この記事でわかること
- 死亡退職金の受取人は誰か
- 受取人の指定がない場合、誰が受け取るのか
- 死亡退職金の受取人の優先順位
- 相続放棄をしても死亡退職金を受け取れるのか
- 死亡退職金の相続税の扱い、非課税枠、計算方法
死亡退職金は、労働者が死亡した際に遺族に支払われる金銭で、遺族の生活を支える重要な役割を果たします。
本記事では、死亡退職金の受取人が誰になるのか、指定がない場合の受取人や優先順位について詳しく解説します。
また、相続税の扱いや非課税枠、計算方法についても説明します。
死亡退職金について疑問がある方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
死亡退職金の受取人とは
死亡退職金の受取人は、亡くなった従業員の遺族や法定相続人が対象となります。
多くの会社では退職給与規定によって受取人が指定されていますが、指定がない場合もあります。
会社に受取人に関する規定がない場合は、相続人同士で遺産分割協議を行い、受取人を決定しなければなりません。
この受取人の決定は、死亡退職金がどのように扱われるかを左右し、相続税の計算にも影響を及ぼします。
そのため、受取人に関する正確な理解が欠かせません。
ここでは、死亡退職金の受取人は誰か、優先順位の法的システム、受取人の指定がない場合の対応について解説します。
死亡退職金の受取人は誰?優先順位は?
死亡退職金の受取人は、通常、会社の退職規定によって決められています。
多くの会社では、次のような優先順位が設定されています。
第2順位:故人の収入で生計を維持していた子ども、父母、孫、祖父母
第3順位:上記に該当しない子ども、父母、祖父母、兄弟姉妹
この順位は労働基準法施行規則を参考にしていることが多いですが、会社によって異なる場合もあります。
重要なのは、会社の規定で受取人が指定されている場合は、指定された受取人が優先されるということです。
死亡退職金の受取人に関する規定は会社ごとに異なるため、必ず勤務先の会社に確認するようにしましょう。
死亡退職金の受取人の指定がない場合は?
会社の退職給与規定で死亡退職金の受取人が指定されていない場合、死亡退職金は他の相続財産と同様に扱われます。
そのため、死亡退職金は相続財産とされ、民法の規定に定められた法定相続人が受取人となります。
以下に、法定相続人と順位、法定相続分を表にまとめましたので、参考にしてください。
法定相続人の順位と法定相続分
順位 | 法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|---|
常に相続人 | 配偶者 | 単独または他の相続人と共同相続 |
第1順位 | 子(直系卑属) | 配偶者1/2、子1/2(子が複数の場合は人数割り) |
第2順位 | 親(直系尊属) | 配偶者2/3、親1/3(複数の場合は人数割り) |
第3順位 | 兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(複数の場合は人数割り) |
実際には、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどのような割合で死亡退職金を受け取るかを決める必要があります。
死亡退職金の受取人を変更するには?
死亡退職金の受取人を生前に変更できるかどうかは、会社の退職規定によります。
一部の会社では変更が認められる場合がありますが、認められない場合もあります。
まずは勤務先の規定を確認することが重要です。
また、会社の規定によっては、遺言書を書くことで受取人を変更できる場合もあります。
この場合、遺言書で死亡退職金の受取人を指定しておくことで、相続開始後にその指定が優先されます。
なお、本人が亡くなった後に家族や相続人が受取人を変更することはできません。
ほとんどの会社では、従業員の死亡後に受取人変更を認めていないため、死後の変更は基本的に不可能と考えましょう。
一方で、会社の退職規定に死亡退職金の受取人が指定されていない場合は、相続財産として扱われます。
この場合は、相続人全員の合意に基づく遺産分割協議によって、受取人を自由に決めることができます。
死亡退職金は遺産?受取人の財産?
死亡退職金は、遺産とは異なる扱いを受けます。
ここでは、死亡退職金の扱いや相続放棄をした場合についても詳しく説明します。
死亡退職金は相続財産にならない?
死亡退職金は、その扱いは会社の規定によって異なります。
会社が死亡退職金の受取人を指定している場合、死亡退職金はその受取人の固有財産となり、相続財産には含まれません。
この場合、受取人と指定された人が全額を受け取る権利を持ち、遺産分割協議の対象にもなりません。
一方、会社の規定が死亡退職金の受取人を指定していない場合、受取人は法定相続人となります。
そのため、死亡退職金は相続財産と同様に扱われ、遺産分割協議の対象となり、相続人全員で受取人や割合を決めることになります。
ただし、税法上では死亡退職金は「みなし相続財産」となり、扱いが異なるため注意しましょう。
相続放棄すると死亡退職金を受け取れない?
マイナスの遺産が多い場合、相続放棄を検討しますが、相続放棄をすると死亡退職金は受け取れないのでしょうか。
相続放棄をすると、すべての相続権を失うため、死亡退職金も受け取れない、と考えがちです。
実際にはどうなのか、以下の表にまとめました。
相続放棄者が死亡退職金を受け取れるか否か
勤務先の死亡退職金の規定 | 財産の扱い | 受取人 | 相続放棄者 |
---|---|---|---|
受取人指定あり | 受取人固有の財産 | 勤務先指定の受取人 | 受け取れる |
受取人指定なし | 相続財産(遺産) | 遺産分割協議で決める | 受け取れない |
会社の規定に受取人の指定がある場合、受取人固有の財産となるため、相続放棄をしたとしても死亡退職金を受け取れます。
しかし、会社の規定に受取人の指定がない場合は、相続財産として扱われます。
そのため、相続放棄をするとすべての相続権を失い、死亡退職金も受け取れません。
まずは、勤務先の退職規定に受取人が指定されているかどうかを確認することが重要です。
死亡退職金に相続税はかかる
死亡退職金は、会社の規定で受取人が指定されている場合、その受取人固有の財産とされます。
このため、相続税がかからないと誤解されることがあります。
しかし死亡退職金は、生命保険金と同様、税法上「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象となります。
そのため、非課税枠を超える場合には相続税の申告が必要です。
ここでは、死亡退職金に関する税金の取り扱いと相続税の計算方法について見ていきましょう。
死亡退職金の相続税の扱いは?
死亡退職金は、税法上「みなし相続財産」として扱われ、死亡後3年以内に支給が確定した場合は相続税の対象となります。
受取人が法定相続人である場合、死亡退職金には「みなし相続財産」の非課税枠が適用されます。
この非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算されます。
すべての相続人が受け取った死亡退職金の合計額が非課税限度額を超えた場合、その超過分に対して相続税が課せられます。
一方で、受取人が法定相続人以外の場合、非課税枠が適用できないため、その死亡退職金は全額が相続税の対象となります。
たとえば、会社の退職規定で受取人の指定があり相続放棄者が受け取った場合は、非課税枠は使えません。
死亡退職金の取り扱いは受取人の状況により異なり、正確な理解と適切な手続きを行うことが重要です。
特に、高額な死亡退職金を受け取る場合や相続放棄が絡む場合は、専門家への相談をおすすめします。
死亡退職金の相続税の非課税枠と計算方法
死亡退職金は税法上「みなし相続財産」として扱われ、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されます。
たとえば、配偶者と子ども2人が受取人の場合、法定相続人は3人となり、非課税枠は1500万円です。
この枠内であれば相続税は発生しませんが、死亡退職金が2000万円の場合、超過分の500万円が課税対象となります。
この額を他の相続財産と合算し、基礎控除額を差し引いて課税額が決まります。
また、相続放棄者が死亡退職金を受け取る場合は、会社規定で受取人に指定されている場合に限られ、固有の財産になります。
しかし、税法上は「みなし相続財産」となり、法定相続人の数には数えますが、放棄者は相続人ではないため非課税枠は使えません。
このように、死亡退職金の相続税の計算は複雑になる場合があるため、不安がある場合は専門家への相談をおすすめします。
まとめ
会社の規定で死亡退職金の受取人が指定されていない場合、法律に基づいた手続きを行わなくてはなりません。
法定相続人や相続財産の確定、相続人全員による遺産分割協議、その後の具体的な手続きまで、多くの工程が伴い非常に煩雑です。
マイナス資産が多く、相続放棄を検討する場合は、さらに専門的な知識を必要とします。
また、会社規定による受取人指定の有無に関わらず、相続財産が非課税枠を超える場合、相続税の計算も難しくなります。
相続手続きには期限が定められているものがあり、これを過ぎると罰則や過料が発生する場合があります。
こうしたリスクを避けるためにも、不安を感じたら早めに専門家に相談することをおすすめします。
適切なサポートを受けることで、死亡退職金を含めた遺産分割や相続手続きをスムーズに進めることができるでしょう。