができます。
相続した土地(遺産)の分け方
上述のように、相続した土地を共有していると、自由に売却や使用収益することができません。
そこで、法定相続人の1人が土地を相続するためには、遺産分割協議による必要があります。
遺産分割は原則として法定相続人間の話し合い(協議)で行われます。
ここでは一般的な土地の分け方を紹介します。
土地(遺産)の分け方
現物分割 | 土地を分筆して各土地を単有にする |
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代償分割 | 土地を相続人の1人の単有にして、他の相続人には法定相続分に見合う現金を支払う |
換価分割 | 土地を売却した代金を法定相続分で分ける |
なお、法定相続分とは違う割合で土地を共有する旨を、遺産分割協議で取り決めることもできます。
例えば、上記の例なら、Yが3分の2、Aが3分の1の割合で土地を共有すると合意する方法です。
これを「共有分割」と呼ぶこともあります。
相続税については基礎控除や数次相続などさまざまな問題点があります。
遺産分割協議を行う場合は、相続税・数次相続など総合的に考えるようにしましょう。
土地相続でトラブルを防ぐための注意点
土地相続では、法定相続分で相続するにしても、遺産分割協議をおこなうにしても、相続人間のトラブルになる可能性があります。
土地相続でトラブルを防ぐためには、次の3つの注意点を知っておきましょう。
注意点(1)土地の分け方の特徴を知る
前述した土地の遺産分割方法それぞれの特徴を知っておきましょう。
土地(遺産)の分け方の特徴
現物分割 | ・広い土地には向くが、狭い土地には向かない ・法定相続分に見合う大きさや形に土地を分筆できるとはかぎらない ・分筆登記費用がかかる ・法定相続分での相続登記をしてから単有名義にする登記をしなければならない |
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代償分割 | ・相続財産に預貯金がある場合にもちいると良い ・土地を取得する人に資力があれば問題ない ・相続財産が土地のみだったり、土地を取得する人に資力がなかったりする場合は難しい |
換価分割 | ・土地売却の前提として、法定相続分での登記が必要 ・法定相続人全員の合意がないかぎり、換価分割はできない |
注意点(2)相続税を考慮して分ける
配偶者の税額の軽減、小規模宅地等の特例などさまざまな点を考慮して遺産分割協議を行わないと、高い相続税を払わなければならないケースもあります。
配偶者の税額の軽減、小規模宅地等の特例
被相続人の配偶者の税額の軽減 | 遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからない ・1億6,000万円 ・配偶者の法定相続分相当額 |
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小規模宅地等の特例 | ・相続の開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地などのうち、「小規模宅地等」に当たる土地が対象 ・相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額 |
注意点(3)遺産分割協議のトラブルを知る
「遺産分割協議書にハンコを押してもらえばいい」とよく聞きますが、これは、のちのトラブルの種になります。
遺産分割内容をよく説明せずに書面に形式的に押印してもらうと、後から遺産の帰属でもめごとになりかねません。
逆に、「納得がいかないけれど面倒だから合意してしまおう」と不本意な遺産分割に合意すると、後悔するかもしれません。
原則として、遺産分割協議をやり直すことはできないからです。
家族間の感情の対立を避けつつ、後悔のない遺産分割協議をおこないましょう。
相続人それぞれの意思をしっかり確認して遺産分割協議書を作成することが大切です。
まとめ
土地相続と一口に言っても、意外と奥が深いことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
大切なのは、民法に定められた基本的な相続のルールを理解することです。
相続税についての知識も重要。
とくに、相続税申告の期限は注意しましょう。
10か月は長いようですぐ経過する月日です。
相続登記や相続税申告をするには、多くの書類を取り寄せなければなりません。
数次相続のケースや、被相続人が本籍地を何度も移転している場合、取り寄せる戸籍関連の書類だけで膨大な数になってしまうこともあります。
仕事や家事で忙しい方にとって、戸籍の取り寄せにかかる労力と時間は非常に負担です。
相続登記や相続税申告についても、一から書類の書き方を研究しなければなりません。
相続人同士で遺産分割方法につき合意ができないケースでは、とりまとめる立場の方はストレスになりかねません。
正確にスピーディーに、安心して土地相続の手続きをしたい方は、専門家に相談することをおすすめします。