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最終更新日:2024/5/24

株式の相続手続きと注意点|株の売却方法・相続税評価額の計算方法も確認

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 株式の相続手続きを行う際の流れや必要書類がわかる
  • 株式の相続税評価額を計算する方法を知ることができる
  • 相続した株式を売却する際の手続きの方法がわかる

相続が発生すると、被相続人が保有していたすべての財産は、誰かが引き継ぐこととなります。

被相続人は、預貯金や不動産の他に株式を所有していることもあり、この場合、株式の相続手続きを行わなければなりません。

ここでは、相続手続きの流れや必要な書類について、その内容を確認していきましょう。

また、株式の相続税評価額の計算方法や、相続した株式を売却する方法についてもご紹介します。

株式の相続手続きの流れ・必要書類

株式が相続財産に含まれている場合、その株式を相続するための手続きを行う必要があります。

どのような手続きをどういった流れで進めていくのか、解説していきます。

遺言書の有無を調査する

亡くなった人がいて相続が発生した場合、まずは被相続人が作成した遺言書がないか調査しましょう

遺言書がある場合は、その遺言書に従って遺産を相続する人を決定することとなります。

被相続人が自身で作成した自筆証書遺言は、自宅や貸金庫などで保管されている可能性が高いでしょう。

一方、公正証書遺言を作成した場合は、公証役場に遺言書が保管されています。

自宅や貸金庫に遺言書がない場合は、公証役場に問い合わせて遺言書の有無を確認しましょう。

相続財産の調査を行う

遺言書の有無にかかわらず、被相続人が残した財産の中身を確認していきます

株式の他、預貯金や不動産などあらゆる財産について、被相続人名義の財産がどれだけあるか一覧にしていきましょう。

株式の場合は、上場株式と非上場株式の違いにより、それぞれ保管されている場所が異なります。

上場株式は、証券口座で残高を確認することが可能です。

一方、非上場株式は証券会社には関係ないので、発行会社からの郵送物などで確認します。

相続人を調査する

相続が発生したら、遺言書の有無に関係なく、誰が法定相続人になるのかを確認します

法定相続人となった人は、遺産の相続権を有する他、遺言がある場合でも遺留分を有しています。

遺言書による遺産分割であっても、遺留分を侵害している場合はその分を考慮しなくてはなりません。

そのため、遺言書によって遺産を引き継ぐ人が決定する場合でも、戸籍謄本で相続人の調査を行いましょう。

準確定申告を行う

被相続人に収入がある場合、相続の発生によって相続人が確定申告しなければならない場合があります。

この手続きを準確定申告といい、相続が発生してから4ヶ月以内に行わなければなりません

株式を保有していた人が亡くなると、配当金や株式売却などで収入が発生していることがあります。

配当金などを生前に受け取っている場合は、準確定申告しなければなりません。

一方、配当金の受け取りが確定しているものの、まだ配当金を受け取っていない場合は、相続財産に含まれます。

そのため、準確定申告は必要ありません。

遺産分割協議を行う

遺言書がなかった場合、遺産分割協議を行って、誰がどの相続財産を相続するのか決めなければなりません

預貯金や不動産に加えて、株式についてもその内容を決める必要があります。

株式の銘柄や株数など詳細を決定した上で、すべての相続人がその内容に同意したら、遺産分割協議が成立します。

遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印します。

株式の名義変更を行う

遺産の分割方法が確定したら、その遺産分割の内容に従って名義変更を行います

株式の名義変更は、上場株式と非上場株式でそれぞれの手続きが異なります。

上場株式の相続手続きは、証券会社を通して行います。

この時、相続人が証券会社に口座を保有していない場合は、口座を開設するところから始めなければなりません。

非上場株式の相続手続きは、発行会社で直接行います。

遺産分割協議書や遺言書の他に戸籍謄本や印鑑証明書など、必要に応じて書類を準備し、会社に提出します。

株式の相続税評価額の計算方法

株式を相続する場合、その株式は相続税の課税対象となります。

そのため、相続した株式の相続税評価額を計算しなければなりません。

株式の相続税評価額はどのように計算するのか、解説していきます。

上場株式の場合

上場株式は、基本的にその価格が取引所から毎日公表されており、その価格を使って相続税評価額を求めることができます

ただ、亡くなった日の価格=相続税評価額ではなく、いくつかの価格から相続税評価額を計算することとされています。

具体的には、下記のいずれか最も低い価格が相続税評価額となります。

  1. 被相続人が亡くなった日の終値
  2. 被相続人が亡くなった月の終値の平均値
  3. 被相続人が亡くなった月の前月の終値の平均値
  4. 被相続人が亡くなった月の前々月の終値の平均値

結果的には、被相続人が亡くなった日の終値より低い金額となることがあります。

非上場株式の場合

非上場株式は取引所で取引されるものではないため、公表されている価格はありません。

そのため、相続税評価額を相続人自身で計算しなければならないこととされています。

非上場株式の相続税評価額を計算する際に、必要となる計算要素は大きく分けて2つあります。

1つは会社の純資産価格であり、会社の資産や負債の金額から求めます。

もう1つは類似業種比準価格と呼ばれるものです。

こちらは、同業他社の株価から自社の株価を算定しますが、算定にあたっては3つの金額を用います。

配当金額、所得金額、純資産金額の3つの金額を比較して、計算対象となる会社の株価を算定します。

最終的には、純資産価格と類似業種比準価格を按分して、相続税評価額を求めましょう。

按分する比率は、会社の規模や従業員数などに応じて異なります。

相続した株式を売却する方法

株式を相続した後、その株式を売却することがあります。

この場合、どのタイミングで売却するのか、あるいは売却する株式の種類はどのようなものかにより、売却方法に違いがあるので確認していきましょう。

個別に相続した人が売却する場合

相続手続きを終えた後は、その株式は相続人自身のものとなります。

そのため、遺言書や遺産分割協議により株式を相続した人は、その相続手続きが終わったら自由に売却することができます

株式を売却して発生する譲渡所得も、相続人について発生するため、相続人は自分で確定申告しなければなりません。

売却した後に売却代金を分割する場合

相続人が何人もいる場合、株式を相続する際に、その株式を均等に分けるのが難しい場合があります。

このような場合には、株式を分割するのではなく、株式を売却した代金を分割する方法が選べます。

まずは、相続人の中から代表相続人を選び、その人が証券会社で株式を売却するための一般口座を開設します。

その後、代表相続人の口座にすべての株式を移管し、その口座で売却の手続きを行います

そして、売却した後の代金を相続人の話し合いにより分割するという流れになります。

この場合、売却して発生する所得税は、それぞれの相続人が相続した金額に応じて負担することとなります。

非上場株式を売却する場合

非上場株式を売却したい場合は、まず発行会社に相続した株式を売却できるかどうかを確認しなくてはなりません

これは、非上場株式の多くは、経営安定化のために、会社の了承なしには売却できない譲渡制限付き株式となっているためです。

譲渡制限付き株式を売却するには、最終的に会社の了承が必要となるため、売却しても問題ないかを確認しておきます。

もし会社が売却することに反対する場合は、売却したくても売却できません。

売却先を相続によって転々と変わることを懸念して会社が反対しているのであれば、会社に買い取りを依頼して売却できることもあります。

また、会社の株主の中に購入したい人がいる場合には、会社が指定する人に売却することができる可能性もあります。

一方、会社の定款に「相続人に対して売渡請求できる」という定めが設けられていることもあるでしょう。

この場合、相続人の意向に関係なく、会社は相続人から相続した株式を購入することとなります。

株式を相続したときの注意点

相続財産に株式が含まれる場合、その相続人はどのような点に注意したらいいのでしょうか。

多くの人に関係する注意点をご紹介します。

準確定申告が必要な場合がある

前述したように、株式を保有していた人が亡くなった場合、準確定申告が必要になるケースが多いので注意が必要です。

準確定申告は、被相続人について発生した所得について、本人が亡くなっているので、代わりに相続人が申告を行うものです。

株式を保有していると、配当金を受け取った場合や株式を売却した場合に、所得が発生します。

被相続人について発生した所得があるにもかかわらず、相続人が放置していると、申告漏れを指摘されることとなります。

そのため、申告漏れとならないように、必ず準確定申告を行いましょう。

なお、準確定申告は相続が発生してから4ヶ月以内に行う必要があり、相続税の申告より期限が短い点にも注意しましょう。

当該株式について再度遺産分割をする必要がある

預貯金や不動産などの相続財産について遺産分割協議が終わった後に、被相続人の保有する株式が見つかることがあります。

このような場合には、後から見つかった株式を誰が相続するのか、改めて遺産分割協議を行う必要があります

また、株式自体は相続財産に含めていた場合でも、未受領配当金が相続財産に含まれていない場合があります。

この場合、配当金受領証を相続人が適切に処理しなければ、配当金をもらえなくなってしまいます。

会社の定款で配当金を受け取ることのできる期限が定められているので、それまでに手続きを行うようにしましょう。

相続税評価額が高額になることがある

上場株式の相続税評価額は、株価を調べればある程度の金額を推測することができます。

一方、非上場株式の相続税評価額は、会社の決算書を見ても簡単に計算することはできません。

そのため、思わぬ高額になるケースも少なくないのが実情です。

中小企業の経営者は、自身の経営する会社の株価がいくらくらいになるのか、定期的にチェックしておきましょう

また、経営者の親族で株式だけ保有しているようなケースもあるので、経営者に株価を聞いておきましょう。

また、このような人は事前に相続税対策を講じることができます。

相続税の試算を行った上で、どのような対策ができるのか、専門家に相談しながら進めていくといいでしょう。

まとめ

株式を保有している方はかなり多く、その方が亡くなると、株式が相続財産になります。

株式を相続するための手続きは、決して複雑なものではありません。

必要な書類を準備した上で、必要な手続きを進めていくようにしましょう。

また、株式は相続税の課税対象にもなるので、どれくらいの負担になるのか試算することも重要です。

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