保険とは何かのアクシデントに備えて準備をし、万一そのような事態が発生したときはそれを金銭等でカバーするものです。
その最たるものが生命保険でしょう。
死亡したときに残された者が生活できるようにしておく、そのためのものなのです。
ところが、人が死に、保険金を請求できる状態になると、相続についてのトラブルが起こりやすいのもまた事実です。
ここでは、保険金の種類と請求手続きについて概観し、トラブルをなくす方法または最小限に抑える方法を考えていきましょう。
保険金の種類
一言に保険といっても、保険にはいろいろなものがあります。
大別すると死亡や傷害疾病等が発生したときに備える生命保険、火災や地震等に備える損害保険があります。
一般的に相続で問題となるのは生命保険のほうですが、損害保険の場合でも相続が問題となるものもあります。
例えば、交通事故で死亡事故が発生した場合などは人の死亡、すなわち相続と関連することになります。
ここでは主に生命保険について見ていきます。
保険の手続き
まず、保険契約の言葉について見ていきます。
保険は三者から成っており、保険契約をした者を契約者、その者の死亡や障害疾病等で保険金請求権が発生する者を被保険者、保険金請求権を有し受取人となる立場の者を受取人といいます。
兼任する場合もあります。
生命保険で被保険者が死亡すると、保険事故が発生したことになって保険金請求権が発生します。
そうすると保険会社に主に以下の書類を提出することになります。
- ・保険金請求書
- ・保険証券
- ・死亡診断書
- ・被相続人の除籍謄本、原戸籍等
- ・相続人の戸籍謄本
被保険者が死亡した事実、そして自分が受取人の立場であることを証明する書類を提出するのです。
保険金請求権の請求期限は支払事由の発生日から3年以内となっています。
預貯金や不動産と違い、期限が決められていますので期間内に提出するようにして下さい。
保険の問題点
ここからは保険の問題点について見ていきます。
主に問題となるのは①どのような保険かわからない、②受取人が誰になっているのか、です。
順に見ていくことにします。
まず保険の手続き等は把握できたとしても、亡くなった人がどこのどのようなタイプの保険に入っていたのかがわからなければ手続きを進められません。
ですので、どこの保険に入っていたのか、領収書や保険証券等の手がかりを探していきます。
そして、亡くなられたら保険会社に一度問い合わせをしてみるのも一つの方法です。
逆に亡くなる前に保険会社に問い合わせをしても守秘義務があるので、契約内容等について教えてもらうことはできません。
また会社単位で契約しているような場合は、当人の下には資料がないのが通常ですから、会社に問い合わせをするしかありません。
次の問題点が保険金の受取人です。
受取人が被相続人以外の方になっている場合は、遺産分割等の手続きを踏むことなく保険金を受け取ることができます。
この場合は相続財産にはなりません。
これに対して受取人が被相続人になっている場合は、相続財産に組み込まれますので遺産分割の手続きを経て相続人に帰属することになります。
税金は以下のようになります。
死亡保険金の場合
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 相続人 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税(一時所得) |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
相続争いに活用できないか
相続争いにはいろいろなパターンがありますが、その中でも特定の誰かに遺産が集中した場合には公平とは言えず、トラブルが起こりがちになります。
このようなときに保険をうまく使うことはできないのでしょうか?
一つの事例を組み立ててみます。
被相続人には子が3人(長男、次男、長女)いるとします。
財産としては自宅の土地建物と預貯金、自営業なので自社の株式と工場の敷地等があります。
被相続人の死後は長男に事業を譲るつもりでいます。
次男は他の会社で勤務し、長女は嫁いで違う地域に住んでいます。
この場合、相続争いを起こさないようにするためには長男を生命保険の受取人とした保険契約を結ぶのが一つの方法です。
被相続人が死亡した場合、どうなるのでしょうか。
長男は家業を継ぐ立場にある以上、被相続人の有していた株式などの会社経営権や工場の底地を相続する必要があります。
そうすると金銭評価をするとそれだけで自分の法定相続分を超える可能性があります。
まして生命保険の受取人ですから、長男だけが得をするように見えます。
相続争いを助長することにだってなりかねません。
このような状況で遺産分割をします。
そのときに長男が受け取った生命保険金を次男や長女に分配して、株式や工場用地そして被相続人所有の土地建物を取得するようにすると、これはかえって公平になると考えられます。
こうすれば相続争いも減らせることができるでしょう。
他方、生命保険の受取人を次男や長女にした場合はどうなるのでしょうか。
受取人を次男や長女にした場合、次男長女が受取人になることは間違いがないのですが、この場合は遺産の法定相続分もそのまま次男長女に残された形になります。
ですので、保険金は次男または長女が取得して、被相続人の残した不動産や株式を分けることになり、事業を継ぐ長男には逆に不利な形となります。
そういうリスクを回避するために長男を保険の受取人にしておく必要性があるのです。
実際、相続争い等が発生して不動産や株式を漫然と共有名義にする、または事業を継ぐつもりもない次男や長女が受け継ぐことになると、後々の事業の運営に大きな支障を起こすことになりかねません。
保険金を誰が受け取るかをめぐってトラブルになることも多々ありますが、逆に保険をうまく利用することで遺産分割をスムーズに進めることもできるのです。
まとめ
生命保険は受取人を誰にするかでトラブルになりがちです。
ですが、使い方によっては公平な遺産分割を進められ、「争族」を防ぐ手だてにもなりえます。
保険は生前に被相続人がイニシアティブを取ってトラブルを防ぐ手段にもなりますので、その活用方法等も検討してみて下さい。
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