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最終更新日:2023/4/18

信託登記費用はどれくらいかかるのか?シミュレーション や節約方法も紹介

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

信託登記費用はいくらかかる?

この記事でわかること

  • 信託登記費用がわかる
  • 信託登記にかかる費用をシミュレーションできる
  • 信託契約後にかかる費用がわかる
  • 家族信託の手続きの節約方法がわかる

高齢となった親が、自身の将来的な認知症リスクを考えて、家族信託(民事信託)を検討するという話を最近よく聞くようになりました。

親などが高齢で認知症となり、判断能力が著しく低下してしまった場合、自身の不動産を売却することができなくなってしまいます。

そのような事態を防ぐために、家族信託を利用して、子どもなど信頼できる家族を受託者として、不動産の管理を任せることができます。

ですが、家族信託にかかる費用の目安がわからなければ、判断しづらいという方も多いでしょう。

本記事では、家族信託の中でもウエイトの大きい、不動産の信託登記にかかる費用に焦点を当てて解説していきたいと思います。

信託登記費用とは?

家族信託は、一般的には委託者(親)が受託者(子)に、決められた信託財産の管理を任せる信託契約を締結するものです。

この信託契約にかかる費用は、70万円から100万円程度と言われています。

この費用には、信託契約書の作成費用、不動産の信託登記費用が含まれます。

これらの費用は、信託財産の規模の大きさに伴って金額も大きくなりますので、一般的なご家庭の場合の目安として捉えてください。

ここで、それぞれの費用の内容について説明しましょう。

信託契約書の作成費用

家族信託を利用するには、信託内容を定めた信託契約書の作成が必要です。

この信託契約書は、自分で作成することも可能ですが、一般的には弁護士などの専門家に依頼するケースが多いです。

専門家へ依頼した場合の費用は、信託財産評価額や事務所によって異なりますので、事前に確認が必要ですが、信託財産評価額が5,000万円以下であれば50万円程度というのが目安です。

また作成した信託契約書は、トラブル防止のため、公証役場において公正証書を作成されることが多く、公正証書の作成手数料が必要になります。

作成手数料は、信託財産価額に応じて変動しますが、仮に財産価額が5,000万円であった場合は、29,000円です。

不動産の信託登記費用

家族信託において信託財産の中に不動産がある場合は、信託登記を行う必要があり、これにも費用がかかります。

こちらについては、次で詳しく説明しましょう。

信託財産に不動産がある場合

信託財産には、預貯金や有価証券といったもののほかに、土地、建物といった不動産が含まれることがあります。

信託財産に不動産がある場合、信託契約書とは別に、法務局の不動産登記簿に信託した旨を登記しなければなりません

この法務局への不動産登記には、法務局へ納める登録免許税と、登記の代行を司法書士へ依頼した場合の司法書士報酬費用がかかります。

登録免許税

信託設定時において、信託を原因として所有者(信託の委託者)から受託者への所有権移転登記にかかる登録免許税は、下記の通りです。

  • 土地:固定資産税評価額の0.3%
  • 建物:固定資産税評価額の0.4%

この固定資産税評価額は、毎年所有者へ送られてくる固定資産税の納税通知書で確認することができます。

納税通知書を紛失した場合や見当たらない場合は、その不動産がある市区町村の役場で固定資産評価証明書の交付を申請することができます。

司法書士への報酬費用(登記代行手数料)

法務局への不動産登記は、申請書、添付書類を作成し申請しますが、登記の専門家である司法書士へ依頼せず、自身で手続きを行うこともできます。

ですが、家族信託に関する登記は、他の登記と比較しても難易度が高く、高額な不動産を扱いますから、間違いのないように、司法書士へ依頼することをおすすめします。

司法書士への依頼にかかる費用は、信託する不動産の評価額、登記する物件数によって変動します。

また、依頼する司法書士事務所によっても異なりますので、事前に確認が必要ですから、目安として捉えてください。

  • ・信託登記1件当たり(土地・建物別 5万~10万円程度
  • ・信託目録登記 10万円程度

信託目録というのは、信託不動産の登記簿に作成されるものです。

家族信託での決めごとは、信託契約書にすべて記載することになりますが、信託目録は契約書の中から、重要情報のみを抽出して登記簿に記載するものです。

具体的には、信託の目的、受託者の権限、信託契約期間や終了事由などを記載しますが、実務上どこまで記載するかは司法書士の判断になります。

ですから、同じ司法書士でも家族信託の実務に精通した司法書士へ信託登記を依頼することをおすすめします。

ケース別に費用をシミュレーションしてみよう

ここでは、ケース別に信託登記費用がいくら必要かシミュレーションしてみましょう。

登記を司法書士に依頼した場合の報酬額も入れましたが、実際は司法書士事務所によって報酬設定の方法や金額は変わりますから、あくまでも目安としてお考え下さい。

信託不動産:土地3,000万円・建物1,000万円

  • ・登録免許税
     土地:3,000万円×0.3%=90,000円
     建物:1,000万円×0.4%=40,000円
  • ・司法書士報酬
     信託登記:2件分×80,000円=160,000円
     信託目録:100,000円
  • ・合計費用:390,000円

信託不動産:土地2,000万円・建物2,000万円

  • ・登録免許税 
     土地:2,000万円×0.3%=60,000円
     建物:2,000万円×0.4%=80,000円
  • ・司法書士報酬
     信託登記:2件分×80,000円=160,000円
     信託目録:100,000円
  • ・合計費用:400,000円

信託不動産:土地2,000万円・建物1,000万円・土地1,000万円

  • ・登録免許税 
     土地:2,000万円×0.3%=60,000円
     建物:1,000万円×0.4%=40,000円
     土地:1,000万円×0.3%=30,000円
  • ・司法書士報酬
     信託登記:3件分×80,000円=240,000円
     信託目録:100,000円
  • ・合計費用:470,000円

上記で説明した信託不動産は、合計はすべて4,000万円と同じですが、登録免許税の税率が土地と建物で異なりますので、それぞれの金額によって少し差がでます。

また、司法書士へ登記を依頼した場合の費用は、登記件数で設定されていることが多く、金額合計が同じでも件数が多くなると報酬費用も高くなっていきます。

信託契約後にかかる費用は?

ここで説明する信託契約後にかかる費用は、必ずかかる費用というわけではありません。

しかし、家族信託の利用状況によっては必要となりますので、確認しておきましょう。

信託監督人への報酬費用

家族信託によって、信託財産から得られる利益を受ける受益者が、高齢で判断能力が十分とはいえなくなった時などに、信託事務がしっかり行われているかどうかを監督する人を信託監督人と呼びます。

家族信託ですから委託者を信頼し信託契約を締結するわけですが、信託財産が多いとか、予定する相続人が多いといった場合に、信託監督人を設置することがあります。

この信託監督人は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが多く、報酬費用として毎月数万円の費用がかかります。

信託契約書の変更にかかる費用

信託契約書の内容は、完成後でも変更可能です。

信託契約書をすべてやり直すということもできますが、基本的に必要な部分のみを変更する手続きをとります。

信託契約書の変更の費用は、10万円程度必要です。

家族信託の手続きを自分でして節約できる

家族信託を行うには、信託契約書の作成、不動産の信託登記などが必要で、それぞれには費用がかかります。

この費用を節約する方法は、手続きを専門家に依頼せず、自分自身で行うことです。

不動産登記の登録免許税や、信託契約書を公正証書とするための公証役場の手数料などは、自分で手続きを行った場合でも必要となりますが、それ以外は、費用がかかりません。

ただし、家族信託は複雑な契約内容となりますので、間違いや漏れがあった場合は法律的に無効となる可能性があります。

また、専門家を交えず手続きを行ったことで、家族(相続人となる人)とトラブルになることもあります。

ですから、単純に専門家に依頼しないという選択ではなく、いくつかの事務所に相談して、費用と成果のバランスを見ながら、信頼できる事務所へ依頼することが大切ではないでしょうか。

まとめ

家族信託において、信託財産に不動産がある場合、法務局へ信託登記を行う必要があります。

信託登記費用には、不動産の固定資産税評価額に応じてかかる登録免許税と、手続きを依頼した場合の司法書士報酬費用が必要になります。

信託契約書の作成をはじめ、手続きを自身で行うことは可能ですが、法的知識も必要になりますので、弁護士等の専門家への依頼をご検討ください。

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