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最終更新日:2025/6/11

親子関係不存在確認の訴えとは?期間や改正内容をわかりやすく解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

この記事でわかること

  • 親子関係不存在確認の訴えの概要
  • 嫡出否認の訴えとの違い
  • 民法改正による変更点
  • 親子関係不存在確認の訴えに関する判例

親子関係不存在確認の訴えは、法律上の親子関係を争うための裁判手続きです。
相続において、この制度を理解することは重要です。
戸籍上の親子関係が実際の血縁関係と異なる場合、相続権や遺産分割に大きな影響を与える可能性があるためです。

本記事では、親子関係不存在確認の訴えの概要、嫡出否認の訴えとの違い、そして2024年4月1日に施行された民法改正による変更点を解説します。
さらに、実際の判例を通じて、親子関係不存在の訴えについて具体的に見ていきましょう。

相続に関わる親子関係の問題に直面している方は、ぜひ参考にしてください。

親子関係不存在の訴えとは

親子関係不存在の訴えは、法律上の親子関係を否定するための裁判手続きです。
相続では、親子関係が相続権や遺産分割に大きな影響を与えるため、重要な制度として捉えられています。

ここでは、親子関係不存在の訴えの概要を説明し、関連する嫡出否認の訴えとの違いについて解説します。

親子関係不存在の訴えの概要

親子関係不存在の訴えは、戸籍上の親子関係が実際の血縁関係と一致しない場合に用いられる裁判手続きです。
主に父子関係が争点となり、戸籍の訂正には裁判所の判決が必要です。

この訴えは、嫡出推定が及ばない場合に適用されます。
しかし、嫡出推定が及ぶ婚姻中に生まれた子でも、明らかに父子関係が成立し得ない場合は認められることがあります。
たとえば、夫の長期海外出張や別居により、妊娠の可能性がなかった場合などです。

訴えを提起できるのは、子、父、母、または直接的な利害関係を持つ第三者に限られています。
提訴期限はなく、いつでも訴えを起こすことができます。

手続きは調停前置主義を採用しており、まず調停を申し立て、調停が不成立の場合は訴訟へ進みます。
調停や裁判ではDNA鑑定などの科学的証拠は重要な役割を果たし、血縁関係の有無を証明する根拠となるでしょう。

嫡出否認の訴えとの違いと民法改正

嫡出否認の訴えは、嫡出推定が及ぶ場合の父子関係を否定するための手続きです。
一方、親子関係不存在の訴えは、嫡出推定が及ばない場合に用いられます。

2024年4月1日から施行された改正民法により、嫡出否認の訴えに関する規定が大きく変更されました。

改正前は、父親のみが1年以内に訴えを起こすことができました。
しかし民法改正により、父親だけでなく、子、母、前夫(再婚後の夫の子と推定される子に関して)も訴えを起こせるようになりました。

出訴期間(時効)も、父と前夫は子の出生を知った時から3年以内、子と母は子の出生の時から3年以内に延長されました。

また、子が父と継続して同居した期間が3年未満の場合、21歳に達するまで否認の訴えを提起できる特例も設けられました。

一方で、親子関係不存在の訴えには期限がなく、より広い範囲の人が申し立てられる点が特徴です。
これらの違いを理解し、適切な手続きを選択しましょう。

親子関係不存在確認の訴えに関する判例


親子関係不存在確認の訴えは、法律上の親子関係を争う場面で重要な役割を果たします。
この訴えは、相続や身分関係の確定に影響を与えるため、裁判所では慎重に判断されます。

判例では、DNA鑑定結果や家庭環境が考慮される一方で、法律上の安定性や制度趣旨が優先される場合もあります。

ここでは、親子関係不存在確認の訴えについて、法律上の利益が認められた事例と認められなかった事例を紹介します。

親子関係不存在の訴えについて法律上の利益が認められた判例

2022年6月24日の最高裁判所判決は、親子関係不存在確認訴訟における法律上の利益が認められた事例です。

亡Aおよび亡Bの孫であり、亡Cの戸籍上の甥であるXが、亡Dの相続において自身の法定相続分に影響があるとして訴えを提起しました。

Xは「亡Cは亡Aおよび亡Bの子ではない」と主張しました。
親子関係不存在が認められることで、亡Cの子どもたちが法定相続人から除外され、自身の相続分が増えるという主張です。

最高裁は、「本件訴えにつき法律上の利益を有するというべきである」として、Xが訴えを提起する正当な理由を認め、第1審への差し戻しを命じました。

親子関係不存在が認められなかった判例

2014年7月17日の最高裁判決では、DNA鑑定で99.999998%生物学的父子関係が否定されたにも関わらず、親子関係不存在確認の訴えが却下されました。

夫婦が同居を継続し平穏な家庭環境を維持していたため、子の法的安定性を優先する判断が下されました。

最高裁は「生物学的事実が明白でも、嫡出推定制度の趣旨(家庭の平穏保護)が優先される」と明言し、嫡出否認の訴え以外での争いを否定しました。

この判決は、婚姻中の妊娠、出産、子育て事例で、特に厳格に適用される傾向を示しています。

まとめ

親子関係不存在確認の訴えは、相続に大きな影響を与える可能性がある重要な法的手続きです。
しかし、その適用や判断基準は複雑で、個々の事情によって結果が大きく異なる可能性があります。

親子関係に疑問や懸念がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
また、DNA鑑定の必要性や訴訟のリスク、代替案などについても、専門的なアドバイスを受けるとよいでしょう。

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