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最終更新日:2025/7/25

遺言信託のトラブル事例5選!必要な人・いらない人まで

弁護士 山谷千洋

この記事の執筆者 弁護士 山谷千洋

東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/yamatani/

この記事でわかること

  • 遺言信託の基本
  • 実際のトラブル事例とは
  • 遺言信託が必要な人、いらない人

「相続対策として遺言信託を検討しているけれど、実際どうなるのか不安」
「遺言信託で失敗した話も聞いておきたい」

遺言信託は相続対策の有効な手段ですが、しくみをよく理解しておかないと、思わぬトラブルになる可能性があります。
今回は、実際のトラブル事例を交えながら、遺言信託が本当に必要かどうかを見極めるポイントを解説します。

遺言信託とは

遺言信託を行う前に、しくみや他の遺言制度との違いを理解しておく必要があります。
ここでは、遺言信託の概要とメリット・デメリット、他の制度との違いを詳しく解説します。

遺言信託の概要

遺言信託は、遺言の作成から保管、遺言執行までを、専門家や信託銀行などがサポートするしくみです。
法律用語における遺言信託とは、遺言の中で特定の人に財産の管理等を任せる内容を記して信託することを指します。
一般的に遺言信託と言えば、金融機関のサービスを指す場合が多いでしょう。

遺言者本人が生前に信託銀行などと遺言信託の契約を結び、銀行などには遺言の作成・保管、遺言を執行する役目があります。
死亡通知人を設定しておき、本人の死去を銀行などに通知することでスムーズに手続きが行えます。

専門家に任せるため、相続の手続きが円滑に進むという点が大きなメリットです。
「家族が揉めるかもしれない」「相続手続きの負担を負わせたくない」といった不安がある場合は、遺言信託を検討するといいでしょう。

遺言信託と公正証書遺言の違い

公正証書遺言は、公証人や証人を交えて作成する遺言のことです。
遺言の原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの恐れがなく、法的効力の強いものです。

一方で遺言信託は、遺言の作成・保管にとどまらず、遺言の執行までを専門機関が受け持つという実務的な支援を備えた方法です。
公正証書遺言は作成と保管を任せるシンプルなものですが、遺言執行時の不安や負担を考えると、遺言信託を選択するメリットがあると言えます。

なお、遺言信託の契約と同時に、別の遺言書も存在する場合、信託が優先されます。
遺言の作成が信託契約の前でも後でも関係ありません。
これは、信託を行うと財産は本人名義ではなく、受託者名義になるためです。

遺言か信託かで迷った場合、ご自身がどこまで依頼したいと思うかが判断のポイントになります。

遺言信託と遺言代用信託の違い

遺言信託と類似したもので、遺言代用信託というものがあります。

遺言代用信託とは、生前に金融機関とあらかじめ契約をして財産の管理を委託し、死後に特定の人へ財産を分配してもらうしくみです。
遺言代用の文字通り、遺言の代用として信託契約を利用します。
万が一認知症などになったとしても、金融機関が代わりに運用・管理をしてくれるため安心です。

名称は似通っていますが、遺言の作成・保管・執行を行う遺言信託とは、内容のまったく異なる制度です。
目的と方法を整理し、どちらが自分に向いているか検討するといいでしょう。

遺言信託のメリット・デメリット

遺言信託を検討する上で、その特徴を理解しておきましょう。
主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  • 相続トラブルを未然に防げる
  • 遺言の執行を金融機関に任せられる
  • 遺言の保管や管理が安心

【デメリット】

  • 手数料や管理料が高額
  • 遺言内容によっては対応できないこともある
  • 相続税の申告や登記申請は別途必要

遺言の執行までを専門家に任せられるため、高い安心感や信頼性がある一方で、相続人の廃除や子の認知など、身分に関する遺言執行はできないというデメリットがあります。
また、基本的に税務申告や登記申請は、別の専門家に依頼する必要があります。

遺言信託にまつわるトラブル事例5選

ここでは、遺言信託に関する実際のトラブル事例を解説します。
遺言信託を行う際の参考にしてください。

相続人が納得しない

遺言信託を使えば家族間の揉め事は防げると思いがちですが、遺言だからといって、相続人全員が納得してくれるとは限りません。

実際にあったケースでは、財産の大部分を長男に遺す内容で遺言信託を組んでいたため、次男が強く反発し、相続争いに発展したことがあります。
遺言書自体は有効でも、他の相続人に対する事前説明や配慮がなかったことが火種となることがあります。
不満が出るばかりか、遺留分の侵害などで訴えられるリスクもあるでしょう。

トラブル防止には法的な手続きだけでなく、相続人に対する配慮とコミュニケーションが大切です。
遺言作成時に専門家のサポートが受けられるかどうかも確認しておきましょう。

思ったより手数料が高かった

遺言信託は専門家に任せられる安心感と信頼性が特徴です。
しかしその反面、ある程度の費用が必要なことも事実です。

たとえば、手続き費用が数万円程度と思い込んで契約したものの、実際には様々な名目で手数料がかかることがわかり、高額な費用が必要となったケースがあります。

一般的な遺言信託の費用は、以下の通りです。

  • 遺言作成費用:5~15万円程度
  • 遺言保管料:年間1万円程度
  • 遺言執行手数料:遺産の1~2%が相場

多くの場合、合計で100万円以上の費用がかかります。

信託銀行の費用が高い理由は、以下のものが挙げられます。

  • 銀行員は遺言執行などの権限がない
  • 弁護士や行政書士などの士業に業務委託をする必要があり、その費用が上乗せされる

遺言執行の業務の範囲や料金体系は、銀行ごとに異なります。
一社で決めず、比較検討することも大切です。

途中で遺言信託をやめたくなった

遺言信託を契約したものの、やめたいと思う人も少なくありません。

結論から言うと、遺言信託は本人が生きている間なら解約できます
ただし、契約内容によっては解約ができない場合や、解約手数料がかかるケースもあります。

また、遺言執行前であれば、銀行に対して遺言執行就任を辞退するよう依頼をすることができます。
しかし遺言が執行された後は、原則、遺言執行者を変えることはできず、遺言信託をやめることができません。

どちらにせよ、一度契約したものをとりやめることは、費用も労力もかかります
不安な場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。

金融機関の倒産によるトラブル

遺言信託は通常、契約から遺言執行まで数年、あるいはもっと長い時間がかかるものです。
その間に万が一、金融機関が倒産すると、遺言信託のサービスを受けることができなくなります。

破綻した場合は、破綻時の基準価格で解約される、もしくはほかの信託銀行に移管することになります。
ほかの信託銀行であらためて申し込む場合は、再度、遺言の保管や執行の契約を結ぶ必要があります。

仮に信託銀行が破綻しても、信託財産は区分して管理することが法律で義務付けられているため、信託財産への影響はありません。

遺言執行者として対応できることが限られる

信託銀行が遺言執行者として執行できるのは、遺言の中でも財産に関する部分のみです。
遺言では、相続人の廃除や子どもの認知などについても、意思表示をすることができ、これを身分行為と言います。

信託銀行は身分行為について執行する権限がないため、対応することができません。
身分行為に関する遺言執行は、相続人が行う必要があり、難しい場合は別で専門家のサポートが必要になるでしょう。

遺言信託にまつわるトラブルを回避する方法

遺言信託にまつわるトラブルは、ポイントを抑えれば防ぐことができます。
ここではトラブル回避の方法を解説します。

確認不足を防ぐ

遺言信託をめぐるトラブルの多くは、契約前の確認が足りなかったことが原因と考えられます。
特に金融機関の説明をなんとなく聞き流してしまうと、後々相続人も困ることになります。

トラブルを防ぐには、納得するまで何度でも質問し、不明点を解消しておくことがとても重要です。
できれば相談の時点で疑問を解消し、契約をする前にクリアにしておくようにしましょう。

専門家に相談する

遺言はただ自分の希望を書き記したものだと、法的な不備や誤解を生む表現が潜んでいる可能性があり注意が必要です。

法的な不備は、遺言そのものが無効になる可能性もあります。
また、内容によっては相続人同士の争いを招く原因になることもあります。

リスクやトラブルを防ぐために、事前に弁護士などの専門家に相談しておくといいでしょう。

金融機関の役割を理解する

信託や銀行という言葉から、任せておけば安心と思う人もいます。
しかし実際は、金融機関が担う役割は、遺言内容に基づいた財産の分配に限られます
登記変更や遺品整理、相続税の申告など、信託外の業務には基本的に対応できません。

信託業務の範囲、契約内容をしっかりと確認し理解しておくことが大切です。

遺言の内容を見直す

財産の状況は、年月が経つにつれて変わるもので、家族構成の変化や資産内容の増減があることは珍しくありません。

遺言をそのままにしておくと、実際の相続の状況と遺言の内容が合致しなくなる恐れがあります。
実際、相続人に変動があったものの遺言の内容が古く、意図しない人が財産を受け取ったという事例もあります。

銀行によっては定期的に、財産状況や意思の確認を行っていることもあります。
一度遺言を作って終わりではなく、内容を見直すことでトラブルを防ぐことができます。

遺言信託が必要な人・いらない人

遺言信託は、誰にでも有効な方法とは限りません。
中には信託が必要ない人もいます。

ここでは遺言信託が必要な人、いらない人のそれぞれ特徴を解説します。

遺言信託が必要な人

遺言信託が必要な人の特徴は、以下の通りです。

  • 相続人が多い
  • 疎遠になっている、関係が良くない相続人がいる
  • 認知したい子がいる

相続人が多い場合や、家族関係が複雑な場合、相続トラブルのリスクが高くなります。
遺言信託を利用すると、専門機関が間に入ってくれることで、感情的な衝突やトラブルを防ぐことができるため、とても効果的です。

遺言信託がいらない人

遺言信託がいらない人の特徴は、以下の通りです。

  • 相続財産が少ない
  • 相続人が少なく、揉める可能性が低い
  • 金融資産が多い

遺言信託は、高額な費用が必要なサービスです。
相続財産が少ない場合、信託費用の方が高くなり、費用倒れになるリスクがあります。

また、相続人が少なく家族関係も良好な場合は、わざわざ信託を利用する必要はありません。
遺言があれば十分に対応できるでしょう。

金融資産は分割が容易なため、信託を利用せず遺言を遺した方が、コスト面でも負担が軽く済むでしょう。

まとめ

遺言信託は、相続のトラブルを未然に防ぎ、遺言を実行できる有効な手段です。
ただし、手数料や契約内容によっては、思わぬ後悔をする可能性もあります。
遺言信託が本当に必要なのか、よく検討しましょう。

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