この記事でわかること
- 公正証書遺言の証人とは
- 証人の選び方
- 専門家に証人を依頼するメリット
遺言を確実に実現するための有効な手段が公正証書遺言です。
公正証書遺言を作成するには、法律に定められた適切な証人が2名必要になります。
証人選びを間違えると、せっかく作成した遺言が無効になるリスクや、相続トラブルにつながるおそれもあります。
今回は、公正証書遺言の証人になれる人となれない人について、わかりやすく解説します。
証人を依頼する費用の相場や、証人を選ぶときの注意点、トラブル防止策もあわせて紹介します。
大切な遺言作成をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。
公正証書遺言の証人は誰がなれる?
公正証書遺言は法的な効力のある遺言で、もっとも有効性の高いものです。
そのため、誰でも証人になれるわけではありません。
ここでは、公正証書遺言の証人になれる人や、証人が見つからない場合の対処法について解説します。
公正証書遺言の証人になれる人とは
公正証書遺言の証人は、18歳以上の成人であれば特別な資格は必要ありません。
弁護士や行政書士などの専門家でなくても、友人知人でも問題ありません。
証人として重要なことは、遺言者の意思能力を確認でき、遺言内容に関して中立的な立場を保てることです。
証人は、遺言内容を知ることになりますので、信頼できる第三者を選ぶことが大切です。
公正証書遺言の証人になれない人とは
18歳以上の成人であれば、誰でもいいわけではありません。
公正証書遺言の証人になれない人の定義は、以下のように法律で明確に決められています。
- 未成年者
- 推定相続人(子や配偶者など)
- 受遺者
- 相続人や受遺者の配偶者および直系血族
- 公証人の配偶者・親族・使用人
「未成年者は遺言の内容を理解できる能力が不十分である」とされているため、証人にはなれません。
未成年者以外に相続人や受遺者などは、遺言者と利害関係がある場合や、遺言の中立性を保つことが困難であると判断され、証人として認められていません。
証人になれない人を選ぶと、遺言が無効になる可能性があるため、事前に関係性をよく確認しておく必要があります。
証人は誰に頼む?
証人には友人・知人など、親族以外の近しい関係性の人に頼むケースが一般的です。
遺言内容に直接関係しない、利害関係のない第三者が理想です。
信頼性と秘密保持を考慮し、依頼する相手を慎重に選びましょう。
親族でも、推定相続人や受遺者にあたらなければ証人になることができます。
たとえば、遺言内容に関与しないおじ・おば、いとこなどが該当します。
しかし、親族間では後にトラブルになるリスクもあるため、第三者に依頼することをおすすめします。
証人が見つからない場合は?
適切な証人が見つからない場合は、公証役場に証人の手配を依頼できます。
また、弁護士や行政書士などの専門家に依頼する方法もあります。
専門家に依頼する場合は、公正証書遺言の作成から公証役場との調整も含め、証人の対応をしてもらえるケースが多いです。
相続や遺言に詳しい専門家を選びましょう。
専門家を選ぶ際は、以下のような方法があります。
- 各事務所の無料相談を利用する
- 士業団体に問い合わせる
- 法テラスを利用する
公正証書遺言の証人を依頼するときの費用
公正証書遺言の証人を依頼する場合、日当として報酬が発生することが一般的です。
ここでは、証人の依頼先ごとに、報酬の相場を解説します。
知人や友人に依頼する場合の費用
知人や友人に証人を依頼する場合、基本的には謝礼程度の費用を支払うのが一般的です。
相場は1人あたり5000円~1万円程度が目安とされています。
中には身内や親しい関係であれば、無償で引き受けてもらえるケースもあるでしょう。
謝礼の有無や金額は、事前に相談しておくとトラブルを防げます。
公証役場に証人を紹介してもらう場合の費用
証人が身近で見つからない場合は、公証役場に証人を紹介してもらうことができます。
紹介してもらう証人には手配料として、1人あたり6000円~7000円程度の費用が必要です。
紹介証人は、公証役場が適格性を確認しているため、安心して依頼することができます。
専門家に証人を依頼する場合の費用
弁護士や行政書士などの専門家に証人役を依頼することも可能です。
専門家に依頼する場合は単なる証人だけでなく、遺言内容のチェックや作成サポートと一緒に依頼することが一般的です。
遺言作成支援や公証人との調整費用も含まれていることが多いため、費用は10万円~20万円程度が目安です。
2人のうち、もう1人の証人の手配も任せることができます。
総合的なサポートを希望する人に適しています。
公正証書遺言の証人の選び方
証人になってもらえる人の中から、実際にはどのような基準で証人を選べばいいでしょうか。
ここでは、証人選びのポイントを解説します。
利害関係がないことを最優先する
前述したように、証人は遺言者との間に利害関係がない第三者を選ぶことが重要です。
推定相続人やその配偶者はもちろん、経済的なつながりが強い相手も避けましょう。
たとえば、遺言者のビジネスパートナーや、遺言によって間接的に利益を得る可能性のある人は適任とは言えません。
証人との利害関係が疑われると、遺言の有効性を疑われるおそれがあります。
トラブル防止のためにも、できる限り客観的な立場にある人を選定することが重要です。
信頼できる人物を選ぶ
証人は、遺言作成の事実を公的に証明する立場の人で、指定した日に公証役場まで出向いて手続きを行う必要があります。
そのため、誠実で信頼できる人を選びましょう。
また、証人には署名・押印も求められるため、しっかりと対応してくれることが前提になります。
守秘義務を守れる人を選ぶ
公正証書遺言は、作成時に全員で読み合わせを行い、遺言者本人、公証人、証人の全員で内容を共有します。
そのため証人は、遺言内容をすべて知ることになります。
遺言内容を第三者に漏らさないよう、守秘義務を守れる人物を選ぶことも重要なポイントです。
内容を軽率に口外してしまうと、相続トラブルの原因になりかねません。
心配な場合は、士業など専門家に証人を依頼する方法も選択肢に入れるといいでしょう。
証人の負担も考慮して選ぶ
公正証書遺言の作成当日は、公証役場へ本人とともに証人2人が同行しなければなりません。
公証役場は平日のみ、ほとんどの役場で9時~17時の間でしか開いていないでしょう。
このため、平日の日中にスケジュール調整ができる人を選ぶことも非常に大切です。
仕事の都合や体調不良で急な日程変更などがあると、公証人を含めて改めて日程調整をする必要がでてきます。
会社勤めで忙しい人や、育児・介護などをしている人に依頼する場合は、事前に余裕を持って日程調整を行うことが求められます。
公正証書遺言の証人に関する注意点
公正証書遺言の証人には、様々な注意点があります。
ここでは、公正証書遺言の証人が注意しなければならない点について、詳しく解説します。
遺言が無効になる可能性がある
証人が未成年者、推定相続人、受遺者などの欠格事由に該当していた場合、公正証書遺言そのものが無効になる可能性があります。
作成時には問題がなくても、後にトラブルが発覚すれば相続時に遺言が無効と判断され、相続人間で争いが生じるリスクにもつながります。
証人を依頼する際は、資格要件を慎重に確認しましょう。
遺言内容を漏らしてトラブルになるリスク
万が一、証人が遺言の中身を相続人などに漏らした場合、相続人の間で無用なトラブルが生じることがあります。
- 他の相続人の不満や対立を招く
- 遺言の内容変更を迫られる
- 相続争いのもとになる
相続トラブルは深刻な問題に発展する可能性があるため、できるだけリスクを避けることが大切です。
秘密保持を徹底できる、信頼できる人を選ぶことが重要です。
不安がある場合は、専門家や公証役場の紹介を活用すると安心です。
証人が後に相続トラブルに巻き込まれるリスク
証人と遺言者、または相続人との関係が深い場合には、証人の中立性を疑われるリスクもあります。
遺言が無効だと主張して訴訟を起こされた場合、証人に証言を求められるケースもあるでしょう。
遺産分割協議においても、疑念を抱かれるなど、思わぬ立場に立たされる可能性があります。
証人になること自体に心理的な負担がかかることも考えられます。
相手に十分説明し、了承を得たうえで依頼しましょう。
トラブル回避には専門家や公証役場に依頼する
適切な証人が見つからない場合や、トラブルをできるだけ避けたい場合は、公証役場に証人を手配してもらう方法や、専門家に依頼する方法が安心です。
プロに依頼することで、中立性や秘密保持も守られ、トラブル防止の効果が高まります。
遺言自体の内容が適切かどうかも判断してもらえるため、相続時のトラブルを防ぐこともできるでしょう。
手続き当日の欠席のリスクも防げます。
自力で証人2人を探してから、公証人と証人とのスケジュール調整を行い、必要書類の準備の依頼などを行うと、手間も時間もかかります。
専門家に依頼すると多少費用はかかりますが、検討してみるのもいいでしょう。
まとめ
公正証書遺言は、大切な想いを正式な形で残すために有効な手段です。
しかし、証人の選び方や手続きの進め方を誤ると、せっかくの遺言が後々のトラブルの原因になることもあります。
確実に公正証書遺言を作成するためには、証人の選定や手続きに関する正しい知識と準備が欠かせません。
「誰に証人を頼むべきか迷っている」「手続き全体をサポートしてほしい」と思ったら、早めに専門家に相談してみることをおすすめします。