この記事でわかること
- 相続人全員に共通する相続税申告の添付書類がわかる
- 預貯金と不動産で相続税申告するときの添付書類がわかる
- 財産の種類に応じた相続税申告の添付書類がわかる
- 生前贈与や事業承継があった場合の相続税申告の添付書類がわかる
- 節税や相続税対策に必要な相続税申告の添付書類がわかる
ご家族の死と同時に相続手続きも始まりますが、一定額以上の財産があれば相続税の申告や納付も必要です。
相続税申告は添付書類の多さがネックであり、相続財産の種類によって内容も変わるため、何を準備してよいかわからないという方も多いようです。
国税庁でも相続税申告に必要な書類をホームページで公開していますが、具体的な書類名が不明なものもあるため、余計に混乱してしまうケースもあるでしょう。
そこで今回は、相続財産の種類別に必要書類をまとめ、わかりやすく一覧にしてみました。
税額が軽減される特例や控除に必要な書類など、ケース別にまとめていますので相続税申告を控えている方はぜひ参考にしてください。
目次
全員の相続税申告に必要な添付書類
相続税申告の際には様々な書類を添付しますが、以下に挙げる書類は相続人全員に共通するものです。
- ・被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍(または除籍、改製原戸籍)
- ・被相続人の住民票の除票
- ・相続人全員の戸籍謄本および住民票
- ・相続人全員のマイナンバー番号確認書類
- ・相続人全員の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、医療保険の被保険者証など)
被相続人に関する戸籍等は、本人の死亡や相続人の範囲を確定させるために必要であり、相続人に関する書類は被相続人との続柄や本人の身分を証明するものです。
死亡の事実が反映していなければならないため、被相続人が亡くなってから10日以上経過したものを取得するようにしてください。
また、被相続人に転籍があれば、転籍元の役場まで戸籍収集を辿ることになります。
遺言書または遺産分割協議書に添付する書類
被相続人の遺言書は確定申告の際に必要となりますが、遺言書がなければ遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成して相続税申告の際に提出します。
また、遺言書、遺産分割協議書にはそれぞれ以下の書類も添付しておきます。
- ・遺言書に添付する書類:遺言書の写し、検認証明書(公正証書遺言には不要)
- ・遺産分割協議書に添付する書類:相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した印鑑)
公正証書遺言以外の遺言書は家庭裁判所の検認を受け、検認証明書を添付してください。
遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は、他の相続手続きにも必要になるため、必ず2部は取り寄せておきましょう。
葬儀費用に関する書類
葬儀にかかった費用は相続財産から控除できるので、以下の書類も相続税申告書に添付してください。
- ・葬儀業者の領収書や明細表
- ・通夜や葬儀の飲食代
- ・車代
- ・運転手への心づけ(遺体搬送や葬儀場までの送り迎えなど)
- ・納骨料
- ・寺院へのお布施や戒名料
領収証のないものは「誰が、誰に、いつ、何を支払ったか」がわかるメモを残しておきましょう。
なお、仏壇や墓石の購入費、香典返しや四十九日法要にかかった費用は、相続財産から控除できないので注意してください。
葬儀全般の費用は支払期日が1週間程度なので、喪主を務めた相続人が立替払いをし、後で均等割りするケースが多いようです。
従って、葬儀関係の書類は相続人全員の共通事項と思っておけばよいでしょう。
預貯金と自宅財産がある場合の相続税申告の添付書類
ほとんどの相続では預貯金と自宅(建物と土地)、またはそのどちらかが相続財産に含まれています。
土地、建物、預貯金については次に解説する書類が申告時に必要となります。
土地が相続財産にある場合の添付書類
自宅の敷地や賃貸している土地が相続財産に含まれている場合は、以下の書類を相続税申告書に添付します。
- ・登記事項証明書(全部事項証明書)
- ・公図または地積測量図の写し
- ・住宅地図
- ・固定資産税評価証明書
- ・賃貸借契約書(賃貸アパートや借家のある土地)
登記事項証明書と公図、地積測量図は法務局の窓口、またはインターネット(登記ねっと)で入手できます。
ただし、地番がわからなければ請求できないため、税務署配備のブルーマップを閲覧するか、インターネット上の有料サービスを利用して特定することになります。
固定資産税評価証明書は各自治体の担当窓口、または郵送で入手できますが、地域によってはコンビニエンスストアで入手できる場合もあります。
建物が相続財産にある場合の添付書類
土地の相続と共通する書類もありますが、相続財産に自宅家屋がある場合は以下の書類を相続税申告書に添付します。
- ・登記事項証明書(全部事項証明書)
- ・固定資産税評価証明書
- ・売買契約書や間取り図など(賃貸住宅や2世帯住宅の場合)
- ・賃貸借契約書(賃貸住宅の場合)
預貯金が相続財産にある場合の添付書類
預貯金については以下の書類を準備しますが、ネット口座の場合は被相続人が入出金記録(取引履歴)を保存していない場合もあります。
データの保存期間は金融機関によって異なりますが、過去の記録が不明な場合は銀行窓口などで問い合わせてみましょう。
- ・残高証明書(相続開始時の残高)
- ・被相続人の過去5年分の通帳の写し
- ・定期預金の既経過利息計算書
所有財産別の相続税申告の添付書類
預貯金や自宅以外の相続財産には株式や生命保険などがあり、借金があればプラスの財産から控除して相続税を計算します。
いずれも相続財産であることを申告時に証明するため、所有財産別に次のような添付書類が必要になります。
死亡保険金や死亡退職金が相続財産にある場合
生命保険の死亡保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」と呼ばれ、基礎控除を超えた金額に相続税がかかるため、申告が必要になります。
相続税申告書には以下の書類を添付しておきましょう。
- ・死亡保険金:保険金の支払通知書、保険証書の写し
- ・死亡退職金:退職金の支払通知書または源泉徴収票
それぞれの支払通知書は保険会社や勤め先の会社(雇用主)へ請求してください。
なお、死亡保険金や死亡退職金の基礎控除は以下のように計算します。
- ・死亡保険金などの基礎控除:500万円×法定相続人の数
株式などの有価証券が相続財産にある場合
上場株式や非上場株式、また株式運用による投資信託などがある場合は、相続税申告書に以下の書類を添付します。
- ・上場株式または投資信託:証券会社の残高証明書、配当金の支払通知書
- ・非上場株式:税務申告書(法人税・地方税・消費税)、過去3期分の決算書
債務が相続財産にある場合
銀行からの借入れや未払金も相続財産であり、プラスの財産から差し引いて相続財産を計算するため、以下のような添付書類が必要になります。
- ・借入残高証明書
- ・金銭消費貸借契約書
- ・未納分の納税通知書
- ・未払金の請求書や明細書
被相続人の医療費等については、本人の死亡後に相続人が支払った場合、相続財産から控除できます。
借入残高証明書や金銭消費貸借契約書は、債権者(借入先)に発行を依頼してください。
農地が相続財産にある場合
田畑などの農地が相続財産にある場合は、以下の書類が必要となります。
- ・農業委員会の証明書(農地を小作している場合)
農業委員会の連絡先や住所地は各自治体のホームページなどに掲載されています。
特殊な相続財産にある場合
絵画や貴金属などの特殊な財産があれば、相続税申告書には以下の書類を添付します。
- ・購入時の領収証
- ・購入時期や査定額がわかるもの
生前贈与や事業承継があった場合の相続税申告の添付書類
被相続人から生前に贈与を受けていた場合、また相続によって事業を引き継ぐ場合は少し特殊な添付書類が必要になります。
条件によっては相続財産にカウントする贈与財産もあるので、次に解説する書類は必ず揃えるようにしてください。
相続開始前3年以内に贈与があった場合の添付書類
あからさまな相続税逃れを防止するため、相続開始前3年以内に行われた贈与については、相続財産に持ち戻して相続税を計算します。
従って相続税申告書には以下の書類を添付する必要があります。
- ・相続開始前3年以内の贈与税申告書
- ・贈与契約書
相続時精算課税制度を使っていた場合の添付書類
贈与のタイミングでは贈与税を課税せず、贈与財産を相続財産に組み入れて相続税を課税する制度が「相続時精算課税制度」です。
最大2,500万円まで非課税贈与できますが、相続時精算課税制度を使っていた場合は以下の書類を申告書に添付します。
- ・相続時精算課税制度選択届出書
- ・贈与税の申告書
- ・贈与契約書
事業承継税制を利用する場合の添付書類
非上場の中小企業オーナーが亡くなった場合、株式にかかる相続税負担が重くなり、事業の存続や経営に悪影響を及ぼす場合があります。
しかし、事業承継税制を使うと相続税の納税が猶予され、将来的には全額免除になる可能性もあります。
正式には「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」といいますが、利用する場合は以下の書類を相続税申告書に添付します。
- ・中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第7条第4項の経済産業大臣の認定書の写し及び同条第3項の申請書の写し
- ・会社の定款の写し
- ・担保関係書類
利用条件がかなり厳しく、一長一短のある制度なので利用を検討する場合は必ず税理士に相談してください。
節税・相続税対策に必要な相続税申告の添付書類
相続の際に使える特例や控除には様々な種類があり、いずれも大幅な節税効果があります。
よく知られているのは「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」ですが、相続人が障害者の場合に使える特例もあります。
相続税対策としての効果は抜群なので、添付書類は漏れなく準備しておきましょう。
配偶者の税額軽減に必要な添付書類
亡くなった方の配偶者が相続する場合、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い金額まで、相続税が非課税になる制度です。
配偶者控除とも呼ばれる特例ですが、利用する際には以下の書類を相続税申告書に添付します。
- ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍または改正原戸籍など)
- ・遺言書または遺産分割協議書の写し
- ・相続人全員の印鑑証明書
戸籍謄本は被相続人の死亡から10日経過したものを取得し、未分割の財産があれば「申告期限後3年以内の分割見込み書」も添付します。
小規模宅地等の特例に必要な添付書類
自宅敷地に適用すれば、330㎡までの面積が8割減の評価額になる制度です。
被相続人と同居していた相続人が自宅を承継し、引き続き住み続ける場合に使える特例ですが、相続税の申告時には以下の書類を添付しなければなりません。
- ・自宅等を承継した相続人の住民票の写し
- ・印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したものと同一の印鑑)
被相続人が老人ホームなどの施設で死亡した場合は、以下の書類も必要になります。
- ・被相続人の戸籍の附表
- ・施設入所時に取り交わした契約書
- ・介護保険の被保険者証および障害福祉サービス受給者証
なお、3年以上借家暮らしをしている相続人が自宅相続する際にも使える特例ですが、申告時には以下の書類が必要となります。
- ・相続人の戸籍の附表(相続発生後に作成されたもの)
- ・賃貸借契約書など、借家住まいを証明できる書類
障害者控除に必要な添付書類
相続人が障害者の場合、相続開始時の年齢から85歳になるまでの年数分、一般障害者は年間10万円、特別障害者は年間20万円の税額控除が適用される制度です。
相続税申告の際には、申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」を作成し、以下の書類を添付します。
- ・障害者手帳のコピーまたは障害者であることを証明できる書類
控除しきれなかった部分は、扶養義務者となる他の相続人の相続税からも控除できるので、全体の相続税額が大幅に軽減されるケースもあります。
まとめ
相続税申告書に添付する書類は実に多く、戸籍や住民票などの書類は他の相続手続きにも必要になります。
当初気付いていなかった手続きが後から発覚する場合もあるので、1部~2部程度の予備があっても無駄にはならないでしょう。
ただし、役場や法務局、金融機関は平日の昼間しか開いていないので、多忙な方や現役の方は時間の確保が難しいかもしれません。
郵送扱いやインターネットを使った取り寄せもできますが、限界を感じるようであれば早めに相続専門の税理士へ相談してください。
相続に強い税理士であれば、確実な相続税申告はもちろん、家族だけでは気付かなかった特例や財産の減額要素も見抜いてくれるでしょう。