この記事でわかること
- 手許現金の概要
- 手許現金の代表例や計上方法
- 手許現金は税務署にバレるか?
- 相続調査とペナルティについて
相続が発生すると、被相続人の財産を正確に把握し、相続税の申告を行う必要があります。
中でも、特に見落としやすいのが手許現金です。
手許現金は相続財産として計上しなければならず、申告漏れがあると税務調査の対象になる可能性があります。
本記事では、手許現金の基本的な考え方やケース別の計上方法、税務署に指摘されやすいポイントまで、わかりやすく解説します。
手許現金について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
手許現金(てもとげんきん)とは
手許現金とは、被相続人が亡くなった時点で手元に残っている現金のことを指し、手許金(てもときん)とも呼ばれます。
手許現金は、銀行などの金融機関に預けていない現金のことです。
たとえば、財布、タンス預金、貸金庫、亡くなる直前に引き出した現金(直前引き出し預金)が該当するでしょう。
亡くなった時点で未使用の現金も手許現金として扱われます。
たとえば、被相続人の未払いの公共料金や医療費、葬儀費用も手許現金として計上します。
手許現金は、金額の多少にかかわらず相続財産として相続税の申告対象となります。
預金のように金融機関の証明がないため、相続人自身が正確に把握し、税務署に明確にわかる形で申告書に計上しましょう。
【ケース別】手許現金の計上方法
手許現金として計上するかどうかは、現金の使い方や保管状況によって判断が分かれます。
特に注意が必要なのは、亡くなる直前に引き出された現金です。
使い道がはっきりしないと課税対象として扱われることや、ペナルティを課される可能性があります。
ここでは、代表的なパターンをもとに、具体的な考え方を見ていきましょう。
公共料金・医療費・葬儀費用
相続開始の時点で、すでに引き出されている現金がある場合は、その全額を手許現金として計上する必要があります。
たとえ生活費や医療費、葬儀の支払いに使う目的で引き出した場合でも、手許現金として計上しなければなりません。
たとえば、葬儀のために300万円を引き出し、実際の費用が200万円だったとします。
その際は、300万円を手許現金として計上し、支出した200万円は債務控除として差し引くことになります。
公共料金や医療費も同様です。
一度全額を手許現金として計上し、その後で領収書などをもとに、必要な控除を行います。
税務署は、預金の出金履歴や現金の使い道を細かく確認します。
記録が残っていなければ、税務調査で指摘を受ける可能性があるでしょう。
現金を使った理由や金額をきちんと記録し、領収書を保管しておくことが大切です。
被相続人の現金と配偶者の預金が混ざっているケース
夫婦で家計を支えていた場合、それぞれの預金をまとめて管理していることがあります。
生活費の出入りが一緒になっていると、被相続人の分と配偶者の分を分けるのが難しくなることもあります。
このようなときは、まず支払いの持分をはっきりさせることが必要です。
過去の入出金記録を確認し、使い道や出金の割合から判断していきましょう。
たとえば、10年分の銀行履歴をもとにATMでの出金や生活費の支払い状況を調べて、おおよその金額を推計する方法があります。
数字に基づいた分け方であれば、税務上も納得されやすくなるでしょう。
どうしても明確に分けるのが難しいときは、合理的な推定を行いましょう。
その際には、判断の根拠となる記録を残しておくことが大切です。
判断に迷う場合は自分だけで進めず、税理士などの専門家に相談して対応するのが安心です。
手許現金は税務署にバレる?
手許現金は通帳に記録が残らないため「税務署には分からないのでは」と考える人もいます。
しかし、税務署は預金の動きや生活費の支出などを確認し、多角的に調査を行うため、高確率で発覚します。
相続開始の直前に多額の現金を引き出していた場合や、計上額が明らかに少ない場合は、調査対象になる可能性があります。
理由の説明ができないと、思わぬ指摘を受けることもあるでしょう。
そのため、日頃からの管理と記録が大切です。
ここでは、手許現金がどのように調べられるのか、また調査時のリスクやペナルティについて説明します。
手許預金は税務署にバレるのか?
手許現金は銀行のような明確な記録がないため、申告しなければ分からないと思われがちです。
しかし、税務署は過去10年分程度の預金口座の出入金履歴を詳細に調査します。
たとえば、死亡直前に多額の現金が引き出されていた場合、その使途や残高について厳しく確認されます。
また、日常的に現金を引き出しているのに支出が見合っていない場合も、手許現金として判断されることがあります。
タンス預金や貸金庫の現金も、預金の動きや生活費の状況から推測されるため、隠し通すことはできません。
過少申告や無申告は違法行為のため、故意に隠すとペナルティは重くなり、脱税とみなされると犯罪となります。
税務署の調査官は経験豊富で、矛盾や不自然な点があれば徹底的に追及されるため、正確に申告しましょう。
ペナルティと税務調査
手許現金を故意に申告しなかったことが発覚すると、様々なペナルティが科されます。
主なものは、以下のとおりです。
- 過少申告加算税(追納税額の10%~15%)
- 無申告加算税(15%~20%)
- 延滞税(年2.5%~8.8%)
- 重加算税(35%~40%)
また、虚偽や不正行為の脱税は、刑事罰が科される可能性もあります。
税務調査では、亡くなる直前の預金引き出しや多額の現金の動きについて、使途や残高の説明を求められます。
説明が不十分な場合や虚偽が判明した場合は、他の財産についても疑いを持たれ、調査が拡大することがあるでしょう。
手許現金の計上漏れが判明した場合は、速やかに修正申告を行う必要があります。
それによって、ペナルティを軽減できる場合もあるため、専門家に相談し、早めに対応しましょう。
まとめ
手許現金の取り扱いは、相続税申告の中でも難しい分野です。
現金の流れや保管状況によっては、思わぬトラブルや税務署からの指摘につながることもあるでしょう。
不安や疑問がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。
適切な計上方法や必要な証拠書類の準備、税務調査への対応策など、状況に応じた具体的なアドバイスが受けられます。
安心して相続手続きを進めるためにも、自己判断せず、専門家の力を活用することが大切です。