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最終更新日:2022/12/14

相続税配偶者控除の申告に必要な書類とは?逆に損するパターンについても解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

配偶者控除は、申告しないと適用されません。配偶者控除とはどんなものかや、申告に必要な手続きや書類について理解すれば、少なくとも1億6,000万円の税額控除を受けることができます。一方、配偶者控除を使うと、逆に損するパターンも存在します。メリットトやデメリットを知って、有効に活用しましょう。

配偶者控除とは

配偶者をめぐる事情

2018年7月には、民法が40年ぶりに大幅に改正されました。その中の一つが配偶者の扱いです。これまでは、亡くなった人と長年連れ添った配偶者であっても、相続税の支払いができず、自宅を出ていかなければならないケースも生じていました。

このような事態は一般的な感覚とは異なるとの観点から、配偶者が自宅に住む権利や、結婚20年以上の配偶者に対する、自宅の生前贈与が相続財産に含まれないとする改正などが行われました。

このような背景の下、法定相続に際しては、配偶者は常に相続人となり、税務上でも、配偶者に対しての特別な控除が設けられ、子や親など他の相続人に比べ多くの遺産を受け取ることができるように配慮されています。

配偶者に対する様々な優遇は、夫婦が婚姻期間中に互いの協力の下で財産を形成しているとの考え方が根本にあります。また、同じ生計によって暮らしていた夫婦の一方が亡くなることによって、残された配偶者が生活に困窮することがないように、生活を保障するとの面も考慮されています。

以下では、配偶者に対して特別に設けられている、配偶者控除について詳しく解説します。

配偶者控除とは?

相続人が配偶者の場合、法定相続分と1億6,000万円を比べ、高い方の金額を「自分の相続額から控除」できる仕組みが設けられています。これを、配偶者控除と呼びます。

戸籍上の妻であることが要件ですが、婚姻期間の定めはありません。配偶者は、少なくとも1億6,000万円までは、相続税が課税されません。

相続での配偶者の立場

法定相続の場合、配偶者は、常に相続人になります。子は、第1順位の相続人です。養子や認知された子も相続人となります。ただし、税務上、法定相続人に含める養子の数には制限があります。実の子供がいる場合は、養子が1人まで、実の子供がいない場合は養子が2人まで認められます。

親は第2順位、兄弟姉妹が第3順位の相続人です。第1順位、あるいは第2順位の相続人がだれもいない場合、相続人となります。

配偶者の相続割合

配偶者の法定相続分について、確認しましょう。法定相続では、子や親など法定相続人が共同で相続する場合、配偶者は、最低でも50%、最大75%の遺産を譲り受けることができます。

法定相続分と呼ばれる相続の割合は、配偶者と子どもが相続人の場合は、配偶者2分の1、子ども2分の1となります。配偶者と親が相続人の場合は、配偶者に3分の2、親に3分の1となります。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1です。なお、子が2人以上、父母ともに存命、兄弟姉妹が2人以上などの場合は、それぞれ均等に分割されます。

配偶者控除を受けるための手続きの流れと必要書類

通常、配偶者控除を適用してもらうためには、税務署への相続税の申告が必要です。以下では、手続きの流れと必要書類について解説します。

配偶者控除は、申告しないと適用されない

この控除を受けるために、重要なポイントが2つあります。

最大のポイントは、申告しなければならない点です。たとえ、控除を適用すれば税額がゼロになる場合でも、必ず手続きを行う必要があります。

なぜなら、申告手続きをして、はじめて控除が適用されることになるからです。申告しなければ、控除が適用されないだけではなく、追徴課税されることになってしまいます。

また、遺産分割協議が終わり、相続する財産が決まっていないと適用できないことも、大きなポイントです。申告と納税の期限は、配偶者が亡くなってから10カ月とされています。

配偶者控除を受けるための手続きの流れ

続税の申告は、通常、遺産分割協議の終了後に申告と納税を行います。

遺産分割協議

遺産分割協議は、法定相続を行うために相続人全員が参加して行う、亡くなった方の財産をどう分割するかについての話し合いです。

遺産分割協議の前には、法律に定められている法定相続人を確定しなければなりません。相続人の確定のためには、亡くなった方の「出生から死亡時まで」の戸籍謄本を入手して確認します。

たとえば、死亡した人が家族に隠していた婚姻歴や子の認知、養子縁組などについて、事実誤認がないことを確認しなければなりません。

遺産分割協議では、話し合いの結果を証拠として残すために「遺産分割協議書」を作成して、全員で署名し、押印します。署名と押印は、印鑑証明書と同じである必要があります。これで、法定相続人とそれぞれの相続割合が確定されます。

協議が終わったら、早めに相続税の申告と納税を行います。

10カ月の期限を越えてしまう場合は未分割申告して、後日修正申告

10カ月の期限がきても協議が整わない場合は、「未分割申告」と納税をしておきます。相続税の申告期限から3年以内に、分割方法が確定した時点で修正申告を行うことができます。

ただし、未分割申告では、小規模宅地等の特例や、配偶者控除の税額軽減の特例が適用できないため、納税額が大きくなる可能性があることに注意が必要です。なお、修正申告をすれば、3年以内までの分割は控除の適用を受けることができます。

配偶者控除を受けるための必要書類

申告の際には、申告書、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を提出します。配偶者であることを証明するための戸籍謄本が必要ですが、通常、亡くなった方の死亡時の戸籍謄本で代用することが可能です。

また、本人が譲り受ける財産を証明するために、遺産分割協議書を添付します。この際、印鑑証明書も添付する必要があります。遺贈の場合は、遺言書の写しが必要です。

使うと損するパターン

控除額の大きい配偶者控除ですが、逆に使うと損をする場合もあります。配偶者が高齢で、亡くなった方の遺産を相続した後、あまり期間を置かないうちに再度相続が発生してしまうような場合が想定されます。

登記費用を損する

相続した財産が不動産の場合、配偶者は、所有権を主張するために、所有権移転登記を行うことになります。登記の際は、登録免許税や司法書士への報酬を支払わなければなりません。

配偶者が登記を終えても、その後あまり年数を置かずに再度相続が発生してしまうような場合には、次に譲り受ける相続人も所有権の移転登記を行うことになり、ここでも登記費用が発生します。

相続税の大きな減額が実現できるとしても、その後に発生する費用を考慮することも大切です。

次の相続で子の税額が高くなる

また、不動産に限らず、配偶者控除を適用することによって、配偶者が全ての財産を譲り受けるような場合にも注意が必要です。

登記の例と同様、再度の相続が発生した場合には、子などが適用を受けることができる相続税の控除は、配偶者の様には優遇されていません。このため、子が両親二人分の遺産をまとめて相続するような事態が発生した場合には、相続税は高額になることも予想されます。

配偶者控除の適用に際しては、次の相続が発生することを想定して、子や孫、兄弟などの税負担についても考慮しておくことが大切です。

子の控除

子が受けることのできる控除として、基礎控除と未成年者の税額控除があります。

基礎控除額は、相続人に対して一律に適用されるもので、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で表されます。定額3,000万円に、法定相続人一人当たり600万円を加算して求めることができます。なお、相続放棄がある場合でも、税額の計算上、法定相続人の人数は変更されません。

たとえば、親の遺産を子一人が相続する場合、定額3,000万円に600万円が加算され、基礎控除は3,600万円です。親から遺産を相続する場合、3,600万円までは税金が課されませんが、残りの額は課税対象となります。

なお、相続人が未成年者であれば、未成年者の税額控除が適用されます。差引く額は、満20歳になるまでの年数1年について10万円です。1年未満の期間は、切り上げて1年として計算されます。

たとえば、15歳9カ月の場合は、15歳で計算し、20歳までの年数は5年と数えます。このため、差引く額は10万円×5年で50万円となります。また、この額が、相続税額より大きい場合は、残りを扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

配偶者控除の利用を考えている人がやるべきこと

ここからは配偶者控除を考えいる人が、確認しておくべきこと・やるべきことを紹介します。

配偶者控除の条件を確認する

配偶者控除には利用条件があります。

  • ・戸籍上の配偶者
  • ・遺産を隠してない
  • ・税務署に申告する

まず戸籍上の配偶者じゃないと、配偶者控除は利用できません。

内縁の妻・夫といった籍を入れてない関係性は、配偶者控除の利用対象外になります。

ただし婚姻期間は関係ないため、期間が1年しか経ってない場合でも、婚姻関係にあれば利用できます。

次に遺産の隠蔽が発覚すると、配偶者控除が適用されません。

さらに30~45%の税金が課税されるため、余計な税金を払うことになります。

最後に税務署への申告が必要です。税務署への申告期限は相続開始日から10ヶ月以内なので、注意してください。

もし期限内に申告ができない場合は、別途手続きが必要になるため、弁護士への相談がオススメです。

二次相続について考える

安易に配偶者控除を使ってしまうと、配偶者が亡くなって相続が起きた場合に、高い相続税を払う可能性があります。

このように夫→妻・妻→子と連続して相続が起きることを二次相続といいます。

配偶者控除を使った人に二次相続が起きた場合は、下記のような理由から相続税が高くなるかもしれません。

  • ・配偶者控除が使えない
  • ・相続人が減るため基礎控除も少なくなる

まず配偶者控除を使った人が亡くなって相続が発生すると、配偶者控除は使えず1.6億円の控除ができません。

さらに相続の控除では基礎控除3,000万円に加えて、法定相続人ひとりにつき600万円の控除があります。

「使える控除が少なくなる・控除金額が減る」という理由から、二次相続の税金には注意が必要です。

もし配偶者控除を考えるのであれば、二次相続で課税額が高くならないのか?をしっかりシュミレーションして総合的に判断しましょう。

弁護士に相談する

配偶者控除を検討しているなら、弁護士への相談が一番効果的でしょう。

配偶者控除を使った方がいいかは各家庭によって異なりますが、実績のある弁護士なら適切なアドバイスができるからです。

相続にはいろんな控除があるため、配偶者控除以外も利用できるかもしれません。

「どうすれば相続税が抑えられるのか?」について、二次相続もふまえて考えてくれます。

多くの弁護士事務所は初回の相談を無料で受け付けているので、まずは無料相談が利用してみましょう。

実際に自分の状況を相談して、適切なアドバイスをもらうのが一番効果的な方法になります。

まとめ

配偶者控除の仕組み、適用を受けるための手続きや必要な書類について、理解していただけたでしょうか。控除を有効に活用するためには、申告が必要不可欠です。

また、この控除を使うと損をする可能性もあることから、他の控除などと見比べながら、相続人全員が幸せになれるような、円満な解決策を見つけることも大切でしょう。

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