この記事でわかること
- 親の土地に家を建てるメリットとデメリット
- 親の土地に家を建てる方法によってかかる税金
- 親の土地に家を建てるときに行うべき税金対策
親の土地に家を建てると、土地を購入しなくてよいので費用を大幅に抑えられます。
ただし、税金などの面でいくつか注意すべきこともあり、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。
また、親の土地を譲り受けるのか、借りるのか、有償か無償かなど、状況によってかかる税金が異なります。
この記事では、親が所有する土地に家を建てる場合のメリットとデメリットを詳しく解説します。
また、ケース別にかかる税金や税金対策なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
親の土地に家を建てるメリット・デメリット
まずは、親の土地に家を建てる場合のメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
親の土地に家を建てるメリット
親の土地に家を建てると、以下の3つのメリットがあります。
- 土地の購入費用を節約できる
- 住宅ローンの審査が通りやすくなる
- 相続税を節税できる場合がある
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
土地の購入費用を節約できる
親の土地に家を建てる1番のメリットは、土地の購入費用がかからないことです。
場所や面積にもよりますが、土地を購入すると数百万円~数千万円はかかります。
特に都心部は土地が高額なので、その分を節約できるのは大きなメリットと言えるでしょう。
家を建てるのに住宅ローンを組む際も、借入額を大幅に減らせるので、月々の返済額を軽減ができます。
住宅ローンの審査が通りやすくなる
先述したとおり、親の土地があれば住宅ローンの借入額を大幅に減らせるため、審査が通りやすいというメリットがあります。
通常、住宅ローンを利用する際は金融機関の審査があり、希望借入れ金額や担保価値、借入人の返済能力などを審査して、融資するかを決定します。
親の土地に家を建てる場合、土地代がかからない分、必然的に希望借入れ金額が少なくなるので、審査が通りやすくなる可能性があります。
親の土地に家を建てるデメリット
親の土地に家を建てると、土地費用を節約でき、住宅ローンの審査に通りやすいというメリットがありますが、一方で以下の3つに注意する必要があります。
- 相続トラブルが生じる可能性がある・住宅ローン完済まで名義変更できない
- 親に迷惑がかかる可能性がある
それぞれのデメリットや注意点について詳しく見ていきましょう。
相続トラブルが生じる可能性がある
まず注意すべきなのは、相続発生後、親族間でトラブルになる可能性があることです。
たとえば、父親と長男と次男の3人家族で、長男が父親名義の土地に家を建て、自身の家族と一緒に住んでいたとします。
父親が急逝し、唯一の相続財産は長男が建てた家の土地のみであった場合、その土地を1/2ずつ相続するという話になる可能性があります。
しかし、相続した土地には長男の家が建っているため、次男はその土地を使用することも売却することもできず、次男は不満に思い、トラブルに発展する可能性があります。
また次男は、長男が土地を全持分相続し、次男に土地の半分に見合う現金を支払う「代償分割」を行うことを提案するかもしれません。
しかし、土地の1/2の金額を支払うとなると長男に負担がかかるため、納得しない可能性があるでしょう。
このように、親が亡くなり相続が発生した場合に、相続人間でトラブルになりやすいというデメリットがあります。
親の土地に家を建てる前に、事前によく相続人間で話し合っておくことが重要でしょう。
土地に担保を設定できない場合がある
親の土地に家を建てるために住宅ローンを利用するには、土地と新築した建物を担保に入れる必要があります。
ただ、すでに親の土地に別の抵当権が設定されていた場合、住宅ローンが通らない可能性があります。
すでに別の抵当権が設定された状態でさらに設定すると、万が一住宅ローンの返済ができず担保物件(土地)を競売にかけた場合に、返済の優先順位が下がってしまいかねません。
そうなると金融機関の住宅ローンの返済リスクが高まるためです。
親に迷惑がかかる可能性がある
親の土地に家を建てた場合、子どもが住宅ローンを滞納すると親に迷惑がかかる可能性があります。
通常、住宅ローン滞納が続くと金融機関から住宅ローン残額の一括返済を請求され、一括返済ができないと、担保に入れた不動産が差し押さえられ競売にかけられます。
滞納があると、担保に入れた親の土地が強制的に売却されてしまい、親に迷惑をかけてしまう可能性があります。
親の土地に家を建てる方法
ここからは、親の土地に家を建てる方法について解説します。
方法としては、以下の3つがあります。
- 無償で親の土地を借りて家を建てる
- 有償で親の土地を借りて家を建てる
- 親の土地を譲り受けて家を建てる
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
無償で親の土地を借りて家を建てる
1つ目は土地代や権利金など一切支払わず、無償で親が所有している土地を借りて家を建てる方法です。
親の土地に家を建てる際、とても多いケースかもしれません。
中には、「土地代を払わない代わりに固定資産税相当額を親に支払っている」といったケースもあるでしょう。
無償で土地などを借りることを法律上「使用貸借」といいます。
金銭的な負担がかからない代わりに、貸主から立ち退きを求められたら従う必要があり、権利としては非常に弱いという特徴があります。
有償で親の土地を借りて家を建てる
2つ目が、土地代や権利金などを支払って、親が所有している土地を借りて家を建てる方法です。
他人と土地賃貸借契約を交わすのと同じように、親に毎月の土地代や権利金などを支払って親の土地上に家を建てます。
親の土地を譲り受けて家を建てる
3つ目は、無償または格安で親の所有している土地を譲り受けて家を建てる方法です。
「タダで親から土地をもらった」「格安で親から土地を買った」などのケースです。
この方法は賃貸借ではなく譲渡なため、土地代や権利金などがかからず、所有権が親から子どもに移ります。
親の土地に家を建てるときにかかる税金
親の土地に家を建てる場合、税金が発生しますが、かかる税金は先述したケースによって異なります。
ここからは、上記で説明した「親の土地に家を建てる方法」のケース別に、かかる税金について詳しく解説します。
無償で親の土地を借りて家を建てる場合にかかる税金
無償で親の土地を借りて家を建てる場合、相続税が発生します。
先述したとおり、このケースは使用貸借であって土地を譲り受けるわけではないので、贈与税などの税金はかかりません。
しかし、将来的に土地の所有者である親が亡くなり、土地を相続する際に相続税がかかります。
小規模宅地の特例を利用した節税
親の土地に家を建て、親と同居する場合、小規模宅地の特例という制度を利用して相続税を節税することができます。
この制度は、同居している親が亡くなり、親の土地を子どもが相続した場合、土地の330㎡までの部分の評価額を80%下げることができるというものです。
たとえば、300㎡で評価額3,000万円の土地であれば、この制度を使うことで、評価額を600万円(3,000万円×20%)まで下げることが可能となります。
ただし、親と子どもの生活が完全に分離している場合や、区分登記をしている場合には、この制度が使えないことがあるため注意しましょう。
有償で親の土地を借りて家を建てる場合にかかる税金
親に土地代や権利金を支払って、土地を借りる場合は相続税が発生します。
無償で土地を借りる場合と同じく、土地を譲り受けるわけではないので贈与税は発生しませんが、親が亡くなって相続する際に相続税が発生します。
しかし、親から有償で土地を借りると、その土地には子どもの名義で借地権が設定されます。
先述したように、借地権が設定されていると相続税を算出する際の土地の評価額が下がります。
その結果、相続税が安くなるという特徴があります。
また、このケースでは、子どもが支払った土地代や権利金が親の所得となるため、親側は所得税や住民税を支払う必要があります。
親の土地を譲り受けて家を建てる場合にかかる税金
親の土地を譲り受けて家を建てる場合、贈与税、不動産取得税、登録免許税が発生します。
無償で譲り受ける場合は勿論、格安で譲り受けた場合にも贈与税が発生します。
「贈与税は無償で譲り受けた場合にだけ発生する」というイメージを持たれがちですが、有償であっても、本来の土地の金額よりも安く譲り受けた場合、値引きされて子どもが節約できた分、親から贈与があったとみなされ、贈与税が発生します。
贈与税に加えて、子どもが土地を取得することになるため、不動産取得税と登録免許税がかかります。
また、たとえ格安であっても、親が有償で子どもに譲り渡した場合は、親に所得税や住民税がかかります。
贈与税発生時に使える相続時精算課税制度について
贈与税に関しては、相続時精算課税制度という特例があります。
この制度を利用すると、最大2,500万円までの贈与が非課税となります。
なお、2,500万円分を超えた部分については一律税率20%かかりますが、通常の贈与税率は40~55%程度と高額なので、かなり税金を節約できると言えるでしょう。
ただし、注意すべきなのが、この制度を使って贈与した財産は、将来の相続時に相続税の課税対象となる点です。
つまり、相続時精算課税制度を利用して1,000万円の土地の贈与を受けた後に相続が発生した場合、この1,000万円は相続税の課税対象となるしくみです。
また、この制度を利用して贈与した場合、贈与時の土地の価格に基づいて相続税が算出されます。
将来的に値上がりすることが確定している土地を贈与する際にこの制度を使えば、将来的に相続税を節税することが可能です。
親の土地に家を建てるときにすべき相続対策
先述したとおり、親の土地に家を建てるとなると、相続トラブルに巻き込まれる可能性があります。
このような事態を避けるための相続対策として、以下の2つがあります。
- 親が遺言書を作っておく
- 親から生前贈与を受ける
それぞれの相続対策について詳しく見ていきましょう。
親が遺言書を作っておく
親が、遺言書によって引き継がせたい財産や人物を指定しておく方法があります。
たとえば「子どものうち1人に貸した土地をそのまま譲る」と指定しておくと、相続時にトラブルに発展する可能性は低くなります。
亡くなった親の希望であればと、他の相続人も納得しトラブル防止につながるでしょう。
ただし、法定相続人の遺留分(法律上、配偶者、子ども、親などに最低限認められている遺産分)を侵害するような内容である場合は、トラブルに発展する可能性があるので作成時に注意する必要があります。
また、法的効力を持つ遺言書を作成するためには要件を満たす必要があるので、遺言書の作成方法をよく確認しておく必要があるでしょう。
相続トラブルを回避し、法的効力を持つ遺言書を作成するのであれば、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
生前贈与を受ける
子どもが親から土地の生前贈与を受ければ、子どもの所有となるため相続トラブルを回避できるでしょう。
土地が広く一部の土地に家を建てる場合は、土地を分筆して譲り受ける方法もあります。
しかし先述したとおり、親から土地を譲り受けると、贈与税、不動産取得税、登録免許税などの税金がかかるので注意しましょう。
特に、贈与税率は最大55%であるため、相続時精算課税制度などを利用しない場合、土地の金額によっては贈与税が非常に高額となる可能性があります。
まとめ
親の土地に家を建てる場合、メリットがある一方でデメリットや注意すべきことも存在するので、それぞれをよく理解しておくことが重要です。
事前に兄弟など親族間でよく話し合いを行い、全員が納得した上で家を建てることで将来的な相続トラブルを回避できるでしょう。
また、状況によってかかる税金の種類や金額が変わってくるため、最も節税できる方法を調べておくとよいでしょう。