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最終更新日:2023/8/25

遺留分権利者の範囲・割合とは?権利者が決定されるタイミングも解説

弁護士 山谷千洋

この記事の執筆者 弁護士 山谷千洋

東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/yamatani/

この記事でわかること

  • 遺留分権利者とはどのような人をいうのか知ることができる
  • 遺留分権利者が決定されるタイミングを知ることができる
  • 遺留分を請求する方法や請求に必要な書類がわかる

相続が発生して遺言書がある場合、その遺言の内容によっては遺産を受け取ることができない人がいます。

この場合、遺留分を有する相続人がいると、その遺留分を請求することができます。

どのような人が遺留分の権利を有するのか、その割合はどのように決定されるのか、確認していきましょう。

また、遺留分権利者が決定するタイミングや、遺留分の請求方法についても解説していきます。

遺留分権利者とは

遺留分とは、被相続人の遺産を一定割合相続することができると保証されている割合のことです。

そして、遺留分を有する相続人のことを遺留分権利者といいます

遺留分を有する相続人が、その遺留分に満たない遺産しか受け取れなかった場合、遺留分を侵害されたということになります。

そこで、遺留分に満たない部分の金額を、他に遺産を引き継いだ人に対して請求することができます。

遺留分権利者となる人

遺留分を有するのは兄弟姉妹以外の相続人とされています。

法定相続人となる人には、民法によって順位がつけられており、以下の順に該当する人がいないか確認していきます。

なお、配偶者は常に相続人となります。

①第一順位の相続人は子であり、子がいなくてもその子(被相続人の孫)がいる場合には代襲相続により相続人となる

②第二順位の相続人は直系尊属であり、親がいる場合はその親が、親がいない場合は祖父母が相続人となる

③第三順位の相続人は兄弟姉妹であり、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子である甥や姪が代襲相続人となる

被相続人に子がいれば、直系尊属が相続人になることはありません。

この場合、遺留分権利者となるのは子(配偶者がいれば配偶者も)だけであり、直系尊属が遺留分権利者になることはありません

遺留分権利者にならない相続人

被相続人に子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。

ただ、兄弟姉妹は遺留分を有しておらず、遺留分権利者となることはありません

そこで、被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人になった場合を考えてみましょう。

この場合、配偶者は遺留分権利者となりますが、兄弟姉妹は遺留分権利者にはなりません。

そのため、兄弟姉妹は相続分がゼロであったとしても、他の人に遺産を渡すように請求することはできません。

遺留分を受け取れる割合

誰が相続人になるかによって、その相続人の法定相続分は決められています。

これと同じように、誰が相続人になるかによって遺留分の割合も決められています。

遺留分権利者がいる場合ごとに、その割合がいくらになるのか、確認していきましょう。

遺留分の考え方の基本

基本的な遺留分の考え方は、法定相続分に以下の割合を乗じたものになっています。

  • 直系尊属のみが相続人となる場合は、遺産の3分の1が遺留分になる
  • それ以外の場合は、遺産の2分の1が遺留分となる

ただ、この説明では完全に理解することは難しいでしょう。

そこで、法定相続人の組み合わせによって実際の遺留分の割合がどうなるのか、ご紹介していきます。

配偶者のみが相続人になる場合

配偶者のみが相続人となる場合、その配偶者はすべての遺産について法定相続分を有しています

そして、その配偶者は遺留分権利者となり、遺留分は遺産の2分の1となります。

配偶者と子が相続人になる場合

配偶者と子が相続人となる場合、配偶者は2分の1、子が2分の1の法定相続分を有しています。

そして、配偶者と子はともに遺留分権利者となり、遺留分は遺産の2分の1となります。

したがって、配偶者と子は、それぞれ遺産の4分の1の遺留分を有することとなります。

また、子が複数人いる場合はさらに均等に分割することとなります。

たとえば子が2人の場合、1人ずつの子はそれぞれ遺産の8分の1の遺留分を有しているということです。

配偶者と父母が相続人になる場合

配偶者と父母が相続人となる場合、配偶者は3分の2、父母は3分の1の法定相続分を有しています。

そして、配偶者と父母はともに遺留分権利者となり、遺留分は遺産の2分の1となります。

したがって、配偶者が遺産の3分の1、父母が6分の1の遺留分を有しています

父母のうちいずれかが亡くなっている場合は、1人で6分の1の遺留分となります。

また、父母がともに健在である場合は、それぞれ12分の1ずつの遺留分を有しています。

配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合

配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1の法定相続分を有しています。

また、配偶者は遺留分権利者となりますが、兄弟姉妹は遺留分権利者にはなりません。

遺留分の合計は2分の1となるため、この場合、配偶者は遺産の2分の1の遺留分を有しています

一方、兄弟姉妹は遺留分権利者ではありません。

子のみが相続人になる場合

子のみが相続人となる場合、その子はすべての遺産について法定相続分を有しています。

そして、その子は遺留分権利者となり、遺留分は遺産の2分の1となります。

子が複数人いる場合は、さらに均等に分割する計算を行います。

父母のみが相続人になる場合

父母のみが相続人となる場合、父母はすべての遺産についての法定相続分を有しています。

また、父母は遺留分権利者となり、遺留分は遺産の3分の1となります。

父母が2人とも健在である場合は、それぞれが6分の1ずつの遺留分を有します。

兄弟姉妹のみが相続人になる場合

兄弟姉妹のみが相続人となる場合、その兄弟姉妹は遺留分を有しません

他に遺産を引き継いだ人がいても、その人に遺産を分けるように請求することはできません。

遺留分権利者が決定されるタイミング

誰が遺留分権利者になるのか、あるいは誰がどれだけの遺留分を保有しているのかは、誰が相続人になるかで決まります。

そして、相続人が誰になるかは相続が発生したとき、つまり被相続人が亡くなった時点で判断します。

したがって、遺留分権利者が決定されるのは、被相続人が亡くなったときということになります。

遺留分が問題になるのは、遺言書が作成されており、法定相続人以外の人が多くの遺産を引き継ぐこととなった場合です。

たとえば、被相続人が遺言書を作成したときには子がいなかったため、他の人に遺産の大半を譲るとした遺言書があったとします。

遺言書を作成したときに子がおらず、直系尊属もすでに亡くなっているのであれば、遺留分問題は生じません。

しかし、その後に子が生まれると、その子は法定相続人となり遺留分権利者となります。

遺言書を作成した時点では遺留分権利者がいなくても、亡くなったときに遺留分権利者がいるかどうかの判断となります。

遺留分権利者がいることとなったので、遺留分を侵害しないような内容の遺言書に作り直せば、問題にはなりません。

しかし、遺留分権利者がいる状態になったのに、以前の遺言書をそのままにしていることがあります。

そうすると、遺言書によって遺産を受け取る人と、遺留分権利者は対立することとなるでしょう。

なお、実際に遺留分権利者が遺留分を請求できる状態になったとしても、自身が請求しなければ受け取ることはできません。

遺留分権利者は、①相続開始があったこと及び②贈与や遺贈があったことを知ってから1年以内に請求しないと、その権利は消滅してしまいます。

また、後日に自身が遺留分権利者であることを知ることもありますが、相続開始から10年以内に請求しない場合も時効が成立します。

遺留分の請求方法・必要書類

遺留分権利者は、自身の遺留分を侵害された場合、遺産を引き継いだ人に対して遺留分に満たない金額を請求することができます。

実際にどのような方法で請求を行うのか、その内容について確認しておきましょう。

遺留分侵害額請求の流れ

遺留分を侵害された遺留分権利者は、まず自身の遺留分と不足額がいくらになるかを計算しておきます。

その上で、遺留分を侵害している相手方と、遺留分をどのように精算するか話し合いを行います

なお、相手方に遺留分を請求する際は、内容証明郵便により書面を送付するべきです

内容証明郵便による請求を行うことで、時効が成立するのを止めることができます。

直接口頭で請求しても、「言った」「言わない」の争いになってしまうため、上記の期間内に内容証明郵便を送るようにしましょう。

話し合いにより解決できない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停を行います。

調停は、調停委員を介してお互いに話し合いによる解決を目指す方法です。

お互いに直接会って話し合う必要がないため、冷静な判断による解決が期待できます。

調停も成立しない場合は、裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を行います。

裁判官の判断により、遺留分の問題を解決する方法です。

遺留分の請求に必要な書類

遺留分を請求する際に、必ず必要になる書類はありません。

ただし、遺留分侵害額を計算するためには、不動産の評価額や預金の額といった遺産の詳細を知る必要があるので、実際には遺産に関する資料が必要になると考えられます。

遺留分を侵害している相手方は、遺産に関する資料を開示してくれないことも多いため、この場合には弁護士に依頼した方が良いでしょう。

まとめ

遺留分を有する人のことを遺留分権利者といいます。

法定相続人がすべて遺留分権利者となるわけではなく、兄弟姉妹は法定相続人になったとしても遺留分はありません

また、遺留分の割合の計算は法定相続分の計算よりわかりにくいケースもあるので、注意が必要です。

遺留分に満たない金額しか相続できなかった遺留分権利者は、時効が成立する前に請求する手続きを行うようにしましょう。

遺留分の計算や相手方との交渉など、自身で行うことが難しい事項も多いので、一度弁護士にご相談することをおすすめします。

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