この記事でわかること
- 事業承継で起こるトラブルの事例が数多くあることがわかる
- 事業承継で起こるトラブルへの対処法を知ることができる
- 事業承継により発生するトラブルを防ぐための方法がわかる
目次
事業承継で起きやすいトラブル例5つと対処法
会社の経営者が交代して、次の経営者に事業承継を行う場合、様々なトラブルが起こりやすいものです。
実際にどのようなトラブルが発生するのか、その内容を確認するとともに、対処法をご紹介します。
後継者が決まらない
会社の経営者が亡くなって相続が発生した場合、その会社の新たな経営者を決めなければなりません。
しかし、後継者を決めることが簡単ではない事例は少なくありません。
特に、後継者を決めていない状態で先代経営者が急逝した場合、後継者を誰にするかで相当に揉めてしまいます。
後継者の候補となる子どもなどの親族が社内にいる場合は、その人を中心に早急に後継者を決定しなければなりません。
親族でなくても、実質的に先代経営者に次ぐ立場にあった人が当面の後継者となることもあるでしょう。
また、社外に先代経営者の子どもがいる場合には、その人を会社に迎え入れる必要があることもあります。
トップ不在の状態は会社にとって好ましくないことから、まずは当面の経営者を決定するようにしましょう。
会社の株を引き継ぐ際に多額の税金がかかる
先代経営者が、会社の株式を大量に保有していることもあります。
中には、すべての株式を先代経営者が保有していることも考えられます。
先代経営者が経営から退く際には、この株式をどのように後継者が引き継ぐかが問題となります。
先代経営者が亡くなった場合は、その株式を相続する人をすぐに決定しなければなりません。
この時、会社の株式を相続することで、相続税の負担がかなり大きくなることもあります。
また、先代経営者が存命中であれば、すぐに株式を承継する人を決める必要はありませんが、株式を後継者に贈与しようとすれば、多額の贈与税が発生することとなります。
特に相続の場合、相続発生後に多額の税金が発生するのを防ぐことは難しいといえます。
相続発生前、あるいは事業承継を行う前に対策を考え、長い期間をかけて対策を実行する必要があります。
株式を複数の相続人で相続することとなった
前述したように、先代経営者が亡くなり、株式を相続する際に、多額の相続税が発生することがあります。
本来は、後継者が多くの株式を相続し、その後の会社の経営に支障が出ないようにしておく必要があります。
しかし、相続税の負担や相続人間の相続分を平等にするため、会社の株式を他の相続人も相続することがあります。
多数の株式を保有することで、株主総会で経営者自身の意思を反映しやすい状態となります。
しかし、他の相続人が株式を取得すると、経営者だけの意向で会社経営を行うことができなくなることがあります。
場合によっては、会社の代表者を別の人に変更させられる可能性もあるでしょう。
会社の株式の過半数を後継者が取得できるよう、前もって対策をしておく必要があります。
生前贈与や遺言書の作成など、亡くなる前に準備しておくことが重要といえます。
取引先から取引を拒否されてしまった
後継者が決定し、新たな経営者のもとで会社の再出発を切っても、必ずしも順風満帆とはいかない場合もあります。
それまで長年の取引があった業者の中には、先代経営者との個人的つながりが強かった人もいます。
そのため、先代経営者が退くと、取引を打ち切られてしまうことがあり得ます。
先代経営者から後継者へ事業をスムーズに引き継ぐには、先代経営者が第一線にいる間に対処しておく必要があります。
取引先とのつながりを維持できるよう、先代後継者と後継者が一緒に主要な取引先に挨拶に行くなど、後継者と取引先とのネットワークを構築しておく必要があるでしょう。
社内の従業員などの理解が得られない
事業承継で問題が起こるのは、対外的なことばかりではありません。
後継者に対して、従業員の中から不満が発生する可能性もあります。
先代経営者の子どもが後継者になった場合には、経験不足などの理由で不満を感じる従業員がいます。
また、外部から後継者を呼んだ場合、会社の実情や問題点に対する認識が不足しており、不満を感じる人が現れる可能性があります。
従業員が事業承継に対して不満を感じることのないよう、後継者には事前に会社の状況をよく理解してもらう必要があります。
また、従業員に対しては先代経営者が経営を退くことをいきなり伝えるのではなく、前もって伝える工夫をしなければなりません。
事業承継でのトラブル予防策
事業承継を行う際には、多くのトラブルが発生する可能性があります。
ただ、事前に対策しておくことで、その発生を未然に防ぐことができます。
どのような対策があるのか、どのような点で有効なのか、その内容を解説していきます。
自社株の評価額を下げる
自社株の評価額を下げると聞くと、マイナスなイメージを持つ方もいるでしょう。
しかし、会社の事業承継を円滑に行い、思いどおりに後継者に会社の経営権を移行するには、とても重要なことです。
株式の評価額が下がれば、その分先代経営者が亡くなった時に発生する相続税の額を減らすことができます。
また、株式の評価額が下がると、後継者に株式を贈与した時に発生する贈与税の額も減らせます。
自社株の評価額を減らすには、様々な対策が考えられます。
非上場会社の評価額は高くなる傾向があるため、上場を目指すのも対策の1つです。
また、会社が保有する資産に含み益がある場合は、売却しておくのも有効です。
一方、会社を赤字にすることで評価額を下げることもできますが、会社の運営に支障がないようにしなければなりません。
いずれの対策を行う場合も、実際に評価額が下がるまで時間がかかるので、長い目で見て取り組む必要があります。
先代経営者の持株数を減らしておく
事業承継でトラブルの原因となるのは、先代経営者が保有していた株式についてです。
そこで、先代経営者が保有する株式を事業承継の前に減らしておけば、トラブルになる可能性を減らすことができます。
事業承継を行う前に、経営者が保有する株式を後継者や子どもに贈与しておけば、事業承継時に発生する税金を減らすことができます。
ただし、株式を無計画に贈与すると、贈与した時に多額の贈与税が発生してしまいます。
そこで、1年あたり110万円の基礎控除を利用し、何年にも分けて贈与するようにしましょう。
この方法をとる場合は、事業承継前に長い期間をかけて贈与していく必要があります。
後継者候補を決めて育成する
ある日突然、事業承継をしなければならない状況になると、誰を後継者にするかで揉める可能性が高くなります。
そこで、先代経営者がまだ現役のうちに後継者を決めておき、事業承継が発生してもスムーズに引き継げるようにしましょう。
後継者を決めて、自身の仕事を教えながら、会社の状況を伝えていくことができます。
また、従業員や取引先にも、後継者として認知してもらえる時間ができるため、周りの理解も得やすくなるでしょう。
突然後継者を指名し、あるいは後継者を決めずに現役を退くことのないよう、準備をしておくようにします。
事業承継税制を利用する
事業承継を行う際に、相続税や贈与税の負担が大きくなることが多くあります。
そこで、事業承継税制を利用して、税負担を限りなく少なくすることができます。
後継者を決めれば、贈与税についての事業承継税制を利用し、株式を贈与しても納税が猶予されます。
また、相続税の事業承継税制を適用すれば、株式を相続して発生する相続税の納税を猶予してもらうことができます。
事業承継税制の適用を受けるためには、数多くの要件を満たさなければなりません。
また、実際に贈与や相続を行う前に特例承継計画を提出し、その認定を受けなければなりません。
適用を受けようと思った時にすぐ利用できるわけではなく、事前に準備が必要となることに注意しましょう。
まとめ
会社の事業承継は、単に会社の株式を子どもに引き継ぐだけでなく、また経営権を後継者に譲るだけでもありません。
後継者を決めたら、後継者に会社の状況や事業の進め方など、様々なことを把握しておいてもらう必要があります。
また、従業員や取引先など、多くの人に事業承継を理解してもらい、円滑に進められるように準備しておかなければなりません。
事業承継にトラブルはつきものですが、対策を行うことで回避できるため、事前の対策を忘れないようにしましょう。