この記事でわかること
- 所有している山林の固定資産税
- 山林の固定資産税や相続税の計算方法
- 固定資産税がかからない方法
これまで所有している山林に固定資産税がかかっているという事実について、あまり気にしてこなかった方もいらっしゃるかもしれません。
山林の固定資産税は1ヘクタールにつき数千円程度と非常に安く、課税標準額が30万円に満たない場合は非課税となるケースが多いのが現実です。
ただ、いくつか注意点があるため、あらかじめ準備しておくのが大切です。
ここでは、実際に固定資産税がいくらになるのか、固定資産税をかけない方法はあるのかについて説明します。
目次
山林にも固定資産税がかかる?
山林も不動産のひとつなので、毎年「固定資産税」がかかります。
固定資産税の計算方法は非常にシンプルで、以下の計算式で求めるのが出来ます。
- 計算式:「固定資産税課税標準額×1.4%」
ここで重要なのは、「固定資産税課税評価額がいくらか」という点です。
固定資産税課税評価額を算定するのは、地方自治体です。
宅地に比べて、山林はそもそも課税評価額が抑えられているため、場合によってはまったくかからないケースもあります。
固定資産税評価額とは?
そもそも固定資産税は、土地と建物(家屋)それぞれの評価額に課される税金で、毎年1月1日時点の所有者に対して発生します。
この固定資産税の額を決める基準になるのが「固定資産税評価額」です。
土地に対する固定資産税は、その土地を管轄る地方自治体内において、同一名義人の有する土地の課税標準額の合計額で判定されます。
たとえたとえば、所有している不動産が課税評価額20万円の山林のみの場合、評価額は20万円となり、各地方自治体の免税措置を受けられるのが多くなっています。
ただ、山林に加えて評価額が2000万円の土地を所持している場合、合計額2,020万円に1.4%を乗じた金額の固定資産税がかかることになります。
山林に固定資産税がかからないケース
固定資産税がかからない山林の具体的な事例は、主に以下の3点です。
事例非課税林地
特定の樹木を植えている場合や、森林保全活動を行っている場合などに、一部の山林は、非課税林地として扱われます。
いわゆる保安林と呼ばれる山林です。
非課税林地として認定されると、固定資産税が免除されることがあります。
事例小規模な山林所有
固定資産税には、免税点というものがあります。
多くの自治体では、山林は30万円を免税点としています。
このため、固定資産税課税標準額が30万円未満であれば、固定資産税はかかりません。
たとえば1ヘクタールの山林を所有していた場合、坪に換算すると3025坪です。
仮に1坪50円の課税標準価格だったとすると、合計で約15万円となり、非課税となります。
事例売却前の期間
山林を売却する際、売却前の期間によって固定資産税の負担が変わることがあります。
たとえば、売却前の1月1日時点での所有者であれば、その年の固定資産税は支払う必要がありますが、売却後の所有者は支払い対象外となります。
山林にかかる固定資産税の計算方法
固定資産税とは、償却資産を所有しているものに対してかかる地方税のことです。
固定資産税では以下の9種類の地目(土地の種類)に分けられます。
- 田
- 畑
- 宅地
- 鉱泉地
- 池沼
- 山林
- 牧場
- 原野
- 雑種地
固定資産税の税率は1.4%で、毎年1月1日の時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が、固定資産の所在する市町村に納めます。
この際、支払う金額は以下のようになります。
-
例:山林Aと事業用土地Bを所有していた場合
山林Aの評価額100万円+土地Bの評価額1000万円⇒合計1100万円×1.4%=15万4000円
土地の評価方法
一般的な土地の評価は、主に「路線価方式」を用います。
ご自身の土地の路線価は、国税庁のHPから確認できます。
課税標準額は地目によって異なり、山林の土地は宅地よりも大きく評価が下がります。
国土交通省から公示されている林地の取引平均価格は1坪当たり約2500円に対し、宅地の平均価格は1坪当たり30万円以上です。
注意したいポイント
ここで注意しなければならないのは、「固定資産税における地目は登記上の地目ではなく、その年の1月1日における実際の利用状況をもとに地方自治体が判断する」ということです。
登記地目は山林となっていても、家を建てていれば宅地となりますし、近隣の状況によっては同様に宅地と認定されてしまうこともあるでしょう。
山林にかかる相続税の計算方法
亡くなった方の山林を譲り受ける場合、金額によっては相続税がかかります。
基礎控除の「3000万円+相続人の数×600万円」までは相続税はかかりません。
山林やその他不動産を所持しており、その合計評価額が基礎控除の金額以下であれば、相続税の申告は不要です。
では、山林の相続税評価額はどのように計算されるでしょうか。
相続税評価をする際の山林の区分
山林の相続税評価をする際は、宅地化への難易度によって次の3種類に区分されます。
評価区分 | 名称 | 特徴 | 計算方法 |
---|---|---|---|
① | 純山林 | 市街地から遠く離れた場所にあり、宅地の影響をほとんど受けない山林 | 倍率方式 |
② | 中間山林 | 市街地の近くにあり、売買価格の水準が純山林よりも高い山林 | 倍率方式 |
③ | 市街地山林 | 住宅地に隣接し、市街地にあり、宅地の影響を受ける山林 | 宅地比準方式 |
純山林や中間山林の計算方法
ここでは、準山林や中間山林の相続税の計算方法を見ていきましょう。
- 倍率方式で評価する場合の計算式
- 固定資産税評価額×倍率=山林の相続税評価額
山林の固定資産税評価額は5月頃各地方自治体の役所から送付される「固定資産税の課税明細書」に記載されています。
これまでの明細を一度確認してみるとよいでしょう。
自治体に問合せ、名寄帳(なよせちょう:不動産を所有者ごとにまとめたもの)を入手することでも確認できます。
また、倍率については国税庁のホームページで確認できます。
たとえたとえば上の表から、所有している畑の固定資産税評価額が10万円だったとすると、次のような計算になります。
固定資産税評価額 | 倍率 | 相続税評価額 |
---|---|---|
10万円 | 16倍 | 160万円 |
小市街地山林の計算方法
一般の山林と異なり、市街地に近い山林の場合は「宅地比準方式」で計算されるのが一般的です。
宅地比準方式とは、山林を一度宅地として評価し、その評価額から宅地にするためにかかる造成費(工事費)を控除して計算する方法です。
上図にある「比準」と記載されている箇所です。
市街地山林を宅地比準方式で評価する場合の計算式は以下のようになっています。
山林を宅地とした場合の評価額-造成費=市街地山林の相続税評価額
仮に、所有している山林が「市街地山林」とされた場合、その山林はまず宅地として評価されます。
その評価額が3,000万円とし、その後実際に宅地にする際に必要な造成費(工事費)が1,500万円であるとすると、3000万円-1500万円=1,500万円が相続税評価額となります。
山林の相続税対策
これまで述べたように、山林を相続すると相続税がかかります。
もちろん、その分収益を上げられるメリットもありますが、もし上手な山林の活用方法がない場合は、あえて手放すのも1つの選択肢と言えます。
経費はかかりますが、相続税を節税できる可能性があります。
たとえば、相続財産の総額が1億円、山林が5000万円の価値がある場合、山林を引き取ってもらうことで1,500万円を節税できます。
さらに、相続放棄をする、という方法も考えられます。
ただ、相続放棄の場合は一部の財産のみ放棄するのは認められておらず、山林だけでなくその他の不動産(家や工場など)も手放すことになります。
相続放棄をする前には専門家に相談し、相続税について正確なシミュレーションを行うとよいでしょう。
固定資産税を払いたくないなら売却も検討しよう
「山林を所有しているが、そもそも有効に活用できず、管理も大変で、ただ税金を支払っているだけ」という場合は、売却も選択肢になります。
住宅など一般的な不動産と比べると売却するのは困難ですが、近年のキャンプ・アウトドアブームから以前よりも売却が活発になる可能性はあります。
売却までの4つのプロセス
では、実際に売却すると決めた場合の手続きはどうなるのでしょうか。
順を追って考えてみましょう。
価格調査をして相場を知る
この山林はいくらで売れるのか、価格調査をしましょう。
都道府県地価調査の結果は、国土交通省の「土地総合情報システム」で知ることができます。
同時に、不動産の取引価格もわかり知ることもできます。
売出価格を決める
不動産会社と相談して決めるのが一般的ですが、取引事例はあまり多くないため、適切な価格設定がつかみづらいという不動産会社も少なくないでしょう。
しっかりと相場を調べ、不動産会社とよく相談した上で決定することをおすすめします。
必要書類の取得
山林の売却活動を進める中では、以下の書類が必要となります。
書類名 | 取得先 | 特徴 |
---|---|---|
固定資産税の納税通知書等 | 地方自治体 | 原則として所有者しか取得できない |
森林簿 | 都道府県の森林担当部署 | 森林の所在地や所有者、面積や森林の種類、材積や成長量が記載された台帳 |
森林計画図 | 都道府県の森林担当部署 | 森林のおおよその場所を特定できる資料であり、林班図とも呼ばれている |
境界確定図 | 関係役所や隣地所有者立会のもと、土地家屋調査士に依頼して計測 | 正しい境界が記載された図面 |
登記簿謄本 | 法務局 | 現在の所有者に名義変更されているか確認できる |
地積測量図 | 法務局 | 測量がなされていることが証明できる |
公図 | 法務局 | 隣地の地番や状況がわかる |
いつまでに何の書類が必要かについては、不動産会社に確認しましょう。
相談する前に、納税通知書など自分で準備しておけるものは準備しておくのもよいでしょう。
売却時にかかる費用を用意する
山林の売却を不動産会社に仲介してもらう場合、仲介手数料が必要です。
一般の不動産売買における仲介手数料は、法律によって上限が定められています。
取引額(税抜) | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 取引額の5%以内 |
200万を超え400万円以下 | 取引額の4%以内+2万円+税 |
400万円を超える | 取引額の3%以内+6万円+税 |
ただし、上記の内容は宅地建物の取り引きについて決められているもので、山林は対象外です。
山林の仲介も上記の基準で手数料を決めるケースが多いですが、法的な根拠を持ったものではない点については覚えておきましょう。
まとめ
山林を相続する時になって慌てないよう、事前に役所で固定資産課税台帳を閲覧したり、固定資産評価証明書を取り寄せたりして、おおよその税額を調べておくとよいでしょう。
相続によって山林保有者となるケースも増えています。
いざ相続するタイミングになって、実は権利関係や境界線が不明ということにならないように、十分な備えが必要となるでしょう。
山林に限らず、相続手続きには期限が設けられており、対象となる山林の調査や権利関係の確定に時間がかかると、相続手続きの期限に間に合わない場合があります。
早めに専門家に相談し、相続に備えておくことをおすすめします。