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最終更新日:2022/12/14

【遺産相続徹底マニュアル】遺産相続の必要書類・手続き・流れ・期限を解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 義務的手続きと遺産相続手続きについて、全体の流れが分かる
  • 死亡から14日、3ヶ月、10ヶ月など期限がある手続きが分かる
  • 遺産相続の手続きの期限に遅れたらどうなるかが理解できる
  • 手続きや届け出に必要な書類の入手方法や書き方が分かる

身近な方が亡くなると、自動的に相続が開始され、相続人はその財産と債務の一切を承継します。

その際は、遺産の分割や債務の支払い、相続税の申告など、遺産相続についての各種手続きがあります。

また、遺産相続の手続きとは別に、優先的に行うべき、行政機関や金融機関などへの義務的な手続きもあります。

たとえば、健康保険や年金受給資格などの相続人に承継されない権利や、口座、契約などは、死亡届や解約などの手続きが必要です。

これらの多種多様な手続きをスムーズに進めるためには、手続きの種類や期限、全体の流れを把握しておくことが大切です。

以下では、相続時のマニュアルとして利用できるよう、各種手続きの流れや期限ごとの手続きについて、必要書類なども含め、時系列で紹介します。

また、遺産相続のマニュアルとしても利用できるよう、期限に遅れたらどうなるかや、主な書類の入手方法や書き方も紹介します。

目次

遺産相続の手続き・全体の流れ

相続時は、遺産相続手続きのほかにも義務的手続きがあり、遺産相続手続きは、このような手続きと並行して進めていかなければなりません

全体としては、義務的な手続きの期限が早いため、これらの手続きを優先しながら、代表相続人などを中心に、遺産相続の手続きを進めます。

決して長くはない期間の中で、多くの手続きをスムーズに処理していくためには、最初に全体像を把握しておくと良いでしょう。

義務的な手続き

身近な人が亡くなった時は、遺産相続の手続きとは別に、行政機関や金融機関などへの手続きを行わなければなりません。

これらの手続きは、遺産相続手続きよりも期限が早めに設定されているものが多く、優先的に処理を行う必要があります。

行政機関や金融機関などへの手続きは、大別して3種類あり、その流れは以下のようになります。

  • 1 死亡届などの戸籍や埋葬に関する手続き【7日以内】
  • 2 年金や健康保険などの資格喪失に関する手続き【14日以内】
  • 3 生命保険の受取りや口座の閉鎖、契約終了に関する手続き【概ね14日以内】

遺産相続の手続き

被相続人の死亡と同時に相続が始まりますから、亡くなった方に遺産がある場合は、相続手続きを行います。

一般的な遺産相続手続きの流れは、次のように整理することができます。

  • 1 遺言書の調査
  • 2 相続人の調査
  • 3 相続財産の調査
  • 4 相続放棄や限定承認の判断・申立て【3カ月以内】
  • 5 準確定申告【4カ月以内】
  • 6 遺産分割協議書の作成
  • 7 相続税の申告【10カ月以内】
  • 8 相続預貯金の解約・相続不動産の名義変更など

死亡~14日以内に行う手続き

身近な方が亡くなった場合、遺族は、様々な手続きを行う義務を負います。

そのなかでも特に死亡から14日までは、葬儀の準備も含め、密なスケジュールで手続きを進めていかなければなりません。

戸籍や埋葬に関する手続き

身近に亡くなった方がいれば、まず7日以内に死亡診断書とともに死亡届を提出します。

また同時に、火葬を行うための許可を申請します。

死亡診断書の受取り

死亡届を提出する際の添付書類として、医師の死亡診断書か、死亡の原因が明らかでない場合は死体検案書を発行してもらいます。

通常、死亡診断書と死体検案書は兼用で、また、死亡届ともセットになって病院に備え付けられています。

様式はほとんどの場合、A3横長の用紙に、左側が死亡届、右側が死亡診断書兼死体検案書の併用形式となっています。

なお死亡診断書は、その後の手続きで必要な場合もあるため、コピーしておくことをおすすめします。

死亡届の提出と火埋葬許可書の受取り、葬儀

死亡から7日以内に、死亡診断書と同じ用紙に印刷されている死亡届に必要事項を記入し、市区町村役場に提出します。

また提出の際は、市区町村役場に備え付けられている火埋葬許可申請書も同時に提出し、火葬許可証を交付してもらいます。

火葬許可証があれば、葬儀社に依頼するなどして、葬儀を執り行うことができます。

世帯主の変更届

亡くなった方が世帯主の場合は、死亡から14日以内に、市区町村役場に備え付けの用紙で、世帯主変更届を提出します。

一般的には、死亡届の提出時にあわせて提出します。

ただし、残る世帯員が一人の場合や、15歳未満の子と配偶者などの親権者である場合は、この手続きは必要ありません。

資格喪失に関する手続き

故人だけに適用される資格がある場合は、死亡から14日以内に、停止や喪失の手続きを行う必要があります。

年金の受給停止手続き

亡くなった方が年金受給者の場合、受給資格がなくなるため、年金の受給停止手続きを死亡時の住所地を管轄する年金事務所(旧社会保険事務所)で行います。

厚生年金の場合は死亡から10日以内、国民年金の場合は死亡から14日以内に提出が必要です。

書類は社会保険事務所で入手できるほか、日本年金機構のホームページからダウンロードすることもでき、電子申請も利用できます。

提出の際は、亡くなった方の年金証書と死亡の事実を証明する資料として、

  • ・戸籍抄本か死亡診断書のコピー
  • ・死亡届の記載事項証明書

を添付します。

なお、未支給年金については、亡くなった方と同じ生計であった親族であれば、申請によって受け取りが可能です。

この場合は請求書に、

  • ・親族の戸籍謄本
  • ・同じ生計であったことがわかる住民票除票や請求者の住民票

などを添付して申請します。

健康保険の資格喪失届

国民健康保険や、75歳以上が対象の後期高齢者医療は、死亡によって被保険者資格を失います。

このため、死亡から14日以内に、資格喪失届と保険証を市区町村役場に提出・返却しなければなりません。

なお、会社で健康保険に加入していた場合は、死亡から5日以内に、資格喪失届を会社経由で年金事務所に提出する必要があります。

ただし、手続きは、基本的に会社側で行うため、会社からの指示に従います。

資格を失った場合、健康保険証が使用できなくなるため、扶養されていた家族は、国民健康保険への加入か、家族の健康保険への扶養手続きを行います。

介護保険の資格喪失届

亡くなった方が介護保険の認定を受けていた場合は、14日以内に、介護保険資格喪失届を市区町村役場に提出しなければなりません。

対象者は、65歳以上、または40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)の方のうち、要介護か要支援の認定を受けていた方です。

なお、提出の際は介護保険被保険者証を返却し、介護保険料の未納分があれば、相続人が代わりに納付しなければなりません。

契約に関する手続き

保険や口座、公共サービスなどの契約については、変更や解約手続きが必要です。

契約の支払い義務は相続人に引き継がれるため、放置しておくと、不要なサービス料金などの支払い義務が発生することにつながります。

故人の口座が閉鎖され、支払いができなくなるため、必要に応じて契約者の変更か、解約手続きを行います。

金融機関への連絡

亡くなった方名義の口座については、金融機関に名義人の死亡を連絡し、口座の入出金を止める「凍結」を依頼します。

口座が凍結されると、他の相続人が勝手に引き出すことができなくなり、遺産の散逸を防止できます。

公共料金や各種サービスの変更と解約

故人の口座から自動引き落としで支払っていた契約があれば、口座の凍結と同時に、支払いができなくなります

このため、引き続き利用する場合は支払方法の変更が、契約が不要な場合は解約手続きが必要です。

確認が必要な契約としては、

  • ・電気・水道・ガスなどの公共料金
  • ・固定電話や携帯電話
  • ・クレジットカード
  • ・インターネット接続
  • ・NHK受診契約

などがあります。

また、運転免許証やパスポートなどの資格や証明は、返納する必要があります。

生命保険金の受取り

故人が加入していた生命保険金の受取人になっている場合は、保険会社に連絡して、死亡保険金の受取手続きが必要です。

死亡保険金は相続財産に含まれないため、ほかの相続人とは関係なく、受取人が単独で申請して受け取ることができます。

死亡~3ヶ月以内に行う手続き

死亡から14日までに、相続手続きと並行して優先的に行うべき義務的な手続きはほぼ終わります。

ここからは、3カ月が期限の相続放棄や限定承認を判断できるよう、本格的に相続手続きを進めることになります。

遺言書の確認

遺産相続手続きは、遺言書がある場合とない場合では、進め方が異なります。

遺言書がない場合は、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、財産の分け方を決めます。

なお、遺言書がある場合は遺言にしたがって財産を分けますが、記載のない財産がある場合は、遺産分割協議で財産を分けます。

このため、遺言書がない、または、遺言書があることが明確な場合は別として、どちらとも言えないのであれば、遺言書の有無を確認します。

遺言書は3種類あり、自筆証書遺言や秘密証書遺言なら、自宅で保管しているか、相続人や知人などに預けていることが一般的です。

また、公正証書遺言なら公証役場に保管されていますから、照会します。

遺言書の検認

自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した場合、勝手に開封することはできません

亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行って、遺言書を「検認」してもらいます。

検認せずに開封した場合は、5万円以下の過料を支払わなければいけなくなる場合もあるため、必ず検認手続きにより開封します。

検認は、遺言書の状況を確認するために行うもので、相続人立会いの下で遺言書が開封され、裁判所による確認の後に、検認済証明書が発行されます。

相続人の調査

遺言書がある場合でも、だれが相続人であるかを確認するために、相続人調査を行うことが一般的です。

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を決めることになりますから、相続人の調査は重要です。

相続人を調査し、確定するためには、被相続人の出生時から死亡時までの「連続する戸籍」を取得して確認します。

前婚や認知の有無、連れ子との養子関係など、相続人に漏れがないかどうかを、出生時から連続する戸籍で確認します。

転籍や新たに戸籍が編製されている場合は、除籍謄本や改正原戸籍も取得して、すべての日付が連続するように、戸籍を揃えなければなりません。

戸籍や除籍謄本、改正原戸籍は本籍地のある市区町村役場で取得しますが、郵送請求制度を利用すれば、往復郵送で入手できます。

相続財産の調査

一口に相続財産と言っても、経済的な価値があれば、有形無形を問われません。

また、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も対象になります。

プラスの財産としては、

  • ・現金や預貯金
  • ・不動産の現物や借地権
  • ・株や売掛金
  • ・貸付金など有価証券
  • ・自動車
  • ・宝石、美術品

などの動産があります。

その他、電話加入権やゴルフ会員権、著作権、損害賠償請求権なども相続財産です。

一方、マイナスの財産としては、

  • ・借金や住宅ローン
  • ・買掛金
  • ・未払いの税金
  • ・未払いの家賃・医療費

なども相続の対象となります。

これらの相続財産を把握しなければ、遺産分割協議で分け方を決めることができませんから、正確に把握しなければなりません。

基本的には書類や郵便物を調べることになります。

預貯金なら通帳やキャッシュカード、不動産なら固定資産税の納税通知書を確認します。

また、不動産の場合は、市区町村役場で名寄帳を入手すれば、同じ市区町村にある故人名義の不動産を、まとめて確認することができます。

遺産分割協議の開始

相続人が確定し、相続財産の確認が終わったら、相続人全員で遺産分割協議を開始します。

この協議は、全員が一カ所に集合しない方法も可能で、電話や手紙、メールなどを利用して全員の意見を集約していく方法でも問題ありません。

なお、未成年者の場合は、通常親が代理人になるのですが、両者が相続人の場合は利害関係があるため、特別代理人を立てなければなりません。

全員の意見が揃わない状態で遺産分割協議を行った場合は、法的に無効となってしまうため、必ず全員が参加した状態で分け方を決める必要があります。

遺産分割協議で意見がまとまらない場合や、一部の相続人が参加しない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進めますが、それでも意見がまとまらない場合は、遺産分割審判によって分け方を決める方法もあります。

相続放棄や限定承認の手続き

相続放棄と限定承認は、故人に多額の借金がある場合に、財産を相続するかどうかを選択する手続きです。

この手続きは、相続があったことを知った日から3ヵ月以内が期限とされています。

この期限までに手続きを行わなかった場合は、全てを相続する「単純承認」を選択したことになり、借金があれば返済義務が生じることになります。

相続放棄や限定承認とは?

すでに確認したとおり、相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

したがって、多額の借金が相続財産となることもあり得ることになります。

故人に多額の借金がある場合には、借金を相続しないために、相続放棄や限定承認という制度を利用することができます。

相続放棄は、プラスの財産も含め一切相続しないことを選択する制度です。

同居していた自宅などを相続できなくなりますが、借金を免れることができ、支払い義務もなくなります。

これに対し、限定承認は、相続したプラスの財産から借金分を債権者に返済し、不足分は返済しなくても済む制度です。

なお、残金があれば受け取ることができ、同居していた自宅など特定の財産を相続することも可能です。

ただし、相続放棄は相続人それぞれが利用するかどうか判断して手続きできる反面、限定承認を選択する場合は、相続人全員での手続きが必要です。

死亡~10ヶ月以内に行う手続き

この期間では、死亡から4カ月以内に所得税の確定申告を、10カ月以内に相続税の申告手続きを行います。

所得税の準確定申告

亡くなった方が事業などを営んでいて所得があった場合、死亡から4カ月以内に、相続人が確定申告を行わなければなりません

この相続人が故人に代わって行う確定申告は、「準確定申告」と呼ばれます。

事業所得がある場合のほか、2,000万円以上の給与所得がある場合も、相続人がこの準確定申告を行い、所得税を納付する必要があります。

通常の確定申告と同様、申告期限を過ぎると延滞税を課される恐れがありますから、忘れないよう注意が必要です。

遺産分割協議書の作成と相続税の申告・納付

財産の分け方を話し合った結果は、相続税の申告と納税の期限までに、遺産分割協議書として証書を作成します。

分け方が決まり、相続した財産の名義変更が必要な不動産などは、名義変更手続きを行います。

また、分け方が決まれば相続税額も決まり、相続税の申告や納税が必要かどうか分かります。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議の結果は、「遺産分割協議書」として証書を作成します。

相続する人と財産を、具体的に間違いがないよう記載し、相続人全員が署名し、実印により押印すれば遺産分割の証拠となります。

相続人全員が協議を行った証拠とするためには、必ず、全員の署名の押印が必要です。

相続人の人数分だけ遺産分割協議書を作成し、それぞれが1通を保管します。

この遺産分割協議書があれば、金融機関での口座名義人の変更や不動産の名義変更手続きなどを、スムーズに行うことができます。

相続財産の名義変更手続き

亡くなった方名義の預貯金は、口座の名義人を変更するか、払い戻し手続きを行います。

また、不動産や株式、借地権、ゴルフ会員権などは、名義変更手続きが必要です。

名義変更手続きを怠ると、のちのち売却や貸借、利用などの際にトラブルの原因となるため、できるだけ早めに変更しておくことが重要です。

相続税申告と納付手続き

相続税の申告と納付期限は、死亡から10カ月以内です。

なお、財産調査に手間取っている場合や、遺産分割協議が終わらない場合などは、延長してもらう手続きもあります。

また、相続税を支払えない場合は延納や物納制度などもありますから、心配な場合は事前に確認しておくと良いでしょう。

相続税は、必ずしも課されるわけではなく、相続税が課される場合でも、個人個人で控除が異なるため、全員に支払い義務があるとは限りません。

基本的に、相続財産の合計が基礎控除額を超えない場合には、相続税はゼロで、申告の必要もありません

一方、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの税額控除は、申告することによって適用される仕組みであるため、必ず申告が必要です。

死亡~3年以内に行う手続き

死亡から10カ月以降、3年以内では、遺留分の侵害額請求や健康保険からの葬祭給付、相続税の延長手続きを完了する手続きがあります。

なお、葬祭給付以外は、該当する場合だけ行う手続きです。

遺留分侵害額請求の手続き

相続人には、最低限の遺産の取り分が認められ、これを遺留分と呼びます。

配偶者や子、相続の順番が回ってきた親などの直系尊属、子の代襲相続人には、この遺留分が認められ、兄弟姉妹にはありません。

遺留分は、法定相続分の2分の1、または3分の1が認められるため、遺言などによって権利が侵されている場合は、請求する権利があります。

たとえば、故人が相続人以外の内縁の妻に、全額を遺贈する遺言を遺した場合などは、金銭を請求することができます。

ただし、この権利を請求できるのは、遺留分を侵害されている事実を知った時から1年が原則ですから、それまでに実行しなければなりません。

請求や話し合いに応じない場合は、裁判所に申立て、調停や訴訟によって解決する方法もあります。

なお、請求してもその後放置した場合や、知らなかった場合でも10年経過すると権利が消滅し、請求できなくなります。

葬祭費、埋葬料の申請手続き

亡くなった方が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、喪主に葬祭費が支給される制度があります。

支給額は、自治体によって異なり、数万円程度です。

一方、国民健康保険以外の健康保険に加入していた場合は、喪主からの請求によって、最大5万円の埋葬料が支給される制度があります。

亡くなった方と同じ生計であった親族のうち、喪主が申請できますが、健康保険の保険者によって申請方法が異なります。

国民健康保険は市区町村役場、それ以外の健康保険は、健康保険組合や全国健康保険協会に、2年以内に申請します。

健康保険の資格喪失届を提出する際、同時に手続きを行えば手間が省けます。

税務調査対応や相続税軽減手続き

相続税の確認のために、申告の翌年または翌々年に、税務署が調査を行うことがあります。

調査の対象になる割合は、全体の2割前後と少ないのですが、追徴の恐れが高いと言われています。

また、相続税の申告期限に間に合わず延長手続きを行った場合は、遺産分割協議が終わり次第、相続税の修正申告や更生手続きを行う必要があります。

この期限は、死亡から3年10カ月です。

延長手続きで、未分割として申告と納税を行った場合は、この手続きを行うまで、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの税額軽減が適用されません。

なお、相続税を多く支払いすぎた場合は、死亡から5年10カ月以内であれば、相続税の還付請求手続きを行うことができます。

遺産相続の手続きの期限に遅れたらどうなるのか

遺産相続に期限があるものとしては、相続放棄や限定承認の手続き、純確定申告、相続税の申告と納税です。

これらの期限に遅れるとどうなるでしょう。

期限が定められた手続きに遅れたら

相続放棄や限定承認は、期限までに手続きしなければ、借金も含め、全て相続することを選択したことになります。

したがって、亡くなった方に多額の借金がある場合なら、相続人が代わりに返済しなければなりません。

また、準確定申告や相続税の申告に遅れると、無申告加算税や延滞税が課されることになります。

さらに、隠ぺいと見做されると重加算税を課されるなど、身に覚えのないペナルティを課される事態にもなりかねません。

手続き全体が遅れたら

各種の手続きが遅れると、結果的に相続手続き全体が遅れ、遺産は共有状態のままになってしまい、名義変更手続きなどを行うことができません

名義変更手続きをしないままの遺産は、相続したはずの本人に権利がなく、貸借や売買したいときにも手続きを進めることはできません。

こうなれば、遺産は宙に浮いた状態になってしまい、亡くなった方も浮かばれないことでしょう。

遅れやトラブル回避のため遺産分割協議書を作成

手続きの期限に遅れる要因としては、主に

  • ・相続人に関する問題や財産に関する問題
  • ・遺産分割協議に関する問題

があります。

相続人が行方不明や連絡が取れない場合、経営していた会社の債権や債務の特定に手間取るような場合は、判明するまで遺産分割協議を開始できません。

また、協議を始めても分け方が決まらない場合や、遺産分割協議書を作成しなかった場合には、いつまでたっても遺産を巡るリスクが残ります。

このような財産を巡るリスクは、親族間のトラブルや紛争に発展してしまう恐れもあり、そうなれば修復不可能な関係になる危険もあります。

しかしながら、これらの「遅れる要因」のうち、遺産分割協議書については相続人の協力によって作成でき、トラブルを回避することができるのです。

たとえば、後から財産の分け方に異議を唱える相続人が出現しても、話し合いの証拠があれば、覆されたりする恐れもありません。

また、遺産分割協議書を作成しておけば、時間の経過による財産の分け方についての勘違いや忘却などを避けることもできます。

手続き・届け出に必要な書類の書き方

身近な方が亡くなると、遺族は、各種の義務的手続きや遺産相続手続きを行わなければなりません。

これらの手続きには期限があるものが多く、必要な書類の入手方法や書き方が分かれば、スムーズに進めることができます。

ほとんどの書類はシンプル

ほとんどの書類は、提出先で提出書類の入手や添付書類の確認ができ、書き方も特別難しいものではありません。

このため、該当するものを漏れなくピックアップできれば、あとは提出先に確認しながら、問題なく手続きできるでしょう。

遺産分割協議書は事前に書き方を知っておく

しかしながら、遺産分割協議書については、手続きや届け出に必要ではあるものの、法律で作成が義務付けられているわけではありません。

また、不動産や銀行口座、自動車、株式など、各種の名義変更手続きなどに利用できるものですが、提出先ごとに様式が示されているわけでもありません。

このため、どこでも通用する遺産分割協議書の書き方を知っておくことが大切です。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、手書きでもパソコンで作成しても問題ありませんが、いくつかのポイントがあります。

まず、タイトルは明確に分かる表現を使用します。

タイトルの下には、だれの遺産を、だれが相続人として分割した(分けた)かを示します。

つづいて、協議の結果、取得することになった財産を、相続人ごとに記載します。

財産の記載は、間違いなく特定できる具体的な表記とし、不動産については登記簿謄本や権利証から正確に転記します。

相続人ごとの財産の後は、協議が成立したことを証明するために作成する旨を記載すれば、遺産分割協議の結果が明確になります。

さらに、協議を行った日を明確にするために日付を記入し、最後に相続人全員が署名と実印による押印を行います

相続人が1人でも欠けた状態では、遺産分割協議書は無効になってしまいますから、特に注意が必要です。

なお、相続人に未成年者がいる場合は代理人、または、親も相続人の場合は、特別代理人が参加しなければなりません。

書き方の注意点

書き方のうち、特に注意すべき点を列挙しておきましょう。

・作成方法
修正に備え、パソコンでの作成が望ましい

・印鑑と住所
印鑑登録証明書の実印を使用し、住所は印鑑登録証明書と同じ住所を記載

・作成する通数
相続人の数と同じ通数を作成し、相続人全員が各自一通ずつ原本を保管

・名義変更の対象となる財産の記載
提出先に通用するよう、不動産登記簿や証券、通帳などで細かく特定

・2ページ以上になる場合
ホチキス止めして契印を押す

・2通以上の場合
割印を押す

なお、特にトラブルが想定される場合などは、公正証書として作成し、有効性を高める方法をおすすめします。

公正証書は、公的な立場の公証人が作成する公文書で、あらゆるトラブルを避けたい場合や、紛失を避けたい場合に効果があります。

相続人だけで作成する合意の書面に比べ、合意の有効性に関する証明力が確実で、裁判によらずに強制執行可能であるなどの特別な効力があります。

まとめ

身近な方が亡くなると、遺産を分割して名義変更手続きが終わるまで、短期間に多くの手続きを処理しなければなりません。

特に、亡くなってから14日間で、多くの義務的な手続きをこなしながら、葬儀や初七日などの儀式を済ませる必要がありますから、心が休まる暇がないでしょう。

しかしながら、慌ただしい14日間が過ぎた後で日常の生活に戻ると、その後の手続きを忘れがちです。

手続きの期限を逸しないよう、期限ごとの手続きを確認しながら、ひとつずつ確実に処理していきたいものです。

迷う時や心配な時は、相続を専門に扱う弁護士などに相談することをおすすめします。

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