この記事でわかること
- 税務署から贈与のお尋ねが来る時期やタイミングがわかる
- 税務署から贈与のお尋ねが来たときの対処法がわかる
- 贈与税の申告ミス・無申告へのペナルティがわかる
目次
贈与税のお尋ねが来る時期やタイミングはいつ?
まず、贈与のお尋ねが来る時期やタイミングについて見ていきましょう。
不動産の購入時
贈与のお尋ねとは、正式には「お買いになった資産の買い入れ価額などについてのお尋ね」といいます。
このお尋ねが来るタイミングは、不動産を購入して半年や1年程度経過したときです。
なぜこのタイミングでお尋ねが来るのか、その理由などを解説します。
法務局から税務署に通知がいく
不動産が売買されると、売主から買主に権利が移転したことを公にするため、土地や建物の名義変更をおこないます。
売買にともなう「不動産の名義変更」というのは一般的な呼び方で、法律的には法務局でおこなわれる所有権移転登記のことをいいます。
この土地や建物の所有権移転登記がおこなわれると、法務局から税務署に通知がなされます。
つまり、法務局からの情報により、税務署は不動産の所有者が変わったことを把握しているということです。
不動産を購入して登記したときが、税務署から贈与のお尋ねが来る時期といえます。
税務署は不動産の所有権移転登記の内容を見て、贈与があったのではないかと疑えば、受贈者とおぼしき人に贈与のお尋ねを出します。
ただし、所有権移転登記後、すぐに税務署からお尋ねがあるとは限らないので、油断しないようにしましょう。
共有持分が収入と不相応な場合は疑われる
また、夫婦や親子が協同で不動産を購入したが、一方の共有持分が収入に不相応な場合も、税務署が贈与を疑います。
事例
たとえば、夫が2700万円、妻が300万円出して、3000万円のマンションを購入した例で考えます。
この例では夫がマンション購入資金の10分の9、妻が10分の1を支出しています。
マンションの持分も、夫が10分の9、妻が10分の1とすべきです。
しかし、夫婦で夫の持分と妻の持分を2分の1ずつとするなど、実際に出した資金と違う内容で登記したとします。
この例で妻の持分を2分の1としてしまうと、妻は1500万円の資金を出したことになります。
妻が夫の扶養家族であるなど収入が低ければ、妻に1500万円もの資金はないのではないかと税務署は考えるでしょう。
税務署が疑うのは、夫や親族から妻への高額な贈与です。
実際に妻が負担した資金が300万円なら、夫から妻への1200万円の贈与となり、贈与税がかかる可能性があります。
住宅ローンを利用せずマンション・住宅などの不動産を一括購入
マンション・住宅を購入する際に、住宅ローンを利用せずに現金で一括購入した場合も、贈与が行われていないか疑われることがあります。
収入や所得が購入したマンション・住宅の価格よりも明らかに少ないと、購入資金をどのように調達したのかを調査するために、贈与のお尋ねが来ます。
例えば、20代で年収が300万円なのに5000万円のマンションを一括購入した場合、誰かから贈与された資金で購入したのではないか、所得の申告漏れがあるのではないかと思われてしまいます。
相続が発生した時
相続が発生した時も、贈与のお尋ねが来る場合があります。
相続のタイミングで、被相続人と相続人間の金銭の流れに税務署が贈与の疑いをもつ可能性があるためです。
なお、相続発生以前3年間の贈与については暦年課税の控除がありません。
くわしくは後述します。
その他
贈与のお尋ねがあるのは、おもに受贈者が不動産を購入したときや、相続が発生した時などです。
しかし、贈与が行われた後すぐに、贈与のお尋ねが来るとは限りません。
贈与から数年が経過したあとに、贈与のお尋ねが来ることもあるので注意してください。
贈与税の申告ミス・無申告へのペナルティー
贈与税がかかるケースなのに、申告をしなかったり申告ミスをしたりすると、どうなるでしょうか。
贈与税の申告ミス・無申告をすると次の3種類のペナルティを受ける恐れがあります。
贈与税の申告ミス・無申告へのペナルティ
- 延滞税
- 無申告課税
- 重加算税
それぞれのペナルティの詳細については次の通りです。
延滞税
贈与税がかかるのに申告しなかった場合、贈与税だけでなく、贈与税の延滞税が課されます。
延滞税は、期限までに納税しなかったことに対する税金です。
延滞税の税率は、納付期限から2ヶ月が過ぎているかどうかで税率が変わります。
令和3年1月1日以後の延滞税は以下の通りです。
① 納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合(※1)+1%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表①の割合が適用されます。
②納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合(※1)+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなり、下表②の割合が適用されます。
(※1) 延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
期間 割合 ① ② 令和3年1月1日~令和3年12月31日 2.5% 8.8% 令和4年1月1日~令和4年12月31日 2.4% 8.7% 引用:国税庁|延滞税の割合
無申告加算課税
無申告加算税は、申告をしていなかった場合にかかります。
無申告加算税の税率は、税務調査より前に申告したのか税務調査後に申告したのかなど、どの時点で申告したかによって税率が変わります。
- 税務調査の事前通知より前に自主的に申告した場合…5%
- 税務調査の事前通知を受けてから更正があると知らされるまでの間に申告した場合…50万円以下の部分は10%、50万円以上の部分は15%
- 税務調査後に申告した場合…50万円以下の部分は15%、50万円以上の部分は20%
重加算税
重加算税は、悪質な無申告の場合に課されるもので、次の税率によります。
- 無申告の場合…40%
- 過少申告の場合…35%
平成29年以降の申告期限で、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課税されていた場合は、税率がさらに10%加算されます。
贈与税に関して税務署からお尋ねが来たときの対処法
次は、贈与のお尋ねには、何が書かれていて、どのような対処が必要かを見ていきましょう。
贈与税のお尋ねに記載される内容
前述したとおり、贈与のお尋ねとは「お買いになった資産の買い入れ価額などについてのお尋ね」という書面です。
この書面には以下の項目が記載されているので、それぞれに回答することになります。
贈与のお尋ねの内容
資金の調達方法の関係 |
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買い入れた人の関係 |
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買い入れた資産の関係 |
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贈与税のお尋ねに対する回答義務
贈与のお尋ねに対する回答義務はありません。
1度放置しただけでいきなり、無申告のペナルティーが課されるわけではなく、何度かお尋ね文書が送付されます。
しかし、贈与のお尋ねに回答せず放置しておくと、税務署の心証が悪くなってしまいます。
できるだけ早く、贈与のお尋ねには回答しましょう。
資金の証明文書を残す
マイホーム購入資金が自己資金だと証明するために役立つ書類は、税務署から問い合わせが来たら提出できるようにしておきましょう。
住宅ローンの契約書や、預金通帳の写しなどにより、自己資金を有していることを証明できます。
また、親族からマイホームの頭金を借りた場合、借用書を作成しなかったり、月々の返済領収書をもらわなかったりする人が多いでしょう。
しかし、借り入れただけなのに贈与と疑われると困るので、親族間の金銭の貸借であっても借用書や返済領収書を残す必要があります。
なお、借用書には元金だけでなく、利息の定めなどがあれば記載するとよいでしょう。
贈与時に使える特例
親族間で資金援助を受けるのであれば、できるかぎり贈与税を軽減したいと思う方も多いのではないでしょうか。
贈与税の軽減方法をいくつかご紹介します。
贈与税の軽減制度
暦年贈与 | 年間110万円まで課税されない |
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住宅取得資金贈与の特例 | 両親や祖父母(直系尊属)からの贈与 |
おしどり贈与 | 婚姻期間20年以上の夫婦間の贈与 |
なお、ここに紹介する軽減方法には、細かな適用要件を満たしていないと受けられない制度もあります。
贈与を検討している方は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
以下、それぞれの特例について詳しく見ていきます。
暦年贈与
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までに受けた贈与の額から、110万円を控除できるという制度です。
たとえば、令和3年1月1日から12月31日までに受けた贈与の額が110万円なら、110万円を控除することができるので、贈与税はかかりません。
ただし、相続前3年間の贈与は、相続税の対象となるので注意してください。
住宅取得資金贈与の特例
住宅取得資金贈与の特例の非課税限度額は、住宅取得契約締結日や、取得した住宅の性能により異なるので注意が必要です。
また、特例を受けるためには、対象住宅の面積や性能など細かな要件を満たしていなければなりません。
参考:住宅取得資金贈与の特例の主な適用要件
受贈者の要件 |
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取得・新築・増築する住宅 | 取得する住宅の面積・性能の要件あり |
申告手続き等 | 非課税の特例の適用を受ける旨を申告書に記載して、納税地の所轄税務署に贈与税の申告が必要(贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間) |
なお、配偶者の父母または祖父母からの贈与には、住宅取得資金贈与の特例は適用されません。
住宅取得資金贈与の特例は、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに受贈者が特例の適用を受ける住宅に居住していなければなりません。
詳しくは国税庁に確認したり、税理士に相談したりしましょう。
おしどり贈与の特例
おしどり贈与とは、夫婦間の居住用不動産贈与の特例のことです。
おしどり贈与の特例は、居住用不動産や、その取得資金の贈与に適用され、夫婦間で収益用不動産を贈与しても受けられません。
おしどり贈与の適用を受けられれば、最高で2000万円まで非課税となります。
おしどり贈与(夫婦間の居住用不動産贈与)の特例の主な要件
夫婦の婚姻期間 | 20年以上 |
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対象となる贈与 | 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与 |
居住要件 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、受贈者が現実に居住していること |
手続き | 一定の書類を添付して、贈与税の申告を要する |
まとめ
贈与のお尋ねが来る時期やタイミング、対処法について解説してきました。
まず、贈与のお尋ねが来てもあわてないことが大切です。
嘘をつくと税務署の心証が悪くなってしまいます。
親族間で金銭を贈与する場合、贈与税がかからないかどうか、贈与税を軽減する特例を使えないかどうか事前に検討することをおすすめします。
贈与の特例は細かな適用要件があるので、特例を使いたい場合は税理士など専門家に相談するとよいでしょう。
大切な家族に上手に資金援助をするためにも、賢い贈与税対策をおこなってください。