在職中に死亡した場合は、死亡退職金や退職慰労金などが支払われることが一般的ですが、必ずしももらえるとは限りません。
会社によって異なる退職金の制度や請求の手続き、退職金は遺産分割の対象となるか、相続税はどうなるかについて、解説します。
退職金制度は会社によって異なる
在職中に死亡すると、死亡退職金が支払われることが一般的です。
しかしながら、退職金制度は労働基準法においても強制されるものではなく、外資系企業や小企業では、退職金制度のない会社もあります。
退職金に関する制度は、会社の退職金に関する規定や就業規則、雇用契約などで定めます。
退職金の額は、社内規定に基づき、勤務年数や役職、実績などを考慮して算定されます。
このため、懲戒解雇や勤続年数が不足する場合は、退職金が支給されないことになります。
一方、社内の規定や規則で退職金を定めていない場合は、会社に退職金を支払う義務がありません。
ただし、規定がない場合でも、本人の功績や会社の業績によっては、死亡弔慰金などとして支給される場合もあります。
退職金を受け取るのはだれか
このように、退職金は必ずしももらえるわけではありませんが、会社が規則や規定を定めていて、支払要件に該当する場合は、死亡退職金の支払いが発生します。
退職金の支払先は、一般的には、就業規則などにおいて「労働基準法施行規則第42条から第45条の規定(遺族補償の順位)に準ずる」といった定め方をしています。
この規定によれば、退職金を受け取ることになるのは、まず配偶者となり、配偶者がいない場合は、子、父母、孫や祖父母などの順となります。
配偶者は内縁関係であっても良く、亡くなった方と同一生計にあった者が遺族として優先されます。
また、この受取人については、亡くなった方が遺言や会社への予告で、規定される受取人の中から特定の者を指定することもできることになっています。
さらに、死亡退職金としてではなく、慰労金や年金とする制度もあります。
この場合は、亡くなった本人に対する退職金でなく、遺族に対しての死亡慰労金や年金が支給されるという規定もあり得ることになります。
受取人が事前に規定や指定されている退職金は、遺産とはならず、規定や指定された者独自の権利となります。
死亡保険金の受取人が指定されている場合と同様に考えることができます。
受取人が指定されることによって、遺産分割の対象にならないことになります。
一方、就業規則などでの定めがない場合は、民法で定める遺産の相続人に支払うとされています。
この場合は、遺産ということになり、相続人が会社に対して支払いを請求することができます。
死亡時の退職金は会社に請求する
遺産分割が終わっても、しなければならない手続きがあります。
そのうちの一つに退職金があります。
退職金といっても、給料とは違い、必ずもらえる制度とはなっていないのが実情です。
通常、会社内の規定などにより退職金制度を設けている企業では、退職の事実が発生すれば、規定に従って退職金額が算定され支払われることになります。
ただし、支払い手続きや算定方法など、退職金の手続きは会社ごとに異なります。
多くの場合、受取人や相続人は、会社に対しての特別な手続きが不要と思われますが、退職金の有無や受取人、必要書類など疑問があれば、早めに会社の総務や人事の担当者に照会しておくことが大切です。
死亡退職金を請求する際の必要書類としては、亡くなった被相続人の除籍謄本や相続人や受取人の戸籍謄本が一般的です。
なお、謄本とは、世帯全員を対象にするもので、戸籍がコンピュータ化されてからは「全部事項証明書」と呼ばれています。
相続の対象になる退職金と相続税
相続人に支払われる退職金の場合は相続の対象となり、金銭などの可分債権として各相続人の相続分に応じて分割されます。
また、遺産分割の対象とすることも可能です。
通常、金銭その他の可分債権は遺産分割の対象にはならないことが原則ですが、相続人全員が同意すれば、預貯金と同様に、遺産分割の対象にすることが可能です。
死亡退職金は、死亡後3年以内に支給が確定したものを含め、相続財産とみなされて相続税の課税対象になります。
ただし、全額が相続税の対象となるわけではありません。
法定相続人一人について500万円までは非課税とされているため、たとえば相続人が配偶者と子2人の場合なら、1,500万円までは非課税です。
まとめ
受取人が決まっている退職金であれば、受取人だけの権利であり、遺産には含まれないことから相続の問題にはなりません。
一方、受取人が指定されていない退職金については、相続の対象となります。
退職金の請求手続きは、通常、遺族と会社との連絡や相談の一環として手続きが進められていきます。
疑問などがある場合は、会社の総務や人事担当者などに確認すると良いでしょう。
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