この記事でわかること
- 同性のカップルが養子縁組することのメリットを知ることができる
- 同性のカップルが養子縁組することで発生するデメリットがわかる
- 養子縁組した同性カップルに起こりやすい相続のトラブルがわかる
日本では同性婚が認められていないため、同性カップルが婚姻届を提出することはできません。
ただ、それでは法律上の結びつきが何もないため、法律上の結びつきを得るために、養子縁組が行われることがあります。
養子縁組は、本来は婚姻関係には関係ない制度であるため、法律上の結びつきを得るために行う上でのメリットとデメリットをあらかじめ考えておく必要があります。
また、養子縁組することで後にトラブルが発生することもあるため、その内容を確認しておきましょう。
目次
同性カップルが養子縁組するメリット・デメリット
同性カップルが、婚姻届に代わる法的な結びつきを得るために、養子縁組することがあります。
養子縁組することには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
養子縁組するメリット
養子縁組すると、同性カップルの間では、法律上の親子関係が生じることとなります。
法律上の親子として認められるのであれば、同性カップルは第三者に対してもお互いを親族と主張することができます。
たとえば、生命保険金の受取人は親族に限定される場合がありますが、養子縁組すればパートナーを受取人にすることができます。
携帯電話などの家族割も、養子縁組している場合には問題なく適用されます。
同性カップルが養子縁組をすると、いずれかが先に亡くなっても、残された人に相続権が発生します。
養親が先に亡くなった場合は、いずれのケースでも養子は法定相続人となります。
また、養子が先に亡くなった場合は、亡くなった養子に養子がいなければ、養親が法定相続人となります。
また、同性カップルのいずれか一方が、もう一方を扶養している場合があります。
このとき、同性カップルが養子縁組していれば、扶養控除の適用を受けることができます。
実際に扶養していたとしても、親族関係になければ扶養控除の適用を受けることはできません。
養子縁組していると、病院で医療サービスを受ける際に保護者あるいは患者の代行者として取り扱われます。
養子縁組していないときには、病室への入室や病状説明への立会いなどが認められないことがあります。
しかし、養子縁組していれば、親族として認められるケースがほとんどです。
養子縁組するデメリット
養子縁組は、婚姻とは違います。
そのため、婚姻関係にある夫婦であれば認められることでも、認められないものがあります。
たとえば、共同生活を行うにあたって、その婚姻費用(生活費用)の分担義務はありません。
また、カップルを解消する際に、財産分与請求権などの決まりもありません。
法律上の夫婦であれば当たり前に発生すると考えられる権利がないことに、注意が必要です。
同性カップルが養子縁組をする際には、どちらが養親になり、どちらが養子になるかは、自動的に決められます。
1日でも誕生日の早い人が養親となるのが決まりです。
養子縁組すると、養子は養親の名字を名乗ることとなります。
そのため、いずれの名字を名乗るかは選択できません。
また、養子縁組を解消した際には旧姓に戻すことも多く、多くの手続きが必要となります。
同性カップルが養子縁組をした場合、養親と養子の年齢はかなり近くなることがあります。
このように不自然な親子関係は、近年では、養子縁組制度の悪用(ネームロンダリングして携帯や銀行口座を開設し転売するといった悪用です。)の可能性があるものとして警戒されています。
どうして年齢の近い人と養子縁組をしたのか、窓口で説明しなければならないような状況も考えられます。
養子縁組した同性カップルに起きやすい相続トラブル
婚姻届を提出することのできない同性カップルは、養子縁組で法律上の親族関係になることがあります。
ただ、養子縁組にはメリットだけでなく、デメリットがあることもわかりました。
また、養子縁組をした後、相続が発生した場合にトラブルになることもあります。
どのようなトラブルが発生するのか、その実例をご紹介しましょう。
養親が先に亡くなった場合に養親の親族とトラブルになる
同性カップルの養親が先に亡くなると、パートナーであった養子が法定相続人となります。
この場合、亡くなった人に配偶者はいないと考えられるため、養子のみが法定相続人となります。
そのため、遺言書などを残していなければ、養子がすべての財産を相続することとなります。
ただ、養親の親族はこのような形で相続が発生した場合に、そのような結果をすんなり受け入れるとは限りません。
亡くなった養親が、自身の親や兄弟姉妹に養子縁組したことを伝えていない場合、大きなトラブルになる可能性があります。
というのも、もし亡くなった養親に養子がいなければ、第二順位の法定相続人である実親に相続権が発生するためです。
また、実親がすでに亡くなっていたとしても、兄弟姉妹が第三順位の法定相続人となり、養親の財産を相続することができます。
そこで、養親の実親や兄弟姉妹が、養子縁組の無効確認訴訟を行う可能性があります。
もし養子縁組が無効であると認められれば、養親と養子の親子関係は認められなくなるためです。
養子がいなくなれば、第一順位の法定相続人である子はいなくなり、相続権は実親、そして兄弟姉妹に移ることになります。
当然、養子側も、養子縁組は有効であると主張することとなります。
ただ、そのような訴えが提起されれば、養子縁組の有効性が否定される可能性はゼロではありません。
また、結果的に養子縁組の有効性が認められたとしても、結論が出るまでに相当の労力と金銭を要します。
養親の親族とのトラブルを回避するためには、養親は、養子縁組したことを自身の親族に説明しておく必要があります。
また、どのような理由で養子縁組をすることになったのか、日本の法制度の現状について話しておきましょう。
また、養子となった人を親族に紹介し、どのような人かを知ってもらうことも大切です。
養子が先に亡くなった場合に養子の実親とトラブルになる
養子縁組した同性カップルは、年齢が近いことも多く、養親が先に亡くなるケースばかりではありません。
養子が先に亡くなることも珍しくありませんが、この場合、養親が先に亡くなった場合とは違う相続関係が発生します。
同性カップルが自分たちの子供として、実際の親子くらい年の離れた子を養子として3人以上で暮らしているケースがあります。
この場合は、亡くなった養子の法定相続人は、2人(同性カップル)の養子として迎えた子となるため、大きなトラブルはあまり起こりません。
一方、2人の養子として子を迎え入れていない同性カップル2人だけの場合には、養子が先に亡くなると、第一順位の法定相続人である子はいません。
そのため、第二順位の法定相続人である親が、法定相続人となります。
養親が養子の財産を相続できるのは、養子に子がいなければ養親が法定相続人となるためです。
ただ、この場合に注意しなければならないことがあります。
それは、第二順位の親は、養親だけではないことです。
養子の実親が健在である場合、その実親も第二順位の法定相続人として法定相続分を有します。
実親が2人とも健在であれば、法定相続人は養親と実親2人のあわせて3人となります。
また、実親が1人だけ健在である場合は、養親と実親のあわせて2人が法定相続人となります。
複数の法定相続人がいる場合は、その法定相続人全員による遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、同性カップルのパートナーである養親と実親との遺産分割協議は、難航することが予想されます。
お互いに円滑なコミュニケーションをとることが難しい場合もあり、話し合いをなかなか進められないことも考えられます。
遺言書がある場合のトラブル
同性カップルが養子縁組をした場合、相続権はお互いに発生しますが、他に相続人がいるケースもあり得ます。
そのような場合には遺産分割協議が必要となり、思いどおりに遺産を相続できない可能性もあります。
そこで、遺言書を作成しておき、パートナーがスムーズに相続できるように準備しておくことがあります。
しかし、遺言書の内容によっては、新たなトラブルが発生することがあります。
なぜなら、遺留分を有する相続人の相続分が、遺言書ではまったく考慮されていないことなどがあるためです。
そこで、相続人である同性カップルのパートナーが遺留分を有する他の相続人から遺留分侵害額を請求されることがあります。
トラブルが発展すると、裁判にまでなることもあるため、遺言書の作成時には遺留分にも注意しましょう。
まとめ
日本においては、同性カップルに関する法整備はほとんど進んでいないのが実状であり、これから新しい制度が作られていくことに期待がされています。
ただ、現状は今ある法律の枠組みの中で、できる限りのことをすることとなります。
養子縁組の制度を利用している同性カップルは多いのですが、トラブルとなることも少なくありません。
養子縁組する前に、必ずそのメリットとデメリットを確認しておき、法的な手続きを進めるようにしましょう。
また、相続が発生した時にトラブルに発展しないよう、他の親族の遺留分に配慮した遺言書を作成しておくこともおすすめします。