この記事でわかること
- 財産が少なくても相続争いは起こる可能性があることがわかる
- 相続争いの原因と、防ぐための対処法や解決方法がわかる
目次
相続争いは増加中。決して他人事ではない
相続というと、相続人となった兄弟が親の遺産をめぐって激しい争いをするというイメージを持つ方もいるかと思います。
実際、2013年度の司法統計では、家庭裁判所で行われた遺産分割審判の件数が大きく増加していることがわかります。
この統計によれば、1985年度の遺産分割審判の件数は5,141件。
これに対して、2013年度の遺産分割審判の件数は12,263件となっています。
30年弱の間に、遺産分割審判の件数は2.3倍以上に増加しているのです。
もう1つ、注意しなければならないのが、遺産分割をめぐる争いはお金持ちの家だけの問題ではないということです。
2015年度の最高裁判所の調査では、遺産分割調停に持ち込まれた相続について、相続財産の金額ごとの割合を公表しています。
これによれば、相続財産が1,000万円以下のケースが32.0%、相続財産が1,000万円超5,000万円以下のケースが43.0%となっています。
つまり、全体の75%は、相続財産が5,000万円以下という、きわめて普通の家庭で遺産分割をめぐる争いが起きているのです。
相続争いに発展する5つの原因
相続争いが起きるケースでは、以下の5つの要因が深く関係していると考えられます。
- 遺言書に問題がある
- 生前贈与が行われている
- 不動産など分割が難しい遺産がある
- 被相続人を介護した相続人が寄与分を主張
- 相続人の家族が遺産分割に口を出す
これらの要因が1つ発生するだけでも問題は難しくなりますし、いくつかが絡んでくるとその問題はさらに大きなものになってしまいます。
ここでは、この5つの原因について確認し、どうしてこれらが争いの原因となるのか解説します。
遺言書に問題がある
遺産分割をめぐる争いを防ぐため、被相続人が生前に遺言書を作成している場合があります。
遺言書があれば、そのとおりに遺産を分けるのが原則ですが、なかにはその遺言書が争いの原因となってしまうことがあるのです。
遺言書で遺産分割を指示する際に、「すべての財産は長男に相続させる」など、特定の相続人だけが利益を得るような内容になっている場合があります。
この場合、財産を相続できなかった相続人は、遺言書ではなく遺産分割協議を行うことを主張できます。
また、遺産分割協議ができなかった場合には、遺留分を主張することができます。
ただ、いずれにしても相続人同士の争いとなることは避けられず、遺言書がさらに問題を大きくしてしまう可能性があるのです。
遺言書を作成する場合にはそれぞれの相続人の遺留分を確認し、その額を下回らないような分け方にする必要があります。
ただ、実際には特定の人に多く財産を渡すこととする内容となっていることが多いのです。
生前贈与が行われている
生前贈与は、被相続人と特定の人との間で契約を行い、財産を譲り渡す・譲り受けることです。
被相続人からすれば、亡くなった後ではなく生きているうちに、財産を特定の人に渡すことができるメリットがあります。
また、財産を受け取った人は、相続発生より前に、確実に財産を自分のものとすることができるのです。
しかし、生前贈与を何度も行っていると、亡くなった時に被相続人が保有している財産は少なくなってしまいます。
遺産分割協議の対象となるのは、基本的に亡くなった時に保有していた財産であることから、生前贈与された人とそうでない人の間では不公平が生じるのです。
過去の預金通帳の明細や、不動産の登記事項証明書を確認して、生前贈与の内容を把握し、そのことを加味した遺産分割を行えば争いは防げます。
ただ現実には、生前贈与の確認も、贈与された財産を加味した遺産分割も行われないことが多いのです。
不動産など分割が難しい遺産がある
遺産分割をする際に、すべての相続人が不利益を被らないようにしようとしても、限界があります。
特に、不動産のように分割が難しい遺産がある場合、その不動産を相続した人の相続分が大きくなりすぎることがあるのです。
不動産を相続する人は、自分以外の相続人に対してお金を支払う代償分割を行うこともできます。
ただし、代償金として支払う現金を保有していなければ、代償分割を行うこともできません。
被相続人を介護した相続人が寄与分を主張
被相続人の介護をした相続人と、そうでない相続人がいる場合、介護をした相続人は大変な思いをした分、多く相続できるように主張することがあります。
介護をしなかった相続人がこの主張を受け入れてくれれば、それで問題はありません。
ただ、介護したことを金銭的にどう評価するのか、その計算は簡単ではなく、多くのケースで争いの原因となるのです。
介護した相続人がいる場合は、寄与分の計算に基づいて、どれだけの貢献があったのかを客観的に判断する必要があります。
ただ、そのような計算を全員が納得する形で行うのはかなり難しいでしょう。
相続人の家族が遺産分割に口を出す
相続人同士は兄弟姉妹の関係であることが多く、争いがあってもお互いに遠慮や情があります。
しかし、相続人の配偶者や子供などの家族から見れば、他の相続人は他人であり、遺産分割においては邪魔な存在であることが多いです。
そのため、相続人の家族が遺産分割協議に参加し、口出しすることによって話し合いがまとまらないことはよくあるのです。
できるだけ、家族は遺産分割協議に参加させないようにし、相続人だけで話し合いを行うようにしましょう。
また、相続人の家族も話し合いに加わるような場合には、弁護士などの専門家にも話し合いに加わってもらうなどの対策が必要です。
相続争いを防ぐために被相続人ができる対処法
相続争いが起こるのには、いくつかの原因があることがわかりました。
原因を知り事前に回避策を取れれば、相続争いが起きる可能性を減らすことができるはずです。
そこで、以下のようなことを実行しましょう。
- 遺言書・財産目録の作成
- 遺産分割に関する法的知識を持つ
- 相続人の範囲を確認
- 相続税を試算
- 親族間でコミュニケーションをとる
遺言書や財産目録を作成しておくことは、相続争いを防ぐための第一歩といえます。
ただし、何の知識もない状態で作成してもかえってトラブルを招く結果となってしまうため、法的知識を身につけましょう。
親族間でコミュニケーションを密にすることが、相続争いを防ぐ大きなポイントになると考えられます。
相続争いを防ぐためのポイントについては、以下の記事も参考にしてください。
相続争いになったら弁護士に相談して解決
相続をめぐって相続人同士の争いとなる場合、最も多いのは遺産分割についての争いです。
遺産分割をめぐる争いとなった場合、その解決にはかなり専門的な知識が必要になります。
誰が相続人になるのか、法定相続分はどれだけになるのか、あるいは相続財産の評価額はいくらになるのかといったことは必ず知らなければなりません。
相続争いの当事者は兄弟姉妹など近い関係にあることから、かえって争いになるとその溝は深くなりやすいのです。
そこで、相続に関する専門家である弁護士に相談し、相続争いが発生しないようにしましょう。
また、もし相続争いに発展してしまった場合も、弁護士に解決を依頼しましょう。
まとめ
相続争いが増えていることやトラブル原因、対処法などを解説しました。
冒頭でもお伝えしたように「我が家は大丈夫」と安易に考えることは避けていただき、まずは相続の仕組みを知ることが大切です。
相続はどうしても法律用語が難しく専門知識が必要になりますので、弁護士にご相談されることをおすすめします。