この記事でわかること
- 家や土地を相続した時の相続税評価額の計算方法がわかる
- 家や土地を相続する時に使える控除や特例を知ることができる
- 不動産を相続する際に注意しなければならないポイントがわかる
亡くなった人が自宅や賃貸用の物件を保有している場合、その家や土地を相続人が相続することとなります。
この場合、相続した家や土地の評価額を計算して、相続税の額を求めることとなります。
そのため、家や土地の相続税評価額の計算方法を知っておかなければなりません。
また相続税の計算をする際には、特例を利用することができる場合があります。
特例による控除額や、その特例を適用するための要件などについて、確認していきましょう。
目次
相続税の計算方法
家や土地の評価額を計算するのは、相続税の計算に必要だからです。
そこで、相続税の額をどのように求めるのか、その計算方法を簡単に解説していきます。
相続人の人数を確定する
遺産分割などの相続の手続きにも相続税の計算を行う際にも、誰が法定相続人となるのかを確定させる必要があります。
配偶者がいれば、その人は必ず法定相続人となります。
この他、(1)子ども、(2)直系尊属、(3)兄弟姉妹の順に該当する人がいればその人が法定相続人です。
最終的な法定相続人の組み合わせと人数を、確認しておきましょう。
相続財産の金額と基礎控除を計算する
相続の対象となる財産は、預貯金や不動産、有価証券などすべての財産です。
それぞれ決められた評価方法により相続税評価額を計算します。
なお、家や土地の評価方法については後ほどご紹介します。
また、法定相続人の人数が決まったら相続税の基礎控除の額が計算できます。
「3,000万円+(600万円×相続人の数)」で計算される基礎控除の額を計算しておきましょう。
相続財産悪額から基礎控除を引いて課税対象の額を求める
相続財産の合計額から基礎控除の額を差し引いて、課税対象となる財産の金額を求めます。
この時、相続財産の額より基礎控除の額の方が大きい場合は、相続税が発生しないこととなります。
相続税の額を求める
課税対象となる額を法定相続分で分割したものとして、各相続人の分割後の金額を求めます。
この金額に対して税率をかけて、相続税の額を計算するのです。
そして、各相続人について求めた相続税の額を合計した金額が全員で負担しなければならない相続税の合計額となります。
なお、各相続人が納付する税額は、この合計額を相続した財産の金額に応じて按分した金額となります。
家や土地を相続したときの評価方法
それでは、家や土地の相続税評価額はどのように計算するのでしょうか。
それぞれの評価方法について確認していきましょう。
家の相続税評価額
被相続人の自宅など、家屋の相続税評価額は固定資産税評価額と同額になります。
そのため、家の相続税評価額を知りたい場合は、固定資産税の課税明細書を確認すれば簡単に知ることができます。
固定資産税の課税明細書は、毎年4月頃にその家屋の所有者宛に送られてきます。
その家屋が共有になっている場合は、共有者のうち1人のところに送られてくるため、他の共有者に確認しなければならない場合もあります。
また、送られてきた課税明細書を紛失してしまった場合は、その家屋が所在する市町村の役場で評価明細書を発行してもらえます。
路線価方式の土地の相続税評価額
土地の相続税評価額の評価方法は、大きく2つに分けることができます。
まずは、いずれの評価方法によるかを確認する方法をご紹介します。
最初に、国税庁のホームページから路線価図を検索します。
そして、土地の所在地の住所から、その土地に路線価が設定されているかを確認しましょう。
路線価が設定されているのであれば、その土地の面する道路に「300E」などという数字とアルファベットの組合せが記載されています。
この数字の部分がその土地の路線価になり、路線価方式により評価することを表しています。
路線価とは、その道路に面する土地の1㎡あたりの価格をいいます。
路線価図では、その金額が千円単位で記載されているため、先ほどの「300」とは1㎡あたり30万円であることを示しています。
基本的には、この路線価に敷地面積を乗じたものが路線価方式による土地の相続税評価額となります。
たとえば先ほどの土地の面積が200㎡とすると、30万円×200㎡=6,000万円となります。
ただ、土地の面積が一緒でも、その土地の利用価値は一緒とは限りません。
形状がいびつな土地や、間口や奥行きが極端に長い(短い)土地はその利用価値が低くなります。
そのため、相続税評価額が低くなるような調整が行われます。
逆に、角地や2つの道路に挟まれた土地は利便性が高いため、相続税評価額が高くなります。
倍率方式の土地の相続税評価額
国税庁のホームページで路線価を検索しても該当する土地に路線価が設定されていない場合、その土地は倍率方式により評価します。
倍率方式とは、土地の固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を乗じて相続税評価額を計算する方法です。
土地の固定資産税評価額は、家屋と同じく固定資産税の課税明細書で確認することができます。
また、倍率は土地の所在地や種類ごとに定められており、個々の倍率は国税庁のホームページで確認することができます。
たとえば固定資産税評価額が4,000万円、倍率が1.1の土地の場合、相続税評価額は4,000万円×1.1=4,400万円となります。
倍率方式による場合、その土地の形状などの特殊要因はすべて固定資産税評価額を算定する段階で考慮されています。
そのため、路線価方式のような調整計算は基本的に行いません。
家や土地を相続するときに使える控除・特例
家や土地を相続する際には、その財産の種類や用途により評価額や税額が控除されることがあります。
この特例の適用を受けられるかどうかで、相続税の負担は大きく変わるため、利用できるものは利用するべきです。
どのような特例があるのか、その内容を確認していきましょう。
小規模宅地等の特例
土地を相続する際に、最も大きな税額軽減の効果を発揮するのが小規模宅地等の特例です。
小規模宅地等の特例を適用することができると、土地の評価額を最大で80%減額することができるためです。
小規模宅地等の特例を適用することができるのは、被相続人が住んでいた自宅の敷地や事業に使っていた土地です。
賃貸物件の敷地にも適用することができますが、適用面積や軽減割合で不利なため、まずは自宅の敷地で適用を受けることを考えます。
前述したように、居住用宅地について小規模宅地等の特例の適用を受ける場合、面積330㎡まで80%の減額が受けられます。
ただ、配偶者が相続した場合は無条件で適用を受けられますが、子どもなどが相続する場合は要件があります。
被相続人の生前に同居していて、申告期限までその宅地を所有しそこに居住している相続人でなければなりません。
また、同居していなかった場合は、相続人自身や相続人の配偶者の名義で自宅を所有していないことが前提となります。
小規模宅地等の特例を適用することで、相続財産の評価額が基礎控除の額より少なくなり、相続税が発生しないこともあります。
このような場合でも、小規模宅地等の特例を適用することで初めて基礎控除以下となるのであれば、相続税の申告は必要です。
税額が発生しないからといって、申告義務がなくなるわけではないことに注意しなければなりません。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が相続した場合には、相続税が発生しにくくなる特例が設けられています。
具体的には、配偶者が法定相続分まで相続するか、あるいは1億6,000万円までの財産を相続した場合、相続税はゼロとなります。
極端なケースでは、すべての相続財産の合計額が1億6,000万円であり、配偶者が全額を相続すると相続税は1円もかかりません。
ただ、配偶者が相続した財産はその配偶者が亡くなったときに次の相続が発生することとなります。
そのため、配偶者の税額軽減を上限まで適用することが必ずしも有利になるとは限らないことに注意すべきです。
未成年者控除
未成年の相続人がいる場合、その相続人に発生した相続税から成人に達するまでの年数×10万円で計算された金額を控除します。
成人になるまでに必要なお金を相続して、税金を負担するのではおかしいと考えられているのです。
障害者控除
相続人に障害者がいる場合、障害者が85歳に達するまでの年数×10万円で計算される金額を相続税額から控除します。
障害者が生活に必要な金額を相続財産から確保した場合、税負担が一律に発生するのは不合理と考えられているのです。
なお、障害の程度が重い特別障害者の場合は1年あたり20万円で控除額を計算します。
不動産を相続する際の注意点
家や土地などの不動産を相続する際には、預貯金や有価証券を相続する場合とは異なる注意点があります。
どのような点に注意すべきか、特に重要なポイントをまとめました。
不動産の共有は新たな問題の火種になる可能性
遺産分割がまとまらないために、1つの不動産を2人以上で共有とすることがあります。
しかし、共有となった不動産を相続後に売却したり、第三者に貸したりする場合はすべての共有者の同意が必要となります。
また、共有者が亡くなると新たな相続が発生し、さらに共有者が増えることも考えられます。
そうなると、ますます共有物件を売却したり利用したりすることは難しくなるでしょう。
将来のトラブルを避けるためには、たとえ兄弟同士であっても不動産を共有にはしないようにすべきです。
小規模宅地等の特例に該当する要件を確認
前述したように、小規模宅地等の特例を利用することができれば、相続税額を大きく減額することができます。
しかし、配偶者以外の相続人が相続して小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、厳しい要件をクリアしなければなりません。
特に、それまで同居していなかった相続人の場合はその要件が複雑に定められています。
必ず、事前に小規模宅地等の特例の適用を受けられるか、確認しておくようにしましょう。
親の土地に自宅がある場合は要注意
土地を他人に貸し付けた状態で亡くなった場合、被相続人はその土地を自由に利用できる立場にはありません。
そのため、土地の相続税評価額を計算する際には、借地権割合を控除して更地より低い金額で評価することができます。
ただ、土地の上に子どもが自宅を建てた場合は要注意です。
このようなケースでは、通常子どもから賃料を受け取っていないことが多いでしょう。
賃料を受け取っていない場合は使用貸借となり、土地の相続税評価額を計算する際に借地権割合は考慮しないこととされているのです。
相続税の負担を軽減するためという理由で子どもが家を建てても効果はないことに注意しましょう。
まとめ
家や土地などの不動産は、その金額が大きい一方で、簡単に分割できないことから遺産分割の際に揉める原因になることがあります。
そのため、相続が発生する前に相続税や遺産分割についてのシミュレーションをしておき、事前に問題を把握しておくことが有効です。
また、相続税の計算を行う際には、特例を適用して税額が軽減されることもあります。
特例を利用して、税負担が少しでも軽減できるような相続の方法を考えておきましょう。