この記事でわかること
- 音信不通の相続人の連絡先を調べる方法がわかる
- 音信不通の相続人が長期間行方不明のときの対処法がわかる
- 相続人の連絡しても無視される場合の対処法がわかる
目次
音信不通の相続人がいる場合、遺産分割協議を勝手に始めてもいい?
ある人が亡くなった場合、その相続人となる者の全員が参加して遺産分割手続きをしなければなりません。
この遺産分割手続きは相続人の全員が参加しなければならず、相続人の全員の同意が必要です。
しかし、相続人の中には長年連絡を取っていない者がいたり、音信不通になってしまっていたりする場合は、どのようにすればよいでしょうか。
相続人を明らかにする方法
まずは、相続人が誰になるのかを明らかにするために、戸籍謄本を取得します。
戸籍謄本には、その人の出生から死亡までの情報が記載されています。
戸籍謄本を見れば誰が相続人になるかがわかり、戸籍をたどっていくことで、相続人が現在どの戸籍に入っているのかも確認できます。
ただし、相続人の調査をするためには、かなりの数の戸籍謄本が必要になることが多いです。
戸籍謄本は本籍地の役所に保管されており、一か所の役所ですべて揃うことはほぼないため、手続きに時間がかかってしまいます。
また、戸籍謄本を見慣れていない方は、見方がよくわからないかもしれません。
司法書士などの専門家に依頼すれば、短期間で確実に戸籍謄本を取得することができますので、手続きに不安がある場合は依頼するのがおすすめです。
音信不通の相続人の住所や電話番号がわからないときの対処法
遺産分割協議をしようと思っても相続人となる者が複数いる場合、その全員がそろわないことがあります。
しかし、そろわないからといって勝手に遺産分割協議を進めてしまうのは、とても危険ですし、トラブルのもとです。
では相続人と連絡が取れない場合、どのような対策を取ればいいのでしょうか。
戸籍で住所をたどり連絡
住所や電話番号がわからない場合は、戸籍を取得し、住所をたどっていくという方法があります。
戸籍は、他人が勝手に取得したりはできませんが、故人が亡くなり、遺産分割協議の必要ができたなどのきちんとした理由があり、親族であれば取得できることもあります。
戸籍を取得することで、その人の本籍地をたどることができます。
ただし、その人が住んでいる住所と本籍地は本来違うものになっていることが多いですので、現在の本籍地がわかったからといって、ただちに住所がわかるわけではありません。
そこで、戸籍の附票を取得してみるという方法があります。
戸籍の附票は、その本籍地での住所履歴のようなものになっています。
こういった方法によって住所が判明した場合は、その住所へ連絡するという方法があります。
不在者財産管理人を選任
音信不通になって、戸籍などをたどっても居場所がわからないケースもあります。
その場合、この不在者の利害関係人として、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。
裁判所に選任された不在者財産管理人は、その不在者にかわって、不在者の財産を管理します。
そのため、相続人は、この不在者財産管理人とともに遺産分割協議を進めことができるようになります。
ただし、この不在者財産管理人は、あくまでも不在者の財産を管理できるというもので、財産の処分については、さらに家庭裁判所の許可が必要です。
遺産分割協議の成立や遺産分割の調停の成立、あるいは遺産分割の調停や審判を申し立てるときなどには、その都度家庭裁判所の許可が必要ですが、この方法を使うことで、遺産分割協議を成立させることができます。
音信不通の相続人が長期間行方不明のときの対処法
音信不通の相続人が長期にわたって行方不明の場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか。
失踪宣告を申立てる
音信不通で行方不明が長期間にわたる場合、「死亡した者とみなす」という方法があり、これを失踪宣告といいます。
失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2つがあります。
普通失踪とは、行方不明になってから7年間生死が不明の場合にできる失踪宣告です。
特別失踪は、戦地に臨んだ者については戦争が終わった後、沈没した船中にいた者については沈没後、その他生命の危険のある危難にあった者についてはその危難が去った後、それぞれ1年間生死が不明な場合にできる失踪宣告です。
家庭裁判所が失踪宣告をした場合、7年間の失踪期間が満了したときに死亡したものとみなされます。
故人が亡くなった時点で、不在者が死亡していたことになれば、相続人には該当しませんので、不在者を省いた形で遺産分割協議を開始できます。
ただし、この場合においても、代襲相続が発生していないかどうかは、必ず確認しておく必要があります。
失踪宣告の取り消し
もしも、失踪宣告をした後に、失踪宣告をして死亡したとみなされていた者が生存していることが判明した場合、この失踪宣告は取り消されます。
失踪宣告が取り消された場合、遺産分割協議はどうなるのでしょうか。
これは、相続人がその失踪宣告をうけた者の生存を知っていたのか、あるいは知らなかったのかによってかわってきます。
相続人が生存を知らず失踪宣告をした場合は、その相続人は遺産分割で取得した遺産のうち、残っている財産を返すことで問題ないとされています。
しかし、もし相続人がその生存を知っていた場合、その相続人に対する遺産分割は無効になり、取得をした遺産を全部返さなければなりません。
また遺産分割をやり直す必要もでてきます。
音信不通の相続人と連絡が取れても無視されるときの対処法
音信不通の相続人の連絡先がわかって連絡が取れても、相手に無視されることがあります。
このような場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
連絡を取り続ける
連絡がとれない場合でも、手紙や電話で連絡したり、直接自宅を訪問するなど、できる限りの方法で連絡を取るようにしましょう。
連絡を無視される場合、相手は相続放棄を希望していることもあります。
相続放棄をするなら遺産分割協議に参加する必要はありませんが、本人が家庭裁判所で相続放棄の手続きをする必要があります。
相続を知ってから3か月以内に手続きをしないとできなくなってしまうので、この点も伝えておきましょう。
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
どうしても連絡が取れない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることもできます。
相続人のうちの1人または複数で、家庭裁判所に申立てをします。
申し立てにかかる費用は、申立手数料1,200円と郵便切手代が数千円程度で、相続関係がわかる戸籍謄本も必要です。
遺産分割調停を申し立てても出席してもらえない場合は、遺産分割審判に移行することになり、裁判官が遺産分割方法を指示します。
音信不通の相続人により遺産分割が進まないときは専門家に相談
音信不通の相続人がいた場合でも、上記の方法で遺産分割協議を進めていくことはできますが、その進め方はとても難しい内容になることでしょうし、手続きも煩雑ですのでトラブルにつながりかねません。
また、長年連絡を取っていなかった相手とやり取りする場合、思わぬ事態に巻き込まれてしまう可能性もあります。
ですので、こういったケースの場合は、できるかぎり早めに専門家である弁護士に相談するようにして進めていくのがベストです。
まとめ
遺産分割手続きは、相続人の全員が参加して行わなければならないもので、相続人の全員の同意が必要となります。
そのため、音信不通の相続人がいた場合、まずは音信不通がどのレベルなのかを把握し、住所や電話番号がわかるのであれば、連絡し説得するようにします。
もし住所がわからない場合は、戸籍謄本や戸籍の附票で住所を調べる方法がありますが、それでも居場所がわからない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる必要があります。
そうすることで、相続人は不在者財産管理人と遺産分割協議を進めることができるようになります。
この他にも、行方不明が長期にわたる場合、失踪宣告をして死亡したとみなす方法があります。
音信不通の相続人がいる場合、非常にトラブルにつながりやすいのでできるかぎり早めに専門家である弁護士に相談しましょう。