この記事でわかること
- タンス預金にかかる贈与税ついて理解できる
- タンス預金がある場合の手続きがわかる
- タンス預金の無申告についてのリスクがわかる
タンス預金という言葉を最近あまり耳にしなくなったかと思います。
今回は、そんなタンス預金にまつわる贈与税についての解説です。
現金そのものだからといって、タンス預金を譲り受けた場合に何もしなくていいわけではありません。
基本的な知識として、財産の贈与や相続には、税金が課税されることを覚えておきましょう。
では、さっそく、詳しくみていきましょう。
目次
タンス預金で贈与税はかかるのか
贈与というのは、贈与者が受贈者に財産を無償で与えることをいいます。
これには、贈与税が課せられます。
タンス預金であった現金を贈与した場合には、これを受け取った人(受贈者)に贈与税が課せられます。
しかし、どんな贈与にも税が課せられるわけではありません。
個人から財産をもらった時で、それが1月1日から12月31日までの1年間に110万円を超えると贈与税がかかります。
贈与税がかかる贈与の場合には、翌年の2月1日から3月15日までの期間に、受贈者の住所地を管轄する税務署に対して、贈与税を申告し、納付をすることになります。
タンス預金の贈与税が税務署にバレる理由とは
このタンス預金の贈与ですが、自己申告しなければ税金を免れることができると考えるかもしれませんが、そう甘くはありません。
税務署はどのようにして、タンス預金を把握することができるのでしょうか。
税務署の調査権限
税務署には、さまざまな情報を調査、閲覧する権限があります。
たとえば、過去(10年分)の預貯金の入出金履歴、不動産の登記情報、自動車の登録情報、所得など、比較的大きな金額のお金が動くような取引が主なものです。
税務署により発覚するケース
たとえば、以下のようなケースで発覚するということがあります。
- ・生前に預金からいくらか引き出し、それをタンス預金に、そして預金残高のみを相続の際に申告したケース
この引き出した金額が全てタンス預金となったのか、それとも生活費として消費したのか、という点については、調査の際に突き詰められます。
そこで矛盾が生じ、発覚するということになります。 - ・贈与を受けたタンス預金を元手に、不動産や自動車などを購入したケース
不動産や自動車など、ある程度の額ですし、さらに、これらは登記や登録制度がありますので、所有した時期や所有者は調べることが可能です。
受贈者の元々の財産を検討し、不動産や自動車を手にすることに違和感を覚えるような場合には、贈与があったことが疑われ、お金の動きを調べられ、発覚につながります。
このように、税務署が調査した情報を元に、贈与税の申告漏れをしていそうな者を追跡することができるのです。
全ての人が税務調査の対象となるわけではありません。
しかし、税務調査に選ばれれば、バレずに済むことはほとんどあり得ないと心しておくと良いでしょう。
タンス預金が無申告な場合のリスクについて
タンス預金の贈与について、無申告の場合には、さまざまなリスクが存在します。
見つからなければ大丈夫と軽い考えでいると、取り返しのつかない事態になる場合もあります。
以下にそのリスクを解説します。
税務上のペナルティ
贈与税の無申告や過少申告が判明すると、追徴課税を課される場合があります。
この追徴課税には、「加算税」と「延滞税」とがあります。
「加算税」とは、本来納税すべき納税の義務を怠ったことに対する懲罰的な意味を持つものです。
「延滞税」とは、本来納税すべき期日に納税をしなかったための利息請求の意味を持つものです。
加算税には、「過少申告加算税」、「無申告加算税」と「重加算税」とがあります。
「過少申告加算税」とは、本来申告すべき額よりも少なく申告した場合に課されるもので、税率は原則10%です。
「無申告加算税」とは、本来申告すべき期日までに申告しなかった場合に課されるもので、税率は原則15%です。
「重加算税」とは、本来申告すべき期日までに申告せず、かつ偽装、隠蔽による悪質性があると判断された場合に課されるもので、税率は原則35%です。
なお、「加算税」と「延滞税」はどちらかではなく、上乗せしてどちらも課されることになりますので、結果かなり余分に税金を納めることになってしまいます。
悪質性がなかったとしても、納税が送れれば延滞税がかかるなど、期限が過ぎれば発生してしまうものですので、期限までに全て申告し、納税することが大切です。
刑事罰
無申告の場合には、脱税の意思があろうと、なかろうと、刑事罰が科される場合があります。
贈与税の無申告は、脱税と認められるからです。
脱税の意思がなくても、懲役1年以下または50万円以下の罰金、脱税の意思があれば、懲役5年以下または500万円以下の罰金という重いものになり得ます。
贈与税の納税を逃れる経済的なメリットと刑事罰のリスクを天秤にかければ、バレる、バレないに関わらず、納税の義務を果たすことが賢明だと思ってもらえるはずです。
タンス預金をする場合のメリット・デメリット
国民が抱えるタンス預金の額は数十兆円とも言われています。
タンス預金の贈与には贈与税がかかる場合があり、その無申告にはリスクがあることを先に解説しました。
それを念頭に入れてもらった上で、メリット・デメリットを解説します。
タンス預金のメリット
まずは、メリットから解説します。
資産額を把握されない
今後、政府はマイナンバー制度を活用し、銀行口座と紐付けをすることによって、個人の預金額を把握する政策を考えています。
銀行口座にないタンス預金に関しては、マイナンバーとの紐付けはできませんので、タンス預金の額が他者に知られることはありません。
資産の凍結を避けられる
たとえば、相続が発生した時のことを考えてみましょう。
相続財産に銀行預金がある場合に、死亡を銀行に申告しますと、その口座は凍結されます。
凍結されることによって、遺産分割協議を経て、さらに口座のある銀行に遺産分割協議書を持参し、解約や口座の名義変更などの手続きが必要です。
現金も遺産分割協議を経てから分割をし、相続人が受け継ぐことは変わりませんが、銀行口座の場合に踏まなければならない銀行での手続きは必要ありません。
簡素な手続きで済むことがメリットの一つと言えるでしょう。
銀行倒産のリスク軽減
銀行に預金をしている場合、万が一その銀行が倒産となった場合には、預金額全額について保証されないというリスクがあります。
日本では、銀行倒産は考えにくく、銀行への信頼は厚いかと思いますが、実際はこのようなリスクも存在しているのです。
このリスクを避けられるというのが、タンス預金です。
タンス預金のデメリット
メリットがある一方で、デメリットも存在します。
次は、デメリットをみていきましょう。
タンス預金は増えない
タンス預金は、言ってみれば、現金を手元においてくだけになりますので、運用はされていない状態です。
近年は、銀行に預けた場合の利息はごくわずかではありますが、預金には利息がつきます。
また、株式や投資信託のように積極的に運用できるようなものもあります。
その一方、運用さないタンス預金は、常に同じ額がそこにあることになります。
このように、タンス預金は銀行預金と比較すると、増えないというデメリットがあります。
災害、犯罪のリスク
タンス預金を狙った空き巣や詐欺などの犯罪に巻き込まれる可能性があります。
近年は、ニュースでもご存知の通り、高齢者を狙った詐欺被害も多発しています。
犯人は巧妙な手口で、タンス預金の存在を暴き出し、事件に巻き込まれることがあります。
また、不注意による出火で家が火事となってしまった場合や大きな地震や洪水による自然災害によって、タンス預金が探し出せなくなることも考えられます。
このように、現金であるタンス預金ならではのリスクが存在するというデメリットもあります。
税務上の申告義務違反
タンス預金について、贈与、相続が発生した場合は、贈与税や相続税の納税義務が伴います。
悪意の場合のように、タンス預金であればバレないであろうと申告をしない場合はもちろん、罰則、深刻な場合には刑事罰が科されます。
また、善意の場合のように、タンス預金の贈与、相続に申告義務があったことを知らなかった、うっかり忘れていたなどの場合にもペナルティが課されてしまいます。
タンス預金であれば、バレないという意識は禁物ですので、注意をしましょう。
このように、メリットのみで選択するのではなく、デメリットやそれに伴うリスクについても十分理解し、判断をすることが何事においても大切です。
税の徴収権には時効は何年?
これまで解説をしてきましたように、タンス預金でも贈与をすれば、贈与税がかかります。
この贈与税の徴収権にも時効があり、時効の期間が経過することによって消滅します。
具体的にこの徴収権とは、税務署が贈与税の無申告者に対して税務調査をすることによって、税額を税務署自ら(正確には、税務署長)が贈与税額を決定することのできる権限をいいます。
徴収権の時効期間が経過した時は、この権限がなくなり、税の申告・納付義務はなくなります。
この時効期間は、贈与税の場合は6年または7年、相続税の場合は5年または7年です。
6年と7年の違いは、原則6年となりますが、偽りやその他不正の行為により税額を免れた場合などの特別の事情がある場合には7年となります。
このことからもわかるように、申告の義務は怠らないようにしましょう。
この時効は、申告・納付の期限日から起算することになります。
これを起算日といいます。
申告・納付は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの期間となっており、翌年の3月15日が申告・納付期限日ということになります。
したがって、贈与税の時効期間の起算日は、贈与を受けた翌年の3月15日ということになります。
とはいっても、時効が認められないような事象もありますので、注意が必要です。
まとめ
みなさんがなるべく納税額を最小限にとどめたいと思う気持ちは当然です。
可能な限り少なくできる手段を考えること自体は悪いことではありません。
贈与税をなるべく軽減するために、どのような正しい方法があるのか、リサーチをし、検討する必要があるということです。
今回解説したリスクを犯してまで贈与税を免れたいでしょうか?
贈与税を節税するための合法的な方法は存在するのです。
贈与税の節税のためには何をする必要があるのか、税理士などの専門家や銀行に良い対策はあるか聞いてみたり、インターネットで調べるなどして、正しく節税をするようにしましょう。