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すべての相続財産の評価額を求めて、控除額や特例の適用の有無について整理すると相続税額が計算されます。
特例の適用を受ける場合や相続税が発生する場合には、相続税の申告書を作成し、税額を納付しなければなりません。
ここでは、相続税の申告や納付をする際の注意点について解説します。申告や納税を正しく行わないと、特例が認められなかったりペナルティが課されたりします。
後から問題になることのないよう、事前に申告からの流れについて確認しておきましょう。
相続税の納付方法は全部で4種類
相続税の支払いが発生したときに、納付方法は4種類あります。
- ・金融機関の窓口で納付
- ・クレジットカード
- ・コンビニ
- ・税務署窓口
ただし相続税が発生するのは全体の少数で、相続財産の金額が最低でも3,500万円以上ないと、課税されません。
金融機関の窓口で納付
相続税の支払いで一般的な方法が、金融機関の窓口で納付する方法です。
最寄りの郵便局・銀行と行った金融機関に行き、納付書を提示して、税金を納めます。
手数料がかからないため、金額は小さいですが節約にもなります。
クレジットカード
金額が1000万円未満なら、クレジットカードで納付できます。
国税庁のホームページから「国税クレジットカードお支払いサイト」にアクセスして、支払いましょう。
ただしクレジットカード自体の限度額までしか支払えず、手数料もかかるため、注意が必要になります。
例えば相続税が900万円あるのに、クレジットカードの支払い限度額が100万円だった場合、残りの800万円が納付できなくなります。
また手数料は納付金額によって変わりますが、300万円納付すれば22,800円の手数料がかかります。
手数料自体は金額が小さいですが、なるべく節約したい場合は、金融機関での支払いがおすすめです。
コンビニ
納付金額が30万円以下なら、コンビニでの支払いができます。
ただし事前に税務署に行き、バーコード付き納付書の発行が必要になります。
通常の納付書ではコンビニ納付ができないので、注意してください。
またコンビニ納付の場合は領収書が発行されません。
コンビニ納付のメリットとしては、24時間いつでも支払い可能で、手数料もかからないとです。
税務署窓口
申告書を提出した税務署であれば、税務署窓口から納付できます。
相続税の納付書・支払うための現金を持って、窓口に行って納付します。
現金を持って税務署まで行く必要があるため、防犯面での注意は必要です。
また相続税の金額が多い場合は、ATMで引き出せる現金の限度額を超えてしまうかもしれません。
例えば相続税が500万円だった場合、限度額50~100万円の一般的なATMに数回通って、引き出す必要があります。
ATMが対応してない時間帯もあったり、ATMの利用手数料を発生したりするため、あまりおすすめできません。
相続税の特殊性について知ろう
相続税は、相続したすべての人に発生するものではありません。また、税額が発生しない場合でも申告義務が発生する場合があります。
例えば、相続財産の合計額が「3000万円+600万円×相続人の数」で計算される基礎控除の範囲内であれば、相続税が発生せず申告する必要もありません。
また相続財産の額が基礎控除を上回っても、配偶者控除や小規模宅地等の特例などを適用すると相続税額が発生しないことがありますが、特例を適用するためには相続税の申告が必要となります。
相続税が発生する場合、相続が発生した日から10か月以内に申告・納付しなければなりません。
また、所得税など他の税金は口座振替も利用できますが、相続税は口座振替により納付することができません。現金で納付する必要があるのです。
申告したら納付しよう 延滞注意!
相続税は現金による一括納付が原則です。その際、税務署へ出向かなくても、最寄りの金融機関で支払うことができます。
ただ、相続税は多額になることが多く、実際には一括で納められない場合もあります。
そのために延納という制度で分割払いが認められます。
また、現金で納める代わりに土地などの財産を物納することもできます。
ただし、これらの制度を利用するためには、税務署で事前に手続きをしなければなりません。
残りの税額は後日納付しようと考えて、納期限までに本来の税額より少ない金額しか納めなかった場合、納めていない残りの税額について延滞税の計算対象になってしまいます。
また、相続税の納税は財産を取得した相続人が個別に行うものですが、相続人の間に連帯納付義務が発生します。
相続税を納付していない相続人がいる場合に適切な措置をとっていないと、連帯納付義務があるため、ほかの相続人が納付しなければならない場合があるのです。
税務調査が入らないためにも正しく申告しよう
相続税の申告や納付を期限内に行ったからといって安心はできません。
相続税の課税対象となった被相続人の割合は、2016年の全国平均で8.1%と少ないため、所得税など他の税金に関する申告に比べて、格段に税務調査を受ける確率が高いのです。
税務調査を受けると、相続財産に漏れはないか、相続財産の評価方法は適切か、各種の控除や特例の計算は間違っていないかなど、相続税の申告内容に関するあらゆる項目について調査を受けます。
調査の際には、税務署の担当者から様々な質問があるため的確に、かつ嘘のないように説明しなければなりません。
正しい申告・納税を心がけていても、調査の結果、相続財産や評価方法に関する見解の相違により、多くの人が申告漏れを指摘されて追徴課税を受けています。
追徴課税を受けると、不足している税額を納付するだけでなく、過少申告加算税や延滞税を納付しなければなりません。
また、悪質と判断された場合には、より負担の重い重加算税が課される場合もあります。
税務署が税務調査を行う場合、事前に納税者に対して連絡があります。
その際、調査の日程については納税者の希望に沿うように配慮してもらえます。いきなり税務署の担当者が自宅に押し掛けるようなことはないため、その点での不安はありません。
ただ、税務調査を受けること自体に不安を感じる方は多いと思います。税務署からの質問に的確に答える自信のない方は、税理士に立ち会いを依頼することも考える必要があります。
相続税で困ったら弁護士・税理士に相談しよう
相続税は税務調査が入りやすく、知識のない状態なのに自分だけで作業を進めてしまうのは危険です。
自分では完璧に手続きを行ったと思っていても、把握できない財産があり、追加徴税されてしまうかもしれません。
相続税の申告・支払いでは確実に漏れのない手続きが必要になるため、弁護士・税理士などの専門家に依頼した方がいいでしょう。
初回の相談を無料で受けている事務所も多いため、まずは気軽に相談してみてください。
まとめ
相続税の申告・納税の期限は被相続人が亡くなってから10か月以内となっています。
この10か月は、残された相続人にとってすべきことが多く、あっという間に過ぎてしまいます。
相続が発生する前に申告・納付の流れについて確認しておき、相続が発生した際にはすぐに行動に移せるようにしておきましょう。
時間的な余裕を持つことで正しい申告につながるため、税務調査があっても大きな問題は生じないはずです。