この記事でわかること
- 事業承継・引継ぎ補助金とは何かがわかる
- 令和5年度(2023年度)事業承継補助金の変更点がわかる
- 令和5年度(2023年度)事業承継補助金の対象者や上限額がわかる
2023年度(令和5年度)の事業承継・引継ぎ補助金の概要が公表され、従来よりも使い勝手が良くなりました。
事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業の事業承継を促し、経営革新を後押しする制度です。
事業承継を検討している場合は、事業承継補助金の要件や申請時のポイントを確認しておくといいでしょう。
ここでは、事業承継・引継ぎ補助金の概要と、令和5年度(2023年度)の事業承継補助金の変更点を解説します。
目次
事業承継・引継ぎ補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継をきっかけとして新たな取り組みを実施しようとする中小企業に対する補助金の制度です。
中小企業庁が補助金の対象となる企業や事業者を公募して、応募した企業や事業者の中から補助金の対象者を選定します。
事業承継・引継ぎ補助金のポイントは、ただ単に事業承継を行うだけでは対象とならないことです。
事業承継を行った後にも会社が長く存続できる環境を作り出すことを応援しているので、新しい取り組みが必要となります。
事業承継・引継ぎ補助金 令和5年度(2023年度)の変更点
事業承継・引継ぎ補助金の制度について、令和5年度(2023年度)にはどのような変更点があったのか、確認しておきましょう。
補助上限額の引き上げ:賃上げを条件に200万円アップ
事業承継・引継ぎ補助金のうち経営革新事業の補助上限額が、一定の賃上げを行った場合に最大800万円に引き上げられました。
これは、従来の補助上限額である600万円から200万円の上昇となります。
賃上げに関する要件は、以下の①か②のいずれかを達成した場合です。
- ① 補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の賃上げ
- ② ①をすでに達成している事業者については、補助事業期間終了時に事業場内最低賃金+30円以上の賃上げ
経営者交代型で対象拡大:「後継者が引継ぎ予定の場合」が追加
事業承継・引継ぎ補助金のうち、経営革新事業の「経営者交代型」の対象者について、「後継者が引き継ぎ予定の場合」が追加されました。
従来は親族内承継により経営資源を引き継いだ場合に限定されていました。
しかし、今後引き継ぐ予定の後継者も対象に含まれることとなり、より幅広く利用することができるようになります。
事業承継・引継ぎ補助金 令和5年度(2023年度)の対象事業と補助上限
事業承継・引継ぎ補助金の対象となる事業にはどのようなものがあり、それぞれの補助上限額はいくらなのか、確認していきましょう。
経営革新事業
経営革新事業とは、経営者の交代や事業再編・事業統合などをきっかけに事業を引き継いだ承継者が、経営支援を活用して行う経営革新に関する取り組みをいいます。
この場合、経営革新に係る費用が補助の対象となります。
経営革新事業には、3つの類型があります。
総合支援型 | 他の事業者が保有している経営資源を引き継いで創業した場合 |
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経営者交代型 | 親族内承継により経営資源を引き継いだ場合(後継者が引き継ぐ予定の場合を含みます) |
M&A型 | 株式譲渡や事業譲渡などのM&Aにより経営資源を引き継いだ場合 |
補助金額は、原則として100万円~600万円となりますが、一定の賃上げを実施する場合、補助上限額が800万円に引き上げられます。
補助率は、3分の2または2分の1となります。
専門家活用事業
専門家活用事業とは、M&Aを行った場合に発生する費用を補助する事業です。
補助の対象となる費用には、ファイナンシャルアドバイザーや仲介に係る費用、デューデリジェンス費用、セカンドオピニオン費用、表明保障保険料などが含まれます。
専門家活用事業には、2つの類型があります。
買い手支援型 | M&Aによって経営資源の買い手となる予定の中小企業を支援する |
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売り手支援型 | M&Aにより自社の経営資源を譲り渡す予定の中小企業を支援する |
補助金額の上限は600万円(未制約の場合は300万円)、補助率は3分の2または2分の1となります。
廃業・再チャレンジ事業
事業承継やM&Aにより廃業等をする事業者の、廃業に係る費用を補助します。
廃業する際に発生する費用には、原状回復費や在庫処分費などが含まれます。
事業承継やM&Aが成立した場合だけでなく、成立しなかったために廃業せざるを得ない場合も対象となります。
補助金額の上限は150万円、補助率は3分の2または2分の1となります。
事業承継・引継ぎ補助金の申請時のポイント
補助金の申請を適切に行わないと、補助金を受け取ることはできません。
どのような点に注意すべきか、その内容を確認していきましょう。
類似する事業では重複して補助金を受け取れない
どのような補助金を受給しようとする場合も、同一または類似事業で補助金を受けていると、重複して別の補助金を受けることはできません。
そのため、事業承継・引継ぎ補助金の場合も、類似する事業で重複して補助金を受け取ることはできません。
ただし、異なる事業内容や設備であれば、複数の補助金を受けられる場合もあります。
また、申請を行うこと自体に問題はないので、積極的に申請することも検討しておきましょう。
申請から交付まで時間がかかる
補助金の申請は、電子申請です。
申請を行う前にはgBizIDプライムのアカウントを取得しなければなりません。
申請から発行までに2~3週間程度の期間がかかります。
アカウント取得後、jGrantsを利用して交付申請を行います。
さらに、補助金の交付が決定しても、実際の交付は補助事業を実施した後です。
事業継承を行っている間は手続きに手が回らない可能性もあるため、専門家への依頼も検討するとよいでしょう。
まとめ
事業承継をしてもその会社が安定的に事業を継続できるとは限りません。
事業承継と同時に新たな取り組みを行い、時代に合わせて変革していく必要があります。
令和5年度(2023年度)の事業承継・引継ぎ補助金では、補助上限額や対象事業の拡充が行われ、使い勝手が向上しています。
事業承継補助金の利用にあたってはいくつもの要件があるため、専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めていきましょう。