この記事でわかること
- 投資信託を複数人で相続する方法
- 投資信託の分割方法について
- 遺産分割協議書の書き方
相続人が複数いる場合、投資信託の相続はどのように行えばいいのでしょうか。
「どうやって分割するのか?」「名義変更はどうすればいいのか?」
投資信託を分ける、ということがイメージしにくいため、難しく感じる人も多いでしょう。
今回は投資信託を複数人で相続する場合具体的な分け方や、必要な手続きまでわかりやすく解説します。
目次
相続人が複数いる場合はどうなる?
相続財産の中に投資信託があり、相続人が複数人いる場合、どのように扱えばいいのでしょうか。
ここでは、相続時の投資信託の取り扱いについて解説します。
相続人が複数いる場合の投資信託の取り扱い
相続人が複数人いる場合、相続が開始された時点で投資信託は相続人全員の共有財産となります。
各相続人が法定相続分に応じた持ち分を持っている状態です。
投資信託を共有名義で取引をすることはできないため、分割して名義変更をする必要があります。
しかし共有財産は、単独で売却や名義変更ができず、手続きには遺言または遺産分割協議による全員の同意が必要です。
投資信託の相続割合や相続順位は、他の財産と同様です。
配偶者がいる場合は必ず相続人となり、それ以外は以下の順位となります。
第二位:健在であれば両親
第三位:兄弟
遺言、法定割合、または話し合いによる任意の方法で相続します。
たとえば投資信託が5000口、相続人が配偶者と子どもである場合を考えてみましょう。
法定相続分は2分の1ずつのため、それぞれ2500口ずつを相続することになります。
もし遺言があれば、遺言に沿って分割することも可能であり、遺産分割協によって任意の割合で分割することもできます。
遺言または遺産分割協議が必要
投資信託を複数人で相続する場合、遺言または遺産分割協議が必要です。
誰がどのような割合で相続をするか、どのような方法で分割するかを決める必要があります。
遺言があり、内容に異議がなければ協議は必要ありません。
遺言がない場合や、内容に納得しない相続人がいる場合は、遺産分割協議を行います。
協議がまとまらなければ相続手続きや名義変更ができないため、よく話し合いましょう。
手続きが煩雑になる場合も
投資信託の名義変更などの手続きには、様々な書類が必要です。
- 相続人全員の同意書
- 遺産分割協議書または遺言
- 全員の戸籍謄本
- 全員の印鑑証明書など
相続人が遠方に住んでいる場合や話がなかなかまとまらない場合、手続きに時間がかかることもあります。
相続が開始されたら、できるだけ速やかに手続きを進めましょう。
相続税や所得税に注意
投資信託は通常、死亡時点の評価額を基準に相続税が課税されます。
評価額が高ければ、予想外に相続税が高くなることもあるでしょう。
相続税は、相続開始から10カ月以内に現金で納付する必要があります。
さらに、投資信託を売却する場合は、譲渡益に対して譲渡所得税(20.315%)が課税される場合があります。
投資信託を相続したら、税金の取り扱いにも注意しましょう。
複数人で投資信託を相続する方法
複数人で投資信託を相続する場合、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは分割して相続する方法や分割の際の注意点、共有名義での取引きについて解説します。
投資信託の分割方法
投資信託を複数人で相続する際の主な分割方法は以下の通りです。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
一つずつ解説します。
【現物分割】
現物分割とは、財産そのものを相続割合に応じて分割する方法です。
投資信託は現金と同様に分割が容易な形式のため、現物分割が可能です。
この場合、口数によって分割します。
たとえば、10000口の投資信託の場合、相続人2人で5000口ずつ分けることができます。
ただし、金融機関によっては分割単位が決まっている場合があるため、事前に確認が必要です。
【換価分割】
換価分割は、投資信託を売却し、得られた現金を相続人同士で割合に応じて分配する方法です。
まず代表者となる相続人に名義変更を行い、投資信託を売却した後、他の相続人に現金を分配します。
売却時には売却手数料や譲渡所得税が発生する可能性があるため、諸経費を誰が負担をするのか、あらかじめ決めておく必要があります。
【代償分割】
代償分割は、特定の相続人が投資信託をすべて相続し、他の相続人にはその代償として現金などを分配する方法です。
代償分割を選択する場合、相続人間で公平な分配が行われるように、代償財産の評価を適切に行う必要があります。
分割する際の注意点
投資信託を相続する際に、気を付けておかなければならないポイントがいくつかあります。
投資信託は市場の動向により価格が変動するため、遺産分割協議や手続きが遅れると、評価額が変動する可能性があります。
相続税の課税評価額と、実際に処分する際の評価額が大きく異なることも考えられるため、その点を理解しておかなくてはなりません。
また、換価分割や代償分割を利用する場合、譲渡所得税や売却手数料が発生する場合があります。
投資信託の評価額によって、影響が大きくなる可能性があるため、誰が負担をするのか、どのように分担するのか決めておくことが大切です。
共有名義で取引きできる?
日本国内の一般的な金融機関や証券会社が扱う投資信託は、原則として個人単独または法人での契約となります。
そのため、証券口座を共有名義にすることはできません。
投資信託の取引きには、必ず個人口座に名義変更する必要があります。
どうしても共同で管理したい場合は、家族信託を利用する、または会社を設立して法人名義で運用する方法などが考えられます。
遺産に投資信託があるときの相続手続きの流れ
ここからは、投資信託が相続財産に含まれている場合の相続手続きの進め方について、流れを解説します。
手続きには時間がかかるため、相続が発生したら早めにとりかかりましょう。
遺言書の有無を確認
被相続人が亡くなったら、まず遺言書があるか確認しましょう。
もし遺言書があれば、その内容に沿って相続手続きを進めることが基本です。
遺産分割協議をする必要がなく、スムーズに手続きが進められます。
もし遺言書がなければ相続人全員で話し合い、法定相続分もしくは任意の割合で相続します。
相続人・相続財産の確定
遺言書の有無を確認したら、相続人を確定させます。
相続人は被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を、すべて取得することで特定することができます。
調べてみると、存在を知らなかった相続人がいる場合もあります。
相続人は調べなくてもわかっていると判断せず、必ず戸籍を辿って調べましょう。
相続人の確定と同時に、相続財産を確定させます。
投資信託の他にどのような財産があるか、徹底的に調べます。
もし後から財産が出てくると、トラブルのもとになることや、相続税の納付などに影響が出ることもあります。
遺産分割協議を行う
相続人と相続財産が確定できたら、全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では投資信託を含め、どのように財産を分割するのか、詳細に決める必要があります。
遺産分割協議書は、金融機関などの相続手続きで必要になるため、相続内容を明確に記載しましょう。
金融機関で手続き
投資信託を保有している金融機関に連絡し、相続が開始されたことを通知します。
名義変更などの手続きに必要な書類は、金融機関から指定されます。
一般的には、以下のような書類が必要です。
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書 など
投資信託を受け取る相続人は、同じ金融機関で口座を開設する必要があります。
一度で手続きを終えられるよう、必要書類は不足のないように準備しましょう。
相続税の申告
相続税は、相続開始から10カ月以内に申告・納税をしなければいけません。
遺産分割協議が長引くことも考えられるため、納税期限に間に合うように進めるようにしましょう。
また、投資信託の課税に関して判断が難しい場合は、早めに専門家に相談するといいでしょう。
複数人で投資信託を相続するときの遺産分割協議書の書き方
ここでは、複数人で投資信託を相続する場合の遺産分割協議書の書き方について解説します。
内容に不足があれば、相続手続きがスムーズにできないため、わかりやすく記載しましょう。
【現物分割】
現物分割の場合、以下のように相続する人と口数を明確に記載します。
投資信託については、以下のとおり相続人が取得する。
- 長男 ○○ ○○:60000口
- 長女 ○○ ○○:40000口
現物分割は最も分割しやすい方法です。
名義変更の手数料など、諸経費については各人の負担とすることで、トラブルにもなりにくいと言えます。
【換価分割】
換価分割の場合、まずは換価分割であることを明記する必要があります。
その上で誰が代表して取得し換価するのか、そして誰にいくらずつ分配するのかを明確に記載しましょう。
- 次の投資信託は、換価分割を目的とし、相続人○○○〇が取得する。
- 相続人○○○○は、前項の投資信託を速やかに売却し、売却代金から売却にかかるすべての費用を控除した残金を、以下の割合で分配する。
相続人△△△△、相続人○○○○がそれぞれ2分の1ずつ
投資信託の売却にかかる費用を、誰が負担するのか決めておくといいでしょう。
【代償分割】
代償分割は、投資信託を誰が取得するか、代償として誰にどのような方法で支払いをするのかを明記する必要があります。
たとえば現金で代償する場合は、以下のように記載します。
- 相続人○○○○は、投資信託を取得する代償として、相続人△△△に対して金○○円を〇年〇月〇日までに、△△△の口座に振り込む方法により支払う。
なお、振込手数料は××が負担する。
支払いの期日や、支払方法も取り決めておくといいでしょう。
ここでも、代償にかかる諸経費の取り扱いを決めておく必要があります。
まとめ
投資信託の分割と聞くと難しいように思うかもしれませんが、他の財産と同じように分けることが基本です。
ただし、どのような分け方が合っているか、相続人同士でよく話し合うことが大切です。
分け方によって、相続税や譲渡所得税、諸経費などに注意しなければいけないこともあります。
とくに税金のことなど専門的なことは、判断が難しい場合もあるでしょう。
投資信託の相続でお困りの場合、早めに専門家に相談するといいでしょう。