この記事でわかること
- 親等とは
- 親等の数え方
相続手続きの中で相続人の関係性を、1親等2親等のように「親等」を使って表す場合があります。
しかし、普段使わない言葉のためなじみがなく、誰を指しているのかわからない場合があるでしょう。
相続手続きにおいて、相続人の範囲を正確に知るためのカギが親等です。
自分を0とし、両親や祖父母、子どもや兄弟姉妹との関係について、どれだけ世代が離れているか、数字でたどれます。
親等を理解していれば法定相続人が一目でわかり、遺産分割協議や相続税の基礎控除計算にも役立ちます。
今回は、親等の概要や数え方を通して、相続の全体像について解説します。
配偶者は親等で数えられるか、養子はどうなるかなどの疑問も解決できるでしょう。
目次
親等とは?親族関係の近さを示す数値
親等とは、1親等や3親等のように親族関係について法律上の遠近を表した数字です。
親等の数字は小さいほど近く、大きくなると遠い親族を示します。
親から子など世代を介するごとに、親等の数字が1つ増えます。
ただし、配偶者は世代を介さないため0親等と見なされ、本人と同じく「親等」に該当しません。
親等の数え方
親等は、自分から見て、対象の親族へつながるまでに親や兄弟などをいくつ通るかで数えましょう。
民法によると、親等で数えていく親族の範囲は、3親等内の姻族と6親等内の血族、配偶者と規定されています。
血族(けつぞく)は自分と血のつながりがある親族、姻族(いんぞく)は配偶者の血族です。
血族(けつぞく)の親等
血族は親や子、兄弟姉妹、祖父母と孫、叔父叔母、甥姪、いとこなどです。
主な血族の親等は、以下のとおりです。
自分から見た親族関係 | 親等 |
---|---|
親、子 | 1親等 |
兄弟姉妹、祖父母、孫 | 2親等 |
叔父叔母、甥姪、ひ孫、曾祖父母 | 3親等 |
いとこ、祖父母の兄弟姉妹 | 4親等 |
祖父母は「自分→親→祖父母」、孫は「自分→子→孫」となるため、2親等です。
姻族(いんぞく)の親等
姻族も、血族と同じように数えます。
配偶者間の親等は0であり、配偶者の両親や祖父母、叔父叔母など、親等は血族の場合と同様です。
親族にみなされる姻族の範囲は、3親等である叔父叔母、甥姪、曾祖父母です。
よって、4親等となる配偶者のいとこなどは法律上親族にあたりません。
わかりやすい親等図
親等を考えるときは、以下の親等図で考えると関係がわかりやすくなります。
親等の一覧表
いとこや甥姪の子など、親等の数え方が複雑な関係を考えるときは、以下の表を参考にしてください。
本人との関係性 | 親等 | 備考 |
---|---|---|
配偶者 | 0親等 | 法定相続人 |
子 | 1親等 | 法定相続人(第1順位) |
両親 | 1親等 | 法定相続人(第2順位) |
孫 | 2親等 | 子の子 |
祖父母 | 2親等 | 両親の両親 |
兄弟姉妹 | 2親等 | 両親の子 法定相続人(第3順位) |
甥・姪 | 3親等 | 兄弟姉妹の子 |
曽祖父母(そうそふぼ) | 3親等 | 祖父母の両親 |
叔父・叔母 | 3親等 | 両親の弟妹 |
伯父・伯母 | 3親等 | 両親の兄姉 |
ひ孫 | 3親等 | 孫の子 |
いとこ | 4親等 | 叔父母・伯父母の子 |
玄孫(やしゃご) | 4親等 | ひ孫の子 |
姪孫 | 4親等 | 甥・姪の子 |
高祖父母 | 4親等 | 曽祖父母の両親 |
曽祖伯叔父母 | 4親等 | 曽祖父母の兄弟姉妹 |
おおおじ・おおおば | 4親等 | 曽祖父母の子 |
来孫(らいそん) | 5親等 | 玄孫の子 |
曾姪孫 | 5親等 | 姪孫の子 |
従甥姪(じゅうせいてつ・いとこおいめい) | 5親等 | いとこの子 |
従伯叔祖父母 | 5親等 | 祖父母のいとこ・曽祖伯叔父母の子 |
従伯叔父母 | 5親等 | おおおじ・おおおばの子 |
五世の祖 | 5親等 | 高祖父母の両親 |
昆孫(こんそん) | 6親等 | 来孫の子 |
玄姪孫 | 6親等 | 曾姪孫の子 |
従甥孫・従姪孫 | 6親等 | 従甥姪の子 |
はとこ | 6親等 | 従伯叔父母の子 |
六世の祖 | 6親等 | 五世の祖の両親 |
数え方を間違えやすい親等
数え方を間違えやすい親等は、以下のケースです。
- 連れ子
- 養親・養子
- 異母・異父兄弟
- 内縁関係・離婚
それぞれのケースを解説します。
連れ子
再婚しただけでは連れ子と新しい親の間や、連れ子同士の間に法的な親族関係は発生しません。
それぞれの親等や相続権は、連れ子と養子縁組をするかどうかで決まります。
【親子関係】
養子縁組をしない場合、連れ子と新しい親は「1親等の姻族」となります。
姻族のため相続権は発生しません。
養子縁組をすれば「1親等の親族」となり、実子と同様に相続権を得ます。
【連れ子同士】
新しい親と養子縁組をしていない場合、連れ子同士はお互いに親族・姻族でなく、親等もありません。
養子縁組をすれば、法的な兄弟姉妹関係になり、お互いに2親等の親族となります。
養親・養子
養子は、養子縁組で養親の血族となるため、通常の親等と同じ数え方をします。
たとえば、養親と養子は、実親と実子と同じ1親等です。
養子は養親の親族との間にも親族関係があり、養子と実子は兄弟姉妹として2親等になります。
例外として、養子の実親と養親などは親族関係になりません。
普通養子縁組では養子と実の両親は1親等ですが、特別養子縁組では親等が消滅するため注意しましょう。
普通養子縁組は、実親との親子関係を維持した状態で、養親と法律上の親子関係を結ぶ手続きです。
特別養子縁組は、養親と法律上の親子関係ができる一方で、実親との親子関係は終了する制度を指します。
異母・異父兄弟姉妹
片方の親のみ同じ父親・母親違いの兄弟姉妹がいるときは、両親が同じ兄弟姉妹と同様に親等を数えます。
よって、一度親世代を介しているため、片親が違っていても2親等です。
内縁関係・離婚
内縁関係の場合は戸籍上の親族にならないため、親等を数えられません。
戸籍上婚姻している配偶者の血族が姻族となるためです。
離婚をした場合も、配偶者は親族ではなくなるため、姻族関係もなくなります。
ただし、婚姻中に生まれた子どもは、自分の血族です。
離婚後に子どもが配偶者の戸籍に入ったとしても、子どもとの親族関係は続きます。
離婚により配偶者が親権を取った場合、親権と親族関係は別と考えるため、子どもとの親族関係は変わらず継続します。
相続時の親等に関する注意点
相続時には、親等について以下の注意点があります。
- 法定相続人は配偶者と1親等の血族になる
- 1親等と配偶者以外の相続税は2割増す
- 親等ごとに相続分は異なる
- 代襲相続の対象を確認する
それぞれの注意点を見ていきましょう。
法定相続人は配偶者と1親等の血族になる
法定相続人は、民法で定められた、被相続人の遺産を相続する権利を持つ人です。
遺言で指定がなければ、法定相続人で遺産分割協議を行い、遺産の分け方などについて話し合います。
法定相続人は、常に相続人となる配偶者(夫または妻)と、順位が決められた血族の相続人で構成されます。
血族の相続人の相続順位は、以下のとおりです。
- 第一位:子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第二位:親(親が亡くなっている場合は祖父母)
- 第三位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪)
上位の相続人が一人でもいる場合、下位の人は相続人にはなれません。
具体的には、被相続人に配偶者と子どもがいれば、法定相続人は配偶者と子どもです。
親と兄弟姉妹は相続人にはなれません。
もし子どもがいない場合は、配偶者と親が相続人です。
子どもも親もいない場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。
1親等と配偶者以外の相続税は2割増す
相続人が配偶者や1親等の血族(両親、子)に該当しない場合、相続税額は2割加算(通常の納付額×1.2倍)となります。
たとえば兄弟姉妹が相続人となった場合、「2親等の血族」であるため2割加算の対象です。
親等ごとに相続分は異なる
法定相続分とは、民法に定められた遺産の取り分の目安です。
親等により、その割合は異なります。
常に法定相続人となる配偶者と、誰が相続人になるかで詳しく見ていきましょう。
【配偶者と子】
相続で最も多いケースが配偶者と子の組み合わせです。
法定相続分は、配偶者2分の1、子2分の1です。
子が複数いる場合は、2分の1を人数で均等に割ります。
【配偶者と親】
子がおらず配偶者と親で相続する場合、配偶者3分の2、親3分の1の割合になります。
両親とも健在の場合は、3分の1の半分、6分の1ずつを相続します。
【配偶者と兄弟姉妹】
子も親もいない場合、兄弟姉妹と相続します。
法定相続分は配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1です。
相続順位が下がるほど、配偶者の取り分が多くなる点が特徴です。
なお、遺産分割協議で全員が合意すれば、この割合どおりに分割する必要はありません。
代襲相続の対象を確認する
代襲相続は、相続できない理由がある相続人の代わりに、その子どもが相続人の地位を得る制度です。
相続人になるはずだった人が相続開始前に亡くなっている場合などで適用されます。
ちなみに、直系尊属(親や祖父母)に代襲相続はありません。
親が亡くなっていれば祖父母ではなく、兄弟姉妹へ相続権が移ります。
子が亡くなっている場合
子の子、つまり被相続人の孫が代襲相続します。
もし孫も亡くなっていれば、再代襲といってひ孫までは代襲相続できます。
兄弟姉妹が亡くなっている場合
兄弟姉妹の子にあたる甥姪が代襲相続します。
なお、甥姪は再代襲できません。
代襲相続でも法定相続割合は変わらず、亡くなった相続人が本来受けるはずだった相続分をそのまま引き継ぎます。
例えば相続人である子2人(各相続分2分の1)のうち1人が亡くなり、孫が代襲相続する場合、親と同じように相続分は2分の1です。
親等と相続に関するよくある質問
親等と相続に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 親等ごとに忌引き日数は異なる?
- 相続でわからない点があったときの相談先は?
それぞれの質問に対して回答します。
親等ごとに忌引き日数は異なる?
以下の表に、親等ごとの忌引き日数について目安を示しました。
続柄(あなたとの関係) | 親等 | 忌引き日数(目安) |
---|---|---|
配偶者 | 0 | 10日 |
両親 | 1 | 7日 |
子 | 1 | 5日 |
祖父母 | 2 | 3日 |
兄弟姉妹 | 2 | 3日 |
孫 | 2 | 1日 |
忌引きの日数が異なるのは、故人との関係性(親等)が基準となっているためです。
一般的に関係が近いほど、葬儀で喪主などの重要な役割を担う可能性が高く、準備や親族の対応に相当の時間が必要です。
また、精神的な負担も大きいため、心の整理に必要な期間として、より長く日数が設定される傾向にあります。
なお、忌引き規定は法律で定められたルールではありません。
上記の表はあくまでも目安で、忌引きの日数は会社の就業規則によって異なります。
相続でわからない点があったときの相談先は?
相続手続きに精通した弁護士への相談がおすすめです。
相続は、高額な財産の分配を決めるケースも多いため、民法上の厳密なルールに基づいて手続きが進められます。
必要な手続きの抜け漏れや思い違いがあった場合、将来的に大きな問題となってしまう可能性もあります。
特に相続人の数や相続財産が多い場合、相続関係も複雑になりやすく、手続きをすべて個人で行うのは困難でしょう。
弁護士に依頼した場合、次のメリットがあります。
- 相続財産の分割方法、相続放棄の判断など、悩んでいるポイントに的確なアドバイスをもらえる
- 財産調査や相続人調査、遺言書の作成、必要書類の収集など、個人では難しい相続手続きを代行してもらえる
- 相続人同士の感情的な対立を和らげ、紛争を予防できる
弁護士選びで迷ったときは、VSG弁護士法人にご相談ください。
相続の実績が豊富なVSG弁護士法人では、ご相談者一人ひとりのわからないに寄り添った対応をいたします。
まとめ
相続手続きにおける親等についての理解は、誰が法定相続人かを把握し、手続きをスムーズに行ううえでとても大切です。
自分を0として親子関係を1と数える、シンプルなルールさえ覚えていれば、複雑に見える親族関係も簡単に整理できます。
実際に遺産分割を行うときや、相続税の計算、忌引きの日数を把握するときにも、親等を知っておくとより理解しやすくなるでしょう。
相続手続きは専門的な知識が必要な場面も多く、判断に迷う、相続人同士でトラブルになるなどの可能性も考えられます。
少しでも手続きに不安を感じたら、専門家への依頼を検討しましょう。
相続手続きで不明点があったときは、VSG弁護士法人にご相談ください。