この記事でわかること
- 連絡の取れない相続人がいるときの相続の進め方
- 連絡を取らないまま放置することのリスク
- 相続人と連絡が取れない場合の対処法
人が亡くなり相続が開始されると、亡くなった被相続人の戸籍を調べ、相続人を確定させることから始まります。
しかし法定相続人を確定できたとしても、連絡が取れない・どこにいるのかわからないというケースが少なくありません。
連絡が取れない相続人がいる場合、そのまま相続手続きを進めてよいものでしょうか。
今回は連絡が取れない相続人がいる場合の対処法と、相続手続きの進め方を解説していきます。
目次
相続人と連絡が取れない!放置するリスクは?
相続人と連絡が取れないケースとは、以下のようなことが考えられます。
- 調べてみるとまったく知らない人が法定相続人だった
- ずっと疎遠で連絡先がわからない
- 前妻の子とどうやって連絡を取ればよいかわからない
相続人全員と連絡が取れなければ、相続手続きを勝手に進めることはできません。
遺産分割協議を行う場合も、相続を放棄する場合でも、どちらも相続人全員の同意と署名・捺印が必要なためです。
ここでは、連絡を取らないまま、勝手に手続きを進めるリスクについて解説します。
相続人には必ず連絡を取らないといけない
相続手続きは法定相続人全員で行う必要があります。
なぜなら民法により、法定相続人には相続財産を受け取る権利が定められているためです。
権利がある人のことを無視して勝手に遺産を分割することはできません。
遺産の分割方法・割合を決めるためには、遺産分割協議をする必要がありますが、もし連絡が取れない相続人を無視してそのまま協議を進めてしまうと、その遺産分割協議は無効となります。
相続人には考えうる手段を駆使して、連絡を取るようにしましょう。
法定相続割合で分割することのリスク
連絡が取れず遺産分割協議ができないために、法定相続割合で相続すると、後々トラブルになる可能性があります。
法定相続割合で相続するということは、すべての相続財産を法定相続割合で共有するということです。
たとえば相続財産の中に不動産があると、相続人全員で共有する状態となります。
もしこの不動産を売却したいと考えた場合、共有者と連絡が取れなければ処分することもできず、固定資産税がかかり続けることになりかねません。
また、知らない間に連絡の取れない相続人が、自分の法定相続部分を売却していたとすると、他の共有者はまったくの赤の他人と不動産を共有することになる可能性もあります。
遺産分割協議ができなければ相続税の特例も使えないため、相続税を軽減する手段が減ってしまい、多額の税金を納めることになります。
相続人の負担が増える可能性があるため、協議をせず法定相続割合で相続することは、慎重に検討したほうがよいでしょう。
相続人と連絡が取れない場合の手続きの進め方
連絡が取れないからと放置していては、いつまでたっても協議が進まず、相続手続きができません。
ここからは、連絡の取れない相続人に対して、どのような手段でアプローチしていけばよいか、具体的に解説していきます。
住所を調べる
相続人の連絡先が分からない場合、まず現在どこに住んでいるのか調べるために戸籍の附票を取り寄せましょう。
戸籍の附票とは、その戸籍に在籍している間の住所の履歴が記載されているものです。
本籍地の市区町村に請求すると発行してもらえます。
ただし、途中で本籍を変更(転籍)している場合、転籍後の住所履歴は確認できません。
その場合は転籍後の戸籍も調べる必要が出てきます。
戸籍の附票を請求できるのは、戸籍に記載されている本人または配偶者、直系の血族(祖父母、父母、子、孫)です。
請求には本人確認書類のほか、代理人が請求する場合は委任状が必要です。
専門家であれば相続手続きの一環として職権で調査が可能であるため、戸籍調査の限界を感じたら専門家に依頼することも検討しましょう。
手紙を送る
現住所が調べられたら、手紙を送ってみましょう。
しかし、相手も突然手紙が送られてきて動揺する可能性も否定できません。
手紙の内容は以下のような点に注意して作成しましょう。
- 自分は誰であるのか、関係性を明確に伝える
- 突然手紙で連絡をすることになった理由
- 相続手続きに協力してもらえるかの確認
- 手紙を確認したら返事が欲しい旨と、必ず返送先を明記する
また、相手が手紙を確実に受け取ったか確認できるように、特定記録郵便を利用して送るとよいでしょう。
特定記録郵便を使うと、郵便物を差し出した記録が残り、配達状況もネット上で確認できます(配達完了メールを受け取ることも可能)。
(詳しくは日本郵政(株)のHPをご確認ください。)
手紙の返事が来ない理由
手紙を送ったのに返事が来ないということは少なくありません。
返事が来ないときの考えられる理由には、以下のようなものがあります。
- 被相続人が生前から不仲だった
- 他の相続人と一度も会ったことがない
- 返事を書くことが面倒
元々不仲で、一切連絡を取りたくないと考えている相続人であれば、返事をすることはあまり考えられません。
前妻の子や、代襲相続の甥・姪や孫がいれば、相続人同士が一度も会ったことがないということも珍しくないでしょう。
会ったこともない人とやり取りをすることは、心理的にもハードルが高いものです。
また、手紙を書く機会が減り、単純に返事をすることが面倒と考えている可能性もあります。
手紙の返事が来ないときの対処法
どのような理由で返事を送ってこないかは事情により様々ですが、内容をしっかり伝えているのに返事が来ない場合は、返事をしないことによってどのような不利益があるか伝えましょう。
連絡がとれないことで起こる不利益には、以下のようなことが挙げられます。
- このまま返事がなく相続手続きが進められないと、家庭裁判所で調停を起こすことになる
- 調停となると、お互いにもっと面倒なことになる
- 期限内に相続税を支払わなければ、加算税や延滞税で課税額が増える
また、多少なりとも相続財産がある場合は、そのことも伝えてみるとよいでしょう。
「損をしたくない」「もらえるものは欲しい」と考える人は少なくありません。
訪問してみる
受け取りは確認できたが、それでも返事がないような場合は、その住所を訪問してみましょう。
しかし突然訪問されると戸惑う人もいるでしょうから、あらかじめ訪問する旨の手紙を送っておくとことをおすすめします。
1人で訪問するのはハードルが高いと感じる場合は、他の相続人に協力してもらいましょう。
また、話す内容を事前に整理しておくと、建設的な話し合いができる可能性が高くなります。
お互い緊張するような場面であるため、落ち着いて話ができるよう、しっかりと準備をしていくことをおすすめします。
遺産分割調停を申し立てる
手紙を出しても訪問しても応答がない場合、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てる方法があります。
遺産分割調停は、家庭裁判所の調停員が相続人の意向を聞き取り、解決案の助言や合意を目指した話し合いを行うものです。
調停を申し立てると、意向聞き取りのため家庭裁判所から相続人へ呼び出し状が送られます。
手紙に返事がない場合でも、裁判所からの連絡であれば、何らかの応答をする可能性は高いでしょう。
ただし、調停を起こすと合意するまでに通常、月1回程度の頻度で、合計4~5回は話し合いを行うことになります。
遠方に住んでいる相続人がいる場合、時間・費用・体力的にも負担が増えることに注意が必要です。
不在者財産管理人の選任を申し立てる
手紙を出したものの宛所不明で返ってきた、訪問したけれど居住していなかったなど、追いきれなくなった場合は不在者財産管理人の選任を申し立てましょう。
これは連絡の取れない相続人を不在者として、その財産の調査や財産管理を任せる管理者を選任するものです。
権限外行使の許可を取得していれば、連絡の取れない相続人に代わって遺産分割協議を行うことも可能です。
ただし、選任には数カ月かかることもあるため、利用する場合は早急に手続きをする必要があります。
また、不在者財産管理人になるために資格は必要ありませんが、手続きが専門的で難しいものになります。
不在者との利害関係などを考慮し、弁護士や司法書士など専門家が選任される場合が多いでしょう。
失踪宣告を申し立てる
どうやっても連絡が取れない場合には、失踪宣告という方法もあります。
たとえば数十年前に海外へ渡ったきり、その後まったく連絡を取っていない音信不通の相続人がいるような場合です。
失踪宣告とは、失踪者を死亡扱いにする手続きのことです。
家庭裁判所に失踪宣告を申し立てると、裁判所が失踪者の調査を行い、調査の結果、失踪者が見つからない場合には審判となり、確定すると死亡扱いとなります。
ただし、死亡扱いということは、連絡の取れない相続人に対しての相続手続きが発生することになります。
被相続人の相続と同時に、相続人の相続手続きをする必要があるので注意しましょう。
海外に相続人がいる場合
相続人は日本国籍の人だけと限らない点にも注意が必要です。
相続人の国籍は関係なく、被相続人が日本人であれば日本人と同様の手続きが必要であり、納税義務も発生します。
相続人が海外にいる場合は連絡が取れるとも限りません。
また取れたとしても外国籍の相続人は戸籍謄本や印鑑登録がないため、相続手続きがスムーズにいかないこともあるでしょう。
その場合は海外の相続事情に詳しい専門家に依頼することをおすすめします。
まとめ
近年、核家族化が進み、家族間のつながりが希薄になる中、連絡先がわからない相続人がいること自体珍しくありません。
相続人の調査で初めて相続人の存在を知ったという人もいるでしょう。
もし相続人と連絡が取れない場合は、まず戸籍と住所を調べるところから始めましょう。
手紙などでやり取りをし、協力してもらえるようなら、そのまま相続手続きが進められ、負担も少なくてすみます。
もしどうしても連絡が取れない場合は、専門家に相談しながら家庭裁判所を通じてできることから進めていきましょう。