この記事でわかること
- 遺留分を請求されても渡さずに済む方法を知ることができる
- 相続が発生する前に将来の遺留分を減らすための方法がわかる
- 遺留分を請求されたときにどのような対処法があるかわかる
相続が発生したときに、法定相続人の中には遺留分が発生する人がいる場合があります。
遺留分はその人が相続できる財産の割合として保障されているため、請求されてしまうと無視することはできません。
ただ、事前に対策しておけば、遺留分の額を減らすことは可能です。
実際にどのような方法があるのか、遺留分についての相続対策について解説していきます。
目次
遺留分を渡さなくていい方法3つ
相続が発生し、遺言があった場合、その遺言の内容によっては、法定相続人の中に遺留分を侵害される人が発生することがあります。
法定相続人は、定められた遺留分の割合に満たない遺産しか相続できなかった場合、その不足分を請求することができます。
ただ、本来は遺留分の侵害が生じる場合でも、遺留分の侵害が生じないようにしたり、侵害する額を減少させたりする方法があります。
どのような方法があるのか、その内容を確認しておきましょう。
遺留分放棄を申し立てる
遺留分が発生することとなる人、あるいは遺留分が発生した人自らが遺留分の放棄を行うことができます。
遺留分の放棄は、相続が発生する前でも相続が発生した後でも可能です。
ただし、遺留分の放棄をする相続人自ら行う必要があることに注意が必要です。
生前に遺留分放棄を行う場合は、自らの意思で遺留分を放棄したのかを家庭裁判所で慎重に判断されます。
遺留分を放棄しても、その人にはまったく利益がないケースがほとんどだからです。
他の相続人に強制されて遺留分を放棄したような場合は、その申立ては無効であるため、遺留分の放棄は認められません。
相続人の廃除を申し立てる
相続人の廃除とは、相続人による被相続人に対する虐待、重大な侮辱、又は相続人にその他著しい非行があったときに、被相続人の意思に基づいて特定の相続人から相続権を剥奪することをいいます。
相続人の廃除が行われると、その人は相続人ではないこととされるため、相続分だけでなく遺留分もなくなります。
その結果、遺留分を渡す必要はなくなります。
ただし、特定の相続人を廃除しても、廃除された相続人が被相続人の子で、その相続人に子(被相続人の孫)がいる場合等では、遺留分が代襲相続されるため、遺留分を渡す必要がなくならないことに注意が必要です。
なお、相続人の廃除は、家庭裁判所での審判により判断されます。
相続人が廃除を申し立てるか、被相続人が遺言でその意志を示し、遺言執行者が代理人として申し立てることとなります。
相続欠格を適用する
相続欠格とは、遺産を手に入れるために不法行為を行った相続人がいる場合に、その人を相続人でないものとすることです。
相続人でないと判断されれば、相続分も遺留分も同時に失うこととなります。この場合も、廃除のときと同様に、遺留分は代襲相続の対象となることに注意が必要です。
相続欠格が認められるのは、民法に規定されたケースに該当する場合のみです。
その内容は、殺人の他遺言の改ざんや隠蔽、詐欺や強迫など、きわめて悪質な場合ばかりです。
そのため、相続欠格が成立するケースはそれほど多くないといえるでしょう。
将来発生する遺留分を減らす方法
被相続人に配偶者か子のが法定相続人がいる場合、必ず遺留分は発生します。
ただ、事前に対策をしておけば、将来発生する遺留分を減らすことは可能です。
どのような対策が可能か、その具体的な方法をご紹介します。
養子縁組を行う
養子縁組を行って養子となった人は、血縁関係の有無にかかわらず法定相続人となります。
法定相続人となった養子も相続分や遺留分を有しているため、他の子の遺留分の割合を減らすことができます。
たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合、1人の子は遺産全体の4分の1の法定相続分を有しています。
そして、それぞれの子は遺産全体の8分の1の遺留分を有しています。
これに対して、養子が1人増えることによって、子1人あたりの法定相続分は6分の1になります。
また、子1人あたりの遺留分は12分の1となります。
ただ、養子縁組を行っても、配偶者の相続分や遺留分は変わりません。
誰の遺留分を減らしたいのかを考慮した上で、養子縁組が効果的な方法なのか検討する必要があります。
生命保険を利用する
生命保険金として受け取る金額は、遺産ではありません。
生命保険契約により受取人が決まっているため、生命保険金はその受取人の財産となります。
そのため、原則として生命保険金の金額は遺産分割協議の対象にも含まれませんし、遺留分の計算にも含まれません。
ただし、例外的に、生命保険金が遺産全体のかなりの割合を占めている場合には、他の相続人との間に著しい不公平が生じるため、遺留分の対象となると判断される可能性があることに注意が必要です。
生命保険契約を行い、現金や預金から一時払いの保険料として支払います。
すると、相続が発生した時に、受取人がすべての生命保険金を受け取ることができます。
こうすることで、財産を残したい人に財産を残すことができます。
また、遺留分の計算の基礎に含まれる財産の金額が減少するため、遺留分を減らすこともできます。
生前贈与を行う
相続対策の一環として、生前贈与を行っている方も多いでしょう。
生前贈与を行うことで、遺産の金額を減らすことができ、相続税額を減らすことが可能となります。
また、生前贈与を行うと、遺産として残る金額を減らすことができます。
遺産の金額が減れば、その分遺留分として計算される金額も減らすことができます。
生前贈与を行えば、財産を渡したい人に対して確実に財産を残すことができます。
そのため、生前贈与には様々なメリットがあるということができます。
ただし、被相続人の死亡前1年間で行われた生前贈与、被相続人の死亡前10年間で行われた法定相続人に対する生前贈与、遺留分権利者に損害を加えることを知ってした生前贈与は、遺留分侵害額請求の対象となるため注意が必要です。
遺留分を請求されたときの対処法
遺留分を請求されるケースは、実際に数多くあります。
遺留分の請求を受けた場合は、どのような対処法をとる必要があるのでしょうか。
相手が遺留分請求権者か確認する
遺留分の請求を受けた場合、最初にその人が本当に遺留分を有する人なのかを確認しましょう。
遺留分を有するように思われる人でも、実際には遺留分を有していないというケースも考えられます。
たとえば、被相続人の兄弟姉妹は、法定相続人であっても遺留分を有しません。
また、法定相続人とならなかった人は、たとえ被相続人の身の回りの世話をした人でも遺留分を有しません。
このような人から遺留分の請求を受けた場合は、遺留分を有しないことを説明しましょう。
遺留分を有するとして、まったく見ず知らずの人から請求を受ける可能性もあります。
これは、被相続人の子であると主張を受ける場合です。
このような場合は、本当にその人が子であるかどうかを確認する必要があります。
遺留分の金額を確認する
遺留分として、具体的な金額を提示されることがあります。
この場合、相手の主張する金額が正しく計算されているか確認する必要があります。
特に評価額の結果に違いが出るものとして、不動産や非上場株式などがあります。
これらの遺産がある場合は、特にその評価額の計算方法について確認しましょう。
遺留分の金額について交渉する
遺留分は、法律で保障されていますが、必ず支払わなければならないものではありません。
請求する人がその請求を取り下げれば、遺留分を有する人に対しても、その遺留分を支払う必要はなくなります。
そのため、遺留分を請求してきた人と、遺留分の金額について交渉することをおすすめします。
交渉では、遺留分の対象となる遺産の評価額の計算方法について、双方の評価額の違いを確認します。
また、遺留分の金額が少しでも少なくなるよう、具体的な事情を説明してお願いすることができます。
まとめ
遺留分の金額は、法律で認められている相続人の権利であり、その権利を奪うことは非常に難しいことです。
そのため、遺留分の請求を無視していれば、訴えられる可能性も高いです。
ただ、請求された遺留分の金額は交渉によって減らすことができる場合もあります。
また、遺留分の金額を減らすために、生前に対策をしておくことができるので、対策を実行するようにしましょう。