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最終更新日:2024/9/19

単純承認とは?限定承認・相続放棄との違いや「みなし単純承認」について

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

この記事でわかること

  • 単純承認と他の相続方法との違い
  • みなし単純承認となるケース
  • みなし単純承認と判断されないケース

単純承認とは、相続人が、被相続人の権利義務をそのまま引き継ぐことをいいます。

単純承認は相続方法の原則のため、一定期間内に相続放棄や限定承認を行わない限り、単純承認したことになります。

しかし、相続放棄の手続を行った場合でも、相続人が行った財産的行為によっては単純承認したと「みなされる」場合があるので注意が必要です。

今回は、単純承認について、限定承認・相続放棄との違いや「みなし単純承認」などと合わせて解説します。

単純承認とは

単純承認(民法第920条)とは、被相続人の権利義務、つまりプラスの財産とマイナスの財産を「無限に」承継することです。

単純承認は、相続方法の中で最も一般的なものです。
相続方法には、単純承認の他に、以下のようなものがあります。

  • すべての権利義務を相続しない「相続放棄」(民法第938条)
  • プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認(民法第922条)

ここでは、単純承認について詳しく解説します。

単純承認の手続

単純承認する場合、特別な手続は必要ありません。

相続開始、つまり被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月(「熟慮期間」と呼ばれます)の間に、
限定承認または相続放棄の手続を行わなければ、単純承認したことになります(民法第921条2号)。

単純承認のリスク

単純承認を行った場合、その相続人は「無限に被相続人の権利義務を承継する」(民法第920条)ことになります。

無限に権利義務を承継するため、、単純承認には「マイナスの財産がプラスの財産より多い場合は、相続により借金を背負う」というリスクがあります。
相続によって借金を背負う事態を避けたいとすれば、相続開始を知ってから3カ月の熟慮期間の間に、相続放棄または限定承認の手続を行うことが必要です。
また、より注意すべき点として、後述する「法定単純承認」に該当する財産行為を行った場合には、単純承認したとみなされ、熟慮期間内であっても相続放棄ができなくなるということがあります。

単純承認と他の相続方法の違い

ここで、単純承認と、他の相続方法(限定承認・相続放棄)との違いをご説明します。

単純承認と限定承認の違い

限定承認(民法第922条)とは、相続人が相続したプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産も引き継ぐという相続方法をいいます。

マイナスの財産を引き継ぐ範囲

単純承認と限定承認は、プラスの財産を引き継ぐ点では共通しています。

両者の違いは、マイナスの財産を引き継ぐ範囲にあります。

単純承認の場合、法定相続分または遺言に従ってマイナスの財産も引き継ぐことになります。
これに対して、限定承認では、プラスの財産を超えるマイナスの財産は相続しない点で異なります。

たとえば、預金・不動産などのプラスの財産の相続分が1,000万円、借金や連帯保証債務などのマイナスの財産の相続分が1,500万円だったとします。

単純承認の場合は、どちらも無条件に引き継ぐので、計算上は500万円分のマイナスの財産のみを相続したのと同じことになります。

一方、限定承認の場合は、マイナスの財産についてはプラスの財産の1,000万円分のみ引き継ぐため、相続分はプラスマイナスゼロとなります。
仮に、マイナスの財産がプラスの財産よりも少なかった場合は、計算上は差引き分のプラスの財産を相続することになります。

手続の要否

また、手続の要否にも違いがあります。

単純承認の場合は前述したように、手続は必要ありません。
また、相続人が複数いる場合、単純承認することについては個別に決断できます。

これに対して、限定承認の場合、相続開始を知ったときから3カ月以内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認する旨の申述を行う必要があります(民法第924条)。

さらに、相続人が複数いる場合、限定承認を行うには全員が共同して行わなければなりません(民法第924条)

単純承認と相続放棄の違い

相続放棄(民法第938条)とは、被相続人の一切の権利義務を承継しないという相続方法です。
相続放棄をした場合、その人は「初めから相続人にならなかったもの」とみなされます(民法第939条)。

単純承認と相続放棄には、以下のような違いがあります。

財産を承継するかしないかの違い

単純承認の場合、被相続人の権利義務、つまりプラスの財産とマイナスの財産をすべて承継します。

一方、相続放棄をすると、初めから相続人にならなかったものとみなされます。
このため、借金を背負うこともない一方、相続放棄をしなければ相続人として取得しえた権利を主張することもできなくなります

手続の要否

また、手続の要否についても違いがあります。

相続放棄の場合は、熟慮期間内に、家庭裁判所に申述を行う必要があります(民法第938条)。
なお、相続放棄では限定承認と異なり、相続人が複数いる場合でも、相続放棄をすることについて法律上、他の相続人の同意は必要ありません。

ただし、ある相続人が相続放棄をすると、他の相続人は限定承認ができなくなります
このため、マイナスの財産がある場合は、相続放棄について事前に他の相続人の承諾を得ることをおすすめします。

単純承認が適しているケース

単純承認が適しているケースは、プラスの相続財産がマイナスの相続財産よりも多いことが明らかな場合です。

相続人自身にも相応の財産があり、本人が「相続すると相続税などの手続が煩わしく感じる」「親の財産で楽をしていると思われたくない」などと考えているといった事情がない限り、プラスの財産が上回る場合には、単純承認を選択するほうがよいでしょう。

【注意】みなし単純承認と判断されるケース

みなし単純承認とは、相続人が単純承認の意思表示をしていない場合でも、「法定単純承認」に該当する行為をすると、単純承認とみなされることをいいます(民法第921条)。

みなし単純承認と判断されるケースとしては、以下が挙げられます。

相続財産の全部または一部を処分したとき

相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合は、単純承認したとみなされます(民法第921条1号)。
「処分」とは、相続財産の現状や性質を変更する行為や、法律上の変動を生じさせる行為を意味します。

たとえば、不動産を売却する、預貯金を解約する行為がこれに該当します。

ただし、相続人が、相続財産から被相続人の債務を弁済した場合、相続財産の一部を処分したことにあたるか見解が分かれています。

熟慮期間内に限定承認または相続の放棄をしなかったとき

熟慮期間内に限定承認または相続の放棄をしなかった場合は、単純承認したものとみなされます(民法第921条2号)。

みなし単純承認と判断されないケース

以下の場合には、法定単純承認には該当しないと考えられています。

被相続人の預貯金を解約して葬儀費用等を支払った場合

葬儀費用の支払いについては、社会通念に照らして不相当に高額にならない限り、被相続人の財産の処分には該当しません。
これは、葬儀が執り行われるのが通例であり、社会的儀礼としてこれを執り行う必要性が高いことや、その時期の予測が困難である一方で通常相当額の支出を伴うという事に配慮してのことです。
また、人が死亡した場合には火葬が義務づけられており、葬儀費用の支出は公的な義務の履行の側面があるためです。

当該相続人を受取人とする生命保険の保険金を受け取った場合

たとえば、相続人が子ども1人で、受取人がその子どもになっている生命保険について、その子どもが保険金を受け取った場合は、みなし単純承認には該当しません。

生命保険の保険金は、相続財産ではなく、受取人固有の財産であることが判例上も確立しています。
したがって、相続放棄をする予定の人が生命保険金を受け取っても問題ありません。

相続人が自分の財産から入院費用などを立替払いした場合

この場合、単純承認とみなされる可能性があります。
したがって、相続人が自分の財産から被相続人の支払いを立替払いして、相続すると判断した後に被相続人の財産から清算することをお勧めします。

病院で亡くなった被相続人の入院費用を、相続人が自分名義の預貯金から支払った場合などがこれに該当します。

相続人が被相続人の携帯電話・クレジットカードを解約した場合

被相続人の携帯電話やクレジットカードを相続人が解約する行為は、利用料金の継続発生による相続財産の減少を抑えるために行ったものといえます。

したがって、相続財産の処分とはみなされず、みなし単純承認には該当しません。

まとめ

単純承認については、相続人が相続財産の全容を把握した上で、「プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ」という意思を明確に持っている場合には問題ありません。

一方、相続放棄するつもりでいたところ、うっかり財産を処分してしまい、みなし単純承認に該当するということが起こり得るので、注意が必要です。

また、相続放棄するかどうかの判断材料として、相続財産調査を正確に行う必要があります。
相続財産調査について弁護士に依頼すると、調査を迅速に進めながら、みなし単純承認に該当する行為についてアドバイスを受けられます。

相続放棄を考えている方や、財産調査の結果次第で相続放棄するか判断したいと考えている方は、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

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