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最終更新日:2022/12/15

土地の相続税を自分で計算する手順【相続税の節税と評価額の調べ方についても解説】

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

土地の相続税を自分で計算する手順

この記事でわかること

  • 相続税の計算が自分でできる
  • 相続税の軽減方法がわかり節税ができる
  • 土地の評価額の調べ方がわかる

「相続が発生したら我が家の相続税は一体どれくらい?」

誰もが一度は気になったことがあるのではないでしょうか。

かつてはお金持ちだけが関係すると考えられていた相続税。

しかし2015年の税制改正後、相続税の支払い対象者はたいへん増えています。

今や相続税はお金持ちだけの悩み事ではないのです。

この記事では相続税の計算方法と節税対策について解説していきます。

また相続財産のうちかなりの割合を占める土地の評価額の調べ方についても解説します。

相続税を自分で計算してみよう

そもそも相続とは「ある人の財産をその人の死後に特定の人に引き継がせる」ことをいいます。

この引き継がせる財産が課税最低限度額以下だと相続税はかかりません。

では、相続税がかかる課税最低限度額とはいったいどれくらいなのでしょうか。

実は相続税がかかるかどうかは以下の計算式で簡単に判別できます。

課税最低限度額(相続税の基礎控除額)=3,000万円+600万円×法定相続人の数

たとえば、自分の父が亡くなり法定相続人が母・自分の2人の場合には3,000万円+600万円×2=4,200万円が課税最低限度額となります。

相続財産が4,200万円以下なら相続税を払う必要はありません。

法定相続人が母・自分・弟の3人の場合には3,000万円+600万円×3=4,800万円までが無税となります。

誰が法定相続人なのか?

上記計算式の法定相続人とは民法で定められた相続人のことです。

遺言書による指定がある場合を除き、相続人・相続割合は以下の規準に従うことになっています。

亡くなった人の配偶者は常に相続人となります。

配偶者以外の人は次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

  • 1.亡くなった人の子供
    法定相続分:配偶者1/2、子供(全員で)1/2
  • 2.亡くなった人の父母
    法定相続分:配偶者2/3、父母(全員で)1/3
  • 3.亡くなった人の兄弟姉妹
    法定相続分:配偶者3/4、兄弟姉妹(全員で)1/4

相続税の計算式は?

では相続財産が課税最低限度額を超える場合、どれくらいの相続税がかかってくるのでしょうか。

相続税は以下の計算式で算出できます。

相続税=法定相続分×税率-控除額

上記の法定相続分とは、課税遺産総額を各相続人に分配した金額です。

→法定相続分=課税遺産総額(相続財産-基礎控除額)×相続割合

この法定相続分にかかる税率と控除額は速算表で確認できます。

法定相続分 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

引用:相続税の速算表(国税庁)

相続財産7,000万円、法定相続人が配偶者と子供2人の場合の相続税は?

まず課税遺産総額を計算します。

相続財産から基礎控除額を差し引いたものが課税遺産総額になります。

→課税遺産総額=7,000万円-4,800万円=2,200万円

次に、各相続人の法定相続分を計算します。

配偶者:2,200万円×1/2=1,100万円
長男:2,200万円×1/4=550万円
次男:2,200万円×1/4=550万円

そして、速算表から税率と控除額を確認して相続税を計算します。

配偶者:1,100万円×15%-50万円=115万円
長男:550万円×10%-0=55万円
次男:550万円×10%-0=55万円

115万円+55万円+55万円
=225万円がこの一家で支払うべき相続税の総額になります。

相続税を軽減させるには

相続税を軽減させるためには様々な方法があります。

相続税のうち大きな割合を占めるのは土地の評価額。

それでここでは特に土地に関連して相続税を大幅に減らせる3つの方法を確認しましょう。

大幅減額される小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人の事業・居住用であった宅地は評価額を20%で計算するという特例です。

相続税の軽減に最も効果のある特例の一つです。

たとえば被相続人が生前に居住していた5,000万円の宅地を相続した場合、相続税を計算するうえでの評価額は1,000万円で良いことになります。

実に最大80%も相続税評価額が減額されるのです。

それだけにこの特例を利用するには一定の要件が定められています。

80%減額の特例を受けるには1.特定居住用宅地等、2.特定事業用宅地等、3.特定同族会社事業用宅地等に該当しなければなりません。

4.貸付事業用宅地等の場合は50%の減額となります。

他にも相続人や手続きに関して要件が定められています。

そのためこの特例を利用するためには生前からの準備が大切になってきます。

生前贈与は上手に利用しよう

贈与税の課税率は相続税よりも高くなっています。

もともと贈与税は相続税逃れを防止するために作られた一面も持っているためです。

それでも相続税と贈与税をうまく組み合わせることで有利になることがあります。

贈与税の税率が相続税より低い範囲で贈与するのも一つの方法です。

これには相続財産そのものが減るという効果もあります。

また相続の前に贈与税の配偶者控除を利用するのも有効な節税方法です。

これを活用すると婚姻期間20年以上の配偶者への居住用土地・建物の贈与は2,000万円まで無税となります。

贈与税の基礎控除110万円を加えると実に2,110万円の控除となるわけです。

相続税との兼ね合いを検討しつつ是非活用したい制度です。

相続時精算課税制度の賢い活用方法

相続時精算課税制度とは相続税と贈与税を一体化した制度です。

これを利用すると生前に贈与した財産は最大2,500万円まで無税となります。

その後、相続時に非課税だった贈与分をも合計して相続税を計算する制度です。

原則60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫に贈与する場合に選択できます。

将来的に相続税の負担が少ない場合は2,500万円の非課税枠内で財産を早期に生前贈与できるという利点があります。

この制度は「将来値上がりする財産を時価が上がる前に贈与しておこう」という場合に向いています。

贈与時の課税価格で相続税が計算されるためです。

将来的に大幅に値上がりする財産をこの制度で贈与すると節税効果があります。

逆に時価が値下がりした場合は相続税が割高になります。

この制度を一度選択すると「暦年課税制度」に戻すことはできません。

他にも注意すべき点がありますのでメリット・デメリットをよく考えて活用すべき制度といえるでしょう。

土地の相続税を申告する際のポイントについて

相続税の申告税は、被相続人が亡くなられた日の翌日から10か月以内に申告しなければなりません。

期限まで1年近くあるからと油断は禁物。

葬儀、告別式など祭祀行事が重なり10か月はあっという間に過ぎてしまいます。

特に土地などの不動産の相続の場合は注意が必要です。

すぐに換金して分割することができないために誰が相続するのか協議が紛糾することがあるためです。

申告が遅れたり意図的に申告しなかったりすると、かなり厳しいペナルティ(延滞税や重加算税)が課せられてしまいます。

また、先に解説した「小規模宅地等の特例」を受けるためには申告期限までにその宅地を相続人が取得していなければなりません。

遺産分割の協議が成立し分割の割合と方法を確定しておく必要があるわけです。

遺産分割協議や申告に必要な書類の準備は先延ばしにせず着実にやっていきましょう。

税額計算は正確に

相続財産をきちんと評価して申告したつもりでも、あとから新たな財産が出てきたり申告漏れが見つかったりすることがあります。

また計算した税額が間違っていたということもあります。

提出した申告書に対しては多くの場合、税務調査が行われますので申告漏れは必ず見つかるものです。

結果、ペナルティ(加算税や延滞税)がかけられます。

税務調査前に自主的に修正申告をした場合でも、納付期限後であれば延滞税がかかります。

なお、修正申告書には相続人全員が記入しなければなりません。

つまり申告漏れのあった財産を相続しなかった人の税額も自動的に増えることになるわけです。

土地の評価額はどのように決まるのか

正確な税額計算には財産の評価額を正確に算出することが不可欠です。

ここでは複雑になりがちな土地の評価額を計算する方法を解説していきます。

土地の評価方式には下記の2つの方法があります。

路線価方式/倍率方式

どちらを取るかはその土地の場所によって決まります。

市街地の土地は路線価方式

市街地にある土地は「路線価方式」で評価します。

これは国税庁が定めた路線価(道路につけられた価額)をベースにして評価する方法です。

正方形などの標準的な形以外の土地は補正率によって減額されます。

路線価方式による評価方法は以下の通りです。

相続税評価額=路線価×面積×各補正率(奥行価格補正率など)

路線価は公示価格の80%程度で納税者に過度の負担を強いることが無いようになっています。

1年に1度更新され、誰でも国税庁のホームページから簡単に確認できます。

市街地以外の土地は倍率方式

市街地以外の土地は「倍率方式」で評価します。

これは固定資産税の評価額をベースにして評価する方法です。

倍率方式による評価方法は以下の通りです。

相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

固定資産税評価額は市町村にある固定資産課税台帳で、評価倍率は国税庁のホームページで確認できます。

まとめ

相続財産の評価額を正しく算出して相続税を正確に計算することは、スムーズな相続手続きに非常に大切です。

特に土地の税額計算は金融資産とは異なり複雑になりがちなので注意が必要です。

相続税を抑えるためには特例や控除を上手に利用する必要があります。

でも条件が複雑で適用できるのに気づかなかったり、判断が難しかったりする場合もあります。

相続財産に土地が含まれている場合は多少報酬がかかっても相続専門の税理士などに相談するのが得策です。

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メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

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