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最終更新日:2022/12/9

相続税の還付(更正の請求)とは?納めすぎた税金が還ってくる8つのケース

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 相続税の還付請求の概要がわかる
  • 相続税が還付される8つのケースがわかる
  • 相続税還付(更正の請求)の手順や必要書類がわかる
  • 相続税還付請求の期限や税理士へ依頼するべき理由がわかる

相続手続きには複雑なものが多数あり、初めての経験になる人がほとんどです。

相続は生涯に何度も経験しないため当然といえば当然ですが、相続税の申告・納税は特に難易度の高い手続きになるでしょう。

相続財産の評価など不慣れな作業の連続になるため、申告や納税を済ませても「あれで正しかったのか?」という不安がしばらくは付きまといます。

最悪の場合、過少申告や申告漏れによるペナルティも発生しますが、逆に納めすぎていた場合はどうなるでしょうか?

過少申告や申告漏れの疑いがある場合、税務署は敏感に反応しますが、納めすぎた相続税については何の連絡もなく、税金が還付されることもありません。

では相続税の納めすぎがわかった場合、どのように還付請求すればよいのでしょうか?

今回は相続税が還ってくる8つのケースを紹介し、還付手続きになる更正の請求を詳しく解説します。

相続税の還付とは

納めすぎた相続税は税務署へ還付請求すると還ってきます

相続税は財産評価の段階から間違いを起こしやすく、納めすぎの方が相当数いることも事実です。

ところが税務署からは何の通知もないため、「申告内容は正しかったようだ」と安心してしまうケースもまた多いようです。

後で申告内容を見直した際、納めすぎに気付くこともありますが、相続税の還付は自分で請求するしかありません

正式には更正の請求という手続きですが、数百万~1千万円単位で還付されるケースもあるため、申告や納税の後でも再チェックは必要でしょう。

ではどのような場合に相続税が還付されるのか、よくある8つのケースをみていきましょう。

相続税の還付が受けられるケース8つ

不慣れな方が相続税を計算すると財産評価を間違ってしまったり、相続時に使える特例の適用を漏らすことがよくあります。

いずれも相続税の納めすぎに繋がりますが、正しい税額が計算できて納めすぎたことが分かったら必ず還付請求(更正の請求)をしておきましょう。

次に紹介する事例は相続税が還付される可能性が高いので、遺産相続した方や、相続税を納付した方はぜひ参考にしてください。

周辺地域に減額要素のある土地を相続した場合

土地の評価額は路線価を基準に算出しますが、所有地だけに注目すると減額要素を見逃してしまいます。

墓地や火葬場、刑務所などの忌避施設、騒音の出る工場や臭いの出る施設など、土地の評価額を下げる要素は意外に多いので、周辺地域にも注目してみましょう。

地積規模の大きな宅地を相続した場合

面積の広い宅地は使い勝手が悪いため、一定条件を満たせば最大65%の減額ができます。

三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の土地を指しますが、規模格差補正率などを適用させるため、一般的な路線価方式よりも低い評価になります

補正率を適用しないまま申告していた場合は、相続税の還付請求(更正の請求)をしてみましょう。

高低差のある土地や不整形地を相続した場合

地図上では道路に面していても、実際には高低差があるため接道条件が悪い場合もあります。

間口の狭い土地や、形状が悪いため利用制限がかかる土地も評価額は下がります。

専門家が現地をみた結果、評価額が1/5や1/10に下がった事例もあるので、相続税が還付される可能性はかなり高いでしょう。

駐車場に貸している土地を相続した場合

建物がないことから単純に「路線価×面積」で計算しがちですが、駐車場の状態によっては小規模宅地等の特例が使えます

青空駐車場であれば自用地と同じ評価になりますが、アスファルト舗装していれば貸付事業用宅地になるため、200㎡までの部分が5割減額の評価額になります

小規模宅地等の特例は、自宅の敷地だけに使えるものと勘違いされているケースも多いので、一度専門家に相談してみるべきでしょう。

公共施設やアパート、商店などが建っている土地を相続した場合

建物が建築されている土地には何らかの優遇税制があり、一般的な評価方法で相続税を計算すると納めすぎになってしまいます。

アパート経営をしている土地は貸家建付地となり、借家権割合、賃貸割合などの減額要素があるので評価額の計算に反映しているかどうか確認しておきましょう。

田畑などの農地や山林を相続した場合

農地の場合は建築物がないため、宅地(更地)として評価する方が多いようです。

しかし農地には多くの減額要素があるので、専門家がみると評価額は下がる場合がほとんどです。

山林の場合は純山林や中間山林、市街地山林によって評価方法が違うので、相続税の計算も間違えやすくなっています。

相続税が還付される可能性が高いので、相続財産に農地や山林がある場合は必ず専門家へ相談してください。

長期間使っていない空き地を相続した場合

用途が決まらず、長期間放置している空き地であれば一般的な宅地よりも低い評価額になりやすいため、周辺環境とともに専門家にみてもらうとよいでしょう。

不慣れな人が相続税評価額を計算した場合

相続財産の中には不動産や非上場株式など、評価の難しい財産が含まれているケースが多く、自分で計算すると高確率で間違ってしまいます。

税理士に任せれば安心というわけではなく、企業会計や確定申告などが主要業務の場合、相続に携わった経験のない税理士もいます

不慣れな人の財産評価は相続税の納めすぎになりやすいので、正確な評価や還付請求(更正の請求)は相続専門の税理士へ相談してください。

相続税還付(更正の請求)の手続きの流れ・必要書類

納めすぎた相続税を還付請求(更正の請求)する場合、税務署を納得させるだけの資料が必要です。

審査開始後には税務署から質問されることもあるので、相続専門税理士の助力を得ながら手続きした方がよいでしょう。

では相続税還付の具体的な流れや必要書類を解説していきます。

更正の請求書と添付書類の準備

相続税を還付請求する場合は「更正の請求書」が必要になるので、税務署窓口または国税庁ホームページから入手してください。

前回の申告と変更後の申告内容を記入する「次葉」も必要になりますが、年ごとに様式が違うので注意しておきましょう。

各様式とともに添付書類も準備しますが、還付請求の対象が不動産の場合は専門性が高いため、写真などの資料収集は税理士へ依頼した方がよいでしょう。

なお、参考資料として修正申告書も添付しますが、署名や押印は不要です。

参考:更正の請求書および次葉の様式(国税庁)

更正の請求書の記入と税務署への提出

必要な書類が揃えば更正の請求書を作成します。

様式はそれほど複雑ではなく、裏面には書き方も掲載されていますが、誤りや漏れがないよう、作成後は税理士にチェックしてもらうとよいでしょう。

更正の請求書は前回に申告した税務署へ提出し、請求内容が認められると「相続税の更正通知書」が郵送されます

ここまでの所要日数は2~3ヶ月程度ですが、審査期間中は面談または電話で税務署から質問される場合もあります。

国税還付振込通知書の送付と還付金の振込み

更正通知書の送付から概ね1ヶ月後に「国税還付振込通知書」が送付され、その後2週間以内に指定口座へ相続税の還付金が振り込まれます

納めすぎた相続税が還ってくるまでに半年以上かかる場合もあるので、少しでも日数を短縮できるよう、税理士と連携しながら手続きを進めてください。

相続税の還付期限は5年以内

ほとんどの相続手続きには期限が定められており、相続税の還付請求(更正の請求)は申告期限日から5年以内となっています。

相続税の申告期限日は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内なので、被相続人の死亡から5年10ヶ月の間に還付請求しなければなりません。

かなり余裕があるように思えますが、相続税の納めすぎに気付いたタイミングが遅ければ期限に間に合わない可能性も出てくるでしょう。

相続税の還付請求には手際のよさや専門知識も必要なので、相続に強い税理士に依頼するのがおすすめです。

まとめ

数ある相続手続きの中でも、特に大変なのが相続財産の評価と申告書の作成です。

相当な時間と労力が必要となり、明確な答えがないまま手続きを進めるため、相続人にとっては大きなストレスになるでしょう。

納めすぎた相続税は更正の請求により返還されますが、評価の見直しや新たな手続きも発生するため、余計な時間も消費してしまいます。

何ごとも最初が肝心なので、相続財産に不動産が多い場合は財産評価の段階から税理士の力を借りるようにしておきましょう。

相続はもちろん不動産評価に強い税理士であれば、高い確率で納めすぎの相続税を取り戻してくれます。

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