被相続人の遺産について誰が何を引き継ぐのかは、遺産分割の協議で決めます。
それを書面にしたものが遺産分割協議書ですが、それはあくまで相続人間で決めたことであって、名義を自分のものにするには別途手続が必要となります。
この項では主立った11種類の手続について見ていきます。
目次
預貯金
預貯金の相続手続きは金融機関で行います。
近年では、各支店の窓口よりも相続を一括で処理している相続事務センターとやりとりするところが多くなっています。
金融機関によって対応はまちまちですが、概して以下のような手続きを行います。
この手続きに入ることは、同時に口座が凍結されることになりますので引落等がある場合は、引落口座の変更等を先に済ませて下さい。
預貯金の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
預貯金先 | ・金融機関備え付けの依頼書 ・預金通帳 ・キャッシュカード ・被相続人の除籍謄本 ・原戸籍等 ・相続人の戸籍謄本 ・相続人の印鑑証明書 |
なし |
不動産(土地・建物)
不動産の名義変更は不動産所在地の管轄法務局で行います。
市役所で諸々の書類を集めて申請書を書き、登記の申請を行います。
費用は登録免許税として収入印紙で納めます。
また未登記の建物等については市役所で手続きを行います。
具体的には固定資産税を扱っている課で未登記建物の所有者変更届等の書類を提出します。
不動産(土地・建物)の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
法務局 | ・不動産登記申請書(所有権移転・持分移転等) ・被相続人の除籍謄本・原戸籍等 ・被相続人の住民票除票(本籍地記載)戸籍付票等 ・相続人の戸籍謄本 ・相続人の住民票(本籍地記載) ・遺産分割協議書 ・相続人の印鑑証明書 ・固定資産評価証明書 |
固定資産評価額の4/1000 |
株式
下記は上場会社の株式を前提に記載しています。
証券会社又は信託銀行等が名義書換代理人となっている場合が多いので、郵便物が送られてくる金融機関で手続きを済ませます。
非上場会社については、その会社に問い合わせて相続手続きを行いましょう。
概して各会社で株式の名義書換手続きをすることになります。
株式の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
証券会社または信託銀行 | ・証券会社所定の書類 ・被相続人の除籍謄本・原戸籍等 ・相続人の戸籍謄本 ・遺産分割協議書 ・相続人の印鑑証明書 |
なし |
保険
保険事故が発生ということになりますので、保険会社に問い合わせをして手続きを行います。
保険金の請求には支払事由が発生して3年という制限がありますので、期限内に行うよう注意して下さい。
保険の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
生命保険会社 | ・生命保険金請求書 ・保険証券 ・被相続人の除籍謄本・原戸籍等 ・死亡診断書 ・相続人の戸籍謄本 ・遺産分割協議書 ・相続人の印鑑証明書 |
なし |
債権
ここでは金融機関の預貯金以外のことを記載しています。
債権を相続した場合は、債務者への通知を行います。
場合によっては遺産分割協議書等の書類が必要になりますので、協議書への記載漏れがないよう注意して下さい。
債権の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
債権を相続した旨を債務者等へ通知 | ・債務確認証 ・遺産分割協議書 |
なし |
債務
銀行への借入がある場合などは金融機関での手続きをしなければなりません。
もしアパートのローンなど不動産の登記が絡んでいる場合は、通知に加えて債務者の変更手続きを法務局でもしなければならない場合があります。
金融機関の担当者の指示を仰ぐようにしましょう。
債務の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
相続した旨を債権者等へ通知 | ・債務確認証 ・遺産分割協議書 |
なし |
退職金
各会社での手続きを行います。
会社によって対応が違いますので、必要書類等を確認して準備して下さい。
振り込み口座や遺産分割協議書の記載漏れなどにも注意して下さい。
退職金の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
会社 | ・被相続人の除籍謄本 ・相続人の戸籍謄本 |
なし |
動産の場合
動産の場合は、その物を所持することになります。
遺産分割協議書に記載漏れがないか、注意して下さい。
特に高価な動産は相続人間で争いになる可能性がありますから、気をつける必要があります。
他人に預けている動産があれば5で記載したように死亡した旨の通知等を出す必要があります。
動産の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
特になし | 特になし | 特になし |
借地
借地権の相続の場合は無断譲渡にはなりませんので、解除事由には当たりません。
もし契約書にそのような記載があっても無効になります。
他方、契約書には相続手続きについての条項があるかもしれませんから契約書を確認して下さい。
不動産登記がされている場合は登記の名義変更をする必要があります。
借地の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
地主又は家主 | ・遺産分割協議書 ・相続人の印鑑証明書 |
なし |
農地
農地や山林については不動産の名義変更と同時に市町村役場の農業委員会等に届出をする必要があります。
各市町村役場によって必要となる書類が違う場合がありますので、事前に何が必要かを確認してください。
農地の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
地主又は農業委員会等 家主 |
・届出書 ・登記簿謄本のコピー ・遺産分割協議書のコピー(山林のみ) ・公図(山林のみ) ・位置図(地図等・山林のみ) |
なし |
自動車
自動車を相続した場合も、陸運局で名義変更の手続きを行う必要があります。
自動車登録番号や車体番号等の記載が遺産分割協議書にないと名義変更できませんので、協議書の記載には気をつけて下さい。
自動車の相続手続き
手続き先 | 必要な書類 | 費用 |
---|---|---|
陸運局 | ・移転登録申請書 ・自動車検査証 ・被相続人の除籍謄本、原戸籍等 ・相続人の戸籍謄本 ・遺産分割協議書 ・相続人の印鑑証明書 ・車庫証明書 |
1台につき500円程度 |
まとめ
以上、相続の主立ったものの手続きを見ていきました。
手続きをするところはいろいろとありますが、遺産分割協議書等の記載次第では手続きできない場合があります。
その点に気をつけて事務処理を進めて下さい。
▼相続争い解決法 シリーズ
- 相続争い解決法VOL1 勘違いしてるかも?まずは「相続」の仕組みを知ろう!
- 相続争い解決法VOL2 遺産分割協議の進め方と必要な手続き
- 相続争い解決法VOL3 完全網羅!「死亡」から「相続開始」までの流れ
- 相続争い解決法VOL4 珍しいケースでの死亡による相続について
- 相続争い解決法VOL5 死亡届提出から葬儀の流れと起こりうるトラブルについて
- 相続争い解決法VOL6 葬儀に借金取り登場?死亡後から相続までにありがちなトラブル10選と対策
- 相続争い解決法VOL7 後悔しないために!相続の「単純承認」と「限定承認」に関する注意点
- 相続争い解決法VOL8 相続人になれないケース!相続欠格と相続廃除とは
- 相続争い解決法VOL9 相続放棄したほうがいいケースとその手続き方法
- 相続争い解決法VOL10 相続放棄した場合に起こりうる意外な結果ともらえるもの
- 相続争い解決法VOL11 マイナス財産がある場合の「限定承認」と「財産分離」について
- 相続争い解決法VOL12 相続放棄や限定承認などのイレギュラーな相続に関するトラブル10選と対策
- 相続争い解決法VOL13 遺産分割後に必要となる遺産11種類の手続きまとめ
- 相続争い解決法VOL14 相続問題となりやすい保険金の種類と請求手続きについて
- 相続争い解決法VOL15 死亡退職金や退職慰労金などの請求手続きについて
- 相続争い解決法VOL16 事故死の場合の損害賠償請求手続きと遺産分割について
- 相続争い解決法VOL17 遺産の各種債権における請求手続きについて
- 相続争い解決法VOL18 遺産分割によって取得した不動産の移転登記について解説
- 相続争い解決法VOL19 遺族年金の給付手続きについて解説
- 相続争い解決法VOL20 相続税に関する予備知識と課税対象となる財産について
- 相続争い解決法VOL21 意外と簡単?相続税の仕組みを知って実際に計算してみよう!
- 相続争い解決法VOL22 遺産分割後に「愛人の子」?相続後によくあるトラブル12選と対策