この記事でわかること
- 旧民法での制度であった家督相続とはどのようなものかわかる
- 相続関係説明図とはどのような書類かを知ることができる
- 家督相続があった場合の相続関係説明図の作成方法がわかる
相続が発生した場合に、相続関係説明図と呼ばれる書類が必要といわれることがあります。
相続関係説明図とはどのような書類で、どのように作成するものなのでしょうか。
また、相続関係説明図と同じような記載内容の、法定相続情報一覧図との違いも確認しておきましょう。
さらに、過去に家督相続が生じていた場合の、相続関係説明図の作成方法もご紹介していきます。
目次
家督相続(旧民法)とは
家督相続とは、昭和22年5月2日まで施行されていた旧民法で定められていた、相続の原則的な方法です。
その考え方の基本は、戸主と呼ばれる人が、1人ですべての財産を引き継ぐというものです。
なお、戸主とは単に戸籍の筆頭者ではありません。
家名・家業・家族の財産が一体となった「家督」を所有する人という立場であり、すべてにおいて家の代表者となる人です。
現代の考え方ではたとえようのないほど家の中で大きな権限を持ち、他の家族にとっては絶対的な存在となっていました。
家督相続が発生する条件は、全部で3つあります。
1つ目は戸主が死亡した時で、現在の民法で相続が発生する場合と同じです。
2つ目は戸主が隠居した場合です。
満60歳に達して隠居を届け出た場合、あるいは病気などで戸主の仕事ができなくなった場合には、生前でも家督相続が発生します。
3つ目は戸主が戸籍を喪失した場合です。
外国籍を取得し日本国籍を失った場合、あるいは養子縁組を解消してその家を去った場合などがあります。
昭和22年に、現在の日本国憲法の考えに沿った新民法が制定されると、家督相続は廃止されました。
同時に、相続は亡くなった時にしか発生しないこととなりました。
相続関係説明図とは
相続関係説明図は、家系図のような書類ですが、どのようなものなのでしょうか。
また、法定相続情報一覧図と呼ばれる似た書類もありますが、両者の違いはどのような点にあるのでしょうか。
相続関係説明図の内容
相続関係説明図とは、その名のとおり、財産を残した被相続人と相続人との関係を表した図のことです。
被相続人と相続人の情報(住所や氏名など)を記載し、どの家族について書かれたものかがわかるようにします。
また、被相続人と相続人の関係を家系図のように表すことで、相続当事者の人数やその関係を容易に知ることができます。
相続関係説明図は、亡くなった人を中心とし、その相続人が何人いるかを記載します。
どのような場合でも絶対に必要な書類ではありませんが、提出を求められることもあります。
そのため、事前に記載内容や作成方法を確認しておき、相続が発生したら作成するといいでしょう。
法定相続情報一覧図との違い
相続関係説明図によく似た書類に、法定相続情報一覧図と呼ばれるものがあります。
法定相続情報一覧図は、相続人が作成するものではなく、法務局において認証を受けて作成するものです。
記載する内容も事細かに定められており、それらの項目がすべて記載された書類となっています。
法定相続情報一覧図を作成するためには、法務局にいくつかの書類を提出する必要があります。具体的には、被相続人の戸籍謄本、住民票の除票、相続人の戸籍謄本、そして相続人代表の情報を確認できる文書等が求められます。
さらに、相続人の住所をこの図に載せる場合は、住民票の写しも必要です。
この図を作成すると、手続きによっては他の相続に関する書類が不要になる場合があります。
たとえば、金融機関で被相続人名義の預金の払い戻しを受ける場合、通常は被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要です。
しかし、法定相続情報一覧図があれば、払い戻しを受ける際に戸籍謄本は必要なくなります。
法定相続情報一覧図を一度作成すれば、その後の手続きはスムーズに進めることができるといえるでしょう。
一方、相続関係説明図を提出しても、戸籍謄本の提出が省略されることはないので、注意が必要です。
相続関係説明図の作成方法
相続関係説明図は、国の機関でその作成方法が定められているわけではありません。
相続人が自由に、作成することができます。
ただ、記載内容は正確なものでなければならないため、あらかじめ必要な書類を準備しておくといいでしょう。
また、最低限記載すべき項目があるので、もれなく記載するようにしましょう。
相続関係説明図の作成に必要な書類
相続関係説明図を作成するのに必要な書類は、以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本(戸籍抄本)
- 相続人全員の住民票または戸籍の附票
なお、これらの書類は相続関係説明図を作成した後も、他の相続の手続きに必要になることが考えられます。
取得することは無駄でないので、必ず正式な書類を取得するようにしましょう。
ただ、これらの書類を取得する際に、難しいこともあります。
特に、被相続人の出生からの連続した戸籍謄本を取得する場合は、本籍地が移るたびに別の役場に依頼する必要があります。
遠方の役場から取り寄せる場合は、時間がかかることも予想されるので、早めに取得するようにしましょう。
相続関係説明図の記載内容
相続関係説明図を作成する場合は、まずタイトルに「相続関係説明図」と記載しましょう。
このタイトルがないと、ただの家系図と判断されてしまう可能性があります。
次に、誰の相続についての書類かがわかるよう、被相続人の氏名をタイトルの下に記載します。
「被相続人 〇〇〇〇 相続関係説明図」などとすれば、誰の相続が発生したのかが一目でわかります。
被相続人の情報として、住所、死亡日、氏名を記載します。
なお、法定相続情報一覧図の場合は、最後の住所地、最後の本籍地、出生日、死亡日、氏名を記載します。
相続関係説明図を作成する際は、本籍地や出生日などは特に必要ありません。
被相続人の記載が終わったら、相続人についても住所地、出生日、被相続人との続柄、氏名を記載します。
最後に被相続人と相続人とを線で結び、関係がわかるようにしましょう。
家督相続の相続関係説明図
現在の民法では、家督相続が発生することはありません。
そのため、家督相続の相続関係説明図を作成するケースは、ほとんどないかもしれません。
しかし、過去の相続で家督相続が行われていた場合に、相続関係説明図を作成することがあるかもしれません。
また、過去の家督相続について相続関係説明図が作成されている場合に、その内容を確認することもあるでしょう。
そこで、家督相続があった場合の相続関係説明図について、解説していきます。
隠居による家督相続があった場合
隠居による家督相続があった場合、生前に家督相続が発生することとなります。
その後、隠居した人が亡くなった時には、死亡による遺産相続が発生します。
そのため、同一人物について、家督相続と遺産相続の2回の相続が発生するため、それぞれの相続を図にする必要があります。
まず、最初に家督相続が発生します。
家督相続は生前に発生するため、相続発生原因は「隠居」となります。
また、相続人は「家督相続人」となります。
隠居による相続が先に発生するため、1/2という形で全体のページ数と当該説明図のページ数を記載します。
その後、遺産相続が発生するので、その内容を記載します。
隠居した人が亡くなった時には、全体の2枚目を表す2/2と記載します。
また、相続人は「遺産相続人」として全員を記載します。
死亡による家督相続があった場合
死亡による家督相続があった場合は、一度の相続ですべてが完結するため、相続関係説明図は以下のようになります。
相続の発生は死亡によるものであること、そして相続人は家督相続人であることがわかるように記載します。
まとめ
相続が発生した場合、被相続人と相続人の情報を正確に伝える必要があります。
そこで、戸籍謄本を用意することや、法定相続情報一覧図を作成することがあります。
ただ、これとは別に相続関係説明図の作成を求められることがあるので、相続人がこれに対処する必要があります。
形式に決まりはないため、最低限必要な情報を網羅した相続関係説明図を作成するようにしましょう。