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最終更新日:2022/12/13

農業の事業承継にかかる税金は?贈与税納税猶予特例についても解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 農業に従事する人の事業承継の現状について知ることができる
  • 農業について事業承継を行う際の3つの方法がわかる
  • 農業を事業承継する際に発生する税金や特例制度がわかる

農業に従事する人は年々減少し、高齢化が進んでいるという事実があります。

しかしその一方で、新たに農業に従事したいという人も少しずつ増えており、様々な変化が現れています。

ここでは、農業に従事する人の事業承継についてご紹介していきます。

また、事業承継につき発生する税金の種類や、納税が猶予される制度についても確認しておきましょう。

農業の事業承継の現状

農業を営んでいる人の多くは、先祖代々農地を守って農業を行っている人だという印象があるかもしれません。

実際、農林水産省から公表されている「2020年農林業センサス」によれば、農業に従事する人の97%は家族経営とされています。

そのため、一般的なイメージ通りに、通常は家族全員で農作業を行っているケースが多いです。

家族での農業経営を維持していくためには、世代交代が欠かせません。

先々代にあたる祖父母から先代の父母、そして後継者として引き継いだ後、さらに子どもに引き継ぐという流れとなります。

しかし、農業離れが深刻化し、農業で生活を成り立たせることが難しくなる中で、後継者がいないという問題が起こっています。

農業を営む人の中で、後継者が確保できているという人は約3割程度であり、その後継者のほとんどは親族です。

一方、後継者がいないと回答した人は7割にものぼります。

このことは子どもが跡を継がなければ、農業の後継者を探すのはきわめて難しい状況にあることを意味しているでしょう。

また、子どもがいたとしても、彼らが必ずしも跡を継ぐわけではないという状況を示しているともいえます。

農業の事業承継の方法

農業を営む方が事業承継を行う際には、どのような方法があるのでしょう。

その後継者の分類に応じて、以下の3つの方法が考えられるため、整理してそのポイントを確認しておきましょう。

親族内承継

親族内承継は、農業経営者の子どもなどの親族がその経営を引き継ぐことです。

子どもが承継するケースが圧倒的に多いのですが、兄弟姉妹や甥・姪など、比較的近い関係にある親族が承継することもあります。

農業の事業承継として3つの方法をご紹介しますが、ほとんどの人はこの親族内承継を望んでいます。

農業の経営を引き継ぐためには、農地の引き継ぎが必要不可欠です。

農業及び農地を引き継ぐにあたっては、相続まで待つ人が多いため、農業の事業承継=相続と考えている人もいるでしょう。

ただ、相続が発生するまで事業承継に向けた取り組みを行っていないと、結局は法定相続人となる親族が相続する他にないのです。

また子どもがいたとしても、その子どもが必ず農業を引き継ぐとは限りません。

むしろ、農業を取り巻く環境が厳しくなってきた中で、農業を継がない人の方が多いかもしれません。

親族内承継を望む場合は、早いうちに子どもの意思を確認しておきましよう。

親族外承継

事業承継の際に、第一の選択肢が子どもなどの親族であったとしても、必ずそのとおりになるとは限りません。

そこで次の選択肢となるのが、親族ではないものの気心の知れた人に事業承継を行うという方法です。

ここで候補となるのは、一緒に農場で働く従業員です。

また、農業法人の場合には農業法人の取締役も有力な候補者となるでしょう。

この方法であれば、それまで一緒に農業に従事していた人が新しい経営者となるため、安心して事業承継を行うことが可能です。

従業員や取引先などの関係者からの同意も得やすく、スムーズに新しい体制に移行することができるでしょう。

ただ、後継者の候補となる人が簡単には見つからないことは考えられます。

家族経営が中心の農業の現場では、後継者となるような従業員がいないことの方が多いためです。

M&A

中小企業の事業承継で広く用いられるようになったM&Aですが、農業の事業承継においても利用されることがあります。

その背景にあるのが、非農業者が農業に興味を持って就農を目指すケースが増えていることです。

農家の子どもではない人が農業を始めたいと思っても、農地の取得や技術の取得には大きな壁がありました。

そのため、新規就農は非常に難しいことだったのです。

しかし、それでは日本国内の農業は衰退する一方となってしまいます。

そこで、農業法人を活用するなどして、新規に就農しやすい制度が設けられてきました。

また、新規就農に限らず、事業規模を拡大したいという人が後継者のいない農業経営者からその事業を引き継ぐケースもあります。

M&Aを行えば、農業を始めたい人と後継者を探している人の思いは一致しています。

そのため、細かな条件のすり合わせは必要ですが、後継者が見つかる可能性は高いでしょう。

M&Aによりその事業を手離すこととなれば、その後の事業の運営はすべて後継者となった買い手に一任することとなります。

農業を親族内承継するときにかかる税金

農業の事業承継で最も一般的な親族内承継の場合、農地や機械などの資産を贈与や相続により引き継ぐこととなります。

贈与や相続が発生すれば、その財産を受け取った人に対して贈与税や相続税などの税金が発生します。

ここでは、事業承継を行うと発生する税金について解説していきます。

贈与税

贈与税は、他人から財産を無償で受け取った場合に、その財産の価格に応じて課される税金です。

1年間に贈与された財産の金額を合計して贈与税の計算を行うため、贈与されるたびに支払うわけではありません。

また、基礎控除が1年間に110万円あるため、1年間に贈与された財産の合計額が110万円に満たなければ、税額は発生しません。

仮に1年間に110万円を超える贈与を受けた場合は、その超えた部分の金額をもとに贈与税の計算を行います。

農業の事業承継を計画的に行っている人の場合、先代経営者が亡くなる前に財産の承継を行うことがあります。

この場合には、移転した財産の金額に応じた贈与税を納付しなければなりません。

贈与税の負担は、同額の財産を相続した場合と比較すると、割高になることが多いです。

ただ、先代経営者が亡くなる前に事業承継を行えば、後継者はスムーズにその事業を引き継ぐことができます。

また、毎年基礎控除を使うことができるため、早くから計画的に事業承継を始めれば、大きな税負担にならないこともあります。

相続税

相続税は、亡くなった人(被相続人)が保有していた財産を相続した人(相続人)に対して課される税金です。

相続財産の評価額を計算し、その金額と相続人の人数に応じて相続税の額が計算されます。

ただ、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があります。

そのため、相続財産の額が基礎控除の金額より少なければ、相続税は発生しません。

一方、相続財産の金額が基礎控除の金額を上回った時は、その上回った部分の金額に対して相続税が課されます。

農業を営んでいた人が亡くなった場合、生前に贈与などを行っていなければ、農地を含むすべての財産が相続税の対象となります。

相続税の負担は、一般的に贈与税の負担より低くなることが多いようです。

ただ、それでも相続税の負担は決して軽いものではないため、相続前に何も対策をしていないと思わぬ金額になることもあります。

相続税の額が大きくなりすぎないような対策、遺留分や遺産分割方法を考慮した遺言書の作成などを考えておくようにしましょう。

不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得した人が負担しなければならない税金です。

不動産を「取得」する方法には、売買や贈与、相続など様々なものがあります。

このうち、不動産取得税の対象となるのは、売買や贈与です。

不動産の固定資産税評価額に対して、所定の税率を乗じて不動産取得税の税額が計算されます。

農業の事業承継を行う際には、農地も先代経営者から後継者に引き継がれます。

この農地の引継ぎを行う際に、贈与や売買、あるいは相続が行われるかにより、不動産取得税は大きく変わります。

農地が贈与、あるいは売買された場合は、その農地を取得した人に不動産取得税が課されます。

一方、農地を相続により取得した場合は、不動産取得税の負担はありません

贈与により事業承継を行う場合は、贈与税の負担はもちろんですが不動産取得税の負担も考えておく必要があります。

生前贈与を計画的に実施して贈与税の負担は減らせても、不動産取得税の負担は簡単に減らすことはできないので注意が必要です。

登録免許税

登録免許税は、土地や建物などの不動産の登記を行う際に、法務局に納付する税金です。

不動産の所有権が移転してその名義を変更する必要がある場合、法務局で移転登記を行います。

相続による登記の場合を相続登記と呼ばれますが、相続に限らず贈与や売買があった場合も登記を行う必要があります。

農業の事業承継を行って、農地の登記を変更する際にも、登録免許税を負担しなければなりません。

この登録免許税の額は、相続の場合と贈与や売買の場合では税率が異なります。

相続の場合の税率は、贈与や売買による場合の税率と比較すると5分の1で済みます。

不動産取得税の負担と同様、避けては通れないため、登録免許税の負担があることも忘れないように覚えておきましょう。

農業の事業承継をサポートする贈与税納税猶予制度

農業の事業承継を考える際に、元気なうちに後継者に譲りたいと考える場合もあるでしょう。

この場合、生前贈与によって農地を後継者に引き継がせようとするのですが、一方で税負担が心配になるのではないでしょうか。

贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税なども相続に比べるとその額が大きくなるため、不安が大きくなるのは自然なことです。

そこで、贈与税の負担を軽減するために、贈与税の納税猶予制度が設けられています。

どのような制度で、どのような手続きが必要なのかをご紹介します。

制度の概要

農地等の贈与税納税猶予制度は、農業を営む人が農地を推定相続人の1人に贈与した場合に、贈与税の納税が猶予される制度です。

納税猶予となった税額は、受贈者か贈与者が亡くなった時にその納税が免除されます。

ただし、贈与者が亡くなった場合には、納税猶予の対象となった農地は相続税の課税対象とされます。

このとき発生する相続税について、相続税の納税猶予制度の適用を受けることができます。

なお、贈与税の納税猶予制度の適用を受けると、相続時精算課税制度の適用を受けることはできなくなります。

また、相続時精算課税制度により農地を取得した推定相続人は、農地等の贈与税の納税猶予制度の適用を受けられません。

要件

農地等の贈与税の納税猶予制度の適用を受けられる贈与者(先代経営者)は、贈与の日まで3年以上農業を営んでいた人です。

ただし、以下のように適用を受けられない場合があります。

  • 贈与をした年に特例の適用を受ける贈与以外に農地等の贈与をした場合
  • 過去に農地等の贈与税の納税猶予の特例に係る贈与を行っている場合

一方、受贈者(後継者)となるためには、以下のような要件があります。

受贈者(後継者)になる要件

  • 贈与を受ける日までに18歳以上であること
  • 贈与を受ける日までに3年以上農業に従事していること
  • 贈与後にすぐ贈与された農地で農業を行うことができること
  • 市町村等からの認定農業者に該当すること

このように、贈与者・受贈者それぞれに要件が設けられているので、贈与を検討する際にはよく確認することをおすすめします。

手続きの方法

農地等の贈与税の納税猶予制度の適用を受けるために、以下の流れで手続きを進めていきましょう。

①市町村で認定農業者としての認定を受ける
農業委員会で納税猶予制度を利用するための認定を受けなければなりません。

②贈与税の申告書を税務署に提出する
必ず贈与を受けた人の住所地を管轄する税務署に、期限内に申告します。

③猶予税額に見合う担保を税務署に提供する
適用対象となった農地をすべて担保とすればよいこととされています。

注意点

農地等の贈与税の納税猶予制度の適用を受けたからといって、その納税猶予がいつまでも継続するわけではありません。

贈与を受けた農地を売買などで譲渡した場合、農業経営を廃止した場合などは、納税猶予が取り消されてしまいます。

納税猶予が取り消されると、猶予された税額を納税するとともに、猶予期間に応じた利子税も合わせて納付しなければなりません。

まとめ

農業を行う人のほとんどは家族経営であり、その子どもが農業を引き継ぐこととなります。

しかし、子どもがいても農業に従事していないなど、後継者の確保に苦労している人も多いでしょう。

また、子どもが農業を引き継ぐ場合には、贈与税や相続税の負担を考慮する必要があり、金銭的な負担も大きくなります。

納税猶予の制度も設けられていることから、最善の方法を選択して、よりスムーズな事業承継を会座しましょう。

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