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最終更新日:2022/12/13

配偶者の有無・子どもの人数別の相続税早見表【節税対策も紹介】

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 相続税の税率や相続税早見表で相続税の税額を確認することができる
  • 相続税の計算方法や計算時に使える控除や特例を知ることができる
  • 早見表で相続税がかかることがわかった場合にすべきことがわかる

相続税の計算は、相続財産の金額だけでなく相続人の数や配偶者の有無によっても、その金額は大きく変わります。

そのため、相続財産がいくらあると相続税がいくらになるかを簡単に計算することはできません。

ただ税額の目安や、そもそも相続税が発生するのかがわからなければ、何の対策もすることができません。

そこで利用したいのが、相続税早見表です。

ここでは相続税早見表を紹介するとともに、その利用法や節税対策についても解説していきます。

相続税の税率

相続税は、相続財産を法定相続分に分割した後その金額に対して税率を乗じて求めることとされています。

相続税の税率は、財産の額が大きくなるほど高くなる累進課税方式が採用されており、財産が大きくなると税負担も大きくなります。

相続税の税率は、以下の表のように定められています。

「相続税の速算表」(国税庁)

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

財産の額から速算表にある税率を適用し、控除額を減額した金額が相続税額となります。

たとえば財産の額が4,000万円の場合は「5,000万円以下」に該当するため、4,000万円×20%-200万円=600万円となります。

同じように、財産の額が1億円の場合は「1億円以下」に該当するため、1億円×30%-700万円=2,300万円となります。

この表を見てもわかるとおり、相続税の最高税率は55%となり、非常に大きな税負担となるケースがあるのです。

【ケース別】相続税早見表

先ほど紹介した相続税の速算表は、相続財産を法定相続分に分割した後の金額に対して乗ずる税率を記載した表です。

しかし、この速算表を使っても、相続人が負担することとなる相続税額の総額を求めることはできません。

法定相続分に分割した後の金額ごとに相続税を計算する必要がありますが、それはかなり大変な計算となります。

そこで参考にしてもらいたいのが、相続税早見表です。

相続税早見表は、相続人の構成に応じて、相続財産がいくらあると相続税額がいくらになるかを表したものです。

配偶者が相続した場合は「配偶者の税額軽減」という特例が適用できるため、大幅に相続税の負担が軽減されます。

相続税早見表も、配偶者がいる場合といない場合とで別の表になっています。

相続人の構成を確認して、参照する表を間違えないようにしなければなりません。

配偶者がいる場合の相続税早見表

配偶者がいると、配偶者の税額軽減が適用されます。

配偶者の税額軽減により、配偶者が法定相続分あるいは1億6,000万円のいずれか大きい金額まで相続した場合、相続税はかかりません

そのため、大幅な相続税の減額となるのです。

法定相続分のとおりに遺産分割を行った場合、相続税額は以下のようになります。

相続財産の合計額 配偶者+子ども1人 配偶者+子ども2人 配偶者+子ども3人
5,000万円 40万円 10万円 0円
6,000万円 90万円 60万円 30万円
7,000万円 160万円 112.5万円 80万円
8,000万円 235万円 175万円 137.5万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円
1億円 385万円 315万円 262.5万円
1億5,000万円 920万円 747.5万円 665万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,217.5万円
2億5,000万円 2,460万円 1,985万円 1,800万円
3億円 3,460万円 2,860万円 2,540万円
4億円 5,460万円 4,610万円 4,155万円
5億円 7,605万円 6,555万円 5,962.5万円
10億円 1億9,750万円 1億7,810万円 1億6,635万円
15億円 3億2,895万円 3億3,15万円 2億8,500万円

相続税の最高税率は55%であり、財産が多くなるほど高い税率で税金が課されるという説明をしました。

しかし、相続税速算表にある金額は55%どころか30%にも満たない税額が並んでいます。

仮に1億円の相続財産があった場合、配偶者と子ども1人のケースでは、実際の税率は3.85%ということになります。

相続財産が15億円の場合でも実際の税率は20%前後であり、これだけを見ればそれほど大きな税額が発生しないように思われます。

配偶者がいない場合の相続税早見表

配偶者がいない場合は、配偶者の税額軽減の適用を受けることができません。

そのため、配偶者がいる場合に比べると相続税額は大きくなります

配偶者がいない場合で法定相続分とおりに遺産分割を行った場合の相続税額は、以下のようになります。

相続財産の合計額 子ども1人 子ども2人 子ども3人
5,000万円 160万円 80万円 20万円
6,000万円 310万円 180万円 120万円
7,000万円 480万円 320万円 220万円
8,000万円 680万円 470万円 330万円
9,000万円 920万円 620万円 480万円
1億円 1,220万円 770万円 630万円
1億5,000万円 2,860万円 1,840万円 1,440万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,460万円
2億5,000万円 6,930万円 4,920万円 3,960万円
3億円 9,180万円 6,920万円 5,460万円
4億円 1億4,000万円 1億920万円 8,980万円
5億円 1億9,000万円 1億5,210万円 1億2,980万円
10億円 4億5,820万円 3億9,500万円 3億5,000万円
15億円 7億3,320万円 6億5,790万円 6億円

配偶者がいないために、配偶者の税額軽減を受けることができず、多額の相続税が発生します。

1億円の相続財産で相続人が子ども1人の場合、相続税は1,220万円となり、その税率は12.2%に上昇します。

相続財産が15億円の場合では実際の税率は40%を超え、子ども1人のケースでは50%近くにもなってしまうのです。

相続税の計算方法

相続税の計算方法は、所得税などの計算と比較すると複雑でわかりにくいものです。

ここでは相続税の計算方法を解説し、相続税早見表にある金額の計算方法を紹介していきます。

相続財産の総額が2億円、法定相続人が配偶者と子ども2人とし、法定相続分どおりに遺産分割したものとして相続税額を計算します。

相続財産の合計額を計算する

相続財産の種類ごとに相続税評価額を計算し、その合計額を求めます。

土地や建物、有価証券などその評価額を求める過程が重要なものは、専門家に依頼することも考えなければなりません。

ここでは、相続税評価額を計算した結果、総額が2億円になったものと考えます。

基礎控除の金額を差し引く

基礎控除の額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求めます。

このケースでは、法定相続人が3人であることから、基礎控除の額は4,800万円となります。

相続財産2億円から基礎控除4,800万円を差し引いた1億5,200万円が課税対象となる金額です。

課税対象となる金額を法定相続分に分ける

相続税額を計算する際には、課税対象となる金額を法定相続分に分割します

このケースでは、配偶者1/2、2人の子どもがそれぞれ1/4となるため、配偶者7,600万円、子どもがそれぞれ3,800万円となります。

速算表で相続税の合計額を計算する

各相続人に配分した課税対象の相続財産の金額を速算表にあてはめて、それぞれの相続税を計算します。

配偶者の課税対象財産は7,600万円であるため、相続税額は1,580万円となります。

また、子どもはそれぞれ3,800万円であることから、相続税額は560万円となります。

ただし、この段階で求めた税額を納税するわけではありません。

ここでは、すべての相続人が納付すべき税額の合計額を求めるのであり、このケースでは1,580万円+560万円×2=2,700万円となります。

相続人ごとの相続税額を求める

先ほど計算した相続税の合計額を相続した財産の割合に応じて按分し、その額をそれぞれの納税者が納付すべきこととなります。

このケースでは、法定相続分どおりに遺産分割を行うこととしているため、相続税額も法定相続分で分割します。

したがって配偶者が1,350万円、子どもがそれぞれ675万円となります。

また、配偶者については配偶者の税額軽減の特例を適用することができます。

その結果、配偶者は納付税額がゼロとなります。

最終的に、子ども2人がそれぞれ675万円の相続税を納付することとなるのです。

早見表で相続税がかかるとわかったときの対処法

相続税早見表で求められた相続税額は、財産の金額と相続人の組み合わせだけに着目した概算の税額です。

実際に納付すべき相続税額を求めるためには、それ以外の要素も含めて計算をしなければなりません。

そこで、早見表で相続税が発生するとわかった場合、どのような対処が必要なのかを確認しておきましょう。

正確な相続税評価額を計算する

土地や有価証券などの相続税評価額の計算方法は、時価とは異なります。

そのため、相続税評価額を計算すると思ったより低い金額になることも考えられます

概算で相続税の額を計算した場合も、改めて相続税評価額を求めて、正確な相続税額を計算するようにしましょう。

遺産分割の方法を決める

遺産分割の方法により、それぞれの相続人の納付すべき相続税額が決まります。

また、配偶者が納付すべき相続税額については、法定相続分を超えて相続した場合でも配偶者の税額軽減が適用できます

どのような割合で誰が遺産を相続し、その結果いくらの相続税が発生するのかまで計算してみましょう。

控除や特例を適用できないか確認する

相続税額が軽減される制度は、配偶者の税額軽減以外にも多くあります。

そのような制度を適用できるかどうかの判断をし、実際にどれくらいの税額になるのかを試算してみましょう。

控除や特例として利用できる制度については、後ほど紹介します。

相続税計算時に使える主な控除・特例

各相続人が納付すべき相続税額を求める際に、適用することができる控除や特例には、どのようなものがあるのでしょうか。

配偶者の税額軽減以外の主な控除・特例について、その要件などを確認していきましょう。

未成年者控除

相続人が未成年者の場合に、相続税の額から一定額を控除することができる制度です。

未成年者が20歳になるまでの年数1年について、10万円を控除することができます。

また、控除しきれない場合には、その扶養義務者の相続税額から控除することもできます。

障害者控除

相続人が65歳未満の障害者の場合、相続税の額から一定額を控除することができる制度です。

65歳になるまでの年数1年につき、10万円を控除することとされています。

障害者控除も、控除しきれない場合にはその扶養義務者の相続税額から控除することが認められます。

相次相続控除

相続開始前10年以内に、被相続人が相続や遺贈により取得した財産について相続税を負担していた場合、相続税の負担が続きます。

そこで、相続税額のうち一定の金額について控除することで、その税負担を軽減することが認められます。

被相続人の相続人であり、相続開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得している場合に適用されます。

また、前回の相続において相続税が課税されていることが要件となります。

前回の相続において課税された相続税額について、1年あたり10%の割合で逓減した後の金額が、今回の相続税額から控除されます。

まとめ

相続が発生しても、すべての場合に相続税が発生するわけではありません。

しかし、相続税が発生する場合には、その負担が大きくなるため、納税に苦労することも考えられます。

相続が実際に発生する前に、相続財産となるものの合計額を計算し、そこから早見表で相続税の概算を計算してみましょう。

そして、相続税が発生するのであれば今からできる相続税対策を行うようにしましょう。

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メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

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