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最終更新日:2022/12/13

相続争い解決法VOL8 相続人になれないケース!相続欠格と相続廃除とは

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続の対象となる遺産は、法定相続人が法定相続分に従って継承していく、これが法律の予定している相続の有り様です。

ですが、このままだと必ずしも公平とは言えない場合が出てきます。

例えば、故人を相続人が殺害したり、虐待したりしていたのに、いざ相続となるとこのような行為をした者達にも他の相続人と同様に均等に相続されるというのは、いかにもアンフェアです。

このような場合に、民法では相続の欠格と廃除という規定を定めて、このような相続資格のある相続人が相続権を失う規定を設けています。

遺言で相続欠格や廃除に該当する者に遺贈する旨の文言があったとしても、相続することはできません。

ここでは相続の欠格と廃除の条項について見ていきましょう。

相続欠格とは

相続欠格は、悪質な行為をした相続人に対して相続の権利が自動で剥奪されることです。

相続欠格について、民法891条で以下のような条項があります。

順に見ていきます。

①故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

被相続人を殺害した場合、又は殺害しようとした場合で刑に服した者を言います。

この場合、執行猶予も含みます。

被相続人だけでなく、自分より先の相続順位の者を殺害した場合も含みます。

例えば、子を殺害して直系尊属の自分が相続人となったような場合です。

なお、殺人罪は相続欠格になりますが、傷害致死罪は欠格に該当しません。

②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。

ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

文字通りのことです。

殺害者が一定の親族であれば、告発等は事実上難しいと考えて、例外規定が設けられています。

③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

③と④は同じような言葉が並んでいてわかりにくいのですが、③は詐欺や強迫を使って、被相続人が遺言しようとするのを妨害することを指すのに対し、④は詐欺や強迫を用いて、被相続人に遺言をさせるようなことを言います。

⑤相続に関する遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

テレビドラマなどによく出てくるものです。

遺言書をでっち上げたり、遺言の一部を書き変えたり、又は捨てたり隠したりする行為です。

公正証書遺言であれば公証人役場に保管されているので仮に紛失しても再交付してもらえますが、自筆証書遺言で自宅に保管していたような場合は隠されたり捨てられたりすると発見が困難になります。

廃除とは

相続廃除とは、被相続人が家庭裁判所で手続きを行って、相続人の権利を廃除することです。

ただし、遺留分を持つ推定相続人が対象です。

遺留分とは、相続で最低もらえる遺産を意味します。

さらに遺留分の権利を持つのは、亡くなった被相続人の親・子・配偶者が対象になります。

遺留分の権利を持つ相続人は、公平な相続が行われなかった場合に「遺留分侵害額請求」ができます。

もし被相続人が遺言書で相続について細かく取り決めを作っていたとしても、遺留分の権利を持つ相続人は遺留分侵害額請求ができます。

この点、遺留分のない兄弟姉妹や甥姪は遺言を作成することで、相続から外すことが可能ですので、廃除の対象にはなりません。

また、被相続人に対して虐待を行っている、あるいは重大な侮辱を加えている、又は著しい非行があったような場合が条件となります。

先ほどの相続欠格は①から⑤までの事情があれば当然に相続権を失うのですが、廃除は家庭裁判所で手続をする必要があります。

被相続人が生前に手続することもできますし、遺言に書き残して、死後に遺言執行者が被相続人に代わって手続をすることもできます。

この廃除、家庭裁判所の判断が必要なのですが、主張が認められるのは難しいというのが実情です。

相続廃除が認められるケースは、全体の20%程度といわれています。

実際に裁判例に現れたケースも稀ですが、例を見てみましょう。

<大判大11,7,25民集1-478>
老齢の尊属親に対しはなはだしい失行があったけれども、それが一時の激情に出たものである場合は、重大な非違とはいえない。

この判決から読み取れるのは、一時の非行では足りず、虐待や侮辱、その他の非行が日常的であったということが求められます。

ですので、日頃口げんかが絶えなかったとか、自分の子供だけど相性が合わないといった理由だけでは廃除は認められません。

逆に認められるケースとしては条文にもある通り、虐待や侮辱などの他、浪費や犯罪行為をして親に多大な精神的苦痛や財産的損害を与えているような場合、反社会的勢力に加担しているような場合、又は廃除の対象になる者が配偶者や養子といった場合には離婚や離縁の事由に該当するような場合であれば認められると考えられます。

いずれにしても廃除が認められるのは、かなり悪質なケースになると言えます。

相続欠格と廃除の相違点

ここでは両者の共通点と違う所を見ていきましょう。

  • ・相続欠落:法律に応じて勝手に相続人の権利が剥奪される
  • ・相続廃除:被相続人が裁判所に申立て、相続人の権利を廃除する

このどちらにも共通して言えることはどちらも相続資格を失うという点では共通です。

そして、どちらの事情で相続資格を失っても代襲相続はできるのです。

例えば親が死亡して、子供が欠格や廃除で相続できなくても、子の子、すなわち親からみて孫の地位にある者は相続できるのです。

また不動産の相続等の場面ではどういった書面が求められるのかですが、相続欠格の場合は相続欠格証明書等の書類を印鑑証明書付きで相続欠格者からいただく必要があります

これに対して廃除の場合は戸籍に記載されますので、欠格の場合のような直筆の書面は必要ありません。

さらに相続の欠格の場合は、法律に定める事由があると取り消し等の問題は起こらないのに対し、廃除の場合は一度家庭裁判所で廃除が認められても取り消しができるという違いがあります。

相続廃除したいなら弁護士に相談しよう

相続廃除を検討しているなら、弁護士への相談がおすすめです。

相続廃除の手続き方法は、家庭裁判に行く・遺言書を作成するの2種類しかありません。

どちらも法的な専門知識が必要になるため、専門家である弁護士への依頼がおすすめです。

また弁護士であれば相続人との交渉も任せられます。

相続廃除されそうな相続人がすんなり納得せずに、抗議してくるかもしれません。

そのような場合に弁護士が入ってくれれば、スムーズな交渉ができるでしょう。

まずは初回の無料相談がオススメ

弁護士に依頼するときに気になるのが、弁護士費用だと思います。

多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で受け付けています。

まずは無料で相談をしてみて「相続廃除ができそうなのか?」を聞いてみましょう。

自分と弁護士の相性もあるので、同時に相性チェックをやっておくべきです。

無料の範囲内であればキャンセルした場合でも費用はかからないので、まずは初回の無料相談を利用してみましょう。

弁護士は実績を見て選ぼう

「弁護士に依頼したいけど、どうやって探せばいいのかわからない」という人もいるでしょう。

弁護士によって得意分野が異なるため、相続廃除の実績を持った弁護士に依頼するのがおすすめです。

また探し方はインターネットがおすすめです。

なぜなら多くの弁護士の中から、案件に適した弁護士を見つけられるからです。

知人の紹介・公共機関で聞く方法ありますが、インターネットだとすぐに見つけられます。

弁護士探しで迷っている人は、インターネットで相続廃除の実績を持った弁護士を見つけてみましょう。

まとめ

ここまで相続欠格と廃除について見てきました。

いずれも相続をするに際してふさわしくない者を法律が除外した規定であります。

廃除については認められるのか現実的に難しい面もありますが、正しい知識を仕入れておいて、犯罪や虐待等に加担した者が関与することで起こりうる相続トラブルをできるだけ防ぐようにしておきたいところです。

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